151.アイ キャン フライ!
魔族というのは、基本的に強さを重視する。
獣族の肉食獣系と同等の戦闘好きだそうだ。
というか、強いほど魅力的、みたいな感じで、自然と強くなることを目指す。
なので、ベルさんのように強さより芸術を重視する魔族は少数派なのだそうだ。
いないわけじゃない。でも少ない。異端というわけじゃない。けど変な奴、とは思われる。そのくらいのもの。
「けど、僕が仮にも魔王の子、というのが良くなかったのだよ。魔王の子じゃなければ許されたのに」
『まあ、魔族のお手本にならなきゃいけないですよね、魔王の子ともなれば』
「ああ、そういう…」
「けど率先して戦いたいわけでもないし、飛ぶのも苦手で、落ちこぼれ扱いされてるのだよ」
「飛ぶ?」
「そういえば羽っぽいのありますね」
「スキルも『飛行』あったな。レベル1だったけど」
「うっ…」
「もしやベルさん、高所恐怖症か?」
「ちちち、違うのだよ!そうじゃなくて…子供の頃、飛ぶ練習をしてる時、兄に吹っ飛ばされて…」
ベルさん、御年三歳のちっちゃいころのみぎり。
そろそろ羽がしっかりしてきたので飛んでみようかとママから許可が出て大喜び。
飛び始めてすぐに『飛行』スキルを取得し、ご機嫌で空をぶんぶん飛び回っていたところに悲劇が。
御年58歳のお兄様(実兄)が酔っぱらいながら空を飛んでいたというより射出の勢いでブンブン飛び回り…
当然のように事故ったらしい。お兄様、珍しい魔物を仕留めていい魔石が手に入ったことでご機嫌だったそうだ。
墜落し、岩に叩きつけられギャン泣きのベルさん。よく死ななかったなこの子。腐っても魔族か。
ママが救出し、回復魔法をかけたので怪我の問題はなかった。だが心はそうもいかない。飛ぶという行為にトラウマが出来てしまわないか。
それを危惧したママが、お兄様(58歳)を正座させ、二時間みっちり叱り飛ばしたそうだ。
お兄様は世話になったママに叱られ酔いも冷めて萎れていたし、ベルさんは屈強な兄さえゲンコツ一発で沈めた上に説教かましたママに怯え切った。
そんなわけで、ベルさんは飛ぶという行為にちょっとトラウマが出来てしまったそうだ。
…元凶、ママでは?
飛んだら兄(大量にいる)にぶつかるかも、じゃなくて、誰かにぶつかったらママの二時間説教が発生するかも、という方向に怯えてない?
しかも聞いてる限り立ち去れる状況じゃなかったみたいで、兄の説教にベルさんも付き合っていたんだろう。
ママじゃん。原因、ママじゃん。
ちなみにベルさんを轢いた兄はちゃんとベルさんに謝り、後日お菓子もくれたのでわだかまりはないらしい。
『それでスキルレベルが1のままです…?』
『もったいないにも程があるのだ』
「め、面目ない。しかし、飛ばなければいけない事態というのもあまりなく、ずるずると…」
「まあ、人間族領じゃ飛ぶわけにもいかないでしょうしね」
「ああ、一発で魔族とバレかねないから、隠してるのだよ。普段は背に同化させているし」
「今は出てるじゃん。何で?」
「気を抜いたら出てくるのだよ。リラックスしている、というのか…」
「あー」
「今は隠す必要がないと思ってるのもあるな。魔族とバラしてるし。邪魔なら引っ込めるのだよ」
「いや別に邪魔とは思ってないよ。寝る時どうしてんだろ、とは思ってたけど…引っ込められるんだな」
「角も頑張れば引っ込められるが…やりたくないのだよ」
「角フェチですもんね」
ちなみに角は二本。耳のやや上あたりから、後ろ側に流すような太くて短めの角が生えている。
イカ耳の猫みたいだなと表現したら日本人組には盛大に噴かれてしまったけど、クラーフ組はよくわからなかったらしく「?」状態だった。
なお、魔族の耳はやや尖っている。エルフ…もとい森族より短いのでさほど目立ちはしないが。
あと、目は紫で瞳孔が細長い。肉食獣の獣族にやや似ている。
そんなわけで、よく見れば人間族じゃなく魔族だとわかってしまう外見ではあるのだ、ベルさんは。
凝視しない限り、個人差の見た目、で済んでしまう程度ではあるが。
