166.再会の連鎖
「改めて、姉のリーゼロッテ・ツェレルですぅ」
「妹のシャルロッテ・ツェレルよ!よろしくね」
「ツェレル家か。三番樹の集落の者だったとは。…何で人間族領なんかにいるのだよ…」
「さんばんじゅ?」
「世界樹は森族領に五本あるんですぅ。一番樹から五番樹と呼ばれてますぅ。そのうちのひとつですねぇ」
「へえ。森族領以外にも世界樹ってあるのか?」
「ありませんねぇ」
「というか、世界樹の規模に育てられたのが森族領の五本だけなのよ。ユグドラシル様は世界中に苗木を残したそうだけど…」
「ああ、他の場所は世界樹にまでは育たず、普通の樹となったということですか」
「そういうことね!まあ…枯れてしまったものも多いそうだけど」
「樹は最初は手を入れないとすぐ枯れるからなあ」
「そういうことですぅ。森族領にあるものは枯れずに育ってるのですよ~。大樹規模のものが多いですねぇ。集落の象徴になってたりしますぅ」
ユグドラシルはクラーフの地中からマナを吸い出そうとして世界中に苗木を植えたそうだ。
溢れるマナをどうにか少しでも減らすというか、消費させようと考えた結果だという。
樹が育つ、という過程でマナは多少消費されたが、微々たるもの。ユグドラシル的には失敗策という認識だそうだ。
ただ、クラーフを生きるヒト族や魔物の住処となる、餌をつける樹に成長など、そういう方向で大きく役立っている。
世界樹の周りには純度の高いマナが生成されるだとか、森族の能力が高まるだとか、ありがたがられていると。
失敗策なので引っこ抜こうと考えていたらしいけど、あった方が助かるという意見が多かったのでそのままにしている、というのが実情らしい。
規模がでかいな。失敗策が生き物の役に立ちまくってるなんて。改めて思うが、オリジンやばい。
「で、ダーリンの名前は?ベルって呼ばれてたけど」
「ダーリンとか言うな。僕はベルギアレイズ・ディアロスなのだよ。長いから今はベルと名乗っている」
「…ディアロス家!?魔王の家系じゃないの!」
「あらぁ、大物でしたぁ」
「魔王だと!?…お前らどういうメンツで旅してんだ!」
「そんなこと言われても。ベルさんは道中で拾っただけだしなあ」
「アキ兄が餌付けしたんだよね」
「魔王の息子を拾うって何が起きたらそうなる!」
「空腹で倒れてた」
「前日に食べた木の実にあたって体調最悪だったのだよ。そこを無理して進んでたら倒れた」
「思ってた百倍情けない理由だった」
「ベルさん採取の腕があるくせに何で空腹で行き倒れてるんだろうって思ってたら…」
そんな、まったく深くない事情があったなんて。
ちなみに携帯食は残ってたが、その体調の時にあんな不味くて飲み込みにくいものを食べたら終わると思って食べなかったらしい。
終わる…リバースですね、わかります。まあ通常時ですらウッてなるもんな。
結局、ベルさんのことはベルと呼ぶことにしたそうだ。僕たちに合わせてくれた形になる。
あと、姉妹のことはリーゼ、シャル、でいいとのこと。
「100番目の子ってことは後継者争いには無関係ね」
「あ、ああ、僕は魔王になんてなる気はないから…」
「私も次の長はお姉ちゃんだから自由の身よ!ちょうどいいわね!」
「何もちょうどよくないのだよ!」
「まあ多分私は森族の旦那を見つけろって言われますけど~、シャルはそうでもないですからぁ」
「ああ、他種族でも問題はないのか」
「私とベルだと子供は森族か魔族かどっちで生まれるかわかんないけど、まあいいでしょ!」
「よくないのだよ…」
「ベルさん、もう諦めたら?」
「何でそんなこと言うのだよ!」
