165.森族と世界樹
「そ、そこまで言うなら、求婚を受けてあげてもいいわよ!」
「何の話なのだよ!?今そんな話してないぞ!?」
「してたじゃないの!!!」
「えっいきなりド修羅場?」
合流の魔道具ヤッターってキャッキャしてる横で何が起きた?
唐突なラブロマンスらしきものにびっくりだよ!
「種族の認識の違いみてえだなァ…」
「え、どういうことバッカスさん?」
「オレらにゃただの称賛でも、森族にとっちゃ口説き文句って意味になるらしい」
「ええ…?」
特に森族は物を作ることが得意な種族だ。
そのせいか、作ったものを褒められる、腕を認められるということは、その作り手自身を認め許容する。
作り手への好意の言葉、のように変換されるらしい。マジで言ってる?
「え、じゃあ森族の間では作品を褒めたりしないんですか?」
「するわよ!でもほぼ家族からね。他人だともっと研鑽しろ、みたいな言い回しが多いわね!」
「ああ、上を目指せっていう激励みたいなものか」
「今のままで素晴らしいよ、みたいな言い方は、その人と共に歩みたい、みたいな意味になるんですよ~」
「何故なのだよー!?普通にただの称賛なのだよ!僕は角のある子がいいのだよー!」
「角…?」
「でもベルさん、元々嫁を探してるんじゃなかったの?いいじゃん、見つかったよ」
「何で妥協してこの子にしとけ、みたいな言い方するのだよ!?」
「いやあたしベルさんが誰と結婚しようがどうでもいいし…」
「ご尤もだけど酷くないかナズ!?」
同じ趣味(?)があるならいいんじゃないかって気はするけどな。
元々獣族相手は難しいかも、みたいなこと言ってたじゃないか。
少なくともベルさんが物作りをすることは肯定してくれると思う。
となると…いいんじゃないか?という結論になるわけで。
「人間族か森族から探す方がいい、って言ってたじゃないですか」
「でも角がないのだよ…獣族がいいのに」
「獣族は物作り好きな子が少ないってのも理解してるんだろ?ここで有力候補出たんだから前向きに考えろって」
「何で僕が説得されてるのだよー!?」
「いいわよあんた達、もっと言ってやって!」
「応援するなー!」
「お姉ちゃんは賛成ですよ~」
「姉なら止めるのだよー!」
実際、魔族と森族って有りなんだろうか?
そもそも、この森族の二人、ベルさんが魔族って知らないんじゃ?
あとベルさんて一応王子みたいなもんだし、ホイホイ決めていいものじゃないか…?
その割には「嫁探してこんかい」って放り出されてるけど。あ、ならいいのか?
「ぼ、僕は、魔族なのだよ!」
「ふうん、そうだったんだ」
「反応薄っ!!!」
「魔族で物作りが好きって珍しいですねぇ」
「軽っ!!!」
「どうやら種族については問題なさげか?」
フードは元々被ってないにしても、今のベルさんはカツラ帽子を被った上で羽も角も引っ込めて人間族に扮していた。
さすがに角出しっぱなしはまずいと思って、断腸の思い()で引っ込めてくれてたらしい。
その引っ込めていた羽と角を出してカツラ帽子を脱いで黒髪を晒して正体を明かしたというのに、返ってきた反応がこれなので解せぬという思いなんだろう。
どんどん断る理由が無くなっていってるような気がするのは僕だけじゃないと思う。
「ていうか魔族ってことは魔族領にツテあるわよね。魔晶石とか手に入ったりするかしら!?」
「利用する気満々なのだよ!」
「何よ!代わりに神木の枝とか皮をあげればいいでしょ!等価交換よ!」
「神木を勝手に手折ったり削ったら森族を敵に回しかねないのだよ!」
「平気よ、パパに言えばいくらでもくれるわ!」
「私たち、集落の長の娘なので、ちょっとツテがあるのですよぉ」
「世界樹の管理とかしてるわよ!」
「っハア!?世界樹だとお!?」
「…外交問題になるのだよー!」
あれ、この森族の二人、実は結構なお嬢様では…?
