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152.初期スキルレベル12


「…さて、一人ずつスキルレベル12になった件について、詳細を聞こうか」

「リオ兄、何でどっかの司令みたいなポーズしてんの」

「テーブルに肘つかないの」

「ごめんなさい」

「アキ兄さんがお母さんみたいで…」

「えーと、何かあったのか…?」

『なかなか上がらなかったスキルレベルが上がったです。上位スキルの』

「おお、めでたいではないか!」



全然関係ないのに喜んでくれるベルさんいい人だな…魔族なのに…

やっぱこの世界の魔族っていい人なんだろうか。



「まず俺からでいいかな?派生能力生えたよ。『撹拌』だって」

「かくはん?」

「へー、じゃあミキサーいらずになったか」

「ああ、混ぜる撹拌のことやったか」

「いいじゃないですか。ケーキ、もっと作りやすくなりますよ」

「うん、卵とかも混ぜやすくなるな。時短できるの嬉しい!」

「…お、レベル13への経験値あと1157だ。必要経験値が1200になってるぞ!」

「マジか!やったー!」

「うわああおめでとアキ兄ー!」

「やりましたね!」

「じょ、上位スキルの経験値がそんなに少ないのか…?低レベルとはいえ、本来もっと…」

『召喚者ですからね。でもさっきまで、レベル10以降は経験値一万だったです』

「僕はそっちの方が妥当に思うんだが…」



ああ、クラーフの人間としてはやっぱりそうなのか。

召喚者ってやっぱ異世界人ってだけあって規格外なのかな。

そういえばベルさんも上位スキル持ってるもんな。大体の相場がわかってるんだろう。



「次あたしでいいかな?あたし、リオ兄と同じ『自動修復・小』覚えたよ!」

「あ、同じレベルで覚えたのか。おめでとう!これでナズが作った服とかの修復速度上がるな!」

「おお、超欲しかった派生能力じゃんか!」

「いいですね、いいですね!これ私たちにも恩恵大きいやつです!」

「自動修復とは便利な派生なのだよ。被服スキルはそんな派生能力があるのだな」

「ベルさんにあげたカツラ帽子にも恩恵あるよ」

「本当か!素晴らしいな!」



どうやら作成物全てに恩恵があるようで、冷遇組全員に配った服にも効果が及ぶ。

元々『自動修復・微』はあるので、その効果が高まる形だ。あとで掲示板で報告しておこうか。

既存の作成物に効果が及ぶことをまだ検証してないのに何でわかったかって?僕の無機物干渉スキルがそうだったからだ。

ハルの隠密練習用に出していた木の板とかに聞いたら『自動修復・小』の効果があるよって返事があったのである。『微』しかなかったはずなのに。

新たに作ったものにしか反映されないわけじゃなくて、今までの作成物にも恩恵があると、そこで判明した。

なのでナズの『自動修復・小』は本当に恩恵が大きいわけで。



「二人と違って肩透かしなんですが、私は派生能力ありませんでした。消費MPが減ったとか、そういう強化だけですね」

「いや隠密は消費減るだけでめちゃくちゃ強いだろ」

「それに、あたしらと違って隠密はレベル11の時に派生あったしなあ」

「確か13では派生あるよな、隠密。楽しみになるな。ちなみにナズもハルもレベル13への経験値約1200になってるぞ」

「ほんと!?」

「わ、やりました!」



あと、アキ兄さんとナズは召喚も増えてるだろう。

確認してもらうと、やっぱり道具系が増えてたようだ。と言ってもまだ単純な作りで、一番複雑なのがピーラーとからしい。