「いや、だって、美少女だし、同じ長寿種だし、趣味も似てるなら…よくない?」
「…アキ、正論で畳みかけないで欲しいのだよ」
「ていうか僕たちからすれば反対する要素がないんだよ。で、まあ、賛成する要素の方が目立つから…」
「あとは本人たちの心次第ですかね。ベルさんが本気で嫌がってたらさすがに止めますけど、シャルさんにもアピールの機会はあってもいいでしょう」
「てことで、俺たちは基本傍観者ってことで!」
「それでいいわよ!私次第ね、燃えるわ」
「森は火気厳禁なのだよ。鎮火しろ」
「心情的な意味よ!」
「よーし、まとまったな。んじゃ、お前らそろそろ出ろ。行先はゼイレムでいいんだな?」
「まとまってないのだよー!」
ベルさんが喚いたけど、テントの所有者が出ろと言ったわけで、従わないわけにもいかず。
バッカスさん、僕たちをゼイレムまで送ってくれるのかな?まあここには転移で来たから徒歩で戻れとか言われたら…カーくんだし別にいいけど。
「ひどいのだよバッカスさん、僕は一応バッカスさんを助けたのに」
「そりゃ感謝してるが…オレのテントでえらい話し合いをこれ以上して欲しくねえって願望が、な」
「そういえば結構な爆弾発言が飛び交ってたような気がしますね」
「気がするじゃなくて事実特大の爆弾の連続攻撃だったんだよ」
「まあ、世界樹関連なんて滅多に聞かないのだよ。無理もない」
「お前も爆弾のひとつだからな…!?魔王関係者なんて人間族領にいるとは思わねえよ」
「それはあたし達もびっくりしたからなー」
「それと同行してるお前らも大概だわ。つか全員が爆弾だわ。誘爆してんじゃねえ」
「ならやっぱり僕は別れた方が…いやしかしダーク様が…」
「頼むから纏まってろ、お前ら。それに考えようによっちゃお前ハーレムだぞ。お前以外全員女」
「僕の中でアキとリオは男なのだよ」
「えー、まあ男装はしてるけどもさ」
「アキ兄さんはオカンだろ」
「それもそうか。じゃあリオだけ男か」
「あれ…僕の性別だけ修正されてない」
「いや俺オカンじゃないから」
変な話になったが、ここでテントを出た。まだ朝で昼にもなってない。
変動に巻き込まれた人の所在は全員判明していて、あとは戻るのも時間の問題だろう。
ということで、一旦この件は解決。バッカスさんはゼイレムに向かって、依頼の話をするそうだ。
僕たち、強制指名依頼で連れて来られたからな…報酬含め、諸々の報告や対応などがあるのだろう。
なので僕たちは一緒にゼイレムに戻ることになった。森族姉妹も一緒に。
「あら、テントが増えてる。戻ってきた人が増えたのかもね」
「静かなのはとにかく休ませるためでしょうねぇ」
「おお、戻って来れた人がまた増えたのか。めでたい」
「お前らも立派な貢献者だからな。10人見つかったのはお前らのおかげだ」
「そうですよ~私たち、もう駄目かと思いましたし」
「お役に立ててたなら嬉しいですが…」
でも指示とか出してたの、ほぼバッカスさんだしなあ。進む道とかを決めたのもバッカスさんだ。
戦闘ではかなりフォローもしてくれたし、バッカスさんの貢献でいい気がする。
隊だって、隊長が無能ならロクな働きは出来ない。そういう意味ではバッカス隊長はかなり有能な隊長だ。
ナズのことも助けてくれたし。あれは身体能力が低いナズのことを常に意識して立ち回ってくれてたからだろう。
僕たちも手足として、隊員として働きはしたけど…マッピングまでしてたハルと違って、僕なんてほぼ置物だった。
隠蔽術を察知する魔道具を使ってたって意味では役立たずとまでは思わないけど…さほど貢献してないぞ僕。
「…あれ、君たち、もう帰るのか?」
