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145.検証祭り


掲示板に画像も添付して投稿したところ、総じて「とんでもねえな」という感想だった。わかる。

なお、肝心の経験値についてだけど、橋本くん大正解だったのか、一気に1000以上の経験値を稼いでいた。

まあ…規模もあったのかもしれないけどさ…

ちなみにナズのドレスはまだ仮縫いというか、ベースしか出来てないということだった。

むしろベースがもう出来てるのか。すごいな。テントには数日かけてたのに。

こっちも、完成はしてないものの経験値が凄くて数百稼いでいる。完成したら更に加算されるだろう。



「ハルは?」

「スーにかけて、温室を飛んで…というか羽ばたいて飛翔してもらいました」

『熱感知にほぼひっかからず…どこにいるかわからず…!悔しく思ったものだ』

『嗅覚感知もほとんどわからなかったです。鳥くさいニオイがしなくて…』

『鳥くさいとは何なのだ!!!』

「ああ、隠密の精度がどこまで持続するか、感知系でどこまで綻びが出てるかの確認………いや何してんだ」

「何か別の遊びになってないかそれ」

「全員真剣だったんだろうけどさあ」



ま、まあ、多少の羽ばたきくらいなら隠密の綻びはなかったらしい。消費MPは凄かったそうだけど。

ちょっと羽ばたきを大きくするとラムたちの感知系に引っかかる、と。

消費したMPが多かっただけあり、経験値もかなり稼いでいた。こっちも1000近い。



「…料理スキル、被服スキル、隠密スキル、全部に効果ありか」

「あとは無機物干渉スキルですね」

「明日でいいよ。だって僕以外に習得者いないし。でも料理スキルとかは他にも持ってる子いるから成果は知りたいはずだし」

「…それもそっか」

「まあ嘆くのは猫好きの岸見さんくらいだろうしねえ」

「それに、一度カーくんに受肉使って経験値ガッツリ稼いでそうって実績はあります。やるのは確認くらいですしね」

「そうだな、明日でいいか。午前中にやる?」

「うん、採取がてら下車して、その時にちょっとやってみようかなって」

「そうですね、それでいいと思います」

「明日までには完成にこぎつけたいな、あたしも」



ちなみにウェディングケーキ(仮)はアイテムボックスにしまわれている。

今にもラムが食いつきそう(文字通り)だったので…

晩ご飯の後でな、と言い含めて諦めてもらったのである。そのせいか、今はちょっとしょんぼりしている。

てかラムがいないとあんなデカいの食べきれない気がする。食べ残しが絶対発生しそうにないのはいいことだけど。

ラテも大抵のもの食べるし、サンもスーも元がデカい魔物だから結構な量を食べるしな。

それに、ケーキはラテも食べるの楽しみにしてるらしい。うん、多分好みだろうなって気はする。カフェラテと一緒にいただけばいいんじゃないかな。



「明日以降もケーキ作るけど、何ケーキが好き?みんな」

「僕チョコかなあ」

「チーズケーキ好きです」

「あたし色々食べてみたい派やなあ。スイーツバイキングみたいな」

「あーそれも楽しそうだな」

「ロールケーキとかブッシュドノエルとかザッハトルテとかフルーツケーキとかモンブランとか、ちょっとずつ食べたい!」

