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第11話、勤の孫、舞

 着地した聡は女性を援護すべく走り出した。

 頭上から勤の声が聞こえてくる。

「舞!ワシと近接1人で援護する!囲まれるなよ!」

 女性は舞と言う名前らしい。

 聡も同士討ちを防ぐため、自分の存在を誇示するように叫ぶ。

「援護する!武器は戦槌!」

 舞が叫び返す。

「分かった!ロングソードと氷魔法!」

 

 聡は舞の横に辿り着いた。

 左には森林狼、正面と右には森林熊がいる。

「正面、移動妨害する!前に出ないように!」

 そう言いながら聡は前方の地面に粘着糸を撒く。

「私は左から処理する!」

 舞は左の狼に向かって進む。

 

 熊は力が強く、地面の糸はいずれ突破されてしまう。その前に決着をつけなければならない。

 聡はそう思いながら右の熊を倒すために向き直る。

 瞬間、頭上から空気を裂く音。正面の熊の背中に矢が突き立つ。勤の援護だった。


 聡は熊に相対する。既に立ち上がった熊は聡と同じくらいの大きさだった。

 粘着糸を飛ばす。狙いは目。熊が顔を背けて避けようとする。

 その隙に、膝へ向けて戦槌の棘部分を叩き込む。命中。手応えは十分だったが、関節を壊すまでには至らない。

 そのまま1歩下がって様子を伺う。

 

 森林熊はタフだ。安全に倒すなら、時間をかけてヒットアンドアウェイで細かい傷を増やしていくしかない。

 しかし今は時間が惜しい。だからハイリスクでも顔を狙いに行く。そう決めた。

 

 熊が距離を詰めてくる。大振りのパンチ。

 聡は更に1歩下がって避け、パンチを振り終えた熊の腕に粘着糸を飛ばす。思い切り引っ張る。

 熊は一瞬バランスを崩しそうになったが、こらえて逆に聡を引き寄せた。

 そのままもう片方の手で殴りかかってくる。

 聡は急いで糸を自切し、転がるように避ける。


 倒れた聡へ熊が体重を乗せてのしかかろうとする。

 熊の体重で押しつぶされると無事では済まない。だが、熊が頭を下げるチャンスにも思えた。

 聡は立ち上がるのを中断し、戦槌をつっかえ棒のように熊との間に押し込んだ。そのままナイフを抜く。

 熊が落ちる。思惑通り、熊の体が聡の直前で止まる。

 

 吐く息が当たるほどの距離。

 戦槌に胸を突かれた熊は一瞬動きが止まる。

 その隙を逃さず両手で首元にナイフを突きこむ。

 熊が聡に噛みつこうとしてくる。

 目の前で歯がガチリと噛み合わさる。聡は恐怖を抑え込み、ナイフを握る手に力を込める。

 ナイフと噛みつき、それらが何度も繰り返され、ようやく熊が煙へと変わる。


 聡は立ち上がって舞の向かった方向を見る。

 舞は正面の熊と戦っている。左の狼は既に全滅しているようだ。

 聡は舞の援護に向かう。

 舞と熊の様子を確認する。熊の背中や腕には矢が突き立っており、腹の一部は凍りついていた。

 舞は右手にロングソード、左手に氷でできた大盾を持っている。大きな怪我は無いように見えた。

 聡が参戦しなくとも十分倒せるように思ったが、万が一のことを考えて構えることにした。

 舞に自分の存在を知らせてから熊の後ろへと近付く。

 

 熊がパンチを繰り出す。舞は大盾を地面に突き立て、その影に隠れる。

 パンチが大盾に命中。大盾はびくともしない。

 その直後、舞が大盾から顔と左手を出し、何かを唱える。

 すると舞の近くから30センチ程の氷柱が出現した。それは熊の腹に向かって飛ぶ。

 熊が避けようとするが、聡が反対方向から戦槌で殴り、熊の動きを少しの間止める。氷柱が刺さる。

 熊は氷柱が刺さった場所の近くから凍りついていき、胴体がほとんど凍ったところで煙に変わった。


「最初と最後の援護、助かったわ。ありがとう。」

 舞がこちらに礼を言う。

「頭を上げてください。襲われる原因を作り出したのは僕ですから、むしろこちらから謝らせてください」

「えっと……どういうこと?」

 聡はここまで来た経緯を話した。

「ええ、ヤバ……」

 聡はドン引きされてしまった。


「まあ、助けてもらったのは事実だし、もう一度お礼を言っておくわ。私は木崎 舞。あなたは?」

「僕は月野 聡です。よろしくお願いします」

 2人が丁度挨拶を終えたタイミングで、ツリーハウスから降りてきた勤が話しかけてくる。

「おお、2人とも怪我はないか?」

 2人はそれぞれ肯定の返事を返す。

「話したいことも多いだろうが、まずはあれを使って食事にしよう」

 勤の指差した先には肉の塊。森林熊からのドロップ品だった。


 ツリーハウスでは夕食会が開かれた。

 畑で採れた野菜、ドロップ品の肉、舞が持ってきた土産の菓子類。それらを豪勢に使ったパーティーだった。

 聡はここまで豪華な食事をすることになるとは思っていなかった。

 遠慮して帰ろうとしたが勤に引き止められ、結局参加している。


「月野さんは、どうして探索者になったんですか?」

「最初は金のためでした。だけどスキルを使ってみるとダンジョンが凄いもののように思えてきて、全部を知りたくなったんです。だから奥を目指しています」

「いい理由だ!聡青年!ワシは全力で応援するぞ!」

「酒臭っ!おじいちゃん、飲み過ぎ!」

 

 久々に誰かと食べる食事は、温かかった。

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