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第16話、勧誘

「もしもし、木崎舞です」

「月野聡です」

「月野さん、どうしたの?」

「舞さんに1つ聞きたいことがありまして、お電話しました」

「聞きたいこと?何でも大丈夫よ」

「この前、2層のツリーハウスで言っていた、美しい景色を見たいという言葉、どれくらい本気ですか?」

「……呪いがなければ何を置いても行っていたと思う。……1人でもね」

 

「実はですね、今回は舞さんとパーティーを組みたくて連絡したんです。ダンジョンの奥に行くために」

「でも、呪いはどうするの?」

「僕のスキルを研究した結果、呪いを軽減できる器具ができたんです。それを渡します」

 舞が息をのむ音が聞こえてくる。

「……分かったわ。でもいきなり組むのは難しい。

 試しで組んでみて、相性が良さそうなら本格的に探索するという形でどうかしら」

「分かりました。その方向性で行きましょう」

 その後、集合時間や場所などを決めて、その日の電話は終わった。


 聡は決めた日時にダンジョン館へ向かい、舞と合流した。

「今日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね。今日は無理せずいきましょう」

 聡たちはダンジョンへと踏み込む。

「今日はどこまで行くの?」

「2層浅部へ行こうと思います。勤さんの家に通い慣れているなら、余裕を持って戦えるはずです」

「異論はないわ。月野さんは大丈夫?」

「僕も問題ありません」


 2人は2層浅部に到着した。

 モンスターを何度か狩り、ポジションや連携を試す。

 その結果、舞が氷の盾で攻撃を防ぎ、それでできた隙に聡が攻撃する連携がベストだと思えた。

「やっぱり、パーティーを組むと魔力消費が抑えられて良いわね」

「僕も攻撃に集中できてやりやすいです。魔力吸入器は効いていますか?」

「呪いの方はまだ実感ないけど、魔力回復の方は微妙ね。回復量は1割も無いわ。

 魔石がもったいなくて余程の緊急時以外は使えなさそう」

 

 もう何回かモンスターを倒したところで、舞がこう切り出した。

「このまま中部で狩りをしない?」

「僕は1回しか行ったことがない上に、結構ギリギリの戦いになったので厳しいと思います。

 舞さんは行ったことありますか?」

「私は初めて行くわ。

 でも、パーティーとして、格上の敵と遭遇した時に対処できるかどうかは確認しておきたい。

 今後は奥に進み続けるわけだしね」

「……分かりました。でも本当に危ないので危険を感じたらすぐ撤退しましょう」

「了解よ」


 2人は中部まで進んだ。

 舞は道中カメラを片手に、ジャングルが湿地に移り変わる様子を逐一撮影していた。

「うわ~、一面泥だらけね。それにこんなに見晴らしがいいところなんてダンジョンで初めて見たわ」

 舞は湿地の情景に感動していた。

 

「見晴らしが良いってことはモンスターにも見つかりやすいということですから、気をつけてくださいね」

「モンスターの姿が見えない今だけは景色を楽しませてよ」

「あっちに1匹いますよ。泥で隠れて見えないんだと思いますが」

 聡は逆魔力探知に反応がある方向を指さした。

「景色とモンスター、どっちから楽しみますか?」

「まずはモンスターね。流石に安全確保のほうが大事だわ」


 聡たちはモンスターの反応がある方へゆっくりと近付く。

「距離はあと半分くらいです」

「まだ顔を出さないわね。先制攻撃する?」

「僕のスキルだと正確な位置までは分からないんです。だから範囲攻撃が必要なんですが……舞さん、出来ますか?」

「そうね、一応できるわ。この距離だとほとんど威力は出せないけれど」

「分かりました。それでお願いします」

 聡は近くまで寄ってから急に動かれるよりは遠くで気付かれたほうがマシだと判断した。

 

「分かった。氷爆弾投げ、2、1」

 舞がカウントダウンとともに氷の玉を投げた。

 玉は地面に当たると、控えめな爆発音と共に弾け、周りの地面に霜が降りた。

 霜の一部が起き上がる。

「あれは湿地大蟹。スキルは口からの泡噴射で、泡が割れると衝撃が来ます」

「泡の強度は?」

「小石でも割れる程度です」

「分かった」


 大蟹がこちらを見る。舞は大盾を構えながら前進していく。聡も舞の後に続く。

 大蟹が泡を噴射する。それに合わせて舞が手に握った砂利ほどの大きさの氷をばらまく。

 空中で泡がいくつか弾ける。だが泡はまだまだ多い。

「うーん、私のスキルとは相性悪そう」

「泡は僕が対処します。」

「分かったわ」


 聡は盾の前に出て、糸を振り回す。近くの泡が次々と割れていく。

 大蟹は泡を吐き出すのを諦め、横を向いて近付いてきた。

「月野さん、盾の後ろに」

「了解」

 聡が下がり、再び舞が前に出る。

 大蟹は鋏を振りかぶり、上から叩きつけるように舞へ攻撃。

 舞は大盾を地面に突き刺し、正面から鋏を迎え撃った。

 命中。泥のせいか盾がやや押される。聡はすぐさま大蟹の正面に躍り出る。

 大蟹の口へ向かって粘着糸を飛ばし、泡を封じる。間を空けずに戦槌の棘部分を腹に叩き込んだ。

 腹の甲殻にヒビを入れられた蟹は振り向きながら鋏で聡を殴りつけようとする。

 しかしその振り向きは舞に腹を向けることと同義。

 舞は腹のヒビに正確にロングソードを突き立て、蟹を中から凍らせていく。

 数秒後、蟹は煙に変わり、魔石を落とした。

 

 2人はお互いを労いながら今日1日を振り返った。

「今日のパーティー組み、良かったわ。やっぱり2人になると対応力が変わるわね」

「僕も舞さんの盾に何度も助けられました。僕は本格的にパーティーを組みたいと考えています。舞さんはどうですか?」

「勿論、私もOKよ。これからよろしくね」

 2人はパーティー結成を決定した。

 

「僕はこれから勤さんの家に行くのですが、舞さんはどうされますか?」

「私も行こうかな、何の用事なの?」

「魔力吸入器を作るきっかけになった研究者の方を紹介して貰ったのが勤さんなんです。

 だから成果が出たことの報告に行きたいと思いまして」

「結構マメな性格なのね」

 こうして2人は勤の家へと向かった。

 

今週は執筆の調子が良かったので土日は2話ずつ投稿予定です

時間は朝と昼ごろを予定しています

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