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149.行き倒れ


フラグ回収、早いなあ…



「うわあ…」

「どうしてくれよう、こいつ…」

「見なかったことにしたいですね」

「さ、さすがに見捨てるのは…」



目の前で倒れ伏している黒髪の男を見て、こんな反応になったのも致し方なしというやつである。

いやマジで何で昨日話したばっかのが登場するんだよ。

ちょっと遠い目をして朝のことを思い出す。

初めての自室での就寝については何の問題も起きなかった。

ただ、寝坊助を起こしに行くのがちょっと面倒になったかな、くらいのものだ。

それも従魔のみんなに頼めばちゃんと主人を起こしてくれたので、大した問題でもない。

朝ご飯を食べて(クロックムッシュとかいうちょっとお洒落なやつ)、午前は採取をしたいとアキ兄さんが進言した。

MPを溜めたいので、ハーブ系や採取できるものがあれば手に入れたいと。

召喚より現地調達を選んだらしい。微々たる差だろうが、たとえ1でも多く追加機能のためにMPを溜める方に回したいそうだ。

当然賛成だったので、全員で午前は採取に勤しむことにした。

岩場に近かったのでカーくんで採取物のありそうな森まで移動し、下車。散り散りになって採取を始めた。


そして昼が近くなってきたあたりで引き上げようとしたところ、従魔組が何かを察知したのである。

特に危険はなさそうということで、全員で様子を見に行くと、黒髪の男が倒れ伏してる場面に遭遇したわけで。



「…気絶、してるっぽいなあ」

「いや、何でこんなとこに一人で…?」

「まあ一応ゼイレムが近くはなってるけど…でも徒歩ならまだ数日かかる距離だぞ」



十中八九、坂下さんが言ってた奴だろうな。

深緑のフードつきのマント、そして棒状の鈍器を持っているという話だった。

鉄製の杖だろうか?魔法を使うためというより、ぶん殴る目的のような杖だ。

そして、これは坂下さんの情報にもなかったやつだが、フードがずれて顔が見えている。

20代ほどに見える男で…頭に、角のようなものがあった。



「…もしかして、これ、魔族ってやつか?」

『魔族です』

『魔族なのだ』

『初めて見たですの』

『我もだ』

「そういえば、獣族や魔族は黒髪って珍しいけどいるんでしたっけ」

『魔族はそこまで珍しくないです。まあ赤髪や紫髪が多いですけど黒髪も普通にいるです』



…まあ、黒髪の目撃情報が召喚者じゃなくて魔族だったってオチか。

良かったような悪かったような。

いやでもこれどうすべきだ?放置?

召喚者だったらどうにかして捕縛だろうけど、知らない魔族なら別にどうでもいいもんな。

気絶してるから、このまま去ってもこの魔族には見捨てたって認識されないだろうし。

僕一人ならともかく、アキ兄さんたちがいるこの状況で下手な手は打てない。

安全策をとるなら放置一択だ。

でも、



「行き倒れかあ…ここ魔物出るし、どっか安全な場所とかに移した方がよくない?」

「せめて水場の近くとか…」

「腹減ってんのかな?シブベリーでよければ置いとくか?」



…この子たちが完全に助けるつもりになってるんだよなあ。いい子すぎて…

まあ敵じゃないだろうから、助けるのはいいんだけど。

魔族は別に人間族と敵対してるわけじゃない。が、個人としてどう思ってるかはわからない。

ラージフールのせいで、人間族を嫌ってる魔族がいてもおかしくないからな。

さて、この魔族はどちらだろうか。人間族を嫌ってるのか、別に気にしてないのか。

何の指針にもならんだろうけど、一応鑑定しとくか。



名前:ベルギアレイズ・ディアロス

種族:魔族(特級)

年齢:81歳

性別:男

LV:72(あと3845)