世界樹って、ちょっと凄いワード出てきたけど。
ん?ユグドラシルって世界樹じゃ…?いやさすがに別物だよな。まさかオリジンなわけないよな。
だって今、新田くんにテイムされてるはずだし。
てか、身分としては結構なものってことは、釣り合ってしまうのでは?
ベルさんは魔王の息子で、森族の姉妹は世界樹を管理してる集落の長の娘、って…
「おいさすがにまずいだろ!っつかそんな爆弾発言こんなとこですんな!とんでもねえ大物かよお前ら!」
「え、やっぱ凄いことなのか…」
「世界樹ってすごいもんってイメージあるもんなあ」
「世界樹はいくつかあるが、どれもマナの循環に欠かせない神木なのだよ。…まあ、植わっている世界樹はオリジントレンツ様の苗木なのだが」
「知りとうなかった!」
に、新田くーん!君がテイムしてる子、どえらい存在だったよー!
ツリーハウス快適ひゃっほーとか言ってる場合じゃないよー!
「お、おい、オリジン、て…」
「あらバッカスさん、オリジン様のこと知ってるの?人間族はあまり知らないみたいだけど…さすがユグドラシル様ね!」
「私たち、一度だけお会いしたことがあるのですよ~。普段は森族領をうろうろしてるみたいですけど」
「へ、へえ…」
まさかレナーエっていう最弱魔物に扮して新田くんにテイムされてるとは思うまい…
これは言ったらあかんやつでは。全員で目配せし合って「黙っとこうな!」と意見一致した。
ベルさんとバッカスさんはそんな僕らを横目で見て「もしや知り合いじゃ…」と察したらしい。ごめん。
うん、オリジンが何匹か召喚者にテイムされて旅してるって話したからな。何のオリジンかまでは言ってないけど。
あ、バッカスさんには僕ら以外の召喚者については話してなかったっけ。
でもオリジンの知り合いって話はしたから、そこからユグドラシルも知り合いかもって連想したかな?
「どうしたのよあんた達?妙な反応するじゃない」
「うえっ!?なななな何でもないよ?うん!俺おかしくないヨ!」
「そそそそう!新田くんにテイムされてるとかそんなこと思い出してないし!」
「…は?テイム…?」
「あっ」
「ナズ…」
「フギャー!やらかしてもーたでー!」
「やっぱりオリジントレンツ様とも知り合いかー!変な反応してるからもしやと思ったのだよー!」
「どっ、どういうことよ!?テイム!?ユグドラシル様をテイムしたとか言った!?わ、私たち森族の守り神に等しき存在を!?」
「さすがにそれは、聞き逃せないのですが~…」
ぽやぽや森族ですら聞き逃せないと。あ、うん…
ナズは顔を覆って打ちひしがれてた。もうこうなったら話してしまう方がいいかな、これ。
「ええと、お二人はオリジントレンツさんの眷属とか、そういう…?」
「いや違うけど!でも私たちの両親はユグドラシル様の眷属よ!私たちも一人前になったら眷属にしていただけるわ!」
「へー、じゃあお姫様みたいなもんか?」
「別にオリジン様の眷属と王族は同義じゃないのだよ」
「そうですね、それだとサンだってお姫様になってしまいます」
『我は姫などという柄ではないのだが!?』
「ディーンさんだって王子になるもんな」
「ピフォルとかフレムバードだって…」
『魔物に王子も姫もないのだ』
「…待って、何か知らない声が聞こえるんだけど!?」
「もしかして、念話の使える魔物、ですかぁ…?というか、オリジン様の眷属の知り合いがいるんですかぁ…?」
「ハッ、そういえば話の内容的にそうなるの!?」
少しは剣呑な雰囲気が和らいだ。