「あー、いいなそれ。ホールで作っても八等分ってなると結構少なくなるし、何種類か食えそうか」

「シュトレン…は、長期的に食べるやつか」

「ちょっとみんな、ポンポン案出しすぎです。食べたくなってくるじゃないですか」

『………っ』

「あっラムの目が超輝いてる!わかったから!作るってば!」

「ひとまず、今日は苺のショートケーキ…ショートじゃなくてホールだけど、晩ご飯の後でみんなで食べような」

『はいです!』

「いい返事だな。百点!」

「採点甘すぎませんかアキ兄さん…」



何であれ、初期スキルの経験値稼ぎは仕方ないと諦めてる部分もあった。

でも早くレベルアップ出来そうならありがたい。

やっぱり初めて得たスキルなので思い入れが強い。最初はこのスキルを頼りに頑張っていたわけだし。

このスキルを得てよかったと思ったことも多いので、強くなってくれるなら嬉しい。

僕の場合はレベルアップしてどんな派生能力が生えるか不明だけど、召喚できるものが増えるならそれだけで便利になる。

他のスキルは一応スキル大全に記録されているスキルだ。良さそうな派生能力もあるし、それが覚えられるならありがたい。


該当スキルを持ってる子たちもやってみたらしい。

でもMPの関係で長時間は出来ず、料理スキルに至っては材料や器具がないので出来なかったと。

何なら嘉島くんなんてケーキの作り方すら知らなかった。定食屋だもんな。

簡単に作れそうなケーキのレシピとか、アキ兄さんが書き込んでたので明日はそれを作ってみるそうだ。

代用器具と少ない材料で作れるものなんだな…奥が深い。

召喚の『キッチンスペース』を持ってるので調理場の問題はないだろう。オーブンだって貯蔵庫だって完備してるらしいし。

何ならカーくんの備え付けキッチンしかないアキ兄さんの方が使い勝手が悪いくらいだ。

これで多少作っていたりしたら、彼らはレベル10になった時、レベル11への必要経験値が1000ですむようになるかもしれない。

さすがにこれはすぐ判明するものじゃないけど。



「今までの召喚者の間でこういう話題ってなかったのか?」

『ラムは初めて聞いたです』

『わたしもなのだ』

「そもそも、現地の人と長く関わらなかったんじゃないですか?歴代の召喚者って」

「知ったところで、自分だけの知識になっちゃってたかもだしねえ」

「オリジン間で情報共有がなかったなら、多分知られてなかったんだと思うな、俺」

「…確かに、ドラゴンが知らなかったって言うなら周知されてない情報だったのかもな」

『クラフェル様、レベル上げて欲しいとは言うですけど、効率のいいレベルアップ方法とか全然気にしてないと思うです』

『勝手に上がるもんだと認識してると思うのだ』

「散々な言われようやん!まあそんな気するけども!」



そうだな、人間目線で見ないだろうしな…

少なくとも創造神やオリジンたちは知らなかった知識なのだろう。こっちも検証中ではあるけど。

ただ、ドラゴンが言うには召喚者が元の世界へ戻る旅というのは年単位の時間がかかってもおかしくないもの、という認識らしい。

むしろ僕たちみたいな車で爆走というパターンがなかったのだろう。

ということは、他の組は普通に数ヶ月単位の旅路になる可能性が高いのか。

まあ、帰れたら召喚直後の時間に戻るから、時差ボケにだけ気を付ければいい…か?