職業:魔王の子

HP:10314/12258

MP:12489/20582


スキル:杖術LV4 爪術LV5 火魔術LV3 水魔法LV33 闇魔術LV12 木工LV31 細工LV27 飛行LV1 身体強化LV28



「…よーし、放置プレイ決定な!」

「えっ」

「いきなり性癖暴露されても困るんですけど」

「別に性癖じゃないよ!関わりたくないだけだよ!」

「…鑑定で、変なの出たか?」

「あー、なるほど?ヤバそうな人なの?」

『そうです?そこまで妙な気配しないですが…でも多分魔王の関係者な気がするです』

「ドンピシャ!」

「…魔王!?いんの!?ちょ、それ関わったら面倒なやつじゃね!?」

「だから放置していこうって」

「なるほどな!?せやな、一応あたしら勇者らしいし、関わったらアカン感じのやつ…!」



『勇者』と『魔王』ってワードはちょっとまずい気がする。ゲーマーの勘だけど。

けど、ラノベ履修者の三人は、ここに『聖女』とか来たらマジでヤバいと言っていた。何それ怖い。

幸い僕たちの中に聖女らしきメンバーは…ハルが光魔法と回復魔法持ちの女の子って意味では近いか?でも勇者だよな。

それを除けばもうラムとスーだ。魔物だ。ついでに性別はない。

男でもいいならルートくんが近いか…?でもルートくんも勇者か。

ってなると、知り合いの中で聖女ポジションなんて…



「………グランツさん…?」

「え?何が?」

「聖女ポジション」

「ムキムキのおっさんなのに…!?」

「いえ、まあ、回復魔法持ちではあるので、ギリ条件満たしてるような…いや駄目でしょう」

「でも、ハルやルートくんは勇者だし…」

「あのな、リオ兄。聖女って女の人なんよ。男を挙げるな???」

「個人的に聖女よりは勇者の方がマシですねぇ。ってことで聖女は辞退します。私は勇者ポジションでいいです」

「まあ、聖女よりは勇者かなあ、あたしも」

「ここで僕たちの職業を思い出してみましょう」

「料理人だったわ。勇者にも聖女にもなれない超脇役ポジションだわ」



職業に「魔王の子」なんて出るってことは、多分「勇者」や「聖女」もあるんだろう。

なのになってないってことは、僕たちにその資格はないと言っても過言じゃない。

そもそも勇者ってのもラージフールが言い出してるだけで、創造神視点では「召喚者」でしかない。

なら、僕たちは正しい意味で「勇者」じゃないんだろう。なら、魔王の子と敵対関係になることも…



「…きみたち、勇者、なのか…」

「ホンギャアッ!!?目覚めとったんかいワレェ!」

「…まあ近くでこれだけ騒げば気づいても仕方ありませんよね…」

「ナズすげー悲鳴。産声?」

「だまらっしゃいアキ兄!」

「えーっと、大丈夫、なのか?人間族に嫌な感情持ってるなら僕ら容赦なく見捨ててくつもりなんだけど」

「………持ってないですお願いします助けてくださいおなかすいた…」

「おっメシ案件だったか!任せろ!」

『空腹だったですか…それはつらいです』



行き倒れの理由が空腹とわかった瞬間、アキ兄さんとラムが救助する方に動き出した。

真偽スキルにも引っかかってないし、空腹なのも人間族に敵対心持ってないのも本当だろう。

…ならいいか。



「う、うまい!すきっ腹に染み渡るのだよ!」

「食ってる最中に叫ぶな」

「まあ採ったばかりの果物ですからね。新鮮なのは間違いないです」

「ピモ、久々に見たなあ。ダンジョンのドロップ以来か」

「うん、自生してんの初めて見たよ、このあたりにあるとは思わなかった」



どうやらほんのり火属性と土属性のマナを帯びてるらしい。

果物の中ではマナが豊富なのだとか。逆に言えばマナの多い場所でしか育たないと。

…温室にピモの木があった気がするんだが…あ、あそこマナ豊富なんだ?てかカーくんの中自体がそうなんだ?

そういえば動力がマナだもんな。

さすがに会ったばかりの魔族に料理スキルを披露するのはまずいと思い、直前まで採取していた成果を分けることになった。

アキ兄さんが人助けのためだしーと気にしてないのでいいのだろう。

元より食材自体は大量にある。採取は趣味のようなものだ。たまに初見のものが見つかるからやりたがるだけで。



「はあ…助かったのだよ。ご馳走様!」

「おそまつさまー」



結構な量を食べきって、満足したらしい。成果のほとんどがこいつの腹に消えた。

さすがにハーブとか調味料の素は残ってるけど果物やら食べれるものは全滅だ。いいけど…

しかし、ご馳走様って、手を合わせて挨拶…?

