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閑話20.心のままに(涼視点)

オン:京のこと。恩人のオンが由来。

涼:村雨涼。14歳。24歳のリオと入れ替わりで10年後の未来に滞在している。


…どうなってるんだろう。

もう、日付は4月をとっくに過ぎていて、ワタシは三年生になってるはず。

なのにまだ未来であるこの時代から動けていない。

ずっと、もうオンさんにも会えていない。そういえば、ルーさんにも。


代わりに来てくれたエリさんやメイさんがいてくれるけど、今が異常事態だということはわかる。



「どうして、戻っちゃ駄目なのかな。お父さん、お母さんにも、会いたいのに…」

「くぅ~ん…」

「なーぉ」



ぽちくんとたまくんっていう犬と猫が慰めるようにくっついてきた。可愛い。

ペット飼ったことないからわからないけど、この子たちは凄く頭いいと思う。あと優しい。


勉強なんて大嫌いだけど、三年生になってるはずなのに全然学校に行かせてもらえない。

不思議なもので、行かなくていいって言われてるはずの今こそ、勉強しないと落ち着かない。

ワタシは中学三年生なんだって、主張したいっていうのか、何かわかんないけど、焦燥感?そんな感じだ。

溜まってたテキストや教科書を、誰に言われてるわけでもないのに開いて読んで問題を解いていく。

こんなに自主的に勉強したのなんて、テスト前日くらいだ。それが、最近ずっとだ。

こうすることで学生って身分だって自分に言い聞かせてる。

ちゃんと頭に入ってるか、正直怪しい。


エリさんたちに観ていいよって言われたアニメとかも観てるけど、心の奥にある落ち着かなさは消えなかった。

ワタシ、ここにいて大丈夫なんだろうか。

ここを出て、家に帰った方がいいんじゃないか。誘拐、じゃないはずだ。

でも、ずっと閉じ込められてるような状況に、疑心暗鬼になってきた。

エリさんやメイさんがいる時は何も思わない。一人になった時に急に不安になる。


だって、この家から出ちゃ駄目って言われてる。危ないからって。

何がどう危ないかはわからない。



「ちょっとくらい、なら…」



ずっと駄目だって言い聞かせてた。でも、ワタシ、何ヶ月ここにいるの?

知ってる人にもずっと会えてない。声さえも聴いてない。今まで頼ってた人たちから引き離されて、一人ぼっち。

オンさんをはじめ、『この時代のワタシ』を知ってる人には何人か会ったけど、それはワタシの知り合いじゃない。

ここに、せめてお父さんとお母さんが一緒にいれば違ったかもしれない。こんなに長い間離れてなければ耐えられたかもしれない。

…でも、もう…



「信じたい、信じてる、でも…」



オンさんの笑顔が嘘だなんて思わない。でも、そのオンさんにも会えなくなってどのくらい経った?

エリさんとメイさんは頻繁に来てくれるし、色々話してはくれるけど、オンさんは忙しいの一点張り。

こんな気持ちになるワタシが悪いの?疑っちゃ駄目ってわかってる。ひどいことなんて一回もされてない。

未来のことだから、過去の人間のワタシが知っちゃ駄目なことがあるから、どうしても全部は説明してくれない。

わかってる、理解してる、頭ではちゃんとわかってるの。

けど、感情が、納得してない。



「…どうして、ワタシなの」



何か不思議な力があるらしい、とは聞いた。でもそれが何なのかはわからない。

超能力みたいな力が使えるわけじゃない。今は扱えないから、知らないままでいいって言われたけど。

特別な力があるって言われても、使えないんじゃ意味ないんじゃないの?

そんなあるかどうかもわからない力のせいで、今の状況があるなら、こんな力いらなかった。

いらないから、お父さんとお母さんに会わせて。

最近、一人になるとずっとこんなことを考えてる気がする。

ぽちくんとたまくんの温もりに触れると、寂しさは少し消えるけど。



「門…」



日本家屋だからか、この家には立派な門がある。

玄関から出ると石畳があって、その先に木製の門構え、っていうの?

