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178.回収作戦、準備開始


「何広げてるんだ?」

「あ、リオ兄。これね、ゆず達からの手紙」

「ああ、シルバーが持ってきたやつか」

「俺の権能こそ『配達』じゃねえかって一瞬思ったな」

「ほんとだな。郵便局員に転職するか?」

「しねえ」



皆して居住区のテーブルに集まって何かを見てるから、何だと思った…

前にシルバーが芝たちを連れて帰った時、ついでにナズの弟くんやハルの弟妹への手紙を預けた。紙一枚のものだけど。

その返事みたいなものが、今回シルバーがこっちへ来る時に預かって持ってきたらしい。

伝達で時々話してるので大した内容は書かれていない。けれど、手で書かれた文字は、ナズやハルにとって嬉しいものだったようで涙ぐんでいた。

なお、こっそり教えてもらったけど、弟くんたちも渡した時に同じ反応だったようだ。

覚えのある文字、というものに感じるものがあったらしい。

僕?僕は京さんからの手紙見て号泣しましたけど?涙ぐむどころじゃない。即アキ兄さんにタオルを顔に押し付けられた。

おかげで眼鏡が顔にめり込んでめっちゃ痛かったです。

…悪いのは僕なので、責める気は一切ないけど。

あとはアルさんからの能力石も一緒に貰った。まだ効果が切れてないので保険のようなものだけど、ありがたい。



「これが、異世界の文字…さっぱりですねぇ」

「ていうか、子供が文字書けるって凄いわよね。貴族でもないんでしょ?」

「あっちの世界はほぼ全員が教育を受けてるそうなのだよ」



クラーフ組は、内容じゃなくて10歳程度の子供が字を書いてる、という部分に驚いてるようだ。

あとは。



「あっちの世界には変な魔物がいるのね」

「魔物ちゃうねん…」

「ゆずくん、画伯かぁ…」

「何だこれ。ししゃも?」

「ゲームの…ブリキュートやな。ヘッタクソやけど」

「干からびて死にそうだぞ」

「焼き魚になってないかこれ」

「うちの弟の絵がヘタクソでごめんな!」

「うちの妹の化け猫がマシに見えてきますね」

「ハルのとこは弟くんの方が可愛い絵を描くんだな…」

「ちょっと画力の才能、母のお腹の中で入れ替わって生まれた疑惑がありますね」



端的に言って、デフォルメされた猫(弟画)と瞳孔かっぴらいて威嚇してる劇画風の猫(妹画)の絵だった。

ネロがネコマタの姿になってることとカーくんが受肉すると白猫になることから、猫の絵でも描くかと思ったらしい。

文だけだとそっけないと思ったのかもしれない。いっそ文だけの方がよかったような気がしなくもない。笑いそうになったじゃないか。



「ま、まあ、返事は次シルバーが帰る時までに書けばいいからさ」

「そうですね…こっちも何か絵を描いた方が…?サンでも描きますか」

『我か!?』

「いいな、あたしラテ描こうかな?それとも魚で返した方がいいかな?本物のブリキュートはこれ!って感じで」

「もう両方描けばいいんじゃないか?ラテが鰤食ってるとこ描いたら?」

「グロ画像やん!!!」



怒られた。まあ自分でもどうかとは思ったけど。

僕は…普通に文だけで返事書きます。絵心ないので。

ちなみに隠すようなものでもなかったので、京さんからの手紙は皆に見せたけど「達筆すぎて読めない」という感想でした。切ないね。

まあ、取り繕って書いてるけど、要は「異世界転移なんて新刊のネタの宝庫では?感想よろしく!」という内容だった。

帰還できるのがほぼ確定してるようなものなので、心配よりも滅多に出来ない体験という方向に興味が移ったらしい。

そういう京さんが大好きだよ…転んでもただでは起きない。

…あからさまに「心配してます」って文面だと暗くなるから、わざとこういう内容にした可能性もあるけど。

シルバー曰く、真剣に書いてたらしい。どういう意味でだろう…


ゼイレムを発って今日で三日目、びっくりするくらい順調に進めている。

一日目みたいに迷いの森になりかけてる場所に遭遇なんて、滅多にないそうだ。

現に今、腹ごなしも兼ねて採取するためにカーくんから出て森にいるわけだけど、普通の状態らしい。