アキ兄さんはおろし金を召喚していた。ピーラーは別にいらないそうだ。

でも手伝いに入る時はあれば助かるから、出来れば召喚してほしいかもしれない。

というか、他の冷遇組も欲しがりそうである。

ナズの方はチャコペンとか出たけど、これ既にミシンのオプションであるからなあ…しかも芯減ったら補充されるタイプのやつが。

今回出たのは普通の消耗品らしい。多分もっとレベル上がったらマナで補充されるタイプのが召喚できるんだろう。

僕が出すボールペンとかもそうだけど、こういう消耗品は自動修復系の恩恵ないんだよな。

と言っても芯は消費されるままだが、本体の部分に傷ついたりしたらそれは修復の対象になる。

力を入れすぎて折れたり、何かに削られたりしてついた傷は『自動修復』で直るらしい。使って消費された芯やインクは回復しないけど。



「とりあえず、わかった分だけでも掲示板で報告しておこうか。料理も被服も隠密も他に覚えてる子がいるわけだし参考になる」

「そうですね。必要経験値が1200になったことも、特に橋本くんには伝えないと。あとお礼も」

「やっぱ追加機能も経験値少なくするために必要やったんちゃうかな?タークくん頑張ってほしいな」

「そうですね、これで追加機能を実装したタークさんの経験値が下がったらほぼ必須行動で間違いないでしょう」

「ってなると、料理スキルと被服スキル覚えた組、追加機能も視野に入れるように伝え…既に入れてるから問題ないか」

「うん、トイレとかリビング欲しがってるから、多少余裕出来たらMP溜めるようにするだろ」

「…なあ、召喚者って子供の割にやたら頭良くないか?魔族の10代なんてもっとアホなのだよ」

『この世界の子供と比べても召喚者は頭いいみたいです。色々な教育受けてるみたいですし』

『まあ、中には馬鹿野郎もいるのだ。ヒャッハー組みたいな』

『あれらは知識はあれど、それを活かす能力に乏しいのだろうな』

『わたくし知ってるですの。そういうの、宝の持ち腐れって言うですの!』

「あ、その言い回し、聞いたことがあるのだよ」

「ちょっとこらナズ、ラテに変なこと教えただろ!?」

「ごめーん!」



うん、いい報告出来そうでよかった。晩ご飯も美味しくいただけそうだ。いつも美味しいけど。

さっそくレベル上がった所感を試すため、ご飯食べてまったりした後もスキル使って色々やってたようだ。

みんな勤勉すぎんか。僕は夜は運転すんなと言われてるので何も出来ることがない。

受肉した杖あたりを連れ歩いてカーくんの中を巡回するくらいで…



「あれ、ベルさん温室で何してんの?」

「ん?ああ、リオか。夜空を眺めてたのだよ。あと…これが少し気になったのだが」

「ああ、囲いか。育てた毒草とかをハルがここに持ち込んで加工するためのスペースだな」

「ふむ、そうか。少し僕がいじってもいいか?」



ハルは今、自分専用の畑で作業してるので、この囲いの付近にはいない。

無人だからこそベルさんも見てたんだろう。

そして思い出した。そういえばベルさんて『木工』スキル持ってたな。

この囲いはルートくんが簡易的なものを作ってくれたわけだが、作業できるスペースを広くしたくて僕の『変形』なんかで若干いじっている。

元は僕が出した木材なので、僕の『変形』の対象だったからだ。

けど僕自身は木工スキルも何も持ってないのでやや歪になってしまっている。

作業自体に支障はないのでそのまま放置して使ってるが…

木工スキル持ちが手を加えてくれるなら、本格的にやった方がいいのでは…?

