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184.能力の上書き


「クソが、女のくせに、弱者のくせに…!」

「し、視野が狭すぎるのだよ…本当にみんなと同じ異世界人か?」

「黒髪で聞き慣れない名前じゃなかったら信じられないわね!」

「うるせえよクソエルフ!非力でエロゲでボロボロにされるだけの存在のくせに!」

「エルフって、異世界での私たちの種族のことでしたっけ~?エロゲって何ですかぁ?」

「知る価値もない汚物だから忘れていいよ」

「二次元は日本のお家芸だろ…」

「ちょっとお黙りやがれシルバーさん。今は日本の恥部を語る場じゃねーんですよ」

「リオくん、口調ブレッブレだなぁ」



いい加減、室伏はマジで黙らせた方がいいなこれ。

睡眠か気絶か、どっちをかけてもすぐ効果が切れそうでどうするか、というのが従魔組で悩んでいる部分だ。

ミノムシにして猿轡かけて、というのも考えたけど…



「一気に四人だからな…こいつ暴れそうだし、蠢いてるだけで邪魔だ。下手したらぶつかって他の三人が起きちまうかも」

「ああー…せやんな、どうにかして意識落とした方がいいよねぇ」

「でもあっちに戻った瞬間、状態異常も無効になるんだったら元の木阿弥なんじゃないの?」

「怖いこと言わないで、ちーちゃん…」

「あっちに戻ったら京とアルがいるから何とでもなる」

「単純に物量が増えるしね。その二人腕立つし」

「せめて10分くらいは意識落ちてて欲しいな。まだシルバーさんに手紙とか渡してないし挨拶したいし」

「んー…だよなぁ」



こっちが相談してる間も何かグチグチ言ってるけど、もう誰もまともに聞いちゃいない。

てかこいつこんな陰険な奴だったのか。爽やかとまではいかないけど、スポーツマンって感じの、真っすぐな奴だったのにな。

こっち来て城の連中におだてられて増長してこうなったか…



「ラテ、ちょっといい?」

『はいですの。どうしたですのリオ様?』

「さっきあいつに石化毒使った時、しっかりかかった感覚あった?何か軽減された感じした?」

「え、涼、どういう質問…?」

『…かかり方が鈍かった感じはしたですの。ラテ、腕ごと背中まで石化させるつもりだったですの。でもお尻までしか固まらなかったですの』

「なるほど」

「あー…想定より範囲が狭かったと。本当に室伏くん、状態異常に耐性があるんだね、スキルとは違った意味で」

「俺はそれよりチハルの口調に慣れねえ…」

「今は耐えなさいシルバー。本当はこっちだから」



まあ、もうこの世界から離脱させる室伏の前で取り繕う必要ないっちゃないけど。

でもこっちで積み上げたものをこいつらの前で出したくないという思いもあるわけで。



「軽減される上に解除までの時間が短い、か。うっわめんどいやつやで」

「最初にしっかりかかれば持続も伸びるかな?」

『多分…最初に七割以下の効果しかかからないので解除も早いみたいですから』

「結構な割合で軽減されてるのだよ」

「くっ、リオくんの劣化版か」

「…。ふぅ~~ん…?」

「…涼?なに、その笑み…」



にやあ、と何かを企むような笑みになった自覚はある。でもドン引きしないでナズ…

どうしようかと悩んだけど、アキ兄さんの一言でひとつ考えが浮かんだ。

"僕の劣化版"か。それならば。



「スー、気絶でも睡眠でもいい。いつでもかけられるよう準備して」

『え、あ、ああ、わかったのだ…』

「あー…なるほどな」

「えっ?涼が何するかわかったのシルバーさん?」

「アカネが言ったろ、リオの劣化版って」

「え、あたし?何?何か変なこと言った…?」

「同系統の力の場合、強い奴が上書き出来るんだ」

「ど、どういう意味なのだよ…?」



みんなへの説明はシルバーに任せてしまおう。

こっちは僕とスーがいれば何とでもなる。ということで、うごうごしてる室伏の近くまで来て見下ろした。

見下ろされてるのが気に入らないようで、睨みつけてきてるけど無視だ。

さっさと用を済ませようと触れるために手を伸ばした、ら。