エリさんたちはそこから入ってくることが多いから、あの先はちゃんとした外のはずだ。

壁も高いから、外の街並みなんかも見えないけど、チリンチリンって自転車の音とか車の音とか散歩してるっぽい犬の声もたまに聞こえる。

だから…アニメやゲームでたまに見る別次元とか別世界とかじゃない。

門を出れば、普通に町か住宅街が広がってるはずだ。


門から、ちょっとだけ外を見て、すぐ戻る。このくらいなら…?

敷地からも出ない。顔だけ出して、眺めるくらいなら許されるんじゃないかな。

前に、ぽちくんの散歩のために外に出たいって言ったら猛反対されて、それ以来、外に行きたいって言わなかったけど。


朝起きて、ご飯食べて、勉強して、アニメ観て、ぽちくんとたまくんと遊んで。

変わり映えのない日々に、飽きていたという気持ちもある。

何もない日々は好きだけど、そればかりだと退屈で。

駄目だってわかってても、新しい刺激が得られるかもしれないという高揚感に逆らえなかった。



『今のリオちゃんは子供だから、村雨涼って思われないかもしれないけど、似てるから関係者って思われる可能性はあるの』

『だからネ、絶対ここから出ちゃダメだヨ。危ないから。リオを守るためなの、わかってネ』



エリさんとメイさんの、そんな言葉が頭を過る。

一瞬、それは動きを止める効果はあったけど、行動を止める要素にはならなかった。

危ない、それはわかってる、でも。―――だったら。



「えっと、ここに…あった」



これがあれば、これを使えば、二人もちょっとくらいなら許してくれるかも?

すぐ戻ってくるから。うん、大丈夫大丈夫。

一度だけ会った、何かヤのつく職業っぽい男の人。見た目じゃなくて、言動が。

その人がくれた石ころを手に取った。

確か、これを使えば思い通りの姿になれるとか何とか。



「ワタシが村雨涼ってバレなきゃいいんじゃない!」



そんな軽い気持ちで、その石を使った。

不思議な感覚が体中を巡る。腕が短くなって足も縮んで何か指とかも柔らかくなっていた。ほっぺたぷにぷにしてる。

うおお、目線が低い。鏡…わぁ、別人。ほんとに知らない子。

五歳くらいの、さらさらヘアの女の子が鏡に写っていた。憧れだったんだよね、癖のないさらさらヘア!オンさんみたいな!あと目元もちょっと穏やか!

ワタシ、何かちょっとツリ目っていうか、人相悪いからね!…これだけで印象変わるなあ。

変わったのは年齢と髪質と目元くらいで、あとのパーツはそこまで変わってない…はず?でも見事に別人に見える。

服装も姿に合わせて変わってるけど…何かシャツの真ん中に威嚇した猫みたいな絵が。誰の趣味???あの元ヤンっぽい人?

あとは半ズボンだからまあ動きやすいけど…服装のセンス、アレだな。まあいいけど。



「よーし、これなら!」



テンション上がって、縁側から庭に降り立って玄関へ…

行こうと思ったんだけど、いつもと目線違って何か新鮮できょろきょろしてしまう。

あ、そういえば今日まだ水遣りやってなかったかも?オンさんが育ててる花の水遣りはワタシの仕事だ。

お願いしますねって言われたから、ちゃんとやらないと!



「うおお、じょうろ重い…花がいつもより大きい」



目線が違うだけで全然別の場所にいるみたいだ。すごい新鮮。

…何かもう、この新鮮な気分だけで退屈が紛れたから、もういいかな?

いつも通りの行動なのに、全然違うことっていうか初めてやってる気分になる。

このお花、横から見るの新鮮。いつも見下ろしてたもんなあ…

地面が近いのもあって、雑草もよく見える。あ、ちっちゃい花。雑草だけど何か可愛いなぁ。


ふふ、何か楽しい。…もういいや。外なんて行かなくても小さい体でいつも通りをやるだけで楽しいし。大人しくしてよ。

じょうろを元の場所に戻して、再度庭へ。知ってる光景が違って見えて楽しくなって庭をうろうろした。改めて思うけど、綺麗な庭だなぁ…

あ、でも勝手に石使ったことは謝らないとなぁ…大事なものだったはずだし。



「あれ?何あれ…」



雑草や植物ばかりのところに、赤っぽい色が見えた。何だこれ?

