180.捕縛作戦実行
状態異常、衰弱。
これはラージフールの連中が召喚者に施した状態異常である。
HPとMPが徐々に減るというもの。尽きることはないが、多くても3~5ほどしか残らない。
HPは半減しただけでも疲労感が結構あるので、ほぼ尽きてる状態の疲労感は推して知るべし。
実際、この状態異常をくらっていたタークくんやルートくんは立てないほどだったし、回復まで数日かかっていた。
恐らくこの状態異常はまだヒャッハー組に残っている、が、普段は表に出ないようになっている。
そのため、この残っているはずの状態異常をアテにするのは無し。
…が、新たに施す状態異常であるなら話は別。
「…そんな思いで、こんなん作ったのかタークくん…」
「衰弱毒ポーションて…何作っとんねん、こわ…」
「身をもって効果を知ってただけに、使えると思ってしまったんでしょうか」
「普通、トラウマにならないか?利用しようとする?俺は無理だぞ。タークくん、メンタルダイヤモンドか?」
「…召喚者って…」
「待ってシャルさん誤解やで!召喚者全員が恐ろしいみたいに思わんとって!?」
「そう言いながらその状態異常をロープに付与してる人の言葉はちょーっと信じられないですねぇ」
「…悪魔か?」
「魔族に言われたー!」
おかしいな…?
いや、元々ヒャッハー組は縛り上げて無力化するという話はあった。
あったけど…その縛り上げるロープにこんな恐ろしい仕掛けをするなんて話はなかったはず…
何でそうなった…?
あ、昨日うっかりタークくんが「新しい種類のポーション出来たー!」ってはしゃいだから?そしてそれが衰弱毒ポーションだったから?
作戦に使えるじゃんちょうどいい!なんて言い出して、『交換』で送ってきやがったよあいつ…
つまり、戦犯はタークくん。本名、鈴城巧くん。彼のせいである。
「よし、ネロ、このロープで奴らを縛り上げろ」
『わかったよ主さん!』
「躊躇なしやん!そこに憧れない痺れない!」
「鬼畜の所業か!いいぞもっとやれ!」
「応援しないでリオ兄さん!」
「いや、これなら暴れずに連れて行けそうだなって、そう思ってつい…」
「多分ぐったりしてるだろ。荷物が人間四つなら簡単だな」
「人間扱いなのか荷物扱いなのかわかりませんね」
なお、昨日にはネロの分裂体が向原に合流している。
ホムンクルスは闇属性に適正があるようだし、眷属の泥人形も闇と土の属性らしく、辿りやすかったようだ。
影のある所なら転移できる影の魔物、最強では???その分、候補が多すぎて辿りにくいそうだけど、そこはオリジンの眷属と召喚者の気配で何とかした、らしい。
そのため、今ヒャッハー組四人にネロの分裂体が張り付いてる。つまり、僕たちの目の前にいるネロから分裂体に『物を送れる』わけで。
…まあ、衰弱ロープを送ってもらって分裂体たちにヒャッハー組を縛り上げてもらいましたよね。
闇魔法には『睡眠』の派生能力もあるので、これをぶちかまして爆睡してるところを縛り上げたそうだ。
分裂体自身には戦闘力はほぼないので、こうして無力化させて…って言ってたけど、充分強いと思うのは僕だけかな…
『うん、全員寝たし今縛り上げてるけど…ちゃんと衰弱の状態異常が仕事してると思う』
「まあ付与されたロープに縛られてるなら、縛られてる間はその状態異常を常に食らってるようなものなのだよ」
「どうせHPも3くらいは残ります。大丈夫大丈夫」
「異常者でもここまで弱らせたら何も出来ないだろ!」
「異常者って向原さんのことですか。タークさん、向原さんが嫌すぎて全力出した疑惑ありますね」
「アイちゃんも思いっきりゴーサイン飛ばしたからなあ」
