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158.銀級冒険者


ダークが僕たちの元に来た翌日、依頼を受けにギルドへ来た。

数日はギルドでまた情報が得られるかもしれないと思ったため、様子見でゼイレムに留まろうとみんなで相談して決めたのである。

虎についての続報もない以上、ビスムズに進むのもどうかと思うという意味もあるけど。


他の組だけど、アイさんたちは今日オーレンを発つそうだ。

元より出発は予定しており、宿屋にも近いうちに出ると告げていたため、不審には思われないだろう。

実際は黒髪の子供を探してるという情報を聞いて、すぐ発った方がいいと判断したためだが。

他に、移動速度の問題、そして新たに加わった精霊。物珍しさに見られることが増えたらしい。

それらを鑑みて、出来るだけ急いで発つことにしたという。それが今日だと。

最後にグランツさんにも挨拶したそうだ。オーレン組がまだ残ってるからというのもあるだろう。

オーレン組はもう少しオーレンに滞在し、オーレンで情報集め兼金策をするそうだ。

もっとも、彼らもそう長く留まるつもりはないらしい。

グランツさんも当然ギルドから情報が来たそうで、召喚者のみんなの心配をしてくれたようだ。

何だかんだで面倒見てくれたんだな、いい人…

ちなみに虎の件は伝えていない。悩ませそうだと思って、オーレン滞在組で伝えないと決めたらしい。

そうだな、まだハルを狙ってそうだとか待ち構えてそうだとか、グランツさんに言っても胃にダメージ与えるだけだ。

彼自身は出来る範囲で頑張ってくれたというのもあり、心労をかけたくないと意見一致したのだろう。

それに、ディーンさんの反応を見る限り、転移陣の存在はほぼ知られていないようだ。

グランツさんが転移陣の使用を考慮出来なくても仕方ない。


そして僕たちは今日もゼイレムのギルドで採取依頼をしようと思ったわけだけど。



「みなさん、討伐依頼はお受けになりませんか?」

「え?…採取依頼、駄目か?」

「いえ、いち職員としては大変ありがたいことなのですが。銀級への昇級条件に、一定以上の討伐依頼の成功がありますので」

「…銀級?」



何かと思えば、僕たち、銀級への昇級条件を満たしかけているらしい。

最初から四人一緒に組んで同じ依頼を受けてるので、四人全員同条件のようだ。

昇格条件はギルドへの貢献度のようなものや、依頼達成件数などがある。

そしてその一つに、討伐依頼の達成件数もあるようだ。これは、一定以上の戦力を持っているか計るためのものだろう。

が、今のままの受注状況だと、銀級への昇級は遠い。なので昇級条件に足りてない依頼を優先して受けてはどうか、という提案か。



「皆さん、依頼は真面目ですし、採取依頼に至っては納品先に喜ばれるほど。銅級なので受け付けてませんが、指名依頼のお話も頂いております」

「え、指名!?」

「採取のですね。品質が高いというか、採取方法がお手本のようだと以前の町でも評判だったようで、前に依頼を受けてくれた方にもう一度と望まれることがありまして」

「し、知らなかった…」

「まあ、指名依頼は基本的に銀級の中堅からです。銅級のため規定で受けられない、と先方には断っておりますので」

「そ、そうだったのか。ありがとう」

「いえ、それで…文字の読み書きや討伐依頼件数などを満たせば銀級に昇級が目前なのです、四名とも。ですので件数を稼いでは、と」

「あー…そういやあんまり討伐依頼は受けてないなあ」

「そのようですね。トランタ、ガレメナ、ゼイレムときて、依頼の八割から九割が採取依頼ですから」