「ん?…あ、昨日の五人パーティ!」
「昨日はありがとうわん!」
「おはようございます皆さん。妹さんの体調はどうですか?」
「一晩寝たら復活したぞ!冒険者だからな。体調をすぐ戻すのは得意だ。朝飯食いすぎて体重いっつって寝てるけど」
「復活後、体調不良に逆戻りしてるんですがそれは」
「食欲があるのはいいことだ!」
「まあアキ兄の意見はそうだろうけど」
こんな騒ぎになったので、近隣の町への転移用の魔道具が設置されてるらしい。
その方向へ向かってたので、帰ると思われたんだろう。
昨日救助した五人パーティ…今は四人だけど、彼らもまた近隣の町に戻るそうだ。妹さんが復活次第。
ちなみに犬の獣族はデフォルトで犬人間の見た目だった。獣化でも何でもなかったようだ。二足歩行の犬、たいへん可愛い。
しっぽ振ってこっちに来たので頭を撫でておいた。昨日、彼を発見したのが僕なので感謝してくれてるらしい。
人数を数えて足りないってわかったら探してたはずなので、置いて行くという事態にはなり得なかったはずだけど、彼は僕のおかげで置いて行かれなかったと思ってるようだ。
一緒に旅をしている四人のことが大好きで、彼らと離れ離れにならなかったのは僕のおかげ…みたいなことを思ってると。そんな馬鹿な。
まあ、犬は群れるし…群れから逸れるのは嫌だって思ってるから、そうなった…のか?
考え方や言動が幼いのは、彼がまだ子供だかららしい。12歳…!?まさか小6だったなんて…!
どうでもいいことに戦慄いてる横で、バッカスさんがパーティリーダーに話しかけていた。
「ところで、お前らも元いた町に戻るのか?」
「ん?ああ、俺たちにこのダンジョンは早すぎたから、もっと経験積まないと」
「一階層でオーク系が出るなら食料に出来るな、なんて安易に考えなきゃよかったよな」
「上位種ナメすぎてたし、準備も足りなかったなぁ…」
「お前らの行動で一番良かったのは、救援用の魔道具をちゃんとギルドから受け取って、それを必要な時に使ったことだ」
「…はい」
「ああ、それがあったから三人の救助隊が変動前に彼らの救助に乗り出せたんですよね」
「そうだ。変な意地張って使わねえって冒険者が多いんだ。ちゃんと使ったのは大正解だからな」
「…はい!」
「わふっ」
ちょうどいい位置にいたのか、バッカスさんが犬の子を撫でていた。あ、犬、嬉しそう。撫でられるのが好きみたいだな。
もしかしたらパーティ内でもよくこうして撫でられてるのかもしれない。
一瞬、高浜さんと岬くんという犬好きが脳裏を過ったけど、他人を勝手に撮るのはちょっとアレなのでスルーしておこう。
二人が絶対見たがる光景だろうとは思うけどさすがにな…
「じゃあ元気でやれよ」
「ああ、昨日は本当にありがとう!」
お互い冒険者同士。今後会う事もあるかもしれないし無いかもしれない。一期一会っていうしな。
それでもいい関係で別れられたのはいいことだろう。
バッカスさんもまた彼らに会うことがあるかもしれないし。
「んじゃ、ゼイレムに戻るか」
「はーい」
「…あれ、あんたたち…」
「ん?」
歩き出そうとしたら再度別方向から声をかけられた。
え、もう知り合いとかいないんだが?と思って振り返ると、見覚えのある人たちがいた。
「…あ、やっぱりあの時の!久々って程でも…ないか」
「あー!美味いシシタケスープ作ってくれた子たちじゃないか!」
「そっちで覚えてるの?テグタケ譲ってくれた子たちって覚えなさいよ」
「…『黒の鉄槌』の人たち!」
まさかの。
食材ダンジョンにいた黒の鉄槌パーティだった。
投擲玉とか解体ナイフめちゃくちゃ役立ってますありがとうございます!