当時のルートくんはスキルレベル低かったし、ハルもアキ兄さんも作業の場はそこまで必要としてなかった。

だから簡易的な作業場で、かなり小さいスペースだ。

でもハルもアキ兄さんも『栽培』スキルのレベルが上がってきてるので収穫量も増えている。

出来ればこの作業場、大きくしたいとは思ってたのだ。

いざとなれば僕の追加機能があるけど、アキ兄さんもハルもそこまでしなくていいと言っていたので手つかず状態という。



「…ハルと相談しよう。あとアキ兄さんも。ここ、二人が使う場所なんだ」

「そうか、それなら勝手にやるわけにもいかんな」

「使い勝手のいいスペースに出来るならありがたいからぜひやってほしいけど」

「僕としてもスキル経験値が稼げるし助かるのだよ。この世界のためにも、スキルレベルは上げた方がいいようだしな」



オリジンが身近な存在だと、そのあたりも教わってるよな。

創造神はスキルを取得したりレベルを上げたりして、この世界に溢れすぎてるマナを消費して欲しいらしい。

今回、ややイレギュラーではあるだろうけど32人も召喚者が連れて来られている。

単純計算、この時点で32個以上のスキルが取得されているわけだ。しかもほとんどが上位スキルを。

あとこれは僕も知らなかったことだけど、召喚魔法陣を消したことについてもかなりマナが消費されたらしい。

存在してる方がマナ消費されてると思ったけど、消す作業そのものにかなり世界に溢れるマナを使ったそうだ。…知らんかった。

それもあって感謝してくれてたのだとか。

何にせよ、僕たちがいる代で創造神の長年の願いが叶うかどうかは怪しいが、安定したマナになる日がかなり近づいたと認識してるらしい。

まあ結構スキル取得したりレベル上げたりしてるからなあ。

ただでさえ多い召喚者の数。そしてその半数以上が協力し合ってスキル取得やレベル上げの情報を共有して実行してる。

この行動、創造神的にはかなり喜ばしいことらしい。

なので僕たちの行動はこのままでいてほしいそうで、そういう理由もあって何かと協力的なのかもしれない。

もしかしたらシルバーの存在も嬉しいのかもな。初期スキル5個だぞあいつ。アホか。



「ハルー、作業ひと段落したらこっち来てー」

「はーい、すぐ行きますー」

『リオ殿にベル殿とは珍しい組み合わせではないか。何かあったか?』

「ちょっと相談」



杖(受肉体)にはアキ兄さんを呼びに行ってもらった。

考えてみればベルさんの足元にラムツーがいるんだからラムツーに任せればよかったか?まあいいか。

僕が下した命令に杖が従うって行動は、僕の無機物干渉スキルに経験値溜まるかもしれないし。

何にせよ、ベルさんの『木工』スキルのレベルは31だ。かなり高レベルでもある。

彼に任せればいい感じの作業場が出来るかもしれない。材料なら出すから。

アキ兄さんが温室に来て合流したことで、さっきベルさんと話してた内容を伝えた。



「ああー、なるほどな。それ助かるかも」

「保管できる場所欲しいですね。私、アキ兄さんと違ってアイテムボックスとかないので」

「ふむ、ではこのあたりに保管場所を作っておこう。乾燥などは…」

「俺が料理スキルの派生で『乾燥』持ってるな」

「では乾燥のための場所はいらんか。吊るすものもいらんな」

「あー、何か天井から吊るして乾燥させるってのあるよな」



デザインというか間取はハルがざーっと描いていった。めっちゃ上手いなこの子。さすが美術部。

そしてベルさんもそれを見て感動していた。わかりやすかったらしい。