疑問に思ったのが顔に出てたのか、魔族が僕とハルの方を見た。



「これを知ってるのだな。やはりお前たち、勇者…召喚者か」

「…え?」

「そっちの赤髪の挨拶、そして緑髪と茶髪のこちらを窺うような視線で確信したのだよ。そうだ、これは過去、召喚者から教わったものだ」

「…過去の、召喚者…」

「もっとも、僕自身が聞いたわけじゃない。これはママから教わったのだよ」

「ママ…」

「乳母と言った方がいいのか、数多の魔族の子供を育てた女傑と言えばいいのか、とんでもなく恐ろしい女なのだよ。僕の兄弟の大半はママに逆らえない」



マザコンかと一瞬思ったが、違ったらしい。

感情的には女王様とかそういう風に呼びたくなるそうだが、その魔族自身が「そんな身分じゃございません」と固辞し、結局ママと呼ぶことに落ち着いたと。

落ち着いてるのか…?

自分の父でさえ、その人のことはママと呼ぶらしい。あの、お前の父って魔王なのでは…?



「だから召喚者に会うのは初めてなのだよ。今、来ていたのだな。もしや、その魔物の中にオリジン様がいるのか?」



敵意は感じない。ただの疑問と、若干の高揚感があるくらいか。

これは…話してしまってもいいんだろうか?



『ラムとスーがオリジンです。想像通り、召喚者を魔の森に案内してる途中です』

「おお、そうか!既に同行者がいたのなら問題ないな!もし迷い子なら何とかせねばと思ったが…」

「何とか?あなたが、ですか?」

「いや、僕自身は何も出来ん、が…オリジン様に繋ぎを作ることくらいなら出来るかと」

『デーモンです?』

「うむ、サタン様だ!僕は軽々しくお会い出来る立場ではないが、ママに言えばお会いできるだろう」

「ママどんだけ凄い人なの…!?」



オリジンデーモンはサタンというらしい。うん、悪魔の王かな…?

このサタン、フェンリルなんかと一緒で、特定の住処を持っているオリジンらしい。

もしかして、この魔族はサタンの眷属なんだろうか?その割にはシェリルみたいに職業に「眷属」って出てないなあ。

疑問が顔に出てたのか、魔族がちょっとたじろいだ。



「え、えっと、その、だな…」

「…?」

「僕は、その、落ちこぼれ…みたいな扱いで…」

「落ちこぼれ?」

「…召喚者とオリジン様ならいいか…その、僕は一応魔王の息子なのだよ。あ、人間族に敵意はない!というか父様も人間族を嫌ってはいない」

「あー…やっぱラージフールが一方的に敵意持ってるだけっぽいな、これ」

「そ、そうなのだ!いや、中には好戦的な魔族が嬉々として迎撃したりはしてるが…魔族全体としては、人間族は嫌いではないのだよ」

「一部が過激なだけってことか」

「ああ、でも人間族の中には、魔族を忌避する者もいるから、魔族とバレないようにしていて…」

「そもそも、魔王の息子さんが何故人間族領にいるんですか?」

「うっ………」



まあ、考えてみればおかしな話だよな。

魔王の子ともなれば魔族領で大切にされてるはずでは?

聞いた感じ、育ててもらった「ママ」とも仲は悪くないようだし。

ママに頼めばオリジンであるサタンと連絡できるっぽいって言ってたあたり、関係は良好なんだろう。

なのに、そんな奴が何で単独で人間族領に…?



