183.脳筋
アキ=狭山茜
リオ=村雨涼
ナズ=波川静
ハル=林千晴
「うわ、火属性の斧か。これはさすがに危険すぎるだろ」
『駄目ですね。ラムが食べちゃうです』
「斧術スキルでも持ってんのかな?リオくん、どう?」
「うん、斧術スキル持ちだった。レベルは5か。完全に前衛ステータスだな。HP高くてMP低い。まあバッカスさんの方が絶対強いだろ」
「そりゃなあ…基礎レベルもスキルレベルも5ぽっちじゃ」
「それでも危険には変わりありません。消化です消化。ラム行きです。あっちの世界に持ち込まれちゃ大変です」
「転移玉、なさげだ…」
「念のため服全部剥ぐか」
「手伝うのだよ」
「遠慮なしだなあ!」
「女全員向こう向いてろ。見たくねえだろ」
「そうね。さっさと済ませてもらいましょ!」
「危険な要素は少しでも排除すべきですぅ」
「…それもそうやな。よろしく、ベルさん、シルバーさん」
都築から確認したところ、武器と鎧以外目ぼしいものはなかった。
ああ、魔道具の浄水器みたいなのはあったけど。水を入れておくと飲み水に変換してくれるやつか。
遠出する冒険者としてもほぼ必須に近い魔道具らしい。
…僕たちには必要ないけど。
「…っし、問題ねえな。トツキの確認は終わりだ」
「もっかい縛るのだよ」
「お疲れ様。次は森上さん連れて来てもらおっか?光スキル、ネロくん単独だとまずくても俺らは問題ないし」
『…そうだね、うん、さっさと連れてきたいからそうしようかな?』
「女の子だったわね。じゃあ私たちで確認するわよ!」
「男どもはあっち向いててくださいねぇ」
「了解なのだよ」
「ああ」
そして次は森上さんが連れて来られた。うん、衰弱で弱ってるし睡眠で意識はない。
ざっと女性陣総出で身ぐるみを剥いだところ、彼女はひとつだけ転移玉を持っていた。あとはナイフもあったけど、多分採取とか物を切るためのものだろう。
スキルも『光』スキルのみで、短剣術が生えてるわけでもなかった。
『魔力伝達率のいい素材の服です。光スキル持ちだからですね。属性付与しやすい装備みたいですが…それ以外は普通です』
「なら着せたままでいいか。あっちに戻ればそんな性質もなくなるし」
『ぷ…食べれないです…』
「ナイフは食っていいぞ。普通のナイフだけど」
森上さんの確認もサクっと終わった。これで半分だ。あと二人。
そして七海が連れてこられて、さくっとベルさんとシルバーが身ぐるみ剥いで確認した。
こいつも転移玉は持ってなかったようだ。恐らく三つ全て使い切ったのだろう。
「どいつもこいつも汚れてんな…」
「経験値と思えば苛立ちも無くなりますよ」
「それもそうか」
「いいのか、そんな考え方で…」
「ベルさん、ドン引きしないでもろて。今更やん」
特にシルバーは経験値稼ぎのタイミングが限られてるから、ありがたいと思ってるのかもしれない。
ハルも洗浄係はシルバーに譲ってるし。
「うし、ラスト、室伏か」
「体術スキル持ちの陸上部だな。脳筋なんだよな、こいつ。状態異常がなんぼのもんじゃいとか言いそう…」
「リオくんの印象がひどい。でも同意」
「どういう奴か何となくわかった。けど実際には効いてんだろ?」
『うん、多分…今は大人しく寝てる、けど…』
「歯切れ悪いな。ネロ、何か気になったのか?」
『えっと、他の人はね、睡眠の状態異常が効いて、ふらついて、眠気に抗ってる感じがして…結局駄目で寝落ちた感じなんだ』
「ああ、即効いたわけじゃないんですね。でもオークに使った時も似た感じでしたか」
『うん、でも、こいつ…妙にすぐ目を閉じたというか…元々眠くて寝落ちしただけの可能性もあるけど』
なるほど。つまり、わざと寝たふりしてこっちの油断を誘ってるんじゃないかと疑ってるのか。
確かに、聞いてる限りだと狸寝入りもありえる。そして眠くて抗うだけの気力が無かった可能性も十分にある。
なら追加で『睡眠』をぶちかませば、とも思ったけど、やってないってことは眷属に譲渡してないんだろう。
「…念のため、ナズとハル、森族姉妹あたりは下がってろ。身体強化系の補正ある奴が前に出て様子見るぞ」
