第12話、次の日の朝
聡はツリーハウスの中で目を覚ました。
夕食会の後、結局断りきれずに一晩泊まってしまった。そのことを思い出しながら、体を起こす。
半日経っても全く動かない太陽に辟易しつつ、周りを見渡した。
勤は寝ており、舞は起きてダイニングの椅子に座っていた。
「舞さん、おはようございます」
「月野さん、おはよう。よく眠れた?」
「はい。おかげさまで快眠です。」
「そう……昨日の夜、探索者になった理由を聞いたじゃない?」
「ええ」
「その時、ダンジョンの奥を目指してるって聞いて、話をしてみたくなったの。少し時間いいかしら」
「そんなことならいくらでも」
2人は茶を飲みながら話を続ける。
「それで、ダンジョンの奥へ向かうのって、どんな気分?」
「そうですね、進むのは正直怖いです。進むほどモンスターは強く賢くなっていくし、情報も少なくなってきます」
「それでも行くんですよね。どれくらい本気なのかは、壁の穴を見た時分かったから。」
「行きます」
「呪いは怖くないんですか?」
「それは……」
聡は言い淀む。呪いが効かないことを正直に話していいのか。
スキルは誰かが真似することはできない。公開したことでデメリットは無い。
だが、聡の魔力吸収スキルは妬むものも居るはずだ。
聡はトラブルを避けるため少しだけ嘘を混ぜて話すことにした。
「実はですね、スキルの影響で人よりドロップ品を食べなくてもいいんです。だから他の人よりは怖くないと思います」
「そんなスキルがあったのね……」
聡は詳しく聞かれる前に話を変える。
「舞さんはどんな理由で探索者になったんですか?ただの好奇心じゃないことくらいは分かります。」
「私?私は……最初はおじいちゃんに自分から会いに行くために探索者になったの。今は生活のために潜ってるわ。
でも、氷魔法スキルを得てから、なんと言うか……それ以外の目的を持っても良いんじゃないかって思い始めたの、ただそれだけ」
もしも、舞の言い淀んでいる目的が自分と似たものだったら。自分はどうすべきだろうか。
そんな考えがふと頭をよぎった。
「戦闘で使えるスキルがあったら活かしてみたくなる気持ち、分かります」
「でも、呪いとのバランスなんかがあるから専業探索者に聞いてみたかったんだけど……。まさか呪い対策スキル持ちだったとはね、レアケースすぎてあんまり参考にならなかったわ。」
「はは、レアケースですみません。
でも、スキルが発現する前も本気で探索者やってたので、相談くらいは乗れるかもしれませんよ。」
「笑わない?」
「どんな答えでも笑いませんよ」
「そうね、じゃあ、話してみるわ。おじいちゃんには内緒にしてね」
「もちろん。約束します」
「実は……ダンジョンの先で、景色を見てみたいの。
恥ずかしいけど、初めてこのジャングルに入った時、泣いてしまったの。美しすぎて、静か過ぎて。
そんな経験を何度もしたいって思うようになったから……どう、変な理由でしょ?」
「変なところなんて無いと思います。もしよかったらなんですけど……」
その時、勤の方から音が聞こえた。起きたようだ。
「おお、2人とも、おはよう」
「おじいちゃん、おはよう」
「おはようございます」
「見たところ、何か話していたようだな。ワシは席を外そうか?」
「ううん、大丈夫。ただの世間話だったから」
先程の言葉同様、舞は勤に対してダンジョンへの興味を隠しておきたいようだ。
「私は壁の穴の様子見に行ってくるわ」
「わかった。だが、モンスターがいたときは……」
「わかってるって、昨日みたいに呼ぶから心配しないで」
舞はそう言うと玄関から出ていってしまった。
「儂らは朝飯でも作るか」
「そうしましょう」
聡と勤はキッチンを使いながら話した。
「聡青年、1つ謝らなければいけないことがある」
「何でしょう」
「先ほどの話、ワシも聞いていた。プライバシーの無い家ですまんのう」
「……では、おじいちゃんには内緒の部分も?」
「そうだ。舞には悪いことをした。君にもな。スキルの件も聞いてしまった。」
「大丈夫です。言いふらしていないだけで、秘密にする理由はありませんから」
「そう言ってもらえるとありがたい」
勤の顔が、いつになく真剣になる。
「それで、だ。先ほど舞をパーティーに誘おうとしていたな?」
「はい。お互いに先へ進みたいという気持ちが一致していたので、協力できないかと思いまして」
「パーティーを組むのは個人の自由だ。どこまで進むのかも。だが舞はワシの孫でもある」
「はい」
「だから、パーティーを組むことになったら、もう一度ここに来てもらいたい。それだけだ」
「分かりました、必ず」
「頼んだぞ」
「それと、もう1人会ってほしい人間がいる」
「舞さんの関係者ですか?」
「ワシの知り合いだ。この家を作るきっかけになった研究の話を覚えているか?」
「はい。ダンジョン内での植物の生育研究でしたよね。」
「そう、その研究者に会ってほしい。君の持つ、呪いに対抗できるスキルについて研究できればと思っている。
そのスキルか呪いの解明に成功すれば、全探索者の助けになるはずだ。勿論舞の助けにも。」
聡は悩まなかった。探索者になるハードルが下がれば、探索者の総数が増え、ダンジョン研究も進むはずだと考えたからだ。
「分かりました。協力します。」
「助かる。後で手紙を渡すから、地上で投函してくれるだけで良い。あとは待っていれば招待が来るはずだ」
舞が帰ってきた後、聡たちは食卓を囲み、朝食を摂った。
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