「次回もやるのかな、これ…?」
「さあ…」
衰弱の状態異常は、かかってすぐにHPやMPを削るものじゃない。ゆっくり確実に削っていくものだ。
なので、すぐにHPが一桁になるわけじゃない。
…だからといって、HPがギリギリになるまでの待ち時間にお茶するのもどうかと…フィナンシェ美味しい。
「一時間くらいしたら、こっち連れてきてくれるか、ネロ」
『わかった!』
「えーじゃあおやつの時間には間に合わないな」
「今おやつ食ってんだろ」
昼食後すぐに作戦開始したため、今は時間にして13時半といったところか。
ナズの弟くんからの伝言だけど、どうやら、クソジジ…ゴホン、上層部が15~16時頃の訪問を希望してるようで、そうなった。
こっちが時間に合わせて行動した形だ。
当然だけど、僕たちのこの案件以外にも色々仕事はあるのだ。その兼ね合いだろう。
もっとも僕たちの着手してるこの案件は規模のこともあって最優先事項にはなってるらしいけど。
本来、上層部への直接訪問は希望して一ヶ月後なんてこともある。それを考えれば指定されたとはいえ、即会えるのは彼らもこの事態を重く見てるからだろう。
行方不明になった人間を元の場所に戻して『歪み』を無くせるというのは、それだけ重要度が高いということか。
なお、回収人数が四人というのは喜ばれたらしい。一人でも助かるらしいので。
今回含めて三回の行き来で何とか出来るという報告も諸手を上げて喝采されたのだとか。
つまりシルバーが凄い。
彼らは、シルバー『だけ』が凄いと思ってる可能性もあるけど。
この認識のすり合わせは、シルバーに任せるしかない。
「しばしの別れだというのに、いつも通りすぎるのだよ…」
「二度と会えないわけでもねえのに」
「それはそうだが」
なお、掲示板でもそわそわしてる人が大量発生している。
もしもの事態に備えて、全員安全地帯で見守ってるようだ。そこまで…?
アイさん達の班なんて、何かあったら呼んでくれとまで言っていた。向原がいるかもしれないのに。
なお、森族姉妹からもらった合流の魔道具で、まずアイさん達のマナを登録している。『交換』で簡単に受け渡し出来たからな。
そのため、彼女たちであれば、従魔も含めてすぐ僕たちに合流することは理論上可能だ。
ドラゴンはテイムされてないから無理…?
ドラゴンは、ほら…いざとなればネロが回収してくれるって言ったから…すごい渋ってたけど。ネロもドラゴン苦手勢だったようだ。
ただ、やるなら僕たちがビスムズに到着してからの方がいいんじゃないかということで今は保留している。
森の中なんていう道中で合流してもアレなので…カーくんにも部屋の余裕はないし。まあ、いざとなれば新しく部屋作るけど。
そんな効率悪いことするくらいなら、町にすぐ入れる場所で合流する方がいいとの判断だ。
森の中でアイさんたちを放置するという案はない。彼女たちだけで進めはするだろうけど、そんなことするくらいなら無理してでもカーくんに乗せる。
そんなことを考えてたら、いつの間にか時間が経っていた。
『そろそろ転移させるね』
「頼む」
一気に全員じゃなくて、一人ずつ転移させていた。
ぐんにゃりした向原がいきなり現れて全員でビビり散らした。
「うわボッロ!!!」
「鉱山奴隷の支給服でしょうかね」
「髪ボッサボサやん!」
「まあ風呂とか入れないだろうしな」
「ガリ具合、リオとタメ張るんじゃねえか?」
「張りたくないなー!」
「あんた細すぎなのよ!」
とりあえず、この状態で向こうの世界に連れて行くのもどうかということで、『洗浄』することにした。