文字の読み書きは既に出来るので、実質討伐依頼件数だけか?他にもあるかもしれないけど。

受付の人に、字の練習にどうぞとテキストっぽいのをもらってしまった。うん、読み書き出来ないフリしてるもんな…

なお、件数についてはあと10件以上受けなければいけないそうで、すぐ昇格出来るというわけでもない。

トランタでもガレメナでも難易度の低い討伐依頼しか受けてないから、必要件数が多いんだろう。

しかも、銅級としてベテランになった人たちが討伐するような、若干難易度が高い討伐依頼だ。

これは魔物自体が強かったり、討伐件数が多かったり、隣村に遠征だったりと、今まで手近で済ませてたような討伐依頼では済まないやつである。

…ギルドの依頼では受けてないけど、ダンジョンの攻略とかでそこそこ魔物とは戦ってるから、討伐依頼を両手で数えられるほどしか受けてなかった事実にビックリした。

そういやダンジョンクリアしましたって報告とか全然してなかったもんなあ…



「ど…どうする…?今日、討伐依頼受けとく…?」

「ええ…?まあ、魔物図鑑見てこの辺の魔物は多少わかるけど」

「うーん…常設の討伐依頼あたりで一度様子を見ますか…?私たちゼイレムに来てまだ数日ですし」

「き、気持ち悪いのいないよね…?」

「虫ならいるよ」

「ギャース…!」



悩んだ末、ハルの案「常設の討伐依頼」を受注することにした。

せっかく勧めてくれたわけだし、ここで断るのは悪手な気がしたからだ。

普通の冒険者は昇級を目指す。銅級のままでいいです採取しますなんて言ったら、怪しまれかねない。

本当は、冒険者の身分があればそれだけでいいので、銅級で全然オッケーだし満足してる。でも、それを言う訳にもいかない。

ひとまず依頼は「フォレマンティス20匹の討伐」になった。アキ兄さんは食えない魔物…としょんぼりしていた。



「みんなどうしたのだ?受付で何か言われていたようだが」

「ベルさん…今日は魔力草採取じゃなくてフォレマンティスの討伐になったよ…」

「は?何故???」



ベルさんは冒険者じゃないので、ギルドの受付コーナーから離れた場所で待っててもらった。

けど、僕たちのやりとりは見えていたらしい。声までは聞こえなかったようだが。



『銅級から銀級に昇級するとかいう話をしてたね』

「…!」



どうやらダークは聞こえていたらしい。というか、スキルに『地獄耳』があるようだ。それで聞こえたのか。橋本くんと同じスキルだな。

そしてそれを聞いて、ベルさんも僕たちが受付で話してた内容を察したらしい。

こんな所で詳細を話すわけにもいかないので、すぐに全員でギルドから出た。

依頼は受けてしまってるので、町の入場門へ向かう。



「討伐依頼になっちゃったけど、ベルさんどうする?」

「もちろん一緒に行くのだよ。道中よさそうなものがあれば勝手に採取する」



相談なく予定が変わってしまったことについては気にしてないようだ。よかった。

しかし、僕たちがこうなるってことは、他の冷遇組も銀級に昇級する可能性もありそうだな。どうするんだろう。

受付の人が言うには、銀級からは指名依頼の対象にもなってしまうみたいだし、多少ギルドからの強制力が発生する。

それだけに報酬のいい依頼も紹介してもらえるわけだが。

…僕たち、そういうの求めてないからなあ…


町を出て、標的がいそうな森に進む。フォレってつくだけあって、森にどっさりいるらしい。どっさりいないでほしい。

もう周りには誰もいないので、さっき聞いた昇級の話をすることになった。



「みんな、昇級の件どう思ってる?」