僕たちが不敬を働いたとか、そういうことをしたわけじゃないと薄っすら察してくれたのかもしれない。
バッカスさんは額を押さえて「頭いてえ」みたいな顔してたけど、他のみんなはもう話す方向で意見一致したようだ。
そんな顔してた。
「一言で言うと、僕たち四人は召喚者なんだ。勇者って言う方が通じるかな?」
「…は?」
「証拠の黒髪です。偽物の髪で誤魔化してます」
「あらぁ、綺麗な黒髪ですぅ」
「はあ!?ほんとに!?」
「それで、俺とリオくんの従魔がオリジンなんだ。俺たちを元の世界に戻すための旅に同行してくれてる」
「「…オリジン様!?」」
『オリジンスライムのラムです。エレメンタルスライムです』
『オリジンバードのスーなのだ。フェリックスという種族なのだ』
ラムとスーは紹介と同時に元の姿になっていた。スーはさすがに小型化状態だけど。
今まで見たことがない形状の魔物だったのだろう、三人は目を見開いて凝視していた。…バッカスさんまで。
「ゆ、勇者って、何よ…?」
「確か異世界人とか何とか…これ、御伽噺じゃなかったんですかぁ…?」
「いやあ、異世界人で間違いないですねー、俺たち二ヶ月ちょい前にこの世界に来たばっかりで」
「まあ証拠出せって言われてもスキルいくつか習得してるとか、故郷の話くらいしかないんですけど。あ、文房具とか出す?あっちの世界の」
「せやな、紙とかボールペンとか見たら納得するんちゃうかな?あとはアキ兄の料理とか?おにぎり見せる?」
「それか、日本語…文字でも書きますかね。ひらがなカタカナ漢字。全部見慣れないものでしょうし」
「み、見せてもらおうじゃないの!」
「というか普通にそれは気になります~」
僕の召喚からルーズリーフとボールペンを出して配り、名前やら何やらを書き連ねた。
さすがに即興で出来るものじゃない上に上質な紙と筆記具に疑問は消えたようだ。
「これは…異世界のものって言われた方が納得できるわね…見たことないもの」
「魔道具でもないのに、インクもつけずに書けるペンだなんて…」
「それ軸の中にインクが仕込まれてるから、それが無くなるまで書けるんだよ」
「…そういうのがポンと出てくる時点でおかしいですぅ」
「いや、でもこれ、あっちじゃ安価な文房具だし…100円とかで売ってるし…」
「えん?」
「あ、100ゴルダって言った方がいい?円は僕たちのいた国で使われてる通貨の単位」
「これが…100ゴルダ相当だと…!?10000はするだろ…!?」
「いや普通に誰でも買える消耗品だよ、ボールペンなんて」
「異世界恐るべしなのだよ」
「わかったわ、あんた達、間違いなく異世界人ね。常識がまるで違うもの」
「あ、はい…」
そこまで?ていうか決め手がボールペンってどうなの?
こんな量産品が褒められて、何か微妙な気持ちだ。いやボールペンは便利だし必需品だけども。
「それで、ユグドラシル様が何だって?」
「同じ召喚者の一人にテイムされてますね。同行者にもなってくれてます」
「…そういうことですかぁ」
「まあユグドラシル様は慈悲深いからね!召喚者の救出に名乗りを上げるのは当然よ!」
「つーか、それでか…それで、王都から黒髪の子供を探せなんて命令来やがったのかよ」
「まあ多分逃げた召喚者を連れ戻そうとしてるんだと思うな。誰が戻るか」
「…ねえ、もしかして、合流の魔道具の使い道って…」
「連絡取れてる召喚者のマナ登録して、僕たちと合流出来れば何ヶ月もの道のりを短縮出来るかなって。今、僕たちが一番魔の森に近い所にいるから」
「なるほど~そういう目的だったんですねぇ」