虐待してたと思われかねない!シルバーがこんな汚れたの触りたくないという理由で、自主的に洗浄していた。
経験値稼ぎにもなるしな…
「てか、他の三人もきったない可能性あるよな?」
「拠点さえないまま旅をしてたならありえますね。むしろ生きてるのが凄いです」
「向原の証言から、ダンジョン前から脱出する時、転移玉持ってる奴は携帯食とか入った荷物も一緒に持ち出してたっぽいもんな」
これは、向原がホムンクルスの支配下にある時に聞き出した情報のひとつだ。
『ラージフールから逃げ出したところで、食料も何もないなら数日で餓死するんじゃないか』そう思って聞き出したら判明した事実だ。
そういえば芝と眞壁も携帯食や水は持っていたし、二人で分け合ってたり現地調達分があったとしても、まだ残っていた。
攻撃系スキルを持っているヒャッハー組なら、魔物や動物を倒して肉を喰らうことくらい出来たかもしれない。
火の調達さえ出来れば、餓死するか動物を食うか、すぐ答えは出るだろう。
「ああ、元々ダンジョンに入る予定だったもんね。それ用の荷物は近くにあったみたいだし、元々身に着けてたかもしれない。運が良かったんやな」
「それでも限りはあるでしょ。ハルの言う通り、よく生きてたわね」
「約一週間後、残りのヒャッハー組も生きてっかな…死んでる可能性ねえか?」
「怖いこと言うな」
「大丈夫ですよ、きっと。ゴキブリはしぶといものですから」
「ゴキブリ扱い」
「何ですかぁ?ごきぶりって」
「台所とかによく現れる恐らく世界で一番嫌われてる害虫」
「不潔の温床」
「奴らが発生したら汚物と生活してると思え」
「聞いただけで嫌!!!」
「もしかして、黒い悪魔とかいう害虫か…?名前を言いたくない害虫とよく召喚者が零してたらしいのだよ」
「十中八九それですね」
魔族領にいらん情報が伝わってた。何してんの歴代召喚者。誰だ教えたの。
…今まさに話題にした僕たちが言うなって話だけど。
「とりあえず…睡眠と衰弱の状態異常はあるな。隷属もあるけど。HPとMPが3だ。予定通りだな」
「どうします?解除しておきます?」
「向こうに戻ったら自動的に解除されるんだろ。必要なくね?ハル、その優しさはいらないと思うぞ」
「いえ、私の経験値になってくれますから」
「あっめっちゃ打算的な理由だった!優しさじゃなかった。でも俺そういうハルも大好きだよ」
「そういやハル、浄化魔法持ってるもんな。いつもは状態異常耐性の経験値稼ぎの時に稼いでるけど…今、やれるな」
「回復魔法は、こいつらが復活したら面倒だからやらねえで欲しいが、浄化魔法ならいいだろ。俺は賛成」
「面倒…返り討ちにする自信はあるってことだな。怖いなお前」
なら浄化魔法ぶつけてみるか、となったところでスーからストップが入った。
『睡眠の状態異常が解除される可能性があるのだ。主たちの姿、見られたら面倒だと思うのだ。わたしは寝たまま元の世界に運んだ方がいいと思うのだ』
「ごもっとも」
「そうでした…!浄化魔法は消す状態異常の種類を選べないんでした…!」
「え、じゃあ衰弱狙ったのに睡眠が解除されかねないってことか。目、覚ましたら面倒だな、確かに」
「ヤバイヤバイ、起きたらまずい!リオ兄だけならともかく、あたしらに火魔法とかブッパしてきたらえらいこっちゃ!このままに一票!」
『ラムも気絶したままに一票です。それはそれとして、火魔法ならスーが吸収出来るので大丈夫です』
『こいつの火、カッスカスで嫌なのだ!』
「経験談か。そうだな、吸収してたもんな、スー」
「…じゃ、気絶したまま運ぶか」
「そうですね」
「あっちの世界に行ったらマナによるものは全部無効化されるのだったか。なら問題ないのだよ」