拾い上げてみると、見覚えのあるものだった。

…三日くらい前に、失くしたと思ってたぽちくんのボール。

結構探したのに見つからなかったやつだ!ああ、目線が低くなったから見えたのか!こんなとこにあったんだ。

確かに上から見てると草に紛れちゃって見えないなぁ…

手のひら大のボールは、今は両手で持たないと落としそうだ。

この体でボール遊びは無理かなあ?とってこーいって投げようとしても絶対飛距離出ないよね。

でも、ぽちくんこのボール気に入ってたっぽいし、見つかったってわかったら喜ぶかも?


あれ、そういえばぽちくんもたまくんも近くにいないな?

もしかして誰か来たからお迎えに行ったのかな?エリさんかメイさんが来たら門とか裏門にダッシュするもんね、あの子たち。

それならワタシもお迎えに行こうかな。正門の方が近いから、そっちに向かおう。違ったら裏門に行ってみよう。

そう思ってボールを持って振り向いたら。



「………、だれ…?」



すぐ近くに知らない男の人がいた。

しかもこっちに手を伸ばそうとしてるような。

わからない、わからないけど、何となくオンさんたちの知り合いとか、そういう人とは違うと思った。

お父さんよりちょっと若いくらい…?反射的に一歩後ろに下がった。

それを、目の前の人はワタシが警戒したと判断したらしい。



「ご、ごめん、びっくりさせちゃったかな」

「…だれ…?」

「ええと、お兄さんは、そうだな…あ、君はこの家の子かな?」



名乗らない。

…この時点で怪しさマックスだ。

だって、オンさんの知り合いの人たちはみんなすぐ名乗ってくれた。ルーさんは違ったけど、オンさんが紹介してくれた人だから大丈夫な人とは思ってた。

それに、この人、何でこの家に入ってきてるの?呼び鈴鳴った?鳴ってない。不法侵入じゃないの?

エリさんたちは鍵を持ってるから普通に入ってくるけど。そしてぽちくんが大体まとわりついてるんだ。

この人の近くには、ぽちくんがいない。ということは、ぽちくんが歓迎してない、迎えに行かなかった人。


わからない、わからないけど、これは誤魔化した方がいいやつだと確信した。



「…わんちゃんが…」

「え?」

「このおうちの庭に、わんちゃんがいたの。遊びたくて、ボール投げちゃって、拾いにきたの」

「あ、そ、そうなんだ。駄目だよ?勝手に入ったら」

「…ごめんなさい」



今、ワタシは子供の姿だ。幼児だ。これを利用しない手はないと思った。

外からこの庭が見えるかどうかなんて考えない。見えたってことにしておけばいい。それか犬の声が聞こえたって思ってくれればいい。

それで犬がいると思い込んで子供特有の好奇心で紛れ込んだ。これだ。こう思わせればいい。

ちょうど手にボールもあったし、この家に犬がいるのも本当。ぽちくんはいつも庭を走ってるし。



「おじさん、このおうちの人?勝手にお庭に入ってごめんなさい、もうしないから、お母さんに言わないで」

「おじ…っ、ああ、いや、もうしないならいいんだよ、うん」



何となく自分をお兄さんとか言ってたのが厚かましいと思ってわざとおじさんと呼んだ。

てかウチのお父さんと大して年変わんないでしょ。おじさんでしょ。

今、年を誤魔化してるワタシが言えた義理じゃないけど。



「そうだ、君、女の子を見なかったかな?もし見てたら教えて欲しいな。そしたらお母さんには言わないであげるから」

「女の子?ワタシ?」

「いや、中学生くらい…ええと、このくらいの子」



幼児相手に「中学生」じゃ通じないと思ったのか、手で背丈を示してきた。

…ちょうど、ワタシくらいの背だ。狙いは、ワタシ…?