「何でここに…まさか、救出作戦に参加してたのか…!?」
「ここ中級者ダンジョンなのに!?」
「いやあ、実はそのまさかの事態でさあ」
「バッカスさんに無理やり連行されてここに来た」
「悪かったっつってんだろ。報酬にゃイロつけるっつの!」
「…バッカスさん!?ちょ、この子たち銅級だよ!?」
「他に連れて行けそうな奴がいなかったんだよ!負傷者と酔っ払いばっかで!」
あ、知り合いか。
黒の鉄槌のリーダーとバッカスさんがぎゃーぎゃー言い合ってる。
この人たちはどういう繋がりだろう?疑問が顔に出てたらしくて弓使いの女の人が教えてくれた。
「私たちが初心者時代に世話になった冒険者なのよ、バッカスさん」
「へえ、じゃあ先輩だったのか」
「そうよ。あなたたちは…教わってるというより、冒険者同士として一緒にいたみたいね」
「でも僕たちはバッカスさんの指示に従って動いてるようなもんだったから、教わってる側ではあったかな」
「それでも、一人前の冒険者相手として同行してたんじゃないの?」
「…うーん、どうだろう」
そう言われると迷うな…?
依頼を受ける形で来たから、冒険者同士としての行動。
でも何だかんだ面倒見てもらった自覚はあるから、先輩後輩…みたいな…
「一緒に救助に乗り出したのなら対等ね。面倒見てもらったって言っても、下の等級の子の世話は当たり前のことだし」
「そ、そうかなあ?」
「そうね…じゃあ、君、そっちの後衛の女の子が危なかったら助けるでしょう?それって当たり前のことじゃない?」
「ナズ?うん、まあ確かに…僕は前衛だし、ナズは牽制役だから」
「ね?でも、君はその子を後輩って思ってないでしょう?対等だと思ってるでしょう?対等な立場でもそうやって助け合いはするわよ」
「確かに…あたしもリオ兄に魔物が向かってたら牽制してこっちに注意向けたりするし…」
「バッカスさんと今回のあなた達は、そういう関係よ。だから対等な立場ね」
「…そっか、適材適所か」
「難しい言い回しするわね?でもまあそういうことよ。同じ依頼を受けて協力し合うって当たり前のことでしょ」
「はー、確かにー」
「でも結局足を引っ張ってた感は否めませんね」
「あの中で一番役立ってたのはきっとハル。地図作成とか」
「あら、凄いじゃない。地図の作成する時って周りを見ながら進むから普通はゆっくり進むのよ。だから素早さ優先の救助作戦なんかだと嫌がられるの」
「え、そうなんですか!?」
「あー、でも確かにちゃんと見ないと地図なんて作れないか」
「でもバッカスさんが作るの許可したってことは、必要と思ったか…あなたの作る地図がすばやく作成出来たか正確だったか、どちらかじゃない?」
進行速度は…ややゆっくりだった、かな?
でも魔物を警戒して進んでると言えるくらいの速度だったし…一分間のドロップ集めは考えないものとする。
あまりに時間がかかるようなら途中でもう作成しなくていいって言われてたかも、なのか。
結局、声が聞こえるまで…二つ目のモンスターハウスのあたりまでは作成していた。つまり最初からほぼ最後まで。
戻る時は、速度優先だったので地図の作成はしてない。というか、先頭にいたバッカスさんが持っていた。
そういやあの地図、ハルの許可取った上でセリーヌさんとかに渡してたけど、使うのかな?
「素早さ優先と思って、結構雑に描きましたよ私」
「雑とは…?」
「え、あれが雑?嘘だろハル、俺の知ってる雑と意味違わないか?」
び、美術部~~~!
めちゃくちゃわかりやすいってバッカスさんも褒めてたじゃないか!
あれだろ、プロとアマの違いというか、玄人の「チャチャっと」と素人の「真剣」が同じクオリティになるやつだろ!