「そうだな、出来る対策はしておいた方が良い。シルバーの言う通りにしよう」
「わ、わかりました。下がってますね。いざという時は針でも投擲玉でも投げてフォローしますから」
「………下がらせる必要ねえか、これ?」
「ハルが逞しすぎて」
ハルさん、その手に持ってる玉は火玉と燃焼玉では?炎上一択なんですがそれは。
若干の緊張感を持って、室伏を迎えることになった。体術持ちのアキ兄さんが前に出てる。
そして転移された室伏だが、拍子抜けと言って良いのか、だらんと脱力した状態だった。うん、普通に寝てるように見える。
一気に緊張感が抜けた。
良かった、取り越し苦労で…
「…待って」
「リオ?」
名前:室伏 翔
年齢:14
性別:男
LV:7(あと244)
職業:体力馬鹿
状態:衰弱・弱
HP:8/170
MP:5/75
スキル:体術LV7(あと512) 状態異常耐性LV3(あと238) 体力自動回復LV1(あと43)
「睡眠効いてない、起きてる!」
「…え、っ!?」
「ッぁああああああ!!!」
狸寝入りがバレたと判断したのか、大声で威嚇しながら起き上がった。
体術持ちというだけあり、身体能力は高いらしい。が、まさかロープを引き千切るとは思わなかった。
「お、き、やがれッ!」
「ガッ!?」
「あっ!七海くんが!」
体力馬鹿って職業だけど、脳筋ではなかったようだ。今の状況を見て、すぐまずいと思ったのか。判断力はあるらしい。
近くにいた顔見知りである七海のロープを力任せに引き千切り、その勢いで転がった七海まで目を覚ました。
HPが4から3になってるけど大丈夫か七海。せめて死ぬなよ。
「狭山に村雨…!?何で、底辺どもがこんなとこに…ッ!」
「よし、殺すか」
「いや待てシルバー、それはまずいのだよ」
「二人を侮辱したんだ、命はいらねえってことだろ」
「物騒なのだよ!止めてくれリオ!」
「え、でも、狭山さんを侮辱したなら…それも致し方なしかなって…」
「まっすぐな目で何言い出すのだよー!?」
「リオくん、めっ!!!」
「あい」
そういえば前にラムが召喚者は状態異常なんかに耐性があるとか言ってたな。この世界の人間じゃないから、マナによるものが効きづらいと。
室伏はそれが顕著なタイプだったんだろう。状態異常耐性のスキルが生えてるし、体力自動回復なんてものまである。マジで体力馬鹿か。
ステータス自体はそこまでじゃないだろうけど、これは逆に手出ししづらい。
思いっきりやると、殺してしまいかねないからだ。室伏のHPは8、七海に至っては3だ。一撃でもくらわせたら死ぬ。
「…ベルさん、下がって」
「しかし…」
「ベルさんの攻撃力だと、下手したら死ぬ」
「あっ…なるほどなのだよ」
ベルさんだけじゃない、従魔組もアウトだ。攻撃力がありすぎる。
この中で一番攻撃力が低いのは多分僕だ。加えて、咆哮などの足止めスキルもある。
ただし…体術スキルレベル7と渡り合えるか、と言えば自信がない。身体強化の派生はあるけど、体術スキルはその名の通り体の動きに大きな補正が入る。
僕の護身術はあくまで身を守るためのもの。攻める方は、そこまで能力が高くない。防御系だからだ。
となると、アキ兄さんに任せるのが一番だろうか。シルバーはちょっと怖い。遠慮をしない、という意味で。
下手したらうっかり骨折ってぽっくり逝かせる可能性がある。何せHP、3と8なので。
今、右の拳を左の手のひらで受け止め、パァンっていい音鳴らせたからな。やる気満々か。自重して。
「…スキル無しと、うまくもねえ料理しか作れねえ奴のくせに、よくもこんな…ッ!」
「よし、殺すか」
「リオくん???」
「半殺しにしろ、リオ。残りは俺が殺す」
「シルバーさん???」
「三分の一に留めて欲しいのだよ。僕の分もくれ」
「ベルさん???」
『こういう時に使う言葉を教わったです。万死』
「誰だラムにいらんこと教えたの!」
『万回殺すです』
「待って万死ってそういう意味じゃない!」
『後始末は任せるのだ』
「絶対それ火葬だろ!スー、めっ!!!」
アキ兄さんを侮辱した奴に慈悲はいらない。