ちなみに、浄化魔法は高レベルだと消す状態異常を選ぶこともできるらしい。あと、一度で複数を消すことも出来る。
ただ、ハルはまだそれが出来るレベルじゃないということだった。ランダムにひとつの状態異常を消す。今はこれしか出来ないらしい。
今までは『状態状態性』のレベリングで、ラテが放つ毒魔法の「毒ひとつだけ」の解除しかしてなかったもんな…一種類しかないから、選ぶも何もない。
浄化魔法、奥が深い…
ひとまず、『洗浄』だけして、そのまま連れ帰るという意見で一致した。
ネロが次々と分裂体を通じて転移させてくる。
男二人と女二人、合計四人。どいつもボロボロではあるが、生きていた。
「ご飯、食べれてないのかな…やつれて見える」
「アキ兄、間違っても食べさせようとか思わんでね…?」
「気絶してる奴の口に食料放り込んだら窒息すると思うぞ」
「息の根止めてえならいいんじゃねえか?」
「よくねえよ。怖いこと言うなシルバー」
「アキ兄さん、どうしても気になるなら、これを進呈しましょう?」
「…って、それ冒険者御用達の携帯食じゃないの!クソマズイやつ!」
「でもお腹は膨れますよ?身をもって体験しました」
「何もあげないか携帯食かの二択ですかぁ…どっちが優しいんでしょうねぇ?」
「ああ、アキたちを見てると、あっちの世界はかなりの美味に溢れているのは確実なのだよ。…それなのに携帯食となれば…」
と言っても、起こさないと食べさせられないわけで。
アキ兄さんもさすがに諦めていた。
つか、拝島いるじゃん!実地訓練の時、アキ兄さんの料理(味付けは別人)に文句つけた奴の一人!つまりアキ兄さんの料理を食わせる価値なし!
「向こうに連れ帰って、目が覚めたら最低限は食わせとく」
「本当?シルバーさん!」
「日本人好みのモンかは知らねえがな」
「…あ、外国に連れてかれる感じ?まあ、そこは任せるけど…」
「どこ連れてかれるかは俺にもわかんねえけど、サルミアッキでも差し入れしとく」
「飴じゃんソレ!」
「え、飴なの?あたし知らんな。どういうやつ?」
「聞いたことあります。確か、世界一まずい飴ですね」
「慈悲でも何でもなかった!」
「腹に溜まらないやつ!」
ちなみに僕は食って泣いた。
即座に嚙み砕いてジュースで流し込んだ、文字通り苦い記憶だ。思い出したくない。
好きな人は好きらしいけど、僕は駄目だった。
シルバーは平然と食ってたので、自分が食べられないものを差し入れるわけじゃない。…が、嫌がらせだろ完全に。
こんなん食えるか、お前が食ってみろとか言われても普通に食うからなこいつ。
ええ、この捨て台詞吐いたのは僕です。
「…リオ、一応、こいつらの名前教えてくれるか」
「いいよ。向原萌、東紗子、拝島啓、沼崎勉だ」
転がってるのを一人一人指さして伝えた。
幸い全員クラスメイトだったので、すんなり名前が出てきた。…顔見るまで忘れてたけど。
ついでに何のスキルだったかはもう忘却の彼方だ。
「このモジャってんのがムカイバラモエ、箒みてえなのがアズマサエコ…」
「どういう覚え方だよ。いや、わかるけど」
「確かに東さん、竹箒みたいな髪型に…」
「ブッフェ!!!」
「アキ兄さん、笑わせないでください」
「俺じゃなくてシルバーさんが言い出したんじゃんー!」
「モジャって何よ…?」
「天パが伸びて手入れも出来てないだろうから、もうほぼアフロ…」
「やめてリオ兄!」
「偏見ですけど、大阪のおばちゃんとかにいそう」
「は?こんなんが生息してんのか?オオサカ、魔境か?」
「やめたって!少なくともあたし見たことないからな!まあ大阪は通り過ぎたことしかないけど!」