だからこそ認識阻害のあるマントで誤魔化していたんだろう。
「しっぽとかはないんですね」
「ああ、僕にはないな。魔族の中には尻尾を持つ者もいる。逆に羽を持たぬ者もいる」
「へえー、魔族も色々なんやな」
「傾向として、羽を持つ者は機動に優れ、尾を持つ者は感知に優れるようだ」
「しっぽがレーダーみたいな役割なのかな?」
「そんな触覚みたいな」
「でもベルさん、その機動が死んでるようなもんなんじゃ」
「うう…」
「危険がない場所なら飛べるんじゃないか?飛ぶこと自体が出来ないってわけじゃなさそうだし、温室で飛んでみる?」
「…温室?温室とは、あの木や草がたくさんある部屋だったよな?」
「そう、あそこなら天井高めだし、スーが補助についたりすれば飛ぶくらい出来るんじゃないか?」
『手伝うのだ?やってもいいのだ』
「ほ…本当か!?いやしかし、オリジン様にそんな面倒をかけるのも…」
『それでスキルレベルが上がるなら協力するのだ』
「そういや創造神としてはスキル覚えたりスキルレベル上げて欲しいってスタンスだったな」
『そうですそうです。レベル1なら2~3くらいすぐ上がりそうですし』
飛行スキルとか絶対役立つスキルだろ。レベル1のままなんてもったいない。
ということで、ベルさんはスーの指導の元、飛行スキルの練習をすることになった。
ハルがぼそっと「ベルさんに隠密かけるのもアリでは…」とか言ってたので、ハルにとっても経験値稼ぎになるかもしれない。
「んじゃ、昼飯までそれぞれ行動するか」
「僕は運転するよ。明後日には着きたいしな」
「午後ちょっと採取したいかも」
「お昼ご飯食べて、おやつの時間までならいいんじゃない?」
「…随分まったりした進み方なのだよ。せっかちなのかのんびり屋なのかわからんな。召喚者ってみんなこうなのか?」
『多分、主たちが特殊なのだ』
「ベルさん、ベルさんのカツラ帽子、採取に行く時に渡すねー」
「本当に作ってくれたのか!?ありがたいのだよ!」
『…お前も染まってきてる気がするのだ。まだ会って一日も経ってないのだ』
ちなみにベルさんには医務室を提供したので彼はそこで寝た。
個室が貰えたことにびっくりしてたけど、むしろソファベッドとかで寝られても困るからなあ。一応男女だし、明確に分けといた方がいいだろ。
案内と見張り(?)も兼ねて、ラムツーがベルさんと一緒にいたけど。
ベルさんは人間族の女だらけの所に屈強な魔族の男が混じるなら見張りは当然と言って、ラムのことは受け入れていた。
というか、方向音痴の自覚があるそうで案内役に感謝してたくらいだ。
未だにトイレとシャワー室間違えるからなこの人。
よくそれでゼイレムの近くまで来れたな、と思えば、魔道具のおかげだという。
方位磁石か、カーナビか、そんな効果のある魔道具を貸与されてるので、町から町への道のりだけは迷わないそうだ。
何か色んな意味で魔族領から出さない方がいい人じゃないか?ベルさんて…
それとも、これだけ問題有りなのに魔族領から出した方がいいと判断されたか。
継承関係は泥沼になりがちだそうだし、そういう意味かなあ。
確かにベルさんは兄弟と争うのは嫌がるタイプっぽい。兄姉のためなら戦うとか言ってるくらいだ。兄弟愛はあるんだろう。
逆に言えば兄弟で敵対すると、兄姉を攻撃出来ないため抵抗せずにやられてしまう可能性もある。
ママはそうなってほしくなくて、争いの場である魔族領から出したのかも。想像でしかないけど。
そんなことを考えながら運転してたら、珍しい客が来た。
「あれ、ラムこっちに来たのか?」
『わあスライムだ。お膝おいでー』
『ナイフくん、お膝失礼するです。ご主人様も集中してるので手持ち無沙汰なのでこっち来たです』
「ふーん、あ、ラムツーはキッチンにいるんだ。ゴミ処理係か?」
『そうです。ご主人様についてるのはラムスリーですけど。ラムツーはベルくんについて温室行ってるです』
「ああ、そうなのか。頑張ってる?」
『めちゃくちゃへっぴり腰でスーの胴にしがみついてるです』
「飛べてないじゃん」