…打ち上げられた魚みたいにビタンビタンし始めた。うっわ、哺乳類から魚類になった。どうしよう。



「触んじゃねえよアバズレ!」

「阿婆擦れとか言われたの人生初だわ。めでたくねえけど」

「ハッ、芝が好きなくせに俺にまでコナかけようってんならアバズレだろうがよ!」

「は?…あー、そっか、お前らの認識ではまだ『私は芝のこと好きな女』なのか。情報が古いなぁ。最新情報に更新できないと時代に取り残されるぞー?」

「見栄張ってんじゃねえよ!芝にてめえがビッチだって話してやる!泣いて喚いてももう遅いからな!」

「阿婆擦れからビッチに進化(?)したかぁ。ってか、芝と話せるかは知らんけど試してみれば?今からお前も同じとこ行くと思うからさ」

「はあ!?」

「あいつはね、もうこの世界にはいないんだよ。戻ったんだ。そして次は君たちの番。よかったね、元の世界に戻れるよ」

「はあ!?ざけんな!あんな世界どうだっていいんだよ!俺は、ここでモンスター倒して活躍して…」

「君の意思は関係ない。これは決定事項だ。大人しくしないなら、させるまで」

「ざけんな、ざけんな、ざけんなぁッ!」

「うわ、また魚になったよ」

『魚とか言うんじゃないのだ。フィッシュに失礼なのだ。まあ、わかるけど』

「やべっ、確かにマーフォークに失礼だったわ」



下半身が固まってるってのに元気な奴だな。活きがいいといえばそうだけど、全然ありがたくない。

さっさと用事を済ませたいのに全然大人しくしないって、癇癪起こした子供みたいだな。…子供か。



「ざっけんな、解けろ、石化なんてもの、すぐに…っ!」

「―――わっ!!!」

「…ッ!?…、…!」

『ああ、『咆哮』なのだ?『硬直』も乗ってるようなのだ」



そう、レベル5になったから、『硬直』の派生能力覚えたんだよな。

何であれ、やっと大人しくなった。さっさとこうしてればよかった。

でもこういうのって正面からだと効きにくいし、僕から意識逸れてた方がいいと思って、石化してる下半身に意識が移ったと同時にぶちかました。

あー、ようやく大人しくなったよ。

んじゃ、さっさと済ませるか。触られたくなさそうだったし、僕だって出来るだけ触りたくないので人差し指だけで肩甲骨のあたりに触れた。

そして"上書き"する。



「スー、いいよ」

『わかったのだ!』

「……ッ、…!?…、……」

「…よし、意識落ちたな」

『うん、ちゃんと食らってくれた感じするのだ』

「これでまあ、向こうに運び込むまでは意識落ちたままだろ」



最後の抵抗だったのか、自然治癒か、下半身の石化は解けていた。

が、気絶して意識は落ちてるので問題ないだろう。

他のみんなは様子を見て、手出しはしないでくれたようだけど、何かポカーンとしていた。

ただ、もうヒャッハー組は全員意識が無いせいか、口調は元に戻したらしい。



「異世界人よくわからんのだよ…」

「それ、俺たちも含むからやめてベルさん…」

「才能者意味わからんのだよ…」

「おい、俺が除外されてねえぞ」

「除外するつもりがないのだよ」

「まあ、こんなのを見せられたらそうでしょうね。リオ兄さん、やっぱりチートでしたか」

「僕が!?何で!?」

「何でもクソも室伏の能力無かったことにしたやろがい」

「いや、無かったことっていうか、抑えただけというか」

「どっちにしてもとんでもねえこと仕出かしてますぅ」



えええ…そんなこと言っても誘導に近いものなんだから、大したことじゃない、はずだ。

それ言ったら冷遇組に料理スキルや被服スキル教えるためにつきっきりで『こうした方が良い』って誘導したアキ兄さんとナズだって同じことをしてるはず。

…一緒にするなと言われてしまった。あ、はい…


というか、この小技は才能者界隈ではよくあることだ。

例えば『変身』の能力を持つアルさん。希少な能力だけど、同系統の能力者は何人もいる。

一部しか変えられなかったり、色彩変化のみだったり年齢変化のみだったり色々だが、変身という区分には違いない。

これ系の能力を使う目的は『元の自分と気づかれないよう誤魔化す』ことなので、こういう部分的な能力も重宝されてるのである。