というか、ここにはアキ兄さんの料理大好きな奴しかいないので、室伏はここにいる全員を怒らせたも同然だ。
自殺志願者としか思えない。
「いやみんな落ち着いて!確かに腹立つし心底ハゲろクソがって思うけど、殺すのはアウトやで!」
『そうですの!死は一瞬ですの!生き地獄の方がいいですの!』
「まっっってラテ違うよ!?てか誰!?生き地獄とかラテに教えたの誰ッ!?」
あ、ラテも結構キレてる。そうだね、ラムが凄すぎて隠れがちだけどラテも食いしん坊だからね。
そりゃアキ兄さんを馬鹿にされたら怒るだろう。
ちなみに生き地獄を教えたのは僕ですごめんなさい。でも万死はハルです。
こっちが殺気を滾らせながら話してる間にも、室伏はこっちを値踏みしていたらしい。
そして、この中で僕が一番弱いと判断して、僕に向かってきた。節穴じゃなかったか。確かにこの中じゃ僕が一番突破しやすいだろう。
単純に一番小柄ということもあるかもしれないが。
何しろ陣取ってるのはアキ兄さんとベルさんとシルバーだからな。ラムやスー、ネロもいるけど魔物は勘定に入れてないのだろう。
右ストレートで向かってきた室伏の右手を横から弾く形で無力化させ、体勢を崩す。
これは京さんがよくやるやつだ。直線上の力は別方向から接触すると僅かな力でも崩れやすい。理科とかでやった気もする。
単純な力は室伏より僕の方が確実に下だ。なら馬鹿正直に正面から迎え撃ってやる必要なんてない。
案の定、簡単に室伏は体勢を崩した。こんな形で攻撃を無効化されるなんて思いもしなかったんだろう。
僕には護身術の『回避補正・微』もある。さらっとターゲットから外れ、軽く室伏の体を押した。
そして、室伏がよろけたその先にいたのはアキ兄さんなわけで。
「…狭山…ッ!」
「うちの子に何さらすんじゃ室伏ィ!」
体術スキルLV7対LV13の火蓋が切って落とされ…どう考えてもアキ兄さんが勝つだろこれ。
そう考えて意識を切り替える。そう、相手はもう一人いる。室伏にロープを切られて自由になった七海だ。
こいつは衰弱の状態異常をきっちりくらってるので、まともに立てる状態にない。半身起こした状態が精一杯で膝をついている。
が、その状態でもこっちに反抗する気は満々だったらしい。
…詠唱していた。短い詠唱なのと、レベルからして十中八九『水球』だろう。
一瞬青い光が七海を包み、詠唱が完了したことを知らせる。そしてそのまま僕を見て魔法を発動させた。
「…ウォーターボールッ!!!」
「は?」
呆れた顔になった自覚はある。
いや、『水球』だからね。別に間違っちゃいない。
でもわざわざ発動時に言うことでもなくない?しかも英訳て。
魔法を放つタイミングを味方に知らせるために言うことはあるけど、誰かと連携するでもない今、言うだけ無駄じゃないか?
それとも口に出して言わないとイメージ出来ないんだろうか?なら普通に『水球』って言えやって話だけど。
後ろにいるナズが「厨二病…!」って言ったので、疑問が一気に氷解した。真面目に考えて損した。
が、さすがに初期スキルと言うべきか。アキ兄さんの放つ『水球』よりは大きかったし速度も上だ。魔法攻撃力の差か、適性があるからか。
…それでも僕には効かないので思いっきりすり抜けていったわけですが。
水属性の魔法が効かないのはマーフォークのおかげで知ってたので怯むことなく七海のいる方に駆ける。
僕が魔法をくらわなかったことに七海は盛大に驚いていた。まあそうだろうな。でもこの大きさ、確実にこっちを殺すつもりで放ったな、こいつ。
多少距離はあったが、僕の後ろにはナズやハルたちがいる。一瞬、そっちに『水球』が、と思ったところで思い出した。
「…きゃ…!」
『小賢しいっ!』
「…サン!」
形状変化を解き…それでも本来の大きさよりは小さいが、元の姿に戻ったサンが前に出て『水球』を吸収した。
『水球』の大きさから、レスネイクの大きさでは間に合わないと思ったらしい。
ナズやハル、森族姉妹からかばうように前へ出ていた。当然、四人に水球の影響など欠片もない。サンかっこいい!