というか、あれこれ欲しいものとか詰め込んでしまったが大丈夫だろうか。



「この程度であれば問題ない。簡易小屋くらいすぐ作ってみせるのだよ。そこまで複雑な作りでもないしな」

「必要な材料あったら言ってくれ。木材系は結構僕が出せるから」

「そうか、ならば頼む。今から外に伐採に行かずにすむな」

「そこからやるつもりだったんですか!?」

「材料がなければ何も出来ないからな」

「そういえばルートくんも伐採とかしてたな。あれは遮断スキルでスパっとやってたけど」



とりあえず木材やらトンカチを渡しておいた。

トンカチに感動してたよ…え、ないと困るだろ?と思って聞いたら手でやるつもりだったらしい。マジか。

釘なんかもいらないらしい。『木材加工』の派生でうまく接続させるそうだ。

ああ、パズルやレゴブロックとかみたいに、嵌めるために接続部の形を変えるのか。

まっすぐじゃなくてギザギザだったりパズルのピースみたいに捻じ曲げたりして嵌めこむと。

スキルレベル30超えの言うことだし問題ないんだろう。

土台はあるしということで、今夜中には完成出来るとのこと。凄いな。



「少し作業の音が気になるかもしれんが」

「いえ、気にしないでください」

「半端に余った削りカスとかはラムツーが食べてくれるから、その辺気にしないで」

「おお、そういえばそうだった!よろしく頼むのだよラムツー様」

「ぷぷっ」

「喜んでる」

「でもベルさん、ちゃんと寝ろよ?ラムツー、11時半になっても終わらなかったら強制的に部屋に連れてってやって」

「ぴぷー」

「う、わ、わかったのだよ」



ここにはちゃんと時計あるからな。

そしてラムツーも時計は理解できてる。夜更かし、ダメ、絶対。

それ以外、特に特筆すべきこともなく平和に夜は過ぎた。


次の日もいつも通りのんびり進んだ。今までもスキルレベルが上がったりはしたものの派生能力がなかったりしたのでスルーしてたんだけど。

今日は派生があった。でも僕の『護身術』が11になったことで『防御強化・小』、ナズの『風魔法』が10になり『突風』を覚えたくらいか。

さっそくベルさんを突風かまして空に巻き上げてたけど、ベルさんは飛ぶこともなく普通に頭から地面に着地していた。

何でやねん!とはナズ渾身の叫び。やって欲しいと言った張本人が固まって直立不動の体勢のままってどういうこと?

無理やり空に放り出されれば飛べるかもしれないと思ったらしく、ナズもそれならまあ…とやってくれたというのに。



「思ったより勢いが強かったのだよ。さては魔法攻撃力高いな?ナズ」

「そういう問題???」

「思いっきり墜落してましたけど頭大丈夫ですか?角も折れたりは…」

「このくらいの衝撃で何とかなるほど僕の頭も角も柔じゃないのだよ!」

「威張るな」

『ナズくんの協力を無駄にした罪は重いです』

「すみませんでした」

「昨日撮ったやつ、昨日は投稿しなかったけど掲示板に晒しとくか。ベルさんへっぴり腰でスーにしがみつく醜態」

「ぎゃー!!!」

『やるですリオくん』

『主人の回復魔法の経験値稼ぎにはなったが、ナズ殿に無駄に魔法を使わせてしまっておるからな…』

「いや、『突風』の所感試したかったってのもあるから、あたしはいいけどさ」

「でも今日、伝達の予定だったでしょう?無駄なMPを使ってしまったことに変わりはないのでは」



そう、明日ゼイレムに着きそうなので今夜『伝達』をする予定なのである。

もっとも、こっちからの報告はゼイレムに着くこととベルさんの存在くらいか?