「僕、銅のままでいい派」

「あたしも」

「私は半々ですね。ギルドカード失効の期間が伸びますし…って、もう魔の森が近いのであまり意味はありませんか」

「次はもうビスムズだしな。でも馬車だと一ヶ月以上かかるんだよなあ…」

「馬車での移動を想定して進んでるのか?馬の魔物とかなら半月程度で着くのだよ」

「…マジか。そっか、何も馬車想定じゃなくていいのか」



カーくんだともっと速い。けど、速い分寄り道が必須になっている。

だから頻繁に採取とかしてたわけだけど…そっか、馬の魔物とかそういう想定にしてしまってもいいのか。

どうせ何の移動法を使ったかまでは詳しく聞かれない。雑談などで聞かれることはあるみたいだけど今まで聞かれたことはない。

ちょっといいこと聞いてしまった。



「何て言うか、今んとこ銀級になるのってデメリットしか見えないんだよな。俺も銅でいい派だよ」

「指名依頼、な…」

「定住するわけじゃありませんから指名依頼は困りますよね」

「今までみたいに気軽に別の町に移動~なんてのも難しくなりそう。ここにいて!って言われたりしない?」

「ここに行って!もあるかもな」

「やっぱヒラが一番楽だよ。役職なんて持つもんじゃない」

「急に社会人みたいなこと言い出すじゃないですかリオ兄さん…」

「まあ、元の世界に戻るなら昇級しても無駄になるのだよ」

「ですよね。てことは、この世界に残る場合は昇級を視野に入れた方がいい感じでしょうか」



どの道、すぐに昇級出来るわけでもない。

条件を満たさないうちにビスムズへ向かえばいいだろう。どうせあと数日くらいしかいる予定もないし。

あと10回以上の討伐依頼なんて、一日何件も受けないと達成出来やしない。



「そだな、文字の読み書きも出来ませんーで通しちゃっていいだろうし」

「確か、外泊が問題なく出来るか、という部分もある…が、これは全く問題ないな、うん。町から町へ移動してる記録があるようだし、達成済みのはずなのだよ」

「でもカーくん使っちゃいけないってなると、無理な気がするぅ」

「あとは数日に渡る任務、というのもあったはずだ。僕も詳しくはないのでそれ以上は知らないのだよ」

「ううん、助かる。ありがとう。…僕たち色んな意味で規格外すぎて、まっとうな冒険者やれそうにないなこれ」

「わかる。カーくん無しとか普通に無理やしアキ兄の出来立てご飯食べれんとか無理やし隠密無しでぐっすり寝れるかいアホンダラって感じ」

「同行する試験官とかいたらさ、食うのは保存食オンリー、トイレもその辺でしろとか普通に言われそう」

「無理!!!」

「普通、旅の最中にトイレとシャワー気にせず使い放題の方がありえないのだよ…」

「日本人の生活水準でごめんな!」



…結局、銅級のままで行こうかという結論に至った。

一応これ掲示板でも共有しとくかな?みんな採取依頼をメインに受けてるみたいだから、僕たちと条件はほぼ同じだろう。

討伐依頼じゃない戦闘はそこそここなしてるみたいだけど。でないとレベル5とかにならんもんな…

てか、採取依頼を優先してくれる冒険者をさっさと銀級にして、難易度の高いものの採取を頼みたいっていう下心もありそう。


感知系持ちが大量にいるので、フォレマンティスの討伐は結構さっくり終わった。

常設依頼になるくらい繁殖してんのか…って思ったところで、カマキリの卵というある意味大惨事と同義な単語を思い出して「アッ(察し)」てなった。

この世界のカマキリが同じ増え方かは知らんけど、ひとつの卵にどっさり入ってるなら、大量にいるのも当然だろう。

卵、発見次第燃やしてしまえばいいのでは…?