「…しゅ、修行してこいって、叩き出されて…」

「は?」

「魔王の息子なのに!弱すぎるって!そう言われたのだよー!!!」

「うわうるせっ!」

「でも僕は戦うことより芸術とかの方が好きなのだよ!一生彫刻とか石掘ったり装飾を作りたいって言ったらママに激怒されたのだよ!」

「あー…」



そういえば、この人のスキルに『木工』『細工』なんてあったな…

それでも攻撃系スキルはあるし、魔法も魔術使えたりするんだから、強いはずだけど。

魔族基準では弱いのかこれ…?これで弱いってことなら、人間族が勝てる要素ないだろ。ラージフール馬鹿すぎるわ。

たとえ勇者(召喚者)でも勝てないだろこれ。現に僕らだけの力じゃ、この魔族に勝てない。



「それでも芸術だけやって暮らしたいならせめて血を残せって、嫁を見つけてこいって魔族領を追い出されたのだよ…」

「うっわあ…」

「いや嫁探しなら魔族領で探さんと意味なくないか?」

「…魔族は基本、強い奴を魅力に感じる。僕じゃ魔族の伴侶は見つけられないと判断されたのだよ…」

「駄目じゃん」

「うう、それで、人間族か森族か精霊族あたりをと思って…精霊族は多分無理だから、人間族か森族の嫁探しに…」

『まあ、物作りって意味なら確かにその二種族になるのだ。精霊族も物作りは好きだけど、魔族とは相性よくないのだ』

「でも僕自身は獣族が一番よくて…でも獣族は物作りが好きな子があまりいない気が…」

「獣族?へえー、何で?」

「角があるから」

「はい?」

「牛とか羊の獣族は、角があるのだよ!」

「アッハイ」

『ああ、魔族の中には角を魅力に感じる奴がそれなりにいるです。多分こいつ、そのタイプです』

「はー…胸派か尻派みたいなもんか」

「リオくん」

「ごめんなさい」



他に、羽とか尻尾タイプもいるらしい。蛇足。

ちなみに他種族という点は特に気にしないそうだ。

子供は両親の力が強い方の種族で生まれるため、この男が相手ならどの種族が母でも十中八九子供は魔族になる。

それにしたって、魔王の子を単独で放り出すって…



「ああ、僕は父様の100番目の子供だから」

「継承権とかないやつ!」

「何か中国に子供100人いる偉人いた気がするやで!」

「いや、寿命とか考えたら、おかしくもない…のか?魔族って長寿だったはずだし」

「ははは、だから50番目以降の子供は割と自由にやってるのだよ。…それでも僕は許されなかったけど」

「芸術好きってそこまで駄目なのかな?魔族的に」

『いえ、多分…こいつ自身、戦闘の素質が高いです。だから鍛えたかったんじゃないですかね?』

「あー、術系の上位スキル持ってるもんな」

『それか、こいつの子供に期待してるかなのだ。父親の素質が引き継がれて、子供が魔族らしい考え方なら戦力になるから』

「完全に種馬」

「ええー…まあ父様や兄様姉様のためなら戦うのも吝かじゃないけど…」



彼自身は次期魔王の座とかに興味はないらしい。

けど、兄や姉の中には『自分を蹴落として魔王に就こうとしてるのでは』と疑ってる者がいそうだ。

ママは、それを危惧して魔族領から追い出した可能性もあるんじゃないだろうか。

魔王の座に興味はないと示すために、物理的に魔王の座を巡る魔族領の争いの場から遠ざけた。

そしてそこで、他種族の嫁を見つけられれば良し。他の領に住み着いて趣味に生きるも良し。

そういう理由があるとしたら。



「ママ…!僕のために…!」

「いえ、私たちの勝手な想像ですからね」

『でも可能性はあると思うです。その若さで術をいくつも持ってるのは素質高いです。召喚者でもないですのに』

「そうか、そうだったのか…僕は魔族の中でもそれなりの強さだったのか…でも魔王になんてなりたくないのだよ」

「今の魔王って長くないのか?」

「いや現役バリバリなのだよ。代替わりするとしてもあと100年くらいは安泰だと思う」

「気が長い」

『なら100年魔族領に戻らず放浪してればいいんじゃないのだ?』

「ええー、100年も魔晶石の加工が自由に出来ないのはつらいのだよ…」

「何だ魔晶石って?」

『魔族領にある鉱物のひとつです。魔力を込めると好きな形に変形したり加工したりできるです』

「え、いいやつじゃん」

「タークくんや永塚さんが欲しがりそうですね」

「それは誰だ!?」



魔族がタークくんや永塚さんに食いついた。

職人仲間といえばいいのか、気になったらしい。

召喚者で似たようなスキルを持つ人がいると聞いてテンション爆上がりしたようだ。



「そういえば名乗っていなかったな、僕はベルギアレイズ・ディアロス。長いので好きに呼んでくれ」

「何てこと言うんですか…!」

「えっ」

「じゃあベスで」

「犬かな?」

「ベルギ…ワッフル、ワッフル!」

「キタコレみたいな顔しないでください、何もきてないです!」

「イズ・ディス…マゾク!」

「ナズ姉それ英語になってるじゃないですか!これは魔族、って何ですか!リオ兄さんが一番マシなんですけど!」