「ワタシ、わんちゃんの声しか聞いてない」

「そっかあ」

「もうおうち出ていい?お母さんに怒られちゃう。お邪魔しました」

「ああ、じゃあお兄さんが一緒に行ってあげようか」



まだお兄さんとか言うのかこいつ。

てか一緒に行きたくないんだけど。何なの?ワタシが『目的のワタシ』ってことに気づいてる…?

どうしよう、どうしたら…



「やあ、君たちそこで何してるんだい?」

「…ッ!?」

「え、…?」



家の方から女の人の声がした。けど、覚えがない声だ。

反射的に振り向くと、知らない外人の若い女の人。ポニテが揺れてて元気いっぱいって印象だ。

…外人、という時点で、この人もオンさんの知り合いだろうかと思った。

だとしたら、この人は味方…?



「い、いや、すみません、すぐに出ます!子供が勝手に家に入っちゃって!すみません、好奇心の強い子で!」

「…いたっ!」



腕を掴まれて、引きずるように門へ連れて行かれそうになって、ぞっとした。

この人、ワタシをダシにしてここから逃げようとしてる…!

どうしよう、今のワタシは幼児だ。この女の人がオンさんやエリさんの知り合いだとしても、この姿じゃワタシが村雨涼ってわからない。

このまま、この人に連れて行かれたら戻れない気がした。でも幼児の力で大人の男の人の力に敵うはずもなくて。



「ちょっと、小さい子に何て扱いしてるんだい!?痛がってるじゃないか!君、もしかして子供を虐待してるんじゃないだろうね!?」

「い、いえ、違います!すぐ出て行きますので!」

「ゥ~…ワンッ!!!」

「うわあっ!?」



ぽちくん!

女の人の近くにいたぽちくんが思いっきり男の人に吠えた。

一度じゃない、何度もワンワン吠えている。

この男の人、犬が苦手なのかな?すごいビビってる。



「この大人しい子がここまで吠えるなんてなかなかないよ。悪~い人なのかな?ああ、君、こっちおいで」

「あ、…っ、コラ待て!」

「わんちゃん!」

「きゅーん…」

「ははは、ボールに興味津々みたいだね!ちびちゃん、よければわんちゃんと少し遊んで行くかい?」

「いいの?」

「もちろん、わんちゃんも遊びたそうだしね!」



ぽちくんにびっくりしたのか、力が緩んだ。その隙に逃げ出して、ぽちくんに駆け寄ったように見せかけて女の人のすぐ近くへ走った。

大丈夫、多分、この人は味方してくれる。



「あ、いや、待ってください、その子は…」

「…あら、あなた誰かしら?何で知らない男性がここにいるの?不法侵入?今女しかいない家に?」

「警察に電話しようネー、何番だっけ?」

「ひ…っ!?」



エリさんとメイさんも!

あ、足元にたまくんもいる。

裏門から入ってきたのかな?で、ぽちくんとたまくんが迎えに行ってたのかな?



「こっちのちっちゃい子はどーしたの?キミ、あの人と知り合い?」

「しらない人!」

「え、連れてかれそうになってたよね?…誘拐しようとしてたってことかい!?ジーザス!」

「罪状追加じゃないの!覚悟しなさい誘拐犯のロリコン野郎!」

「腕、痛かった!」

「傷害罪も追加だヨ!」

「ち、ちがっ、勝手に入った子を外に出そうとしただけ…!」

「問答無用!」



…そこからは早かった。

てか、エリさんと女の人めっちゃ強くない?背負い投げで吹っ飛ばした後、流れるような仕草でどっから出したのかわかんないロープで縛り上げてたんだけど。

制圧まで、10秒かかんなかったよ…



「ニャーちゃん、容赦ないわね」

「顔面ボコボコだネー。気絶してるのはいいけど、これ半日くらい起きないやつじゃない?」

「誘拐犯に容赦なんていらないじゃないか!」

「まあいいわ、私、コレ引き渡してくるからリオちゃんのことよろしくね」

「よろしくされたよ!」

「言ってらっしゃーい」



そう言ってエリさんは正門からあの男の人を引きずって出て行った。だ、大丈夫かな…?