二ヶ月以上勉強してないから授業の内容とかもう忘却の彼方、って可能性もあるけど。



「…命ある状態で帰れるなら、勉強の遅れくらいなんぼのもんじゃいって感じですよ。まだ二年生ですし」

「ハルが言うと説得力すごいなあ」

「勉強漬けだった子が…何て逞しい…お姉ちゃん感動やで」

「年明けてまだ二週間ちょっとですからね。充分巻き返せるでしょう」

「そだな、年明けの抜き打ちテストも終わったから次デカいテストは学年末だろ。誤魔化せる!」

「ウワー…逞しい」

「ああ、リオ兄は無関係やもんな。クッソ羨ましい」

「本来の14の僕は絶叫するかもだけどな」



14の僕は半才能者だ。今の僕が行方不明になってからの出来事を忘れるかもしれない。となると、時差ボケの心配はないだろう。

覚えてても一応あっちで勉強させられてるって話だから、まあ大丈夫じゃないかな。

それに僕らが入れ替わるとしたら、あの召喚の日の翌日だ。召喚直後の時間軸に戻るのは僕。でも次の日からは本来の時間軸の僕が過ごす、って具合に。

元より村雨涼の成績なんてど真ん中もいいとこの可もなく不可もなくってレベルの学力だ。

恐らく、才能者界隈の人達はこの出来事をちゃんと記憶したまま時間だけ巻き戻る感じになると想定している。

だからあっち陣営にヒャッハー組を預ける分には問題ないだろう。どうにかして召喚直後の時間軸と場所に奴らをねじ込んでくれるはずだ。

具体的にどうやるかは知らんけど、出来ないようなら多分何かしらルーから連絡があるだろう。

今日、伝達予定だっけ?話題に出るかなあ…出なければ問題ないって認識しとこう。


案の定、今日は伝達をするとナズはやる気になっていた。

とりあえずこっちからは下山してゼイレムへの道を辿ってるという情報。

ケーキのことについては話さんでいい…と言ったけど、久々のケーキにテンション爆上がりしてんだよな、ナズ。

一番テンション高いのはラムだけど。結局八割はラムが食べた。うん、知ってた…

ルーが帰ってから日数も経ってるし、弟くんに『こちらに伝えた方が良い情報』はとっくに伝えてるだろう。

満を持して、というのもアレだが、そうして伝達は始まった。



「ハロー、ゆず!お姉ちゃんやで!!!」



浮かれ切ったナズの開始の合図が響き渡った。マジでテンション高いな。

相当ケーキが嬉しかったらしい。それか、滅多に作らないドレスなんてものを作るのが楽しいのかもしれない。

正式な作り方なんて知らないので適当、とは言ってたけど、現時点で作られてるのを見たら「マジで作り方わかんねえの?」って思うくらいちゃんとしたのが出来てた。

実際、誰が着るかなんて想定してないんだろうけど、あえて想定するならイメージとしては人型サンらしい。ああ、スレンダー美女な。


始まりはアレだったけど、やっぱり情報はあったのか、片手で走り書きメモをしつつ弟くんの話を聞いていた。

あと、ルーに渡していた手紙はちゃんと届けられていたらしい。よかった、渡してくれてたのか。

ほとんど聞き役に徹していたので、どういう会話かはほぼわからないけど、あっちからの情報は聞けたみたいだ。

こっちからは僕たちの今の状況くらいだ。坂下さんの『配達』についてとゼイレムにもすぐ着くという話をして、ここで伝達は終了した。

…結構ギリギリまで引き延ばしたようだけど、MPが限界だったらしい。



「うう、ごめん、ラテ。ドレスの続きは明日でいいかな…」

『もちろんですの!あるじさま、今日は休むですの!』

「伝達の後にやる気だったのかナズ…」

「う…MP残ってたら、って思ったけど…うん、今日は休みます…」



人のこと言えた義理じゃないけど、アキ兄さんの指摘にナズがしょんぼりしていた。

アキ兄さんだってこの後仕込みとかでキッチンでゴソゴソする予定だろうに。


ルー、もといシルバーからの情報は色々だった。

まずナズの弟くんたち三人に、今回シルバーが異世界クラーフに渡るという話は共有されていた。

よかった、黙って異世界転移とかせずちゃんと情報共有されてた!

