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EP 6

【豊作】農業チートの弊害? カイト、レモンを作りすぎる

『マッハ・ウーバー』の倒産と、それに伴う損害賠償(リーザの全財産没収)から数日後。

カイト農場は、すっかりいつもの平和で穏やかな時間を取り戻していた。

「ふぅ……。やっぱり、土いじりをしてる時が一番心が落ち着くよ」

初夏の爽やかな風が吹く農場の裏手。

麦わら帽子を被った農民のカイトは、タオルで汗を拭いながら、目の前に広がる光景に満足げなため息をついた。

ここ数日、カイトは前回の「VRゲームでの魔法・経済インフレ」や「無料のタマネギ引っこ抜きマシーンにされたストレス」を解消すべく、己の本来の領分である【農業】に没頭していた。

気分をリフレッシュさせるため、爽やかな柑橘類――『レモン』の栽培と品種改良に挑戦したのだ。

「カイトの農業スキル【豊穣の息吹】と、この農場の高濃度マナを組み合わせれば、絶対に美味しくて酸っぱいレモンができるはず……と、思って頑張ったんだけど」

カイトの視線の先。

そこには、小山のように高く積み上げられた、無数の黄色い果実があった。

「いくらなんでも、作りすぎたなぁ……」

カイトは力なく呟いた。

一つ一つのレモンは、ソフトボールほどの大きさがあり、外皮は太陽の光を吸い込んだように星のような輝きを放っている。

カイトが生み出した究極の柑橘類、その名も**『Sランク・スターレモン』**。

品質は間違いなく世界最高峰。

しかし、問題はその『量』である。

ストレス発散で無心になって魔法を注ぎ込み続けた結果、農場の裏庭を埋め尽くすほどのレモンが、文字通り「爆誕」してしまったのだ。

「ざっと数えても一万個はあるぞ……。自家消費するには酸っぱすぎるし、市場に卸すにしても、いっぺんにこんな量を出したらレモンの価格が暴落(値崩れ)しちゃうよ」

前回のルチアナの「経済テロ」を間近で見ていたカイトは、無闇な市場への介入に慎重になっていた。

「どうしよう、これ。放っておいたら腐っちゃうし……」

カイトが『スターレモン』の山を前に途方に暮れていた、その時だった。

「ねえねえカイトォ! ちょっと聞いてよ!」

バンッ! と裏口のドアが開き、創造神のルチアナが飛び出してきた。

彼女の手には、天魔窟で購入した最新の『魔導スマートフォン(動画撮影機能付き)』が握られている。

「どうしたのルチアナ? また怪しい課金ゲームでも始めたの?」

「違うわよ! 今、天魔窟の若者たちの間で『魔導チューブ(動画配信サイト)』がすっごく流行ってるの! 私も自分のチャンネル『ルチアナちゃんねる(※登録者数3人)』を開設したんだけど、全然再生回数が伸びないのよ!」

ルチアナがスマホの画面を見せながら唇を尖らせる。

「まあ、神様が酒飲んで管巻いてるだけの動画じゃ、誰も見ないと思うけど……」

「失礼ね! バズるためには、もっとこう……視聴者の度肝を抜くような『過激な企画』が必要なのよ! 例えば『激辛スライム食べてみた』とか『魔王城にピンポンダッシュしてみた』とか!」

「そんな迷惑系チューバーみたいなこと、絶対やめなよ……」

カイトが呆れてため息をついた時、ルチアナの視線が、カイトの背後にある「巨大な黄色い山」に釘付けになった。

「……ねえカイト。それ、なに?」

ルチアナが、目をらんらんと輝かせながらレモンの山を指差した。

「ああ、これ? 気分転換に作った『Sランク・スターレモン』なんだけど……作りすぎちゃって、処理に困ってたんだよ」

「レモン……」

ルチアナの脳内で、ピコーン! と電球が光った。

彼女の顔が、動画の再生回数バズりに魂を売った、いかにも「悪だくみをする顔」へと変貌していく。

「カイト! このレモン、めちゃくちゃ酸っぱいんでしょ!?」

「えっ? う、うん。Sランクだから、普通のレモンの数十倍はクエン酸が濃縮されてると思うけど……」

「これだわ!!」

ルチアナがスマホを高く掲げ、高笑いを響かせた。

「これこそ、私のチャンネルを爆発的にバズらせる神企画よ!! 名付けて……『第一回・カイト農場 悶絶! Sランクレモン早食い選手権』!!」

「はぁ!?」

カイトのツッコミが追いつかない。

「激辛の次は『激スッパ』よ! 参加者が酸っぱさで顔を歪めてのたうち回る姿を配信すれば、再生回数ミリオン(100万回)間違いなしよ! 優勝賞金は……そうね、私のへそくりから金貨100枚(約100万円)出すわ!」

「き、金貨100枚!?」

ルチアナのその言葉に、最も早く反応した者がいた。

「参加しますッ!!」

ズザザザァァァッ!!

農場の奥から、顔面に包帯(ドロップキックの痕)を巻いた貧乏神のリーザが、猛烈な勢いでスライディング土下座を決めてきた。

「マッハ・ウーバーの賠償金で、今月の家賃どころか明日のパンも買えないのよ! その賞金、私がもらうわ!!」

リーザの目が、完全に血走っている。

「ふふふ。いいわよ、参加者第一号ね。さあ、カイト! 会場のセッティングを手伝いなさい! 伝説の配信が始まるわよ!」

「いや、僕の大事な作物を罰ゲームの道具にするなよォォォ!」

カイトの悲痛な叫びをよそに、ルチアナの悪ノリ企画『レモン早食い選手権』の準備が、着々と進められていくのだった。

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