EP 2
【爆買い】セレブたちの美への執着
「……買いますわ」
「私もだ」
「全部包んで」
ルチアナの露店(リビングの絨毯)の前で、金貨が乱れ飛んでいた。
トップバッターは、不死鳥フレアだ。
彼女は優雅に財布を開くと、躊躇いなく金貨20枚を積み上げた。
「とりあえず4本頂きますわ。顔用、デコルテ用、全身用、そして保存用です」
「まいどあり~!」
ルチアナがホクホク顔で金貨を回収する。
それを横で見ていたカイトが、思わずツッコミを入れた。
「ちょ、フレアさん? 君、不老不死だよね? アンチエイジング必要ある?」
「あらカイト様。不老不死だからこそ、美のメンテナンスは永遠の課題なのですわ」
フレアは深紅のボトルを愛おしそうに撫でた。
「それに……カイト様に『いつも綺麗だね』と言っていただくためなら、金貨など安いものですわ♡」
「うっ……。そ、そう……」
カイトはたじろいだ。乙女の執念は、不死鳥の再生能力よりも強いらしい。
次は、魔王ラスティアだ。
「ん~っ! すごい浸透力! 魔王の肌が飲み込んでいくわ!」
ラスティアは試供品をバシャバシャと使い、自分の頬をペチペチと叩いていた。
「見てカイト! ほら触って! モチモチよ!」
ラスティアが頬を突き出してくる。
カイトが恐る恐る指でつつくと、確かに吸い付くような弾力があった。
「お、おお……すごいね。餅みたいだ」
「でしょ~? ルチアナ、これ3セット追加で! 魔王軍の経費で落とすから領収書ちょうだい!」
「はいよ~! 宛名は『魔王城』でいい?」
公私混同も甚だしいが、美肌になった魔王の前では誰も文句は言えない。
そして最後は、人狼リベラだ。
彼女は真剣な眼差しで、成分表示(読めない日本語)を睨みつけていた。
「……ふむ。異界のテクノロジー『ピテラ(仮)』……興味深いですわね」
リベラは眼鏡をクイッと押し上げた。
「私、乾燥肌が悩みでしたの。……特に満月の夜は毛並みがゴワゴワしてしまって」
「わかる~! 変身すると肌荒れるわよね~!」
ルチアナが適当に相槌を打つ。
「カイト様に撫でていただく際、最高の触り心地を提供したいのです。……ルチアナ様、在庫全ていただきますわ」
「「えっ!?」」
全員が振り返る。
リベラはドン! と革袋を置いた。中には金貨がずっしりと詰まっている。
「定期購入も契約します。……私の肌への投資は、カイト様への愛の証ですから」
「ひぇぇ……」
カイトは戦慄した。
ただの化粧水一本に、これほどの情熱と財力が注ぎ込まれるとは。
女性の「美」に対する執着は、ドラゴンのブレスよりも熱く、そして財布の紐を炭化させるほど強力なのだ。
「うははは! 儲かるわ~! 地球転売ボロい~!」
ルチアナの高笑いが響く中、リビングの片隅では……。
「い、いいなぁ……。モチモチ……」
「金貨5枚……私の全財産……」
強欲アイドル・リーザと、月兎族・キャルルが、柱の影から恨めしそうに指をくわえて見ていた。
持たざる者たちの悲哀。
この格差社会が、次なる「デパート戦争」の引き金となる。