「帰ろっか。急げばおやつに間に合うかも」

「遅くなりすぎたらギルド混むしな。賛成」

「せやな。あたしそろそろ『糸操作』上がるかと思ったけどなかったな」

「んー?あと48だって。服作りしてたら今日中に10になるんじゃないか?派生能力何だっけ?」

「糸操作のレベル10だと『伸縮・微』ですね。鞭術でもあった派生です」

「えー、糸も若干伸びたりするってこと?ちょっとステキ。今日頑張ってレベリングしよ」

「あと私、闇魔法がレベル10になって『影潜』覚えましたねえ」

「…サラっと言っていい内容ちゃうからな!?おめでと!」

「おお、影潜か!ハルが使うとすさまじいことになりそうなのだよ!見つけられる自信がない!」

『…潜ってみる?』

『そわそわするんじゃないです、シャドー』

「…ダークくんに潜ることも出来ると…?ちょっとヤバイ派生な気がしてきましたね」

「カーくんの中で試してみれば?温室とかなら多少木もあるし作業場あるし、色んな影あるだろ」

「そうですね!じゃあ帰りましょうか!」



戦利品(討伐証明)を持って、おやつに思いを馳せながらゼイレムへ戻る。

難易度も高くない依頼だったので、依頼完了の報告も提出もあっさり終わった。



「お早いお帰りでしたね。次はもう少し難易度の高いものを選んでみては?」

「うーん…考えとく」

「フォレホブゴブリンなどはどうですか?」

「食えないやつじゃん。やだ」

「そこを何とか…!みんな嫌がって受けてくれないのですよ…!」

「俺だって嫌だよ!女の子いるんだぞ!」



依頼報告は一人でいいってアキ兄さんが言ったので任せたわけだけど…受付嬢に絡まれてる。

押せば聞いてくれそうって思われてるのかもな。アキ兄さん、いい人だからな…

でもおやつが待ってるということもあり、アキ兄さんも早く話を切り上げたいと思ってるらしい。バッサリ切ってる。

それでも諦めないのは、さすが受付嬢と言うべきか。数多の癖強冒険者を相手してきただけある。

…冒険者が癖強かは知らないけど、多分あの手この手で受注率低い依頼を受けさせてたんだろうと思わせる対応だ。

依頼を終えた冒険者の山に混じりたくないため、冒険者の少ない時間に来てしまったのが裏目に出たかこれ。イコール、受付嬢が暇な時間ってことだもんな。

うーん、今日はいい情報無さそうだし、引き上げて…明日は休むか?本当は冒険者活動の予定だったけど、この調子だとなあ…



「…ぷぎぇ~…」

「ん?ラム?…うちの子がお腹空かせてる!ご飯あげなきゃ!帰る!」

「あっ、救世主がぁあ~…」



ラムがアキ兄さんの足に軽く体当たりしたと思ったら…ありそうな理由で話終わらせちゃったよ。

いや、実際腹減ってるのかもしれないけど。

それにしても可愛くねえ鳴き声…あ、下位スライムってああいう鳴き声なのかな?

ともかく、ラム、ファインプレー。アキ兄さんはやっとこっちに来れた。これでやっと帰れる。


そう思った直後、慌ただしく駆けこんできたオッサンがいた。



「緊急だ!すぐ出られる冒険者はいねえか!金級…いや、銀でもいい!」

「バッカスさん!?どうされました!?」



うわトラブルか?