そしてそこから芝と眞壁を連れ帰ってきたということも弟くんは知らされていたようだ。

もっとも、ヒャッハー組の二人という説明で、それが誰かまでは知らなかったとのこと。名前を聞いても知らないだろうから言及しなかったのかもしれない。

それでも、当然自分たちの姉ではなく何故ヒャッハー組を連れ帰ってきたかという質問が出た。

そこでシルバーは『ヒャッハー組は、創造神の力を介して戻ることが出来ない』『なので全てが終わった時、記憶は消える』ことを伝えた。

創造神の力で、僕たちは召喚直後の時間軸に戻り、周りの人は召喚後の失踪事件など無かったこととして過ごしていく。

そもそもそんな事件が起こってないので、知らないまま日々が過ぎる、と。

こういう措置になることを、冷遇組全員で取り決め、納得し、創造神が叶えてくれる形になる。

そしてそれをシルバーに話したから、彼らにも伝わったのだろう。


…当然、ナズの弟くんやハルの弟妹にも記憶は残らない。

彼らは只人なので、才能者界隈の力で記憶の保持の措置もされない。

そのことについて、未だ弟くんやハルの弟妹たちは感情の整理がついてないようだ。

忘れたくない、でも姉が行方不明になった日々が無くなる。良い事と悪い事、どちらであるかまだ心の整理がついてない。

彼らにとっては、スマホ購入や、その後に友人となった出来事そのものが無くなるわけだしな。


そっか、シルバーはそこを誤魔化さずにちゃんと話したのか。

誤魔化しても意味がないと思っただけかもしれないし、京さんが話した方が良いと判断したのかもしれない。

記憶を消すなんて、という不満を、姉じゃなくてこの事実を伝えた京さんたちに向けようとしたのかもしれない。

そのあたりはさすがにわからないけど。



「うん、…ゆず達も、忘れちゃうんだもんね…」

「…そうですね、記憶を残すかどうか、あの子たちは選べないんですよね。千明、千歳…こんなに心配してくれてるのに…」

「お礼も言えないのか…ちょっとつらいな、それ」



何もなかった。

それが正しいのはわかってる。

けれど、何とも言えないしこりの様なものを感じるのも確かだ。

僕たちも、元の世界に戻る際に、この世界での出来事を全部忘れるという選択肢もある。

けれど、選べる。弟くんたちは選べない。結果が同じでも、この違いは大きい。

彼らがとてもいい子であることがわかるだけに、つらい事実だ。

出来ることなら彼らにも覚えておいて欲しい。けれどそれは出来ない。


才能者の能力なら可能かもしれないが、只人に向かって力を行使するのは基本的に禁止されている。

だからこそ過去に僕が遭った事件、マンションの人たちが呪いをかけられた事件も、犯人は罰せられた。多くの只人に能力を使ったから。

もっとも、奴は才能者界隈のことは知らず、自分だけが特別と思い込んで暴走していたようだが。一番やっかいなやつでは。

そして今回の芝も同様だ。

シルバーが『道』を通って只人を連れ帰った件に関しては、元より命令が出ていたこともある。それに乗っかった形だ。

多分ちょっと揉めたんだろうけど、『眞壁という、戻すことが困難と思われていた奴を元の世界に連れ帰った』という功績でルール違反は打ち消されているだろう。

恐らくそれを見越してシルバーも連れ帰ったんだろうし。最初渋ってたのは、その辺りどうしようか悩んでたからだろう。

連れ帰らないという選択肢でも正解ではあったんだから。

けど、弟くんが言うにはシルバーが再度こちらに来た時、ヒャッハー組を連れ帰りたいと言ってたそうだ。

ということは、上の方でも『道』を通ってヒャッハー組(只人)を連れ帰るのは可と了承されたんだろう。

本人は足に使うなと憤慨してたそうだが。

まあ、道のあった空間が元通りになるまではこっちには来ないだろう。

行けそうになったら知らせるとは言ってたので、弟くん経由で知らせてくるはずだ。

それまでに一人くらい捕縛出来たらいいけど…最悪、向原でいいか?



「ヒャッハー組の可能性があるっていう、遠い町にいた黒髪はどうなったんだろうな?」

「続報無さげだからなー…もう『配達』送り付け直後にお邪魔します!の方が勝率高いかも」

「何の勝率…」

「と、とりあえず情報はこんなもんやな!明日はあたしもドレス製作するし、伝達はまた…ゼイレムに着く前日とか?」

「そうですね、そのあたりならいいかと」

「うん、耳寄り情報がない限りそのタイミングでいいだろ」



ケーキやドレスをいくつか作っていたらスキルレベル12になるかもしれないしな。

特にドレスなんて一日に何着も作れないし、しばらくドレス系やスーツ系なんかで経験値稼ぎするのでいいんじゃないだろうか。

着る人なんていないけどな。

悪魔のような「誰か結婚式の真似事でもするか?」なんて人の心がない言葉が飛び出したけど、誰も立候補しなかったよねっていう。

まあケーキとドレスが揃ったら簡易版くらいなら出来なくも…ないか…?

ちなみに今日作ったケーキ、短縮調理で登録したので一瞬で作れるらしい。消費MPは考えないものとする。

もうラムとラムツーの結婚式でいいんじゃないか。新郎新婦どっちか知らんけど。



『いいですね。それなら主役なのでケーキ食べ放題です』

「結婚式ってそういうものじゃないと思う」

「食べ放題って、どっちかってーとケーキバイキングじゃないか?」

「それだとドレスの出番なくないですか?」

「ほんまや」

「…廃案!!!」

『そんな!!!』



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