「あ、リオ兄そんなこと考えてたんだ?てっきりあたし達がはぐれた時の対策かと」
「それもあるよ。実際、今までに二回も分断されてるから不安になったのもある」
「枠は12人なんですから、私たち全員登録しても使いまわせるでしょう」
「ああ、俺たちのマナと、合流したい組、か。みんな三~五人パーティになってるから確かにイケるか」
抉れ海組がまだ七人だけど、そろそろ別れて行動しようという話になってるらしい。
というか、この合流の魔道具の使い方は僕が勝手に出来るかもって考えただけのものだ。
誰にも相談してないので、本当にやるかどうかは不透明である。
「でも、あたしらでもかなり時間かけてここまで来たし、ショートカット出来るならいいんじゃないの?」
「元の世界に帰ることだけが目的ならな。まだ迷ってる子もいるかもしれないし、そうするとこの世界を見て回る機会を奪うことになる」
「…私たちにとっての、シェリルちゃんとの出会いなんかが、皆経験出来ないってことですね」
「あー、その出会いは確かにいい出会いだったもんな。フェンリル様とも知り合えたし、シェリルを助けられたし」
「…お前らとんでもねえ経験してきたな…?オレの42年より凄まじい体験してねえか…?」
「異世界に飛んでる時点で滅多にない経験だと思いますけど」
「そうだったな」
「何であれ、掲示板とやらで報告と相談してみるといいのだよ。こちらで勝手に決めるわけにもいかんだろう」
「そうですね。自分たちで進みたいというなら、本来の私たちの合流用に使えばいいんですから」
「うんうん、好きに使えばいいわ!どっちみち悪い使い方するわけじゃなさそうだし!」
「そうですねぇ…あれ、召喚者の役に立てたなら後でユグドラシル様にお褒めいただけるのでは…?」
「ハッ…!?」
感謝してるのは確かなので別に報告してくれていいけど…
僕たちも掲示板で書くし、そうしたら新田くんがユグドラシルにこの森族知ってる?とか聞く可能性はある。
なので、後とはいわず、何なら今日中にユグドラシルに知られるんじゃなかろうか?
「というか、そうよね、この子たちが召喚者だって言うなら、ユグドラシル様に代わって私たちがお役に立つべきでは…?」
「ええ、そうですねぇ」
「………ん?」
あれ?何か変な方向に話が向かってないか?
代わりも何も既にユグドラシルが力になってくれてるんだけど?
「ベル…ダーリンも協力してるみたいだし、私たちも同行して協力してあげてもいいわよ!」
「何のこっちゃなのだよ!」
「ダーリンって、こっちでもその呼び方あるんだ…?」
「そう翻訳されてるだけかもしれませんよ」
「ベル…ダーリン…ベルリン…」
「壁やん」
「リオ兄さんシャラップ」
「あい」
元ネタがわからないクラーフ組が「?」って顔してる…
ごめん、突っ込まないで…こっちの世界にある国の地名ってだけなんだ…
「あのぉ、そんなわけで、魔の森まででも同行していいですかぁ?邪魔にはならないと思いますので~」
「というか、森が近いなら私たち森族がいると楽よ!魔の森周辺はマナが歪んで迷いの森になってる場所もあるしね!私たちがいれば迷わないわ!」
「あー、迷いの森は確かになあ…」
「脱出のために森を燃やしたらママにめちゃくちゃ怒られたのだよ」
「何してんのよ!?」
「ベルさん、方向音痴なのに何で迷いの森なんて絶対迷うとこ行ったんだ…」
「見慣れた森が迷いの森に変じたのだよー!」
「たまにあるやつね!」
「あるんや!?」
今まで見なかった…よな?