少なからずギルド内にいた冒険者たちも慌てている。

でも、僕たちは銅級だし、関係ないよな。スタンピードとかじゃありませんように。



「ダンジョンの『変動』に巻き込まれて行方不明になった冒険者がかなりいる!救助要請だ!」

「ええ!?」

「はあ!?今、ってことはあそこかよ!」



…変動?何だっけそれ。何か聞いたことあるな。

あ、黒の鉄槌の人たちに聞いたやつだっけ。

確か、周期ダンジョンで起こるやつだ。一定周期でダンジョンのマップが切り替わって初期化され、配置されてる宝箱なんかも復活する。

その切り替えのことを『変動』って呼ぶんだったか。

…でも『変動』に巻き込まれる、って何だ?僕たち以外は冒険者も受付嬢もみんなわかってるようだった。

ざわめいて、慌てているようだ。少なくともまずい事態が起きてるらしいことはわかった。



「…私たちは邪魔ですね。出ましょう」

「そ、そうだな」



どうやらハルも何が起きてるか把握してるようだ。後で教えてもらおう。

それに、出るのは賛成だ。冒険者として未熟な僕たちがこの場にいても邪魔にしかならないだろう。五人プラス従魔は物理的にも場所をとって邪魔だ。

そもそも事態を把握してない。アキ兄さんもナズもわけわからんって顔してるし。

そう思って出口に向かえば、受付に怒鳴りこむように話していた乱入者が怒号を飛ばしてきた。



「オイてめえら!何逃げようとしてやがんだ!この腑抜けどもが!」

「ば、バッカスさん、彼らは銅級です!」

「あん?よく見りゃほぼガキじゃねえか、こりゃ悪い!」

「…すまんが、僕は冒険者じゃないただの同行者なのだよ…」

「唯一の大人が冒険者じゃねえのかよ!」

「俺たち、いても役に立たないどころか邪魔になるだけかと思ったのでー、そういうわけでさよならー」

「…待て、てめえら」

「は?」



何で呼び止めるんだよ。邪魔だろ、銅級の、しかも子供なんて。

めちゃくちゃ嫌な予感がする。多分、みんな同じことを思ってる。



「オイ姉ちゃん、あいつら依頼報告に来たんだろ。何の依頼受けてた?採取か?討伐か?手伝いか?生産か?」

「と、討伐ですね…これ以上は申し上げられませんが」

「ああ、詳細はいい。つまり、討伐依頼こなした後で、ほぼ消耗がなさそう、ってことだな…?」

「…は?」

「見ろ、周りのヤツら。怪我してたり武器や防具がボロくなってんだろ。てめえら、随分綺麗じゃねえか」

「…だって、常設の、フォレマンティスの討伐だったし…」

「難易度は低いが、あの素早いマンティスとやりあって切り裂かれた様子がねえってこたあ、避けたか防いだか、対抗手段があるってこったな…?」



うげえ…何か嫌ぁな感じにニヤけた顔してる。まさに、カモを見つけた、みたいな。

まあ実際、間違ってはいない。あいつらのカマ攻撃は半分くらい物理壁で無効化したからな。残りの半分?攻撃は最大の防御って言うだろ。

カマのある手をぶった切り(剣)、切り落とし(短剣)、切断して(糸)攻撃できなくしてたんだよ。怖。

ただ、それを僕たちを見ただけで対処できたって言い当てたってのが、非常に気まずい。

こいつ、もしかしなくても僕たちを「銅級じゃなくて銀級並の冒険者」って判断したんじゃ…



「運が悪いと思ったが、意外な掘り出し物を見つけた気分だ。おい、姉ちゃん。こいつらを救出に同行させる。依頼票作っとけ」

「ば、バッカスさん、ですが…彼らは冒険者になって日が浅く、この町にも数日前に来たばかりで」

「報酬にイロつけとけ。今は緊急事態だ。…選んでられねえんだよ。武器や防具を修理に出す予定のヤツや怪我人や酒飲んでるヤツ連れてけねえだろ」

「そ、それは、そうなのですが…」

「ここにいるヤツの中で、こいつらが一番役立ちそうだ。感知持ちらしい従魔もいるしな。二次被害が起きる可能性が少ない」



何か勝手に話が進んでる…今のうちに逃げた方が…と思ってハルを見ると、諦めた顔をしていた。

あ、これは逃げても無駄ってことか。そうだな、ギルドに記録でもされたらビスムズに向かったとしても…別人に扮せばワンチャン?

でもハルはそこまでする必要がないって判断してるのかもしれない。

『変動』が、そこまでまずいものということかな…?放置しない方がいいってハルが判断してるみたいだし。



「し、しかし、バッカスよお。俺らが不甲斐ないのは事実だが、ガキに変動の対応任せちまうのも…」

「少なくとも判断力はありそうだ。そこらのガキより頭は回るだろうさ。てめえはいいからその利き腕の怪我治せ。一日麻痺残るだろうから明日は休むんだぞ」

「ぐっ…だが、ウチの子と同じくらいの年の子は…」

「うるせえ親馬鹿。冒険者活動してる時点で自立してんだよ、未熟者扱いすんな。逆に失礼だ」



…何か、舐められてるというより、実力以上の評価がされてるっぽいんだけど。何で?

どこでそんな判断されたんだ。意味わからん。

それより詳細わかってないんだけど、聞いていいやつかなあ…



「来い、お前ら。悪いが『強制指名依頼』だ。ダンジョンで起きた変動に巻き込まれた奴の救出。時間との勝負だ」

「きょ、強制指名依頼…!?俺ら銅級なのに?」

「むしろ、銅級にさえ適応される指名依頼、よほどの緊急事態が発生した際にのみ行使されるものですよ」

「変動に巻き込まれた、ってのが、そこまでなのか?」

「説明は道中でやる。依頼後に疲れてるだろうが、緊急事態だ」

「はーい…アキ兄、もう諦めよ。さっさと片付けよ。すぐ終わるかもわかんないけど」

「そっちのお前は冒険者じゃないんだろ?これは冒険者にのみ適応される。お前は来なくていいぞ」

「いや、行くのだよ。どれだけ役立てるかはわからんが、力仕事ならこの四人よりは役立てるはずだ」

「人手が圧倒的に足りねえからありがてえが…報酬は出ねえぞ。オレが個人的に出すくらいだ」

「それは終わった時に考えるのだよ」



何かよくわからない状況ながら、強制イベントが発生してしまった。

思えば、ギルドでトラブルに巻き込まれたの、これが初めてか…?


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