あっちから何か情報があるかもしれないけど、どうかな。


なお、突風は直接の攻撃力はないが魔法攻撃力によって風の威力が変わる。

あと方向も多少制御できるらしく、空に巻き上げたり、壁に向かって放てば風圧で壁に衝撃がいく。

魔物を壁などに叩きつけることも出来るので、充分攻撃に使える派生能力である。

ナズの攻撃力だと人を浮かせることも出来るので、崖などで落ちそうになった場合に救出するなんてことも出来そうだ。

もう山から出てしまったのでその危険はないけど。

うーん、あの時これ覚えてれば芝の奴を吹っ飛ばすくらい出来たのか。惜しい。

突風叩き込まれて体勢崩した芝が立て直してる間に、空間魔法で逃げるって手も使えたなあ…

空間魔法、大きな魔法だけあって詠唱にそこそこ時間かかるからな。

まあラムなら詠唱破棄とかあるんだけど、周りのマナの属性が塗り替えられるかもしれないという意味で詠唱破棄はあまり使いたくなかったようだ。

これ、詠唱破棄に使われた魔法(今回は空間魔法)のマナが大量に放出されるらしい。

あの山、火属性の山だからな。それを変えたくなかったんだろう。特に属性の偏りがない場所なら普通に使ってたそうだけど。


閑話休題。



「ちゃんと飛べるようになったらその画像も投稿するから、頑張れー」

「飛べるようになるまで、へっぴり腰の画像の印象が付きまとうってことじゃないか!悪魔ー!」

「お黙り魔族!」



そういえば、魔族っていうけど彼らの中でも「悪魔」は悪いものという意味で使われてるらしい。

オリジンが悪魔なので良いものって意味合いで使われてるかと思ったけどそうでもないのか。

まあ、強い者、みたいな意味もあるらしいけど。…待って、じゃあ僕悪い上に強い奴って思われてるのか?弱いけどな?


夜になって『伝達』の時間になったけど、いつも通り…にはいかなかった。



「うっさいわ!お前ベルさんを知らんからそんなこと言えんねん!全然悪い人ちゃうからな、ただの角フェチのヘタレやで!!!」

「フォローになってねえ」

「酷い言い様すぎて笑うわ」

「まあ、弟の立場としては姉の過ごす場所に成人男性が混じるのはどうかって…思いますよね」

「それだとハルの弟妹も騒がんか?」

「どうでしょう」

「はあ、81歳のおじいちゃんってことだけ伝えればよかったのに。外見が20歳前後って言わなきゃゆずくんも騒がなかったと思うけどなあ」

「アキも酷いからな、それ…」

『でも事実です』

「1500歳のおじばあちゃんに言われたのだよー!」



ちょっと騒ぎになったけど、伝達は無事に終了した。…無事か?

あとシルバーがそろそろこっちに来れそうだという話だった。

けど新たな召喚者の所在がわかってるわけでもないので、一旦来るのは待って欲しいと伝えてもらった。

せっかく来たのに成果無しじゃ無駄足だもんな。

最悪向原を連れ帰ってもらうでもいいけど…

唯一それらしいと思われた目撃情報が結局ベルさんだったわけだし、完全に振り出しだ。

やっぱり『配達』の権能をどうにか使う方法かな?