「三日後くらいに道が安定して帰れそうだな」

「はっきりわかったか。じゃあ念のため四日後に帰る?一日くらい様子見しといた方がいいだろ」

「そうだな」

「マジか。じゃあそろそろ坂下さんに『配達』お願いしないとか」

「あとホムンクルスにも向原を脱走させてもらわないと」

「ネロくん、分裂体の準備は大丈夫ですか?」

『いつでもいいよ』



地球へ戻れる日が確定したので、ヒャッハー組を回収する準備に入ることにした。

まず坂下さんが『配達』でネロ入り布をヒャッハー組に送り付ける。これを一日一回ペースでやる。MPの関係で一日一回が限度なためだ。

数日張り付くくらいなら問題ないそうなので、張り付けたらネロ分裂体はそのまま待機となる。そうだな、既にラージフールとかでやってるもんな。実績あった。

送り届けられた布自体は捨てられてしまうかもしれないが、中に仕込まれたネロがヒャッハー組に張り付ければそれでいい。

布はスキルを利用して作られたものなので、ネロがどうにか回収するとは言ってくれたけど。

そしてシルバーが帰る日に、一気にヒャッハー組を回収する。

回収後、即地球に帰還するとのことだ。ザックリ、これが今回の作戦である。作戦ってほどでもない。



「ナズ、悪いが俺が帰る日の前日にでも『伝達』でユズルに伝えといてくれねえか」

「オッケー!ゆずに京さんたちに伝えてって言えばいいですね!」

「ああ、それで頼む。向こうにゃそれで伝わるはずだ」



元よりこれが目的でシルバーはこっちに来てるので、タイミングさえわかれば受け取りの準備に移ってくれるそうだ。

受け取りの手続きだかそういう細々したものは京さん達が担当してるんだろう。

シルバーから受け取り次第、どっかの施設にぶち込まれる予感がするな…



「う、うおお、ドキドキしてきたのだよ。僕まったく関係ないけど」

「わかるわ。召喚者関係のことを目の前で見れるなんて思わなかったもの。いや、目の前に召喚者がいるんだけど」

「ネロ様、どうやってヒャッハー組を連れてくるんですかぁ?無理やりだと暴れません?闇魔法で無力化でしょうかぁ?」

『えっと、そうだね。眠らせた後に空間魔法で運ぼうかなって思ってたよ』

『起きたら暴れないです?極限まで体力吸収するとか、自力で動けない状態にする方が安全だと思うです』

『何か怖いこと言い出したのだ』

『…昏睡させればそうそう起きないと思うけど…』

『ああ、睡眠じゃなくて昏睡の状態異常です?それなら安全です』

「オリジンが怖いこと言ってるぞ!」

「でも、地球に戻った途端に状態異常が解除される危険性があるって考えると、体力消耗させて動けない状態にする方がいい気がするな」

「腕の二、三本折っとくか?」

「腕は二本しかないだろ三本目どこだよ」

「リオ兄さん、そこじゃないです」

「もうちょっと穏やかな方法とれないわけ!?全身縛り上げるとか!」

「それも充分物騒です~」

「ミノムシが一番いい案な気がするな」

「アキ、ミノムシって何だ!?どの案のことを言ってるかわからないのだよ!」

「全身ぐるぐる巻きの案やな」



一番確実でもあるかぁ…物理的に動けなければ何も出来ないし。

それに、シルバーはもちろん、受け取り側にいるアルさんなんかも腕は立つので、動きを多少制限しておくだけで充分だろう。

むしろ万全な状態だったとしても、子供四人くらいならアルさん一人でぶちのめせると思う。

あっちの世界に戻ったら、こっちで覚えたスキルなんかも消えるしな…

それに、京さんも結構強いらしいし。ちゃんと見たことないけど。むしろ激しい動きすると腰痛めます!とか常日頃言ってるひとだけど。

なので、丈夫なロープか注連縄か鎖とかで縛れば何とかなるんじゃないだろうか。



「半分冗談だったし、むしろこれも物騒な案だと思ってたんだけど」

「え、一番穏やかな案だと思ったのに…」

「あなたたちの生きる異世界ってどれだけ危険な世界なんですかぁ?」

「ここの方がよっぽど危険だろ」

「危険じゃない世界に生きてて何で僕たちより思考が物騒なのだよ!?」

「そ、そこまで、じゃないと思います、けど…」



でも否定も出来ない。

い、いやあ、容赦しない方がいいかなって思って…?