「エリさんならノープロブレムさ!ところで、リオが思ったより小さいんだけどどうなってるんだい?」

「リオ~…能力石使ったネ~…?」

「う、ご、ごめんなさい…」

「結果的にいい方向に働いたからいいじゃないか。あの男、この子がリオって気づいてなかったよ。気づいてたらアタシたちが駆け付ける前に即攫ってただろうからセーフだね」

「そうなノ?じゃあ何で連れて行こうとしたんだろう?」

「人質にしようとか考えてたみたいだね。何も知らない幼児を引き合いに出せば、リオを渡すんじゃないかって思ってたみたいだよ。クソだね!」

「はあー!?ちょ、これエリさんに伝えよ!罪状追加だヨ!」



え、そんな理由でワタシ攫われかけたの!?

てか、あの人、やっぱり『ワタシ』が目的だったの!?



「半才能者は、攫いやすいって思ってるからね。いつだってバカはいるものさ。どこで情報が漏れたかなあ…いや、守りを固めてる時点で、アタリつけられたかな?」

「私たち、頻繁にここ来てたからネー…ルーさんやアルさんが短期間で訪れたってこともあるし、何かあるって思われたのかもネ」

「あー、いつもは数ヶ月に一回来ればいいとこな人たちが何回も来てたら怪しむかぁ」

「…ワタシ、何の力も、ないのに…」

「ひとまず家に入ろっか。庭で話すこともないよネ」

「そうだね!久々に緑茶飲みたいよ!」

「ニャーちゃん、緑茶好きだネー」



あ、そういえばこの女の人、エリさんたちの知り合いってことは…不思議な力持ってる人たちの一人かな?

にゃーさん?猫?



「うん?アタシ?アタシはターニャっていうんだ。よろしくね!」

「ターニャさん…えっと、ワタシ、村雨涼…」

「うん、初めましてだね!てかこれアル兄の能力石の力だろう?想像より小さくなっててビックリしたよ!」



ん?アル兄?…誰?



「この石を渡してきたガラの悪い男だよ!」

「妹分なのに辛辣だネ!?」

「どう取り繕ってもアレはガラ悪いじゃないか!フォロー出来ないよ!」



ああ、あの元ヤンさん…妹なんだ?似てないけど…いや、妹分?



「リオと…オン、だっけ?二人の関係と少し似てるね。アタシが自分の能力に目覚めかけてた頃に面倒見てくれたのがアル兄なんだ」

「才能者らしい人を見つけたら接触して話をするんだけどネ、ニャーちゃんの担当はアルさんだったんだヨー」

「へえ…?」



というか、何かさっきから妙に思考がバレまくってるような。

そんなに顔に出てるかな?ワタシ。



「…違うよ。これがアタシの能力。読心。心を読む力さ」

「えっ、アニメとかでよくある超強いやつ」

「あはは!そうさ、そういう能力だよ!もっとも、表面的なことしか読めないけどね!」



う、うわー!そんな力あるんだ!すご!

ん?てことは考えてることモロバレ?何か恥ずかしいんだけど?



「常に読んでるわけじゃないよ。力を消費するからね。ただ、さっきは必要だったから」



そうか、それでこの人は今のワタシが村雨涼だと気づいたのか。

そしてあの男の人が考えてたことも察した。

うわー、うまく助けてもらえたって思ったの、このターニャさんのおかげだったんだ!

そうだよね、あの時点だと、ワタシもめっちゃ怪しいただの不法侵入者だよね。

ぽちくんが味方してくれてはいたけど、ワタシも追い出されててもおかしくなかった!

う、うわあああヤバかった、綱渡りだった!ターニャさんの力、圧倒的感謝!