『む…思ったよりマナがスカスカだな…まさに張りぼてよな。スー様が残念と言っていただけはある』
あ、思ったより大したことなかったっぽいなこれ!残念!
こっちはこっちで、さっさと七海を拘束した。
「てめ…っ、触んな、村雨!」
「お前が暴れなきゃ進んで触らねえわ」
「クソッ、………」
「この状況で詠唱を許すわけないだろ」
「が、…っ!」
両腕を背中側に回して掴む。魔法スキル持ちなだけあってステータスも力は低いんだろう。僕ごときの力でも押さえつけられた。
そのまま、背中からのしかかり、背中に膝を押し付けることで地面に縫い留めた。ついでに後頭部を鷲掴みにする。
詠唱しそうになったので、地面とキスの刑だ。ファーストキスだったらごめんな。どうでもいいけど。
あー、でも魔法使いって面倒だな。この程度の拘束じゃ攻撃手段を完全に奪えない。
詠唱のたびに邪魔すれば無力化は出来るけど…こいつ、残りMPが4だ。消費MPが軽減されてるのか、水球一発あたり1以下の消費らしい。
単純計算、あと四発以上は放てるのである。都度邪魔すればいいっちゃいいけど。
「…敵に回ると面倒だね、魔法スキル持ちって」
「林さん?」
「涼、そのままで」
念のため、口調も呼び名も元に戻しておこうということで、全員本名で呼んでいる。
こいつらが意識を取り戻さなければやらずに済んだが、万が一意識が戻ったらこうしておこうと相談して決めたことだった。
もっとも、アキ兄さんは元から僕をリオくんと呼んでいたこともあり、シルバーやベルさんは「ならリオ呼びのままでいいか」と思ってるらしいが。
慣れてきてただけに、敬語じゃないハルはちょっと違和感があるような懐かしい気持ちになるようなという感じだ。
ハルはいつの間にか僕の近くまで来ていて、七海の肩甲骨あたりに人差し指で触れた。あまり触りたくないのかもしれない。
何をしてるんだろうと思ったのは一瞬、七海が口をぱくぱく開けながら、焦ったような表情をして暴れ始めた。
もっとも体勢の有利からか、振りほどかれるまでにはなってない。
そして納得した。これ、隠密スキルの派生の『消音』か。
七海自身にかけることで、七海から出る音を詠唱含めて消した。これなら詠唱は出来ないので魔法も発動しない。
詠唱はこの世界に漂うマナに声でもって干渉して成立させるらしいので、こういう『消音』や『静寂』で音を消されると成立しないのである。
ちなみに『消音』と『静寂』はどちらも音を消す派生能力だが、範囲などが違う。『静寂』は魔法スキルの派生なので範囲が選べる。
逆に『消音』は隠密スキルのような魔法ではないスキルの派生のため、触れたものや単体にしか効果はない。その代わり、詠唱がいらないので即時発動できる。
なので、七海に触れてないと効果はないため、ハルは近くに来たのだろう。
やだ…自分のスキル把握して適宜行使してるの、かっこいいこの子…
ハルのおかげで七海は無力化できた。一方、室伏は。
「が、ぐ…っ、なん、で…ッ!女のくせに…っ!」
「性別関係ないだろ!それ言ったら男のくせに女に手をあげるの最低じゃんか!」
「役に立たねえヤツの、くせに…!」
「ハッ、今はみんなが必要としてくれてるから、そんな言葉じゃ傷つきもしないね!」
ウチのアキ兄さん、男前すぎんか?