『ハルくんが地面叩いて大ウケしてるです』
「何か楽しそうだな温室」
ああ、分裂体が見聞きしてるものは本体に共有できるのか。
結局、飛ぶスーにしがみつく形でまともに飛べなかったそうだ。
でもスーにしがみついてるあたり、飛ぶ意思はあるんじゃないか?ないなら地面に落ちてるだろ。
…と思ったら、地上は若干大きくなったサンが威嚇して物理的に下りれないように脅していたようだ。サンに襲われたくなければ飛べと。
まあ、あくまで脅しでしかなかったことと、しがみつく力が強くて引き剥がせなかったことで、ベルさんが自力で飛ぶのは無理だったらしい。
ごめん。想像して爆笑した。
先は長い、か…?居住区に現れたベルさんは萎れていた。
「おやつ食べた後も練習するのか?」
『そのつもりだけど、どうするのだ?』
「や、やりたい。やっぱり飛べないのは、その…ここなら飛んでも迷惑にならないし、ちゃんと練習したいのだよ」
『やる気があるなら付き合うのだ』
「あ、ありがとうスー様!」
「よし、なら罰則も考えよう。おやつ後の練習でも全然飛べなかったら…」
「えっ…ご、ご飯抜きだけはやめてほしいのだよ…!」
「いやメシ抜きは駄目だぞリオくん!ちゃんと食わせないと!」
「やらないやらない。そうじゃなくて、晒し者にするって意味」
「へ?」
ベルさんもアキ兄さんもナズもピンと来てないな。
でもハルは察したらしい。が、止めるつもりはなさそうだ。やっていいんじゃないかというゴーサインだと思っておこう。
「午前はスーにしがみついてぶら下がってるだけだったらしいな?」
「う、ま、まあ、そうなのだよ」
「多分、傍から見たらめちゃくちゃ滑稽な絵面だろそれ」
「…そうだと思う。ハルはずっと笑ってたし」
「腹筋がとても鍛えられました」
「…ならその場面、他の召喚者にも晒してやる」
「えっ」
「ベルさんがスーにしがみついてる光景を、掲示板に画像投稿してやる」
「うわそういう意味か」
「えげつなっ」
「え、え、え…?」
ハルが掲示板と画像投稿について詳しく説明していた。
説明されていくにしたがって、ベルさんの顔色はみるみる悪くなっていったけど。
でもそのくらいの罰がないとやる気にならないんじゃないか?
「う、うおおお!まだ見ぬ召喚者たちにかっこ悪い場面を見られたくないのだよー!」
「なら死ぬ気で飛べばいいじゃないか」
「本物の悪魔より悪魔の提案してるのだよこいつ!!!」
『主を悪魔呼ばわりするんじゃないのだ』
あ、そういえば悪魔いたなこの世界。魔物だけど。てかサタンが悪魔か。
魔族に悪魔呼ばわりされるとは思わんかったな。でもやめるつもりはない。
ほんのちょっとでも自力で飛べさえすれば実行しないんだから、頑張ればいいんだ。
どうせ失敗して落ちたってラムツーがクッションになってくれるんだから。
いや、三歳時点で岩に叩きつけられても生きてたなら怪我に怯える必要はないか。落ちること自体は別に怖がってないみたいだし。
昼飯の後に採取のため、外に出ることになった。
この時はみんな念のためってことで冒険者仕様の変装をしている。
そのため、ベルさんに会った時も、一見して召喚者だとわからない格好だった。
なのでベルさんは僕らのことを見た目じゃなくて会話の内容から召喚者と推測したんだろう。
風呂から出た時にカツラ帽子取った状態を初披露したので、その時に驚いていたと同時に納得していた。
やっぱり黒髪だったのか、という意味で。
まあそんなわけなので、外に出るならベルさんも黒髪を隠していただきたいというわけで。
「はい、ベルさん」
「おお…!素晴らしいのだよ!あ、角の穴もあるのか」
「角引っ込めたら穴は髪で隠れるから。まあ、町の中とかはフード被ってるって話だし、角は出しっぱなしでも大丈夫でしょ」
「ありがとう、ナズ!ああ、ラテもありがとう。手伝ってくれたのだったな」
『やりましたのー。紫がお揃いで嬉しいですのー』
「ああそうだな、そうか、ラテの毛と同じ色か。これは嬉しい」
ああ、ベルさん紫目だもんな。だから髪も紫髪にしたのか。どちらかと言えば青紫か?