あとラージフールにいた時に迷いの森なんて情報はなかった。
もっとも、あそこは魔の森から遠いから、魔の森付近で起きやすいという現象の情報は集まってなかった可能性もある。
『高濃度のマナによる空間の歪みと幻覚で迷いの森と呼ばれる疑似ダンジョンが発生するです』
『魔力感知でそういう場所は察知出来るのだ。今まで近くに発生してたら主たちを遠ざけて接触しないようにしてたのだ』
「…近くにあったんや!?守ってくれてたの!?ありがとー!」
「ひえ…みんながいなきゃ迷いこんでたかもしれないのか…ありがとうな…!」
「ああ、魔力感知があるなら確かに避けられるわね!オリジン様なら、持ってるわよね…」
「森族の有用性が無くなってしまいましたぁ」
「…んなことねえだろ。森の中での方向感覚は正確って聞くぞ。他にも色々あるらしいし、森の中じゃ森族に従えって言われるくらいだ」
「へえー、すご」
「召喚者にどれだけ有用性が示せるかはわからないけど、…まあお得よ!どう?」
「ええ…?」
カーくん、もういっぱいいっぱいなんだけど…
正直、彼女たちに同行してもらうのは、僕たちにもメリットはある。
何しろ、ギルドに黒髪の子供を探せ、なんて命令(聞く気はない)が出たわけで。
そうすると、自然、その年頃の子供は注目されるわけだ。しかも『その年代しかいない子供の集団』は特に。
ここにベルさんという大人が混ざっていることで、ベルさんが僕たちの保護者にも見えている。
そんなところに、大人の森族が加わったら?しかも冒険者の。
命令が出ている子供かどうかは、その森族の冒険者が既に調べてるだろうから標的じゃないだろう。そう思わせることが可能だ。
ベルさんがいることでそう勘違いする人もいるだろうけど、彼は冒険者じゃない。なので黒髪の子供を探してるという情報を知らないから調べてないと思われかねない。
既にギルドでベルさんは冒険者じゃないと言ってしまっている。知ってる人は知ってるのだ、ベルさんが冒険者じゃないということは。
だから、冒険者という身分を持つ大人が同行してる、というのは…メリットになり得るわけで。
「ああ、確かにそういう考え方も出来るか」
「なるほどね、私たちの存在自体があんたたちを黒髪の子供…召喚者じゃないと思わせやすくなるってことね?いいわよ、存分に利用しなさい!」
「その考えはなかったなー」
「冒険者の先輩後輩にも見えますよね…先輩の指導を受けてる後輩、みたいな」
「って考えると、一緒にいた方がいいのこれ?」
「ど、どこで寝るのだよ…あのテーブルの長椅子か?あれベッドにもなるのだったか」
「作るか、部屋」
「リオくんそんなあっさり」
「どの道、シルバーの部屋作る可能性あったしな。あいつがいない時使ってもらう、とか」
「…宿の話をしてるの?私たち、寝床はあるわよ。というか自室ね。壁があれば設置できるわ」
「壁…?」
壁があれば設置って、そんなウォークインクローゼットみたいな…
いや、これ召喚で出るものなんだから、この世界の人が同じもの使ってもおかしくはないのか?
魔道具のテントだって空間拡張されてる凄いものだし、ユグドラシルは即席でツリーハウスなんて作れるという。
となると、彼女たちが同じようなことをしても何らおかしくない、か。
そしてその予想は正解だったらしい。ナズのクロちゃんの扉と同じ…とは言わないが、木枠のようなものを出してきた。
木の洞の入り口のようにも見えるな。ああ、普段は太い木の幹とかに設置して使っているらしい。
大きさは1mほどで、身をかがめて潜るような感じで入るようだ。クロちゃんより設置する場所は選ばないな。
クロちゃんの扉は平らな壁、それも枠以上のスペースが必要になる。けれど森族のものは入り口が木製の楕円形の枠。
多少なら曲げたりも出来るようで、必ずしも平らな場所でないと設置できないわけじゃない。木や岩にも設置できると。
…旅だと便利だなそれ。で、隠蔽術あるんだろ?自室への入り口、ハルの隠密みたいに隠せるってことじゃないか?