ただ、アルさんは現時点で存在する変身系才能者の中で一番の力を持つというだけで。

なので、アルさんが他の変身系才能者が施した変身を解くことも重ね掛けすることも出来る。能力の上書きという方向で。

実際にあったのは、三日間別人になって任務したいという才能者に、変身系才能者が能力をかけた。

が、実際には二日で任務が完了したので、その時点で変身している必要がなくなった。

残り一日、そのままでも良かったけど出来ればいつもの自分に戻りたいと思った時、たまたまアルさんが近くにいた。

そしてアルさんはその才能者の頼みを聞いて、かけられた変身の能力を無効化して元の姿に戻したという。

アルさんの力が、前にかけられていた変身の才能者の力より勝っていたからこそ出来たことだ。


あとは犯罪に手を染めた才能者が空間を捻じ曲げて引きこもって隠れていたことがある。

…まあ、シルバーが引きずり出しましたよね。あいつの空間の能力、とんでもねえので。当然、その犯罪者よりシルバーが強かったから出来たことだ。

これは捻じ曲げられた空間を無効化して解いたのではなく、シルバーの考えた空間に作り替えるという方法で犯罪者を放り出したそうだ。

そう、無効化じゃなくてまさに上書き。自分にとって快適だったはずの空間が、シルバーの好き放題した空間に染め上げられたのである。

詳細は不明だが、高熱が出た時に見る悪夢みたいな光景だったとその犯罪者は供述していたらしい。

どんな空間作ったんだあいつ…

ユリちゃん曰く、その任務の前日にインド映画を観てたらしいので、そういう系じゃない?とのこと。

下手したら踊り出す大量の人の影とかが密集した空間になっていたのかもしれない。さすがに生き物は作れないらしいから。

それでも実体はない影とかは作れるらしいけど。もしくはインド映画がエンドレスで流れる空間だったかだ。

音があったかは定かじゃないけど、動きだけで騒がしそうだし、どう考えてもくつろげなさそう。マジで悪夢じゃん。


と、まあ、そんな訳で、僕も似たようなことをしたっていう。

室伏は確かに僕と同系統の力がほんのちょっぴり感じられた。もっとも才能者どころか半才能者ですらない只人の範疇に納まるものだ。

言ってしまえば、人よりちょっと丈夫程度のもの。風邪を引きにくいとか引いても重篤化しないとか。

人より体が柔らかい、筋肉量が多い、そんな個人差とも言えるべき体質というか個性だ。

元々才能者も、そういう体質みたいなものが顕著に現れるとか極端に強くなるとか、そういうものだ。

化粧やら演技やら声色の変化やらで別人になれる人は結構いる。その極端な形が『変身』だとか。

プロのスポーツマンなど、稀に動体視力が研ぎ澄まされ、相手の動きとかボールとかがゆっくりに見えるとか止まってるとか錯覚を起こす。

それは漫画知識としてはあったけど、これの進化系が時間操作とか聞いた時は「そんなことある?」としか言えなかった。あるらしい。

で、僕の体質も、自分に害のあるものに強いとか抵抗力がある、そういう力の延長線上のものと言われた。

まあ、これはちょっと納得した。熱に強いとか寒さに強いとか毒に強いとかそういう体質が超変化したものだろうと。

室伏はこれ系だ。そして異世界に来たことで、それが強まったとか何かしらの強化か変化があったのが状態異常への抵抗力だろうと。


つまり、同系統であるらしい僕が干渉出来るものだった。僕、腐っても才能者だからね。只人よりは力が強い自負がある。

そしてその室伏の体質を限りなく…というか、無にした。触れてる間という制限はあるけど。

でも状態異常がかけられる時にしっかり効果が及んでいれば、抵抗力が高かろうが通常通りの効果になると。

効果が及ぶ時に『軽い状態異常』になってしまうのが自然治癒時間が短縮されてる原因らしいので。

あえてステータスにすると『弱』がつくような状態異常らしい。『毒・弱』とか。

まあ、シルバーはそんな感じの話をかいつまんで皆にしてくれた。

その結果があの言葉という。何か大仰に伝わってないか…?僕の力なんて本当に大したもんでもないぞ…?