『魔法陣なら紙に描けそうですけど、居場所を知らせるだけのもので大丈夫ですかね?小さい陣じゃ複雑なことは出来ないですし』

「あー、今はハガキサイズくらいの大きさの紙しか無理みたいだもんな」

『それに何度も送っては警戒させてしまうのだ。一人一回の配達で決めないとまずいのだ』

「うーん、オリジンシャドーの体の一部ってのもいい案だと思ったんだけどなあ」

「オリジンシャドー様?協力関係にあるのか?」

「冷遇組の誘拐作戦に協力してくれたんですよ。今でも何人かに体の一部を潜り込ませていて、動向を探ってくれているようです」

「ほう、そうなのか!まさかオリジンシャドー様がいたとは思わなかったのだよ」



やけに詳しそうだと思えば、オリジンシャドーは魔族領に滞在していることが多いオリジンらしい。

当然ながら闇属性の魔物なので、種族的に闇魔法を多く取得する魔族に近しいものを感じているようだ。

単純に魔族領には闇属性の地が多いという理由もあるそうだけど。

なので、オリジンデーモン程ではなくても、魔王一家も近しい存在に感じているオリジンだそうだ。



「僕も何度か話したことがあるのだよ。僕の闇魔術だが、使い方をオリジンシャドー様に教わったこともある」

『闇魔法も闇魔術も使い方間違えると危険だったりするです。教師がいるのはいいことです』

「へえー、そうなんだ」

「兄弟の中には闇魔法じゃなくていきなり上位スキルの闇魔術を取得した者も何人かいる。オリジンシャドー様はその全員に闇魔術を教えてくれたのだよ」



闇魔術に関しては、デーモンよりシャドーの方が使い慣れているというか、種族的に扱いが上手い。

そういうこともあり、オリジンシャドーは危険を避けるために教師役をしてくれていたようだ。

使い方を間違えると自分自身をも飲み込みかねない。闇魔術はそういう危険があるそうだ。

なお、闇魔術の一点に関してはラムよりオリジンシャドーの方が扱いが上手いらしい。

エレメンタルスライムを超えるのか…マジで凄いな。



「そう聞くと、闇魔法も怖くなってきますね」

『闇魔法なら大丈夫です。闇魔術も、闇魔法を極めてから習得する分には問題ないです。いきなり上位スキルの闇魔術を覚えるのが危険なだけで』

「人間族だといきなり魔術系スキルを習得することはまずないのだよ。たとえ召喚者であっても。だから大丈夫だ」

『いきなり覚えるとしたら、ヒト族だと魔族か精霊族くらいなのだ。あー、森族もたまに…?でも人間族と獣族は大丈夫なのだ』

「そっか、じゃあ安心していいのか」

「死霊術って魔術じゃないんだっけ?術ではあるけど」

「従魔術の仲間みたいなもので、魔術とは別系統ですね。使役系に近いですし」

「それもそうか」



どうやら闇魔術は低レベルで『闇渦』とかいう所謂ブラックホールを覚えてしまうらしい。

魔法攻撃力によっては人なんて簡単に飲み込める程の大きさだそうだ。なのでうっかり自分の近くで軽い気持ちで使うと…自滅すると。

いやこれはマジでヤバいな。教師必須なのもわかるわ。



「まあそれで、オリジンシャドー様のことは知ってたのだよ。優しい魔物なのだよ」

『影のある所でしかまともに出られないですけどね』

「ああ、影だもんな」

『逆に言えば影さえあれば活動出来るのだ。たとえば箱の中とかに閉じ込めれば持ち運べるし』

「おおおオリジン様を持ち運び…ッ!?」

「一歩間違えば消えちゃうだろそれ。箱の中思いっきり照らされたらどうすんだ」

『あいつ分裂できるですから、本体はどっかの影の中にいて、一部だけ切り離して箱の中…とか出来るです』

『スミレちゃんの権能の『配達』で、この方法を使えないかと思ったけど…紙相当のものじゃシャドーは隠れられないのだ』

「あー、せめて影が出来る箱状のものじゃないとシャドーの分裂体が消えちゃうんだな」

『です』



折りたためば紙でも影くらい出来るんじゃ、と思ったけど、開かれてしまったら意味ないか。

うーん、賽子くらいの小ささのものなら召喚にあるけど、前に聞いたら立体のものは無理そうって坂下さんが言ってたからなあ。

これが『配達』で送れるならオリジンシャドーを中に潜ませて、って手も使えたんだけど。

権能進化すればもしかしたら…?