女子中学生の形容としていかがなものか。
いや、でも髪型だけなら…潜んでた森が湿気高かったのかな?結構爆発している。何がとは言わないが。
「えーと、んでデブがハイジマケイ、ガイコツがヌマサキツトム、か」
「マジでひどい覚え方」
「拝島くん、痩せたなあ…」
「これで?かなり太ってるわよ?」
「元はリオ兄ふたり分くらいの横幅やったんよ」
「僕を単位にしないで…」
「オークの血でも混ざってそうですねぇ。下位オークって太いですしぃ」
「オーク換算もやめて!アキ兄の目が光って…ない!?」
「いやさすがにクラスメイトをそんな目で見ないよ!」
「人肉は食えねえカテゴリなんだな。よかった」
「どういう安心のされ方!?…あー、沼崎くんは更に干からびて…いや、マジで骸骨っぽい」
「骸骨ってことは、ホラー苦手勢の桜庭くんが見たら発狂するかな。あとで掲示板に画像投稿しとく?」
「やめてあげてください」
『洗浄』だけはかけたので、汚れ自体はなくなった。
それでもボロボロに見えるのは、服のほつれとかやつれ具合の印象でだろう。
名前については、ハルが横で紙に書いてシルバーに渡していたので忘れても問題ないはずだ。誰がどの名前かは今の説明(?)で覚えただろうし。
あ、漢字とひらがなとローマ字で書いてる。気遣いに溢れてて素敵。
シルバーも嬉しかったようで、ハルの頭を超撫でていた。やっぱり子供扱い。
「でも起きる気配なさそうだな。変装解かなくてよかったか?」
「万が一もあるし、いいんじゃないの?」
『召喚者は魔法への抵抗力高い場合あるですしね。備えはあった方がいいです』
「じゃあ次回も『こう』しましょうか」
見られる可能性を考慮して、全員カツラ帽子も脱いで、普通の飾り気のないシャツとズボン状態だ。
冒険者らしさは感じないだろう。シルバーは既にこっちに来た時の服を着てるし、どう見ても日本にいる通行人…
こんなハイパー美人の外国人がホイホイ歩いててたまるかって感じだけど、実際普通にあっちを歩いてるんだから問題ない。
「じゃあ、帰る」
「ああ、よろしくな」
「ゆずたちにもよろしくです」
「決めたスケジュール通りに連絡しますね」
「さよなら、シルバーさん。あっちでもちゃんとご飯食べてな」
「絶対また来るのだよ!」
「気を付けるのよ!」
「召喚者のみんなは私たちで守りますね~ご安心を~」
軽い挨拶をして、最後にネロを撫でて、ヒャッハー組四人をマジで小脇に抱える形で運び…
光に包まれたと思ったら、そこには誰も残っていなかった。
ネロ、速攻魔水晶に避難してた…光、苦手だもんな。それでも直前までシルバーの傍にいたがったけど。
てか片手に二人抱えたのすごいな。女の子だったから華奢だったんだろうけど、腕長すぎだろ。足だけじゃないのか、長いの。
ちなみに男の方は、沼崎を抱えて、拝島は襟首掴んで引きずっていた。抱えられなかったんだな…体積の問題で。首元の布ビリって聞こえたけど大丈夫か。
ひとまず、これで今日の予定は終わった。ミッションコンプリートだ。
思った以上に簡単に済んだ気もするけど、一人一人がやってることが規格外すぎて色々麻痺してる気もする。
でも、この手なら問題なくヒャッハー組を連行出来るとわかったのは良かった。
坂下さん…以外もだけど、面倒かけることになるけど引き続きお願いしたいな、これ。
「うまくいったな!よっしゃ、あたし次の布作らんとな!」
『お手伝いするですのー!』
「可愛い!知ってた!ありがとうラテ!」
『そういえば回収した布、どうしようね?…何か、マナがごっそり抜けちゃってるんだけど』