『…リオ様』

「え、どうしたのラテ?」

『つまり、リオ様が触れてる間、この野郎に状態異常が効くですの?』

「…この野郎って…ラテ、こいつ嫌いなんだね、わかるけど。まあ、そうだな。効くように出来るよ」

『ぜひやって欲しいですの!また肩とかその辺りに触ってて欲しいですの』

「え、うん、いいけど…」



正直触りたくない。でもラテの頼みなら仕方ない。

優先順位は僕の個人的感情より圧倒的にラテのお願いだ。

だって、めったにこういうお願いしてくれないからな。貴重な機会を逃すものか。

…そしてやったことは、再度の室伏の石化だった。だろうとは思ったけど。

今回は足に留まらず、背中まで…縛られた手まで範囲に入っている。さっきこうしたかったんだろうという石化をやり遂げた。

思うように出来たことが嬉しかったのか、ラテは前足を振り上げてガッツポーズみたいなのをキメていた。

多分この時、全員の心はひとつになった。

かわいい。



「満足した?ラテ」

『はいですの!』

「はー、可愛い。知ってた」



やらかしたことはまさに毒蜘蛛と言えるべきことだが、可愛いのでそんな常識はどこかへ飛んでいった。

ナズがラテをめっちゃ褒めてる。ラテもご機嫌でいいことだな。



「石化したら、ちょっと重くならない…?」

「暴れるよりマシだ。何の問題もねえ」

「…あんたも大概ラテに甘いわね。わかるけど」

「実際、固定されてるから運びやすいのではないか?このまま抱えていけばいいのだよ」

「前回のデブに比べりゃ、持てそうだからこっちのがマシだ」

「…そういえばいたわね、そんな奴!」



ひとまず、運ぶことについて問題はないらしい。

運び役のシルバーが納得してるなら大丈夫だろう。

…ということで、回収作戦については一応ほぼ完了というわけで。



「…『光』スキルは警戒してたけど、まさかこっちとは…」

「マジでそれ」

『やっぱり召喚者、油断ならないです』

「次回、大丈夫ですかね…?」

「人数も少ないし、暫定とはいえ味方寄りがいるし、大丈夫だと思いたいけど…楽観視はしない方がいいかなあ…?」

「次は、ラージフールにいる奴らだったわね。ネロ様が既に分裂体を仕込んでるから、ナズやサカシタって子の助力はいらないけど…」

「念のため、万全の準備で挑んだ方がいい気がしますぅ」

「万全と言っても、今回も万全の準備で挑んだのだよ。戦力の追加は無理だし、これ以上やれることは…」



うーん、シルバーを滞在させるって方法も微妙だしなぁ。

道を繋げっぱなしだからMPはあまり消費出来ないって制限はあるけど、大した枷でもないし。

戦力…ビスムズに知り合いはいないし、誰かと知り合える可能性はあるけど、そんな不透明なものに頼るべきじゃない。

今、僕たちの元にある戦力なんて…てか、戦力自体はありすぎるほどあるんだよ。従魔組っていう。