うん、これなら確かに違和感はない配色だ。地味にラテとお揃いなの、羨ましいぞベルさん…
本当に嬉しかったようで、早速かぶっていた。髪型は元のベルさんの髪型と同じにしたようだ。
元から前髪も襟足も長めだったから地毛はすっぽり隠れている。うん、問題なさそう。
「本当にもらっていいのか?返せるものはほとんどないのだが…」
「昨日魔晶石もらったしねえ。タークくんも永塚さんも大喜びだったし」
「しかしそれはナズへのお返しにはならんだろう」
「そうかなあ?どうせタークくん、何かいいもの作れたらあたし達にくれるし、回り回ってあたしもいいもの貰えてるよ?」
「うーん、そういうものか…?」
『今はその悩みよりも採取です。食べれるものを採ってほしいです』
「ああ、それもそうだな。採取はそれなりに自信があるぞ。普段からそれで食いつないでいたからな」
「本当に王子かこの人?」
どこでも生きていけそうというか、この方向性の逞しさは果たして必要だったのだろうか。
魔族ともなれば、人間族に必要なスキルは違うだろうけど、食えるものの選別は多分全種族を通して王族には必要ないスキルでは?
「ははは、100人もいればありがたみも何もないのだよ。僕は魔族でも年若い方だし母様もさして強くない。重要視されてないのだよ」
「…だからこそ自由にしていられたと。それが極まって芸術に目覚めたと」
「母様など『裁縫』スキルを持っているのだよ。見事な刺繍でな」
『ほんとですの!?』
「え、気になる」
「シルスパイダーと被服スキル持ちが食いついた」
ああ、でも母親が物作りが好きなのか。
なら方向性が違うとはいえ、息子が芸術に目覚めたのもわかるといえばわかる。
当然、魔王の妻は何人もいる。その中でもベルさんの母親は穏やかな人で、自分の子を魔王に、といった野心は持ってないようだ。
兄姉の中には魔王を狙える地位の者もいるようだが、他の兄弟を蹴落としてまで魔王になりたい人はいないそうだ。
どちらかと言えば補助とか、そういうポジションが好きらしい。
そのためか、多数の異母兄弟とも割と仲がいいそうだ。ベルさんもそのタイプだと。
が、その中でベルさんはかなり高い戦闘資質を持っているそうで、魔王の座を狙う異母兄弟から警戒対象にもなってしまってると。
本人にその気がないのに悲しいね。
「つか、ベルさん周りから強い強いって思われてたんじゃん」
「けれどスキルレベルは低いし、ろくに飛べもしない。末弟だから大げさに言ってるだけだと思ってたのだよ」
「あー、ちっちゃい子に『わー、たっちできたね、すごいねー!』って褒めてるみたいな、ああいう感覚かなあ」
「立てただけで褒められるって乳幼児くらいじゃないか」
「でも何となくわかります。そういう小さなことを褒めてくれてるだけってベルさんは思ってたんですね。81歳にもなって」
「二桁など、魔族では子ども扱いなのだよ」
「…人間族だとおじいちゃんなのに…!」
こ、これだから長寿種は!
ちなみに採取の腕はかなり良かったですよ。年季が入ってるっていうんですかね。アキ兄さん大満足。
冒険者登録しても大丈夫なんじゃないか…?と思ったら、種族バレが怖いのでやりたくないそうだ。
なので金は商人ギルドなんかに採取物を持ち込んで換金してたんだとか。
あそこは何でも買い取ってくれる代わりに品質にうるさいこと、冒険者ギルドよりは安い金額になってしまうこと。
なので手っ取り早く金を得たい冒険者は利用したがらないという。
まあ、冒険者ギルドは依頼にあるものか魔物の素材くらいしか買い取らないからな。
限られた品物を高く、幅広いものを安く買い取る。これが冒険者ギルドと商人ギルドの違いか。
ああ、あと冒険者ギルドは冒険者以外だと若干安くされてしまう。代わりに品質が多少悪くても買い取ってくれる。
商人ギルドは登録者以外安くされるのは同じだが、品質が悪いと買い取ってくれないということだった。
商人ギルド使ったことないけど、そうだったんだ…
ベルさんは採取の腕は自信があるため、毎回商人ギルドで金策してるようだ。
ちなみにこちらもギルド登録はしてないらしい。
「商人ギルド、素性のわからない人からも買い取ってくれるんですか?しっかりした人からしか買い取らないイメージでした」
「そんなこともないのだよ。だが、犯罪者として情報が出回ってる者からは買い取らないな。全ギルド間で犯罪者は共有されてるそうだ」
「あー、犯罪者だと、持ち込んだ物が盗品って可能性もあるからか」