「…オリジンシャドー様は優しい魔物なのだよ。召喚者に助力してくれているなら、頼めば聞いてくれるかもしれないのだよ」

「え?ああ、そうかもしれませんね。けど今でも色々お願いしてますし…ラージフールや召喚者に動きがあったら教えて欲しいって」

「分裂のスキルも高レベルだから、頼めば分裂体を寄越してくれるかもしれないのだよ」

「うん、なるほど?でも今やって欲しいこともないしな…」

『ベルくん、何か案があるです?』

「…シルバーという異世界人、たまにしか来れないと言っていたが、オリジンシャドー様であれば同行者になってくれるのでは?」

「え…?」

「オリジンシャドー様は分裂体もあるし、空間魔法も高レベルで持っている。オリジンシャドー様の分裂体をここで一体世話をする形にすれば…」

「シルバーさんが来た時だけ意識をこっちに共有してもらうとかすれば…いけるのでは?どうせシルバーさん、リオ兄さんの所に出てきますし」

「厳密には僕が持ってるお守りと通信機だけどな…」

「誤差ですよそんなもの」



いや、でも、その手があるのか。

ベルさんの言い方からするに、オリジンシャドーもこの提案を迷惑には思わないタイプの魔物なのだろう。

うーん…



『ラムはいいと思うです。シャドーのやつ、寂しがり屋ですし、召喚者の助けになるっていうなら喜んで協力すると思うです』

『わたしとは違った意味で他者との関りが難しいやつなのだ。光に晒されると消えるから仕方ないけど』

「…ある意味スーは天敵じゃないのか…?元の姿だと常に光ってるぞお前…?」

『ま、まあ、真逆の特性持ちだから、そうとも言えるのだ』

「僕が提案した理由はもうひとつあって、魔晶石で加工した箱のような装飾でも作れば、空洞にオリジンシャドー様が入って、持ち歩けると思ったのだよ」

「あー、スーが持ち運ぶとか言ったから?」

「そうだ。もしオリジンシャドー様が持ち運ばれることに抵抗がないなら…と。僕はそんなこと考えもしなかったけど」



魔晶石は魔族領にある鉱石。なので闇属性を帯びている。加工次第では別の属性になるけど、加工前は闇属性だそうだ。

なるほど、オリジンシャドーと相性がいいのか。

この加工はベルさんが出来るそうだ。『細工』スキル持ちでもあるしな。

てか何個魔晶石持ってんだこの人?



「たとえば…ロケットペンダント?とかいう、パカっと開けるタイプの装飾とかどうだ?中にオリジンシャドー様が入れるのだよ」

「あー、いいかもしれませんね」

『ちょっとクラフェル様を通してシャドーに提案してみるです』

「あ、せやな。こっちだけで勝手に決めたらあかんな」

『クラフェル様に話したらシャドーにやれって命令するような気もするのだ…』

「いや、無理強いは駄目だって伝えといて、ラム」

『了解したです』



そうして提案してみた結果、見事快諾されたそうだ。マジで?

ほんとに無理強いしてない?何か食い気味で「やる」って返事があったそうだけど…

ほんとに?いいの?閉じ込めるって言ってるようなもんだぞ?つか張本人のシルバーいないぞ?


…しまった、シルバーに何も確認取ってないな。あいつが嫌がったらどうしよう。



「え、リオ兄が言えば多分大丈夫でしょ?」

「どっからその自信が出るんだ…?言っとくけど、嫌なことはマジでしっかり嫌がるからなあいつ…」

「…そうかな?リオくんの提案ならいいよって言いそうじゃね?それに権能が強いってことも知ってるだろ」

「そんな風にノータイムで了承するのはシルバーの最愛の弟の提案くらいだよ…僕の場合、気に入らなかったら普通にパンチ繰り出してくるよ…!」

「…じゃあ、頑張ってください」

「丸投げ!骨は拾ってくれよな!」

「あ、やるんや…うん、あたしも一緒にお願いするな」

「めっちゃ心強い…」



シルバー、ナズのこと気に入ったっぽかったし、ナズが一緒に頼んでくれるなら、ワンチャン聞き入れてくれるかもしれない。

オリジンシャドーさん、可愛い系の見た目だったらいいな。だったら成功確率上がるから。

…むしろ可愛いものに擬態しろとか言ってみるか?形状変化か変身スキル持ってるだろうか…


~譲くんから『伝達』の内容が共有されました~


「待ってください、男?男がいるって何ですか?リオと一緒に、男が?は?まず私に挨拶に来るのが筋では???」

「落ち着け京!!!」

「ルーさん今すぐ行ってその男ぶちのめしてきてください」

「無茶言うな。まだ微妙に安定してねえよ」

「安定してなくても行ってきてください」

「無茶言うな(二回目)」

「落ち着け京!!!(二回目)」

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