でもなぁ…召喚者が何をするか、どういう隠れ能力があるかって考えると…わからないんだよな。

室伏に状態異常が効きにくいなんて、今初めて知ったわけだし。

こういうイレギュラーが、ラージフールにいる三人に無いとは言い切れない。

あったとして、戸沢さんは問題ないかもしれないけど。



「取れる手段と言うなら、シルバーさんの滞在、そしてアイさん達の合流くらいですかね?」

「…え?アイちゃん達?…あ、そうか、合流の魔道具でマナ登録してるから!」

「ええ、ビスムズも近いです。彼女たちと合流し、ビスムズを一時的な拠点として考えれば、他の組とも合流出来るかもしれません」

「そうか、そうなると単純に戦力強化になるな。召喚者とオリジンが一気に増えるんだから」



既にアイさんたちの登録は終えてる。

今からでも合流することは理論上可能だ。

ビスムズの宿とかに滞在してもらうか、タークくんの作業室に寝泊まりするなら宿泊の問題も無くなる。

まあ、オーレンからこんな短時間でどうやってビスムズに?って疑問はあるだろうけど、そこはどうにか誤魔化すとして。聞かれない可能性もあるし。

アイさんたちの合流後、他の組に合流の魔道具を渡してマナの登録をしてもらえば、もう一組くらいならこっちと合流出来るかも。

冷遇組や、同行してるオリジンなら確実に味方だし、協力してくれるはずだ。

…なるほど、まったくの手詰まりというわけじゃないか…



「次回滞在については文句ねえが…正直、俺、やれることあるか?」

「今回の回収作戦であたしずっと棒立ちやったんやで…クソの役にも立ってへんのやで…?」

「お前は事前準備の中心人物だっただろうが」

「そうよ、あんた達何かしら活躍してるわよ」

「今回、ラテちゃんやサンだって活躍しましたしね。ほぼフル出動だったのでは?」

「何もしてないのは私たち姉妹だけですぅ」

「…本当よね」



とはいえ、身体検査やら何やらで手伝ってくれてるから助かってるぞ…

冒険者活動する上でこういうまずいものを持ってないか確認する作業とか、そういうのに慣れてるのかもしれない。

森上さんが持ってた転移玉を見つけてくれたのはこの姉妹だし。貴重品はどこにしまっておくかとか、そういうのを即断していた。

地味ではあるかもしれないが、大いに助かっているのである。



「ともかく、今回はこれで終いだ。四人は連れ帰る」

「うん、よろしく。向こう着いたら即飛び掛かってきそうなのがいるけど…」

「問題ねえ。どうとでもなる。京とアルがいるからな」

「前回のこともあるし、多分大丈夫かな?前回も暴れたんだっけ?」

「ああ、喚く程度だけどな。京が笑顔で猿轡かませてた」

「わお…」



じゃあ心配いらんか…?

ということで、シルバーは戻ることになった。

ハルが手紙を渡し、シルバーからも何かが渡されていた。手紙と…冊子?