「リオが、子供のフリで逃げようとしてるのがわかったからね。いい案だと思ってノったのさ!リオだってバレてないならやりようはあったし」

「うう、貴重な能力石使っちゃってーって怒りたいけど、これのお陰で助かってるから何も言えないヨー!」

「まさか、アタシたちが裏門から入って、ぽちくんたちが迎えに来てくれてた僅かな隙にこんなことになってるなんてね」

「もう常にリオにはぽちくんかたまくんのどっちかがくっついてた方がいいネこれ!」

「くぅ~ん…」

「なーぉ…」

「あああ、怒ってない、怒ってないよ!お迎え嬉しかったよ!」

「わー!落ち込まないでー!おやつあげるヨー!」



…今まで、過保護、だと思ってた。

けど違った。未遂も未遂だけど、肌で感じた。

みんなが言ってた「危ない」の意味、ワタシはわかってなかった。

色々な偶然が重なって何とかなっただけ。いい偶然と悪い偶然が混ざってあんなことになったけど、そもそもワタシがちゃんと言う事を聞いてれば。

のこのこ一人で庭に出てなければ。

出来るだけぽちくんかたまくんと一緒にいるようにって言われてたのに。

ずっと一緒じゃないのは、さすがに常に一緒にいると息が詰まるだろうから。ワタシも、ぽちくんやたまくんも。

だからある程度は好きにしていいと言われていた。

でも、またこうなるくらいなら。



「…てか、どうやって入ってきたのかな、アレ」

「何か正門の守りをこじ開けたっぽいよ。大金使ったとか愚痴ってた。だからこそ成果がないまま下がれないって思って幼児を人質に、なんて考えたんだろうね」

「一切同情できないネ!資金尽きて飢えてスルメでも齧ってればいいヨ!」

「何言ってるんだい、スルメ美味しいじゃないか!もったいない!アタシの手料理とかで充分だよ!」

「…ニャーちゃん、自分の料理がアレって自覚あるんだネ」

「アル兄が泣きながら作るなって吠えたからね!嫌でも思い知ったよね!」



ターニャさん、料理ダメな人なんだ…

てかそれを率先して武器にしようとする人って珍しいな。

自覚なくて料理作って周りを阿鼻叫喚にするとか、自覚してても根拠なく「次はうまくいける」と思って大惨事起こすとかはネタで見るけど。

自覚した上で武器にするって、メンタルオリハルコンかな?



「まあとにかく無事でよかったよ。アタシしばらく日本にいるから、よろしくね」

「ニャーちゃん、ここに泊まるの?」

「うん、何か『上』から要請が来てね。アル兄たちが担当してる件で手助けして欲しいんだってさ」

「あー…私たちも手伝ったアレかなー?エリさんが嫌がったんだよネー」

「ははは、じゃあエリさんの代わりに情報収集してほしいのかもね!まあ、いつ出動するかは決まってないけど、近いうちって言ってたかな」

「リオ、あのね、これ、オンさんやルーさんが頑張ってるやつなんだヨー」

「そうなの!?」



そういえば忙しいからここに帰って来れないって話だっけ。

仕事でずっと詰めてるとか言ってたけど、ターニャさんが来たってことは、何か状況が変わった…のかな?