これで勉強も出来るんだぜ。この子、才能に溢れすぎじゃないか?うちの妹が素晴らしい。
「本当に新人冒険者なのかしら…?」
「いや本当にちょっと前に冒険者登録したばっかの新人だよ」
それについては嘘じゃない。今まで平和な世界に生きてて、ギルドとかなかったからマジで初体験である。
そもそも初めて魔物と戦ったのだってつい最近だ。
それを知ってるベルさんや森族姉妹は「だろうな」って顔してた。
うん、召喚者だからね。この世界に来たのが最近なもんだから、暴論に等しいが全部初体験だ。
…あ、バッカスさんたちの話が終わったらしい。
「まさか、お前らが知り合いだったとはな」
「ああ、前に食材ダンジョンで会ったんだよ」
「…アキ、お前、絶対オーク階周回しまくっただろ」
「失礼な。全部の階周回したわ」
「想像より現実の方が酷いってどういうことだ」
うん…オークに目の色変えてたからな、アキ兄さん。
でもアキ兄さんは食材になる魔物全部が獲物に見えてるから…
「そういや、あの時に渡したやつって役立ってるか?」
「めちゃくちゃ使ってるよ。投げまくってるし解体しまくってるよ」
「投げ…?」
「この投擲玉の魔道具、彼らから貰ったものなんです」
「ああ、そうだったのか。最近冒険者になったばっかなのにどうやって手に入れたかと思ってたら」
「依頼のテグタケが集まらなくて、この子たちが持ってたドロップを貰ったんだよ。そのお礼に」
「はー、なるほどな」
「なんか知らんけどドロップしたんだよな」
「いらないって思ってるものほどすぐ手に入るよね」
「毒キノコなんて使い道ありませんでしたしね、当時…」
今手に入ってたら多分タークくん行きになってたはずだ。
毒薬とかポーション系とかの材料にしてくれると思うから。
って考えると、あのタイミングで会っててよかったのかもしれない。
「確かに使いまくってたな。刺激物の玉を目にぶつけたり口に突っ込んでオークやマウスズ悶えさせてたりしたわ。えげつねえって思った」
「思った以上に有効活用しててびっくりだよ」
「ダンジョンの魔物だとどんな倒し方しても肉に影響ないから、つい…」
「現実の魔物でやると辛味成分とかが移ってそうで怖くて使えないんですよね」
「怖い?」
「アキ兄さんが」
「味方かよ」
「肉欲しさにボディを傷つけずに倒してくれって頼む人だぞ」
「いやあ、つい」
「照れる要素ねえだろ、何してんだお前」
「おかげでリオ兄さんがすっかり首狩り族に」
「目とか口とか鼻に針だの投擲玉だの苦無をぶち込む子に言われても」
「…この子たち、本当に新人冒険者?」
改めて考えても、やばいな僕たちの戦い方。
おかしい、ちょっと前まで平和な日本で暮らしていた普通の子なのに。…僕はアレだけど。
何かいらない疑問持たせそうだったので、ちょっと話題逸らすか。
「ところで、皆も救助のために来たってこと?昨日見かけなかったような…って言ってもそんなちゃんと見渡してないけど」
「ああ、俺たちは変動の前兆が出たって聞いてすぐ駆け付けたから、昨日はずっと救助対象とダンジョンにいたよ。朝やっと出てこれたんだ」
「え、じゃあ今疲れてるってことか!うわ、ごめん、話すより休みたいよな」
「いやいや、昨日はちゃんとセーフティエリアに辿り着けたから、そこで睡眠とって休めたから大丈夫だよ」
「まあ疲れはあるから、元いた町に戻って宿で爆睡しようかーなんて話してたところさね」
「私たちはガロメルにいたんだけど、あなた達はどこの町にいたの?」
「俺たちはゼイレムから来たんだ」
「あー、じゃあ別の町かぁ。残念」
「そうですね…お別れです。でも会えて良かったです」
「こっちもだ。また会えたらよろしくな」
「ああ…ところで、仲間増えたのか?」