「まあ、縛り上げる案で行くか。丈夫なロープでもありゃ充分だろ」

「おっそれなら任せろ。召喚にあるぞ」

「どうせならセクシーポーズ状態で縛り上げるとかやれば?恥の上塗りやで」

「甘いですナズ姉。それなら亀甲縛りとかにすべきです。どこからどう見ても立派な恥ですよ。トラウマこさえてやりましょう」

「妹たちの発想が怖い。いいぞもっとやれ」

「鬼畜な案出るじゃん…シルバー、やり方わかるか?僕はわからない」

「そもそもキッコウシバリが何なのかがわからねえ」

「そういえばお前、蝶結びすら怪しかったな。結び目が固すぎたせいでエプロン脱げなくなって切り裂いて脱いだとか聞いたことあるわ」

「弟からの頼まれごとに舞い上がって全力出した自覚はある。エプロンは二着犠牲になったがな」

「自分と弟の分ですねわかります。一緒に料理は楽しかったか?」

「楽しかった。黒い塊が出来た」

「…そう…」

「兄弟で何してるんですか。ガチの飯テロやめてください」

「てか、日本の業が深いだけかな緊縛は???」

「………やめとこかぁ。あたしもやり方は知らんかった」

「私、てっきりリオ兄さんなら出来るかと。ロープに聞くとかで」

「そういう補正はないと思うなこのスキル!」



あったとしてもやりたくないけどな!

大体、見たいか?そんなの。僕は見たくない。だって素体がヒャッハー組だろ?

そう言ったらしょっぱい顔をしてたので、ナズやハルも見たくないんだろう。当然アキ兄さんも。



「詳細わからんが、僕は召喚者は絶対に敵にすべきでないと今強く思ったのだよ」

「そうね。本能的な何かがそう囁いてるわね。ヒャッハー組については、召喚者と一緒にいる時にしか対峙したくないわ」

「召喚者なんてやっべー奴には召喚者をぶつけて相殺すべきですぅ」

「クラーフ組からの評価が辛辣!!!」



いや、地球はマジでここに比べれば普通の安全な世界だけど!?

おかしい、あっちの世界のヤバイ奴なんてヒャッハー組とシルバーくらいのはずだ。

なのに何故そんな評価に…



『召喚者がアレなのはともかく、用は済んだので戻るです』

「否定してくれないのラム!?」

『オリジンの間でも召喚者は何かおかしいって評価です。いい意味でも悪い意味でも』

「せ、せめていい意味であってほしいな…」

「多分ヒャッハー組は問答無用で『悪い意味のおかしい奴』でしょうけどね」

「せやろな」



住む世界が違うから常識も違う。

おかしいと形容されるのは、多分そういう意味だ。違う世界の人間だからだ。うん、納得。

ラムが言った用とは、またしてもマナの調整である。採取のためにカーくんから降りて行動してたら魔物の群れが出たので。

あっさり返り討ちにしたので、そこは問題なかった。が、量が量だったのでラムを中心として死骸処理とマナの調整をしてたのである。

僕はお呼びがかからないので雑談をしてたわけだけど、何だかんだみんなで雑談みたいになってた。

アキ兄さんやナズ、ハル、シルバーも調整に参加している。少しでも魔法スキルの経験値を稼ぎたいので。

最後、土属性や光属性を足す作業が終わったということだろう。シルバーがこっちに来たけど、ちょっと気まずげだ。どうした?



「どうした?レベル上がらなかったのか?今火魔法ってレベル6だっけ?」

「…ああ、6だな。7はまだのはず、だ」



この話じゃない?さっきの縛り上げるって話でもなさそうだし…

あ、何か気まずそうにネロをちらっと見てた。ネロは今ラムたちと話しててこっちは見てない。

…ネロに何かあった?ネロと何かあった?



「気のせいか、聞き間違いかもしれねえ、が、確認するのが、ちょっと…」

「は?」



確認と言ったところで、空間収納からゴーグルを出した。

ああ、邪魔だからしまいこんでたんだな。…確認で、ゴーグル?ってことは鑑定したい?

…何か変なスキルでも取得してしまったんだろうか。



「僕が見ようか?」

「…頼む」

「まあスキル経験値になるからいいけど」



名前:シルバー(ル*…)

年齢:*…

性別:男

LV:7(あと72)

職業:渡り人

HP:484/490

MP:2458/3500


スキル:杖術LV4(あと314) 体術LV5(あと229) 火魔法LV6(あと221) 水魔法LV3(あと57) 土魔法LV3(あと203) 風魔法LV3(あと149) 光魔法LV1(あと100) 闇魔法LV3(あと111) 空間魔法LV4(あと202) 付与魔法LV3(あと254) 従魔術LV2(あと171) 詠唱短縮LV3(あと123) 魔法耐性・大LV2(あと84) 状態異常耐性LV2(あと41) 空間収納LV3(あと129) 感知LV6(あと415) 強化LV5(あと281)

テイム:ダークLV159

権能:時間作用



相変わらず、レベル7のくせにやべーステータスだな、こいつ。

魔法が大量なせいでマジでスキル多いし………ん?



