第19話、新スキル、魔力噴射
本日1話目
数日後、聡の手元に魔力噴射のスキルオーブが届いた。
ちょうど舞との共同攻略の日だったので、購入した報告を兼ねてスキルオーブをそのまま持っていった。
ダンジョン館で舞と合流。そのままダンジョンへと潜る。
「これがスキルオーブかあ……」
「舞さん、初めて見るんですか?」
「実はそうなの。私は勝手に発現したスキルしか持ってないからね」
聡は早速スキルオーブを使った。
「それで、どんなスキルを買ったの?」
「魔力噴射という、体や武器から魔力を噴射して勢いをつけるスキルです。
似たスキルを持っている人によると、使いやすくて威力も上げやすいらしいです」
「地味だけど確実に攻撃力が上がりそうね。早速、実践投入する?」
「そうしたいです。ただ、いきなり最前線は厳しいので、まずは2層浅部から行きましょう」
「分かったわ」
聡たちは2層浅部までやってきた。
「いきなりモンスターと戦う前に試し撃ちさせてください」
「的を出しましょうか?」
「そこら辺の木で試すから大丈夫です。まずはスキルなしで行きます」
聡は戦槌を握り、棘部分で木の幹を打ちつける。
木全体が揺れ、当たった箇所の樹皮が剥がれて消える。
「結構レベル高いわね」
「ありがとうございます。次はスキルありで行きます」
聡は再び戦槌を構え、先端を加速させるイメージでスキルを発動した。
その瞬間、戦槌が急に引っ張られる感覚。想像を超える負荷に聡は思わず手を離してしまった。
それでも勢いを殺しきれず、聡は地面に転がる。
「使いやすいっていうのは嘘みたいだな……」
「そうね、でも威力が高いっていうのは嘘じゃないみたい」
舞が指差した先では戦槌の棘部分が深々と木に突き刺さっていた。
聡は舞とともに、何度も魔力噴射スキルを試した。
その結果、ある程度出力を抑えれば、聡にもなんとか扱えると分かった。
「伸びしろがあるって思いましょう。現状は火力に苦労してないんだし、気にしないで」
「はい……一刻も早く使いこなせるように頑張ります」
魔力の消費量は想像通り、非常に多かった。
最大出力で1秒使用すると、最大魔力量の3割を消費した。
今の聡が扱える出力ですら、1秒あたり最大魔力量の1割を消費するペースだ。
幸いなことに、使用後1分ほどその場に留まった場合、消費した魔力量の8割程度回復することが分かった。
これで継戦能力の問題もある程度解決したことになる。
少しジャングルを進むと、逆魔力探知にモンスターの反応があった。
「あっちにモンスターが居ます。おそらく1匹」
「月野さん、1匹だったらタイマンしてみる?」
「そうですね、やってみたいです……そろそろ見えるはず」
聡たちはゆっくりと魔力吸収反応に近付く。
葉の隙間から見ると、そこには1匹の森林熊がいた。
「では行ってきます」
「危ないと思ったら必ずフォローを入れるから安心してね」
聡は堂々と熊の前に立った。
熊は聡を見つけると立ち上がり、威嚇するように両手を広げた。
聡は戦槌を構えて1歩ずつ前へ進む。熊の正面まで来たところで熊が動いた。
聡に対し、右手を薙ぎ払うように振るってくる。
対する聡は魔力噴射の威力確認をするために、熊の右手に向けて魔力噴射を使いながら戦槌を振るう。
噴射の威力を抑えても吹っ飛んでいきそうになる戦槌を気合いで無理矢理コントロールした。
熊の右手と戦槌が激突する。戦槌だけが振り抜かれる。
見ると、熊の右手は半ばからへし折れていた。
熊の攻撃と真正面から当たったというのに、戦槌は勢いを残したまま聡を引っ張る。
聡はその勢いに逆らおうとしたが、結局戦槌に引きずられて体を1回転させ、ようやく止めることができた。
聡が戦槌を止めるためにできた隙を、熊は見逃さなかった。
残った左手で聡に殴りかかってくる。
聡は熊の左手と自身の間に無理矢理戦槌をねじ込み、柄で受ける。
熊の筋力に押し負けて体勢を崩しながらも近くの木に粘着糸を飛ばす。
そして糸が木に繋がったのを確認。糸を引きながら地面を蹴ってその場を離れる。
「やっぱり制御が難しいな……」
聡は熊の攻撃と真正面からぶつかったのだから、大きな反動が来ると思っていた。
しかし戦槌は魔力噴射によって加速し続けていたため、反動が相殺されたのだ。結果、聡の手にはほとんど手ごたえがなかった。
それが原因でスキルを停止させるタイミングを誤ったと自己分析する。
「次は当たった瞬間にスキルを止める。」
聡と熊は数歩の距離でにらみ合う。1秒ほどの膠着の後、双方がほぼ同時に前に出る。
聡は戦槌で防御する姿勢を取り、熊は左手を振りかぶった。
左手が上から振り下ろされ、再び戦槌とぶつかる。
聡は自分の筋力に魔力噴射の勢いを加えて熊の左手を押し返す。
相変わらず魔力噴射は戦槌を引っ張るが、事前に構えていたおかげで大きく体勢を崩さずに済んだ。
同じような流れで熊の攻撃と聡の防御が繰り返される。
聡はそのたびに魔力噴射スキルの制御に専念し、次第に無駄な噴射が減っていった。
聡の魔力が半分を切りそうになったころ、動かない状況に痺れを切らしたのか熊が殴るのをやめ、数歩下がる。
そのまま姿勢を低くし、3本の脚で聡に突進してきた。
「最後は思い切りいくか」
聡は熊の突進を見ても1歩も動かず、戦槌を大上段に構えた。
タイミングを測ることに集中する。突進してきた熊が戦槌のリーチ1歩手前まで近づく。
その瞬間、聡は戦槌を振り下ろす。その途中で魔力噴射スキルを制御できるなかでの最大出力にして発動する。
4分の1秒にも満たない時間で戦槌の先は熊に到達し、頭を何の抵抗もなく吹き飛ばした。
戦槌は勢いのまま、小さなクレーターを作りながら地面に突き刺さった。
戦闘を終えた聡に舞から声がかかる。
「お疲れ様。ちょっとは新しいスキルに慣れてきたんじゃない?」
「ほんの少しですが、慣れてきました。まだまだ強敵相手には使えそうにないです」
「わかったわ。今日はもう進むのはやめて、このあたりで練習しましょう」
聡と舞はその日を、スキルの練習とスキルを交えた連携の再確認に費やした。
リアクション、高評価、ブックマーク、感想をいただけると励みになります。