「ん?」
リーダーの人が見てるのは、ベルさんたちだった。
あ、そういえば前はいなかったもんな。バッカスさんはともかくベルさんは冒険者じゃないのでマジで初見だろう。
「僕は一時同行なのだよ。ビスムズまで一緒に行って、そこで多分別れる」
「私たちは彼らに救助してもらった『変動』に巻き込まれた冒険者なのですよ~。その前にガレメナでも助けてもらったことがあって、縁あってちょっと一緒にいますぅ」
「そうなのか!無事なようでよかった」
「ありがとう、見ての通り元気よ!」
ベルさんたち黙ってるなーと思ったら、僕たちを気遣ってくれてたようだ。
知り合いとの会話なら割り込まない方がいいと思ってたらしい。いい人…
「しかしその投擲玉、貰い物だったのだな」
「そうだよ。僕とハルの分、ふたつ貰ったんだ」
「ガレメナでも粘着玉投げてましたよねぇ。奴隷商人がどんどん捕まっていって凄かったですぅ」
「曲芸みたいだったわよね!まず足にぶつけて機動力奪って顔面に刺激玉ぶつけて絶叫させてたもの!」
「怖…何て使い方してるのだよ…僕は絶対にリオとハルの敵に回らないと今心に決めたぞ」
「…思った以上に有効活用しててびっくりだよ」
「二回目」
「人の心はねえのか」
「容赦しちゃ駄目だと思って…」
だってシェリルを狙ってるかもしれない相手だったから…
獣族の子供を狙うとかクズじゃん。獣族じゃなくても普通の人を犯罪奴隷にしようとする奴らとか最低じゃん。
って思って、僕もハルも割と容赦なく立ち回ったわけである。
なお、アキ兄さんとナズが容赦してたというわけじゃない。この二人も普通にキレてえげつないことしてた。
一部を言うと、アキ兄さんは相手を河童にしてた。ええ、頭のてっぺんをね…皿みたいに…ぴかぴかに。
ケイロスさん、連行する時に噴き出さないようプルプルしてたからな。小規模だったから、全員にやったんだよなアキ兄さん。頭テカってた。
大規模な奴隷商会なら、一部だけで済んだのに…多分。
ナズは尋問時に糸の束で鼻くすぐったりして口を割らない相手を…まあくしゃみ連発してたよね、奴隷商人。
くしゃみって結構体力使うんだよ。でも話すまで容赦しないんだよ。最終的に商人は泣いてた。でも真顔で鼻をくすぐるの止めないんだ。ホラーかな?
ほら、僕たちの所業なんて可愛いもんだろ?…え、同類?嘘だろ、まさかそんな…!
「強く逞しい後輩で嬉しいような悲しいような、その強さはいらなかったんじゃないかって気持ちが大きいような」
「まさにそれね。まあ、奴隷商人なんて根絶してくれていいんだけど。よくやったって気持ちはあるんだけど」
果たして、手放しで褒めていいものか、なんて声が聞こえた。
確かにあの時はちょっと…テンションがおかしかったかもしれない。
でも耳ぺたってなった怯えた獣族の子供を見たら、滅ぼさねば、何としても…!って気持ちになったから…
謎テンションで駆け抜けたよね。後悔はしてないし、ケイロスさんはずっと目が死んでた気もするけど些細なことだろう。
レンドルさんが菩薩顔してたからセーフセーフ。見守ってくれてるってことだもんな、きっとそう。
「何であれ、元気そうでよかったよ」
「またどこかで会えるかもね」
「君らなら銀級もすぐだろうしなあ」
…必要な討伐依頼数が圧倒的に足りてないけどな!
ちょっと生温い笑いになってしまった。討伐依頼を受ける気はあんまりないから、銀級にはなれないと思うけど、それを言うのも憚られる。
そういえば黒の鉄槌は金級に昇級しているらしい。前にもうすぐ金級って言ってたもんな。めでたい。
「この強制指名依頼で銀級に昇級しちまうかもしれねえがな…」
「え…っ」
嘘だろ!?
バッカスさんの爆弾発言に、みんなで驚愕してしまった。