「今のお前らに近い状況のラノベらしい」

「…何故そんなものを」

「リオがラノベ未履修だからって、京が謎の気遣いを…」

「マジで謎の気遣い。まあ京さんが貸してくれたなら読むけども」

「あー、概要は話したけど実際読んだことなかったもんなあ、リオ兄」

「あと料理本と手芸の本渡された。アキとナズにって」

「マジで!?」

「やったー!嬉しい!ありがとやで!」

「ハルには思いつかなかったからって、栽培の…」

「ありがとうございます!!!」

「食い気味」

「え、これ全部京さんから?」

「ああ、リオだけに渡したら贔屓みたいだからってことで、何かスキルの助けになるようなもんを…っつって用意してた」

「京さん、めちゃくちゃいい人じゃん…!」

「だろ?」

「というか家族のようなリオ兄さんを贔屓にするのは何もおかしくないのでは…」

「ユズルたちがお前らのこと心配してるの、目で見てるからな…」

「ああー…」



少しでも助けに、ということでこういう冊子を送ることにしたのか。

ぶっちゃけ、今まで何とかなってると言えばそうなんだけど、ある意味専門書に近いものだ。

自己流で作っていたものを修正したり、載ってる内容を応用したりできるかもしれないと、そう思って皆喜んでいた。

ベルさんたちも興味があるようだったけど、まず文字が読めないということで諦めていた。

それでも栽培関係は図も多いので、森族姉妹はどうにかして読みたいらしい。



「俺からはこんなとこだな。じゃあ、こいつら連れて帰る。ありがとな」

「こっちこそありがとう!じゃ、また譲くん宛てに『伝達』で伝えるので!」

「いったん明後日に伝達しようと思ってるけど、どうです?」

「わかった。それでいい。それまでにこっちもユズルに話しとく」

「お願いしますね」

「京さんたちによろしく」

「次は滞在を希望するのだよーなあネロ様?」

『えっ…う、うん…』

「ネロ様を巻き込んじゃ駄目ですよぉ」

「男一人は微妙につらいのだよ。一応アキとリオがいるけども」

「俺、れっきとした女」

「僕も女だが???」

「…性別だけを理由に滞在を望まれたのは初めての経験だな」

「そりゃそうだろうよ」

「アイさんたちと合流したとしたら、タークさんとルートさんっていう男の子が加わりますから」

「それはそれでめちゃくちゃ楽しみだけども!」



まあ、場合によっちゃ滞在する方向になるかもしれないからな。

まだわからないけど。

あまり長く『道』をつなげていられないということで、シルバーはここで帰ることになった。

最後にネロの頭を撫で、意識を失ってる四人を担いで、光とともに消えた。

ネロはいつの間にか魔晶石の中に避難していたらしい。多分担いでる間にかな?やっぱり光は苦手なんだろう。



「はー…終わったなぁ…」

「アキ兄もお疲れ様やで。室伏の相手して疲れたやろ」

「力入れすぎたらまずいと思って、その塩梅が難しかったなー」

「あいつHPの残り8だったからな。アキ兄さんに投げられて4になってた」

「やべっ」

「セーフです余裕でセーフ。衰弱がきっちり効いてたらどの道そのくらいの数値でした」

「何であれ、これで残るは三人か。これが片付けば、あとはみんな自由なのだよ」

「ラージフールが馬鹿やんなきゃね。こいつらさえいなきゃ、召喚者も憂いなくこの世界を見回れるのにね」

「この世界を気に入って、留まってくれる人がいるかもしれませんしねぇ」

「そこはそれぞれに任せるしかないのだよ。というか、悪の召喚者を帰すことに協力してくれてるだけでありがたいし」

『クラーフで生きるものにとっては確かにそうです』

「そうね。まあ、今日はこれで終わりよ!みんなお疲れ様!」

「今日はゆっくり休みましょ~!もらった本も読みたいでしょうしねぇ」

「せやった!よっしゃラテ、読もう!あたし音読するから!」

『ほんとですの!?やったー!』



カーくんを出して、全員で乗り込んだ。

うん、今日はゆっくり休もう。休んだらとりあえずビスムズに向かうか。

明日か明後日には着くはずだ。


才能者の定義は、力の大きさと、自分の力をある程度コントロールして行使できること

他人にも行使出来るのは結構な力の持ち主だけ

室伏は状態異常を軽減できる体質なだけで、その力を自分の意思で強めたり弱めたりはできない

最後石化が解けたのも自然解除なだけで、室伏がコントロールしたとかではない

なので、半才能者ですらないただのちょっと丈夫な体質というだけの人間

異世界に来た影響でちょっと強まったけど、本来は探せばそこそこいる感じの人

芝(半才能者)は力のコントロールは多少出来るものの、力が弱すぎるので才能者ではない

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