「…シルバーさん?」

「…あった、か?」

「おま…」

「ん?どうしたリオくんとシルバーさん?」

「アキ兄さん…聞いて…」

「お、おお?なに?どした?」

「シルバーの奴、『光魔法』覚えてやがる…!」

「えっ」

「ええ?マジで?」

「え、光魔法、覚えてませんでしたよね?ネロくんの苦手属性だからって…あ」

『…主さん、光魔法、覚えたの…?』

「あ………」



それでネロを見て気まずそうにしてたのかこいつ!

従魔の苦手属性覚えたからって。

いや、でも、それは別に仕方ないんじゃ。



『シルバーくん、魔法適正高いですからね。いつか覚えるとは思ってたです』

『すごいね。さっきみんなが光魔法使ってたから、それ見て『感知』スキルの効果で覚えたのかな?』

『迷いの森になりかけのを調整した時に覚えなかったから適正ないと思い込んでたのだ』

『回数じゃないかな?さっきみんな結構使ってたし』

「…あれ?ネロくん気にならん感じ?」

『主さんの武器が増えたならいいことでしょ?召喚者にはひとつでも多くのスキル取得して欲しいし。あ、照らされたらちょっと嫌だけど』

「やらねえやらねえ」

『なら気にしないよ』

「…そうなのか」

「…思えば、逆の属性って言ったら、ナズとラテもそうか?ラテは土属性だけど、ナズは風魔法持ってる。でもラテまったく気にしてないもんな」

『はいですの。気にならないですの!』

「可愛い。天使。知ってた」

「…そうなのか。気にし過ぎだったか」

『ぼくのこと心配してくれたの?…ありがとう』



ネロは種族的に光が苦手だから気にするかと思ったけど、そうでもないのか。

それか、召喚者にはスキルを覚えて欲しいって、そっちの意識が強いのか。

まあ何にせよ、ネロは気にしてないって言うなら助かる。

しかしマジで凄いなこいつ。全属性覚えたじゃん。ラム並の魔法使いになるのか?



「全属性魔法使えるってことは、ラムと一緒か」

「光魔法覚えたってことは、シルバーさんもそのうち回復や浄化の魔法覚えそうですね!」

『…多分、それは無理です』

「え?な、なんでだ?ラム、どれが無理?どうしてそんなこと言うんだ?」

『落ち着くですご主人様。シルバーくんは、回復と浄化の才は無さそうです』

「そんなことある!?こんだけ魔法ガンガン覚えてて!?」

「マジで攻撃特化じゃん…」

「そんな気はしてたから別にいいが」

「いいの!?」

『あー、多分ドラゴンと同じタイプなのだ。あいつ攻撃は凄いけど補助とか回復が絶望的なのだ』

「ああ…植物を照らす程度の光が出せなくて落ち込んでたよな…」



それで結局ステラを連れてきたことで照明問題は解決したけど。

そうか、スキルは魔術師系だけど、攻撃全振りのステータスなのか、シルバー…

となると、確かに補助や回復もこなすラムとは違うか。こう考えるとマジでラムが万能過ぎる。



「…このパーティ、攻撃特化多いわね…剣術のアキ、蹴り飛ばすリオ、針で仕留めるハル、で、このシルバーでしょ?」

「ほんとにな!」

「攻撃は最大の防御って言います。つまり防御面も問題なしということです」

「その思考回路が既にアレなんだよなあ…」

「何でだ。ハル、いいこと言うじゃねえか」

「うるせえよ綺麗なツラした蛮族」

「どういう評価だ」



もう攻撃全振りしてないのがナズしかいない。何てこった。

召喚者って蛮族しかいないのか。平和な世界で生きてた中学生なのに。

あとはもう森族姉妹くらいしか癒しがない。

魔物は戦うのが専門みたいなところがあるので除外。ラテだって毒蜘蛛である。



「改めて考えるとバランス悪いパーティだなあ…」

「攻撃食らう前に何とかすれば大丈夫ですよ」

「召喚者陣営唯一の回復持ちがこれだもんなあ…」

「こないだ京が『殴りヒーラーは真理』とか叫んでたぞ」

「…京さんが言うならいっか!」

「手のひら返しが早いよリオくん!」


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