「詳しくは話せないけどね、何か目途がたったとか解決の糸口が見えたとかいう話だったよ。まあまだ時間はかかるみたいだけど」

「最初は手がかりを探すことからだったんだから、だいぶ前に進んでるヨー。リオも、帰れる日が近いかもネ」

「…ほんと?」

「まだわからないけどね。でも、帰れるのが確定したら絶対伝えるよ!待っててね!」

「う、うん…!」



あ、なんか泣きそう。

子供の姿だからかな。関係ないかな。

ずっと不安に思ってた、いつまでこうしてなきゃいけないんだろうっていう状況。

それが、終わりが見えてきた、のかもしれない。



「さあリオ。アタシが来たからには退屈させないよ!ゲームしよう!」

「えっ」

「ニャーちゃん、ゲーマーなんだヨー」

「対戦からやるかい?落ちゲーもいいよね!あ、協力プレイする?」

「え、あ…」



ざっと出されたソフトは見覚えのあるタイトルも多かった。

わざわざワタシに合わせて、昔のものを持ってきてくれたんだろうか。

10年後の、ワタシと遊んだっていうものもあるらしい。うん、プレイしたことある…

実際にプレイしたのは、新シリーズのものだろうけど。10年後もあるのかリメイクなのかはわからないけど。


…10年後のワタシが、初めて身近に感じた。

今までは話を聞いても覚えがないせいか、別人の話のように思ってたことが多い。

でもアニメは好きなままで、ゲームもやってる。ワタシとの共通点。10年経っても変わらないもの。



「…やる。ぜんぶ、やりたい」

「いいよ、やろうか!」

「私、後ろで見てるネー」

「メイも一緒にやるかい?」

「私、人のプレイ見てるの好きなんだヨー。だから見てたい。実況動画とかめちゃくちゃ好きだヨ!」

「ははは、じゃあアタシとリオでプレイしようか!」

「…うん!」




***




「…ねえ、メイ。リオって変わらないんだね」

「ん?そうだネ。根っこの部分はやっぱり同じだと思うヨ」

「アタシのさ、この力、大抵の人って嫌がるんだよね。心が読まれるわけだから当たり前だけど」

「そうだネー」

「…でも、リオに嫌悪感は感じなかった。どっちのリオも。ただ、凄いなって称賛の気持ちしかなかった」

「あー、アニメでよくある能力ーって言ってたよネ。小さいリオまで同じこと言うから笑いそうになっちゃったヨ」

「うん、それがどれだけ嬉しいかなんて、きっとリオにはわからないんだろうなぁ…」

「やましい思いがある人ほど避ける能力だもんネ。私は…気持ちを代弁してくれてありがたかったケド」

「…そういえばアタシの能力あんまり嫌がらないのって口下手な人が多いな」

「あはは、今はアルさんとかルーさんとかユリさんとかだネ!すーぐ憎まれ口が出ちゃうの!本当はもっと優しい気持ちを持ってるのに」

「あと自分で意見言うのが面倒って人。人に代弁させないで欲しいよ、まったく!」

「あはははは!でも私は助かったなぁ。昔は言いたいこと、うまく言えなかったから。言葉選びが悪いのか、不快にさせること多かったみたいだもん」

「…アタシの能力が助けになってたなら、嬉しいけどさー」

「助かったヨ!今でもニャーちゃんには感謝してる。だから、私は絶対ニャーちゃんを嫌いになんてならないからネ!」

「…うん、ありがとう」


ターニャ:読心の能力者。見た目は金髪碧眼の20歳前後の美女。才能者界隈では新参の部類。女子はエリ>メイ>ターニャ>リオの順。

『才能者とそれ以外』を気配で見分ける練習をしてるアルに、試験感覚でルーが「才能者探して来い」と放り出した先にいた半才能者。

幼少時は望む望まないに関わらず人の内心が聞こえてきて、家族にも不気味がられていた。

周りがみんな自分を化け物みたいに見てきて、心が壊れそうだった時にアルに会った。お互い家族にないがしろにされていた同士というのもあり、疑似家族のような関係に。

ターニャはいつしかアルを恋愛の意味で好きになったが、アルはターニャのことは完全に妹と思っている。鈍感。

能力を使いこなせるようになってからは、生来の明るさが出てきた。

京、ルーク、ユーリ、アルあたりは「自分の言いたいこと汲み取って代弁してくれるの助かるなー」とか思ってる。

ディオは「自分を利用しようと考えない女の子」という時点で好感度爆上がりするので、普通に仲良し。

使い方によってはとんでもないことが出来る才能者は「自分を利用しない人」相手にはダダ甘になる傾向がある。


ターニャが日本に来た理由は、ルーが運んでくる予定のヒャッハー組の考えを読むため。

改心の兆しがないヒャッハー組の対応と、改心しようとしてるヒャッハー組を選別して滞在時の対応を変えるつもりらしい。

エリさんとメイも似たようなことが出来るものの、芝に能力使った後に「もう嫌」ってなったので代打で呼ばれた。

一人でこなせることと、10年前のリオに会わん?って話を持ち掛けたところ即OKを出したつわもの。

対戦ゲームが好き。画面の向こうは能力の範囲外なので、うっかり能力を使ってズルして勝つ心配が皆無のため。

能力を使わない素の実力が見えるもの、ということでハマった。

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