第9話、魔力を発する何か
本日最終話
聡はジャングルの中を進んでいた。
ここは地上と違ってそこまで暑くない。だが聡の額には汗が浮かんでいた。
その理由は、逆魔力探知に魔力を発する存在をとらえたからだ。
魔力を発するものはそう多くない。聡の知る限りではエネルギーを発している時の魔石、そして探索者だった。
魔石は特定の光を当てないと遠くから聡が感知できる程の魔力を発せない。
探索者の出す魔力も近付かないと分からないほどの量だ。
情報が少なすぎて判断がつかない状況。
「この先には何があるんだ?」
聡は未知との出会いに心躍らせていた。
進んでいくと、明らかに異常な密度で植物が生えている場所を見つけた。
ここまでは木を避けるだけで先に進めたのに、人ひとりも通る隙間がない。
葉の隙間から向こうを窺おうとするも、それすらできない。
聡は密集地帯を回り込もうとする。元の場所に戻ってきてしまう。
どうやら密集地帯は魔力を発する場所を取り囲んでいるらしい。半径は50メートルほど。
「何かを守ってるようにも見えるな」
明らかな異常。その中心に何かがあると判断する。
「どうやって進もうか……」
案1、生活魔法の火で燃やしてみる。
火は一瞬木に燃え移ったが、燃えた部分が火ごと消えた。木の伐採はできそうにない。
案2、戦槌の棘部分で攻撃してみる。
木の表皮が裂け、傷が入った。しばらく観察しても、再生などはしないようだ。
「地味だけど、これしか無い」
案2改、斧で伐採する。
1度ダンジョンを出て、ホームセンターで斧を数本購入し、またこの場所へ戻ってきた。
道中、スマホで木の再生について調べた。ダンジョンの木は1カ月程で再生するとあった。
「それ以上のペースで伐採するのは可能なはず」
聡は木を切る。何時間も、何日もかけて。
途中、音に惹かれたモンスターに何度も襲われた。斧が折れる度ダンジョンとホームセンターを往復した。それでもめげなかった。未知の魔力源を確認するために。
1週間後、密集地帯を20メートルほど伐り進めた先には、ジャングルとは思えない空間が広がっていた。
そこには一本の木だけが立っていた。
周囲には畑が広がっている。植えられている野菜は聡でも知っているものが多い。
木の上には家、いわゆるツリーハウスと呼ばれる建物が鎮座していた。
聡は恐る恐る土を踏みながら木に近付く。
何か見落としているものや罠がないか周囲を観察しながら進む。
ダンジョンでは罠が確認されたことなどないが、それでも警戒してしまうほど聡は緊張していた。
ツリーハウスの真下に着いた。
目の前には梯子がぶら下がっている。
警戒しながら梯子を登る。
上り詰めると扉があった。
ドアノブとドアノッカーが付いているだけの、少し古風な玄関扉。正面に窓はないから中を覗くこともできない。
聡は一度深呼吸をし、一歩を踏み出す決意を固める。
右手は何かあった時のために戦槌を握りしめたまま、左手でドアをノックする。
数秒後、中からゆっくりとした足音が聞こえてくる。
2足、靴ではない。
扉が開く。
「おかえり、ずいぶん早……誰!?」
周囲に家の主の絶叫が響く。
聡は突然の大声に思わず戦槌を取り落とし、耳を塞ぐ。
ドアから姿を現した老人と聡は数秒間見つめ合った後、老人が口を開いた。
「ハァハァ、驚いた……お前さん、名前は?誰から道を聞いた?舞か?」
「僕は月野聡と申します。道は……えーと、木の壁を切り開いてきました」
「どうやって?」
「斧で、地道に伐りました」
聡の返答に老人は目を丸くする。そして大笑いする。
「ハハハ!あの15メートルはある壁をか!?お前さん、根性あるのぅ!」
家を守る防壁に穴を空けられたのに、老人は何故か上機嫌だった。
しばらく笑っていた老人は、思い出したかのように自己紹介を始める。
「おっと、自己紹介をしていなかったな、ワシは木崎 勤と言う。しがない隠居老人さ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
聡と木崎勤は握手を交わした。
「歓迎したいのはやまやまだが、安全の確保が最優先だ。穴の空いた壁を修理せねばならん」
「材料などありましたら持ちます。僕が壊したんですし、最大限お手伝いします。」
「大丈夫だ、大きな荷物は必要ないからな」
2人は聡の開けた穴まで向かった。
「おお、向こうが見えるなんて何年ぶりだろうか」
「申し訳ありません……」
「謝るな、むしろ誇れ」
聡はこれ以上の謝罪は無意味だと思い、話を切り替える。
「それで、どうやって塞ぐんでしょうか」
「こいつを使う」
勤が懐から出したのは魔石と、色のついた小さい半透明の板。
魔石を穴の丁度中央に置くと、地下太陽の光がガラス越しに魔石へ当たるように調整する。
その瞬間、聡はエリアの中心と似た魔力が目の前の魔石から放たれ始めたことを感じた。
最後に、何か念じるかのように呟く。
「これで終わりだ。後はモンスターが入らないようにしばらく見張れば良い。」
「たったそれだけで?確か木がもとに戻るのには1ヶ月ほど掛かると聞きましたが。」
「問題ない。ワシは植物操作スキルを持っているからな。魔力さえ多めに与えれば、多少の無茶は効く」
聡はその言葉を聞くと、自分が空けた穴に向き直り、切り株の断面を見る。
ゆっくりと、だが目視できる程のスピードで芽が伸び始めていた。
「それでは改めて、家で茶でも飲もう。」
「お邪魔します」
2人はツリーハウスの中へと入っていった。
平日のPVが壊滅的なのと、事前の想定より執筆速度が早くなったため、これから火、木、土、日の週4で投稿していこうと思います。
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