「やったぜ」

「褒めてません!犬とお菓子と自己紹介って何ですか、却下です!ベルさんでいいですね、いいですよね!?」

「あ、ああ、構わん!むしろそう呼んでくれ…」

「ベルだとベルスパイダーっぽいな。ここはベーさんとかに」

「リオ兄さん」

「ごめんなさい」



怒られた。

とりあえず、このベルさんはタークくんや永塚さんなどの物作りが好きな人と話してみたいらしい。

自分の周りにそういう人が少なかったそうだ。ああ、周りにいたの魔族だもんな。

あとは人によって得意分野も違う。同じスキルを持っていたとしても同じものが出来るわけでもないし。



「オリジン様が同行している召喚者であれば内面も問題ないだろうしな」

「あーーー…」



確かにヒャッハー組は攻撃スキルを得て増長したタイプだ。

ベルさんとは相性悪そう。

召喚者について知ってるならば、と今の僕たちの状況を軽く話してみた。

すると、やっぱりヒャッハー組に憤っていた。

自分が重視したい生産系スキルを軽んじていることもだが、恐らくヒャッハー組は魔族を敵だと刷り込まれている。

ベルさんが出会ったら争いになるのは必至だろう。



「何という…いや、過去、そういった召喚者もいたようだが…そうか、今回の召喚者はそうなっているのか」

「結構詳しいですね?」

「…過去、人間族の王族に騙されて魔族領まで来た召喚者は幾人もいたのだよ。で、魔族の実情を知る者も中にはいた」

「あー、そっか、僕らは魔族の元に送り込まれる前に脱出したけど、送られた召喚者もそりゃいたよなあ」

「うむ、そうなった召喚者の反応は大体ふたつだ。聞いていた話と違うと異常性に気づく者。魔族は悪だという認識を改めず敵対したままの者」

「あああー…」

「どうやらそちらの世界では『魔族』という種族そのものが悪の象徴とされる傾向にあるそうだな?」

「せやな。そういう下地があるっちゃあるかも…」

「そのせいだろうな。まあ半数以上は騙されていたと人間族側に不信感を持つ召喚者が多かったようだが」

「ああ、ちゃんと話を聞いて判断出来た召喚者もいたんですね。よかった…」

「うむ、そんなわけで、召喚者とはやや縁があるのだよ。召喚者が残したものもいくつかあるぞ。食前食後の挨拶もそうだな」

「…人間族領にはほぼ残ってない痕跡が、魔族領にはあるんだ…歴代召喚者、マジでラージフールを信じてなかったんだな…」



ラージフールと違い、魔族領ではオリジンの存在も信仰の対象になってたりと割と身近な存在でもあるようだ。

一番大きな存在はサタンというオリジンデーモンのようだけど。

そしてそこから創造神に話が伝わり、魔の森の神石まで辿り着けば元の世界に戻れるという情報を得られた。

そうして帰還できた召喚者がそれなりにいるらしい。

ラージフール側にいたら絶対得られない情報だな、元の世界に戻れるってことは。

あの国、元の世界には戻れないって言いきってたし。実際戻る方法なんて知らないんだろうけど。


ああ、だからベルさんは僕らを見て「召喚者なら元の世界に戻りたいかも。方法を教えないと」って思ったのか。

でも既にオリジンが同行者になっていたから、自分が口出ししなくても問題ないと判断した、と。

めっちゃいい人だった。見捨てようとしてごめんな…



「そ、それでだな、その召喚者たちがいるのはどこか教えて欲しいのだが…」

「嫁はいいんかい」

「う、ま、まあ、ゼイレムかビスムズで探そうと思って移動中ではあったが…」

「あら。目的地一緒でしたか」

「そうなのか?まあ僕は思いついたまま移動してるだけなのだよ。職人の町と言われたズメロアでいい出会いがなかったから、獣族領付近に行くか、と」



獣族領に近い場所なら人間族領でも獣族は多い。

それを狙って獣族領に近いゼイレムやビスムズに寄るつもりだったらしい。

ここは通過点で、隣接している森族領に行く予定だったようだ。

人間族領は魔族領、獣族領、森族領が隣接しているから。ちなみに精霊族領は人間族領からは行けない。行くなら魔族領か森族領を通る必要がある。



「あまり人間族領の奥に行くのもよくないからな。人間族の王族は魔族を憎んでいるようだし」

「あー、確かに」

「このフードは一応認識阻害の効果がある。おかげで魔族であることはバレていないのだよ」

「魔族ってことはバレてなさそうですが、黒髪ってことは印象に残ってるみたいですよ」

「えっ」

「だから、獣族か魔族なのでは?という疑いはあったみたいです。黒髪の人間族って基本いませんから」

「………」

「詰めが甘かったな、ベルさん…」

「…あれだ、穴があったら入りたい、というやつだ…」

「よく知ってましたね、その言い回し」

「カツラ帽子、作ったげよっか?」



何か変な人と知り合ってしまった。

一応、これ掲示板で報告しとくかな…?


ママの名前は、ママレードさん。出演予定なし。


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