さっきから防戦一方ではあるが、室伏の攻撃はすべて弾いたりしてまともにくらってないらしい。
それに焦れてきたんだろう。室伏は大振りの攻撃をアキ兄さんに繰り出そうとしていた。
今までは隙の小さい攻撃を繰り出し、アキ兄さんの体勢を崩させたりして退けようとしてたみたいだけど、全て防がれてることでその手が効かないと判断したのか。
攻撃力は大きいが、隙の多い右の大振り。もしかしたら『強撃・微』も乗っているかもしれない。
室伏は170cmを超えていて、それなりに筋肉質だ。単純な力は恐らくアキ兄さんより上。
正面からの力比べだと、アキ兄さんが不利…ではあるけど。
ここにいるのはアキ兄さん一人じゃないのである。
「―――…なッ…!?」
アキ兄さんの顔に向かって繰り出された拳は、ラムの体に受け止められていた。
そう、ラムの『打撃無効』の体に。
この打撃無効は、ダメージにならないだけでなく、衝撃なども無効にする。スキルの効果というか、スライムの軟体の体だから吸収されてしまうのかもしれないが。
なのでラムの体に拳が包まれたその瞬間、大振りの勢いまでも完全に殺され、腕を繰り出そうとした不格好な体勢のまま室伏は固まった。
いや、スローモーションよりは早いという速度で動いてはいるが、当初のスピードは完全に殺されたも同然。
そこを見逃すアキ兄さんじゃない。隙だらけになった右腕を絡めとり、背負い投げのようにして室伏を地面に叩きつけた。
…HP大丈夫かこれ!?あ、4残ってる、セーフ!アキ兄さん素敵!
「が、は…!」
「どけ」
「シルバーさん?」
「俺の方が上背も体重もあるからな」
地面に叩きつけられて脳震盪を起こしてるのか、視界が明滅してるのか、ろくな抵抗も出来ないまま室伏はシルバーに拘束された。
体勢は僕と同じように、後ろ手に回した手を掴み、うつ伏せ状態で地面に縫い留める形だ。まあ、これが一番簡単でそれなりに効果ある拘束法だもんな…
「リオ、ロープくれ」
「いいけど、七海が…今解放したら林さんが危なくなる。万が一林さんに傷でもつけたら私コイツに何するか」
「その前にあたしがコイツ刺して(状態異常で)どうにかなる方が早いと思うよ」
「…そのナナミとやらは僕がやるのだよ。押さえつけるだけなら僕でも出来る」
「ベルさん…」
攻撃に転じるとなるとうっかり殺してしまいかねない攻撃力だけど、確かに押さえつける程度なら…?
既に七海にはロープで拘束し直している。これは状態異常とか全然付与してない、僕の召喚から出しただけのロープだ。
その代わり丈夫である。七海の力じゃ引き千切るなんて絶対無理だろ。
自動行動やらの派生を駆使して縛り上げたわけで、七海は何が起きてるかわからずに若干涙目だ。まあロープが勝手に拘束していく様は軽くホラーか。
同情の余地はないのでスルーしてるけど。
ベルさんが七海の拘束役…体重かけて起き上がれないようにする役を買って出てくれて、ハルは引き続き『消音』役。
状態異常を付与したロープは、元は僕が出したやつだけど、付与作業を行ったせいか状態異常のせいか、脆くなっていた。
武器とかにある耐久値みたいなのが減ってたためだろう。それでも拘束という役目には問題なかった。
でも、力のある相手に引き千切られる程度には丈夫じゃなかった。そのせいで室伏に引き千切られてしまったけど。
…今は、そんな付与も何もない、召喚したての上に僕のスキルで丈夫にしたロープだ。室伏程度の力ではどうにもならない。
何なら『固定化』で絶対解けないようにしてもいいけど、こいつにそこまでの力があるとも思えない。
めちゃくちゃ悔しそうにしながらも縛り上げられていた。
「…の、クソが、クソが…!底辺のくせに、弱者のくせに…っ!」
「こいつどうにかして意識落とした方がいいんじゃねえか?うるせえ」
「でも睡眠効かなかったしなあ…何回かかければ効くだろうけど」
「はっ!そんなもんが俺に効くかよ!城の連中がかけたっつークソみたいな術だって解いたんだぜ俺は!」
「そういや隷属とか呪印、ないなコイツ。七海とかには残ってるのに」
「へー、そうなんだ」