「とんでもねえ技術持ってやがんな、森族ってのは。これも森族の作品か…?」
「そうよ。旅に出る前に作れって言われてお姉ちゃんと一緒に作ったのよ」
「二人旅なのが確定してましたので、一緒に頑張りましたよねぇ」
「それは二人部屋なのか?さすがにそこに五人…七人は入らねえだろ。しかも一人は男ってよ」
「あ、そういえば召喚者様は四人とも女の子でしたねぇ」
「な、七人はさすがに無理だけど…」
「いや、僕たちも似たようなのあるから寝床は問題ないよ。ベルさんの分もあるし」
「あら、そうなんですかぁ。でしたら隠蔽範囲を広げるだけでよさそうですねぇ」
「あ、私『隠密』スキルを持ってるので安全圏の確保は出来てます」
「…すごいスキル持ってるじゃないの。私たちいらない…?いえ、役立てないとユグドラシル様の面子が…!」
「それに関しては合流の魔道具くれた時点で超助かってるんだけど俺たち」
「そうだな、それで充分だろう。だから同行する必要なんてないのだよ!」
「ベルさん…」
「何なら僕はここで別れ…」
『じゃあぼくのことは誰が持つの?従魔持ちの召喚者に預けるの?』
『駄目です、シャドーはベルくんに持ってもらうです』
「あーーーダーク様がいたのだよーーーー!」
「諦めましょう、ベルさん」
シルバーが来るまではダークを頼むよベルさん。
ん?そういや森族の二人にもバッカスさんにもシルバーの話はしてないな。まあいいか。
ラムとスーが創造神経由でユグドラシルに伝えたところ、ぜひ連れて行ってやって欲しいということだった。
ユグドラシルもこの二人のことは多少知っていた。どうも抜けてる姉妹なので森族領を出て旅をして世界の広さや厳しさを知って欲しいそうだ。
世間知らずが過ぎて、周りに心配されてるが、当の姉妹はどこ吹く風でマイペースを崩さないと。
奴隷商人に捕まってもまあいっかで済ましてたからな…世界の厳しさにぶち当たってるのに気にしないという、修行の意味がないただの旅になってるからな…
ちょっと常識を持った人と行動することで意識改革を狙いたい、というのがユグドラシルの意見だった。
僕が言うのも何だが、僕たち(異世界人)を常識人扱いして大丈夫か。いや、僕たちでさえ常識人の範疇に納まるくらい二人がアレなのか。
将来…100年単位で後の話だが、この姉妹のどちらかは集落の長になる。夫を支える形になるかもしれないが。
まあ、そうなった時、そうなる可能性がある人があまりにもぽやぽやでは問題だと。
長の家系の森族は長になる前の修行として旅をするのが習わしだそうだが、この姉妹はさすがにまずいと森族領の外を旅させることにした。
あ、ほんとは森族領内の旅で良かったんだ…
荒療治とも言える行いだが、それくらいしないとこの姉妹は「まあ何とかなるでしょ」精神で我が道を進む子になりそうだと。
既にそれで性格固定されてないか、とも思うけど、まだ矯正できるはずだと希望を持っているらしい。この子たちの両親が。
僕らに教育しろって言ってる???無理だぞ???
あと現在進行形で魔族を旦那にしようとしてるけどどうお考えで?ノーコメント?待たんかい。
ちなみに創造神はこの話をサタンにもしたらしく、サタンは…頭を抱えてしまったそうだ。うん…
まさか魔王の末子が森族(集落の長の娘)に求婚されてると勘違いして迫られてるとは思わなかったんだろう。誰も想像できんて。
「…お試しで、ビスムズまで同行してもらうとかどうでしょう?」
「そうだな、そのくらいなら…」
「あと新田くんにこれ話しとくか。既にユグドラシルから知らされてるかもしれないけど」
「知らされたっぽいよ。掲示板で何でやねんって吠えてるもん」
「掲示板…?まあともかく、ビスムズまでね!よろしく!」
「本気で…?いや僕に決定権はないけども…!」
「妹が行きすぎたら私が止めますよ~」
「本当に止めてくれるのか!?放置しそうなのだよ!」
「ふふん、ビスムズまでならゼイレムから一ヶ月ちょっとかしら。徒歩ならもっと長いわね。それまでに落とせば…」
「リオー!超特急で向かって欲しいのだよ!半月以内!半月以内で!何なら最短距離で突っ走って欲しいのだよ!」
「えええ…?」
「まあ頑張れお前ら」
「バッカスさん、他人事だと思って…」
「他人事だからな。まあ、悪い奴らじゃなさそうだから大きな問題はないだろ」
まあ、僕たちに不利益は無さそうだけども。ベルさん涙目ですがそれは。
そんなこんなで、森族の二人が一時同行することになった…のかな…?