「そうだ。入り口に判別するための魔道具があり、それが反応した者は通報されるそうだ」
「冒険者ギルドにもあったよな、それ」
「全ギルドで共有されてるって話ですし、そこら辺はしっかりしてるんでしょう」
「そうだな。まあ簡単に言えばその魔道具に反応さえしなければ普通に対応してくれるのだよ」
「なるほどなー」
それならベルさんでも利用できるな。
彼はやましいことがあるとしたら「魔族」であるという一点だけだし。
身分とかで言うなら魔族での身分は保証されまくってるようなものだ。何せ魔王の息子である。
人間族領では保証されてないようなものだけど。
「てか、依頼にないのでも買い取りしてくれるのか。いつも依頼分くらいしか出してなかったな俺たち」
「そうですね、多めに出すことはありましたが」
薬草10本の依頼に12~15本提出、くらいは何度もやっていた。
けどプラスで毒草や魔力草を提出、というのはやったことがなかった気がする。買い取ってくれたのか。
まあ今では余分に採取したものはタークくん行きになってるから余ってないもんな。
でも当初は見かけても金にならないと思って放置していた。
うーん、採取してれば買い取ってもらえてたのか。ちょっともったいない。
「あれ、じゃあベルさんて町に入る時、毎回入場料払ってるの?」
「ああ」
「それに宿代食事代払ったら…ほとんど残らなくないですか?」
「いや、多少は残る。贅沢さえしなければ問題なく滞在出来るのだよ」
「…ゼイレムでは、宿代食事代は考えなくていいからな、ベルさん」
「もしかして、アキのご飯をご馳走になっていいのか!?」
「宿もカーくん使え。僕らも毎回カーくんで寝泊まりしてるんだ」
「え、そうなのか…?」
「だって宿じゃ安心して黒髪さらせないじゃないですか」
「ああ、なるほど」
「あと、こっちの宿の部屋とかご飯とか、正直どのくらいなのか、その…」
「ああ、なるほど。アキの食事とカーくんの寝泊まりを経験したら、安宿などとても泊まれないのだよ…」
現代日本人、そういう意味では贅沢者だからね…
抉れ海組もオーレン組も安宿は我慢できなくてお高めの宿に宿泊してるみたいだし。
というか、依頼と称して森とかに行って外泊とか結構してるみたいだ。野宿の方が快適なのだろうか。
おかげで夜に入手しやすいものとかの依頼受けまくってるそうだ。そしてギルドにありがたがられていると。
町を去る時、ひと悶着ありそうだ。行かないでって引き留められそう。
会話をしながらも手は動かしていたので、それぞれ成果を持ち寄る。
おやつの時間が近くなってきたので今回はこれで終わりだ。
ベルさん、かなりの戦力だった。食べれるものも多い。
「…旅をしていて、おやつの時間が設けられてるのがおかしいのだよ」
『何てこと言うです。おやつ大事です。ご主人様が作らなくなったらどうするです』
「いや作るのやめたりしないよ」
「ごめん、ベルさん、慣れて」
「…一人旅に戻る時が怖いのだよ。美味しい三食おやつの時間を忘れられなくなったらどうしてくれる…っ」
「自分で作れるように頑張るとか…?」
「僕にアキと同等のものが作れるとは思えない」
「あ…うん…そうだね」
けどベルさんの中でおやつを食べないという選択肢はなかったらしい。
美味しいと言いながらガッツリ食べていた。成人男性だからね。ヒト族の中では一番食べてたよ。
もちろんダントツで食べてたのはラムで、時点がラテである。
ナズの意見を採用したのか、ぷちスイーツバイキングだった。甘いのも苦いのも選り取り見取り。
ラム、全種食ってたよ…ベルさんは抹茶ケーキとかクッキーが気に入ったらしい。
スイートポテト美味しいね…あとハーブクッキーもいいよね…
おやつの後の訓練では、ベルさん頑張って羽を羽ばたかせていたらしい。飛べてなかったみたいだけど。
まあ飛行スキルが2になったらしいので、無駄ではなかったんだろう。
一応撮ったけど(無断)、投稿するかなあ。頑張りが見えたのでやめとこうかな?
そんな風に悩んでたところに朗報が飛び込んできたので一瞬で忘れた。
「ドリくんに追加機能つけたら料理スキルレベルアップしたよ!12になった!」
「あたしもさっきクロちゃん広くしたよ!スキルレベル12になりましたー!」
「私もベルさんやスーにも隠密かけてたらレベル上がりました。12です!」
ベルさんの醜態を掲示板に晒すかどうかなんてもうどうでもいい。
今重視すべきはこの三人のスキルレベルアップの件だ!異論は認めない!