『そうなんです?ああ…『刺繍』に『付与魔法』に分裂体が潜んだ上に『配達』で長距離飛ばされて、って色々負担になったですかね。再利用は…無理ですね』
「いいよ、最初から新しいの作るつもりだったし!でもコレ用無しになっちゃったかぁ…半端な大きさだからハンカチにも使えないし、ラム、食べる?」
『食べるです!!!』
『めっちゃ嬉しそうなのだ』
ネロが回収してくれたナズ作の布は、マナが抜けて普通の布になってしまってるらしい。
ナズの召喚によるものだから、本来はナズのマナの塊だ。だからこそナズの諸々の派生能力が有効になるわけだけど…
自動修復もないし、『加工』なんかも受け付けなくなってしまうらしい。マジでただの布になるんだ…
うわあ、もしかしてとは思ってたけど、相当なことしてたんだなあ。…逆に言えば、ナズのマナが乗ってる布以外で同じことは出来ないってことだけど。
ナズの負担軽減のために市販の布で同じことをやるのは無理か。やるつもりもなかったけど、わかったのは大きいかもしれない。
「ラムに食わせちゃっていいのか?綺麗な布には変わりないのに」
「ハンカチなんかに使うには微妙なサイズではありますけど…使えるといえば使えるのでは?」
「えー?でも飾る以外に使えないってなったらゴミじゃん。布巾か雑巾にでもする?」
「…そんなんに使うくらいなら、ラムの糧になってもらう方がよくない?」
「それもそっか。もったいないって思っちゃったからなあ、俺。貧乏性かな?」
「布巾はナズ姉が召喚で出せますし、雑巾は今のところ出番ないですね…そうですね、ラムに食べてもらいましょうか」
『やったです。嬉しいです』
ダストシュートに入れてしまってもいいけど、ラムが食べたそうなのでいっか。
みんなでカーくんに乗り込んで、ラムはさっそく消化していた。マナはなくなってるようだけど、ラム的には美味しいものだったらしい。
元々召喚で出された布だし、その辺りが美味しい要因なのかな?
「私たち結局見てるだけだったわね」
「それでいいんですよぉ。不測の事態なんていらねえですぅ」
「それもそうね!」
「シルバーが帰る時の光もあるし、やっぱり森の中とか人目のない所でやるべきだな。次も森の中でやるのだよ」
「人目に晒されないって意味ならカーくんの中が一番だけど…」
「嫌ですよ、カーくんの中にあいつらを招くなんて」
「リオ兄のスキルやけどあたしらの家みたいなもんやで!門前払い!」
「リオくんが入れたいって言うなら俺ら反対出来ないけど…俺もやだなあ」
「…正直、入れたくないかな。でも、一応『人目に晒されない場所』にはなるかなって思って…温室とかなら広いし」
「奴らが暴れてあの素敵空間を荒らされたらと考えるとぉ、私、何するかわからないんですけどぉ…」
「お姉ちゃんが本気で怒ったら怖いからその案は永久廃案にして!てか、ここまでカーくんの中でやるって方に賛成票ないから諦めて!」
「わ、わかった、変なこと言ってごめん!」
「リオのスキルなのにな。皆に好かれすぎなのだよ、カーくん…」
嬉しい限りだけども。
最初の召喚物ってだけあって、思い入れもあるし、ずっと世話になってるからなあ…
じゃあ次も森の中とかかな。ビスムズに着く前にもう一回捕縛したいから、ビスムズから一日くらい離れた場所とかがいいだろうか。
それが終わってからビスムズに入って、あと一回、ラージフールにいる奴らを回収して終了。
ちょっと終わりが見えてきたかもしれない。
ちなみに、ベル・リーゼ・シャルはリオとシルバーが未来人ということは知らない
リオが24歳ということも知らない
ネロは知ってる