『状態異常に抵抗力が高い異世界人は稀にいるです。こいつ、そのタイプですね。でもリオくんの言う通り何回かかければ効くです』
『わたしたちのかける魔法や魔術の方が強いのだ。一、二回くらい弾かれても効果を及ぼせるのだ』
確かにオリジンの力の方が遥かに上だろうな。
僕にだって空間魔法が効くわけだし。あれ、室伏ってもしかして僕とちょっと似てるのか?状態異常への抵抗力が高いって。…何かやだなあ。
ちなみにヒャッハー組に従魔組の念話は届いてない。聞かせたくないらしい。わかる。
「ぐ、くそ、どけよゴーグル野郎…!」
「抵抗は無駄ってのもわかんねえのか。頭悪い奴だな」
「ざけんな!この程度…!」
「シルバーさん、シルバーさん、ちょっと足元どけてー」
「…ん?」
ラテを肩に乗せたナズまで近くに来てた。
え、大丈夫?まあすぐ後ろに森族姉妹がいてくれてるから、ナズに危険はないだろうけど。
それにしても、ナズ、何を…
「やっちゃって、ラテ!」
『はいですの!』
「…んなッ…!?」
わあ、室伏の足ってか下半身が石化した。
あ、石化毒か!えらい!これならダメージなしで拘束できる!案の定動けなくて上半身うごうごさせるだけになった。
いや、これはこれで面倒だな。既に腕は縛ってるし、足が石化したならこれ以上の拘束の必要はなくなったけど…
「波川、だと…!?てめえ、運痴のくせに何しやがる!」
「うっさいわ脳筋!運動できる出来ないで人を判断しよってからに!城でてめーみたいなのは一生這いつくばってろって悪口言われたの忘れてへんからな!」
「今まさに這いつくばってるのお前だけどな、室伏くーん。ぷぷぷー」
「リオくん、なかなかキレてるなー。まああたしも結構イラっとしてるけどー」
「このムロブシとかいうガキは殺しても許されるんじゃねえか?」
「シルバーさん待って、引っ込めて、その杖はないないしましょ。あかんて!」
そういえば室伏はナズだけじゃなくてハルにも見下してるような目で見てたな。
そうだな、ナズもハルもあっちの世界じゃ運動音痴に分類される子だったから。
ちなみに僕は瞬発力ありの持久力無しのため、僕も見下されてた。
それはそれとして、どうにか意識を落としたいけど…
『ぷ…まずいです。ラテ先輩の石化毒も解かれそうです。多分あと五分くらいで』
『はやっ!自然治癒出来るにしたって数時間は持続するはずなのだ!本当に効きづらいのだな、この小物』
『連続でかけるですの?わたくし、毒は猛毒と麻痺毒と石化毒しかないですの。次、麻痺毒かけるですの?』
『一時的に無力化出来さえすれば、シルバー殿に連れていってもらえるであろうし、麻痺毒は良いかもしれぬな』
『そうだね、睡眠とか気絶を試してみてもいいけど…意識失ってる間に連れてっちゃえば』
従魔組、なかなかに人の心がない発言を…って思ったけど元から人じゃなかった…
七海の方はハルが無力化してる間にサンが闇魔法『睡眠』で意識を落としてくれたようで、放置されている。
都築くんと森上さんは気づかずに寝ている。
となれば、あとは室伏だけだ。さて、どうするか…
アキのスキル
体術LV13/2『身体強化・微』、3『攻撃強化・微』、4『回復速度上昇・微』、5『強撃・微』、6『防御強化・微』、7『回避補正・微』、8『体力強化・微』、9『受け流し・微』、10『衝撃破・微』、11『身体強化・小』、13『攻撃強化・小』
水魔法LV10/1『洗浄』、5『水球』、10『水流』
リオのスキル
無機物干渉LV16/3『自動修復・微』、5『無機物操作』、7『変形』、8『自動行動・微』、10『受肉』、12『自動修復・小』、15『固定化』
護身術LV13/2『防御強化・微』、3『物理壁・微』、4『回避補正・微』、5『物理無効・極稀』、6『回復速度上昇・微』、7『身体強化・微』、8『魔力壁・微』、9『魔法無効・極稀』、10『結界・微』、11『防御強化・小』、13『物理壁・小』
ハルのスキル
隠密LV16/4『消臭』、5『洗浄』『隠蔽』、6『幻影』、7『身替わり』、8『透明化』、9『消音』、10『偽装』、11『透過』、13『幻聴』、15『注目・微』




