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143.増える手段


転移玉は二つ回収できた。

芝と眞壁がひとつずつ持っていたからだ。いや、眞壁が持ってたというより廃小屋にあった鞄に入ってたと言うべきか。

冷遇組が持たされていた鞄に似た、それでいて上質なものだった。鞄はひとつしかなかったので眞壁が持ってた分だろう。

芝はデザインが同じ鞄を背負ってたし、眞壁ので間違いないはずだ。

向原が持っていた分の転移玉はアイさんたちに渡したので、この二つは抉れ海組とオーレン組に渡すことにした。

これを持っていればいざという時逃げ出せる、ということで、ラムにお願いしてアクアスライムとテラスライム経由で送ってもらった。

抉れ海組はそのうち四人と三人の組に分かれて行動する予定なので、もうひとつくらい手に入らないかなと思ってる。

今は桜庭くんに預けてるそうだ。新田くんたちが、自分たちは逃げやすいスキルだからと譲ったらしい。いい子かな?

確かに『擬態』スキルって欺きやすいスキルだから、逃げるって手段をとるならいけそうか…?


最初は僕たちこそ持っているべきという意見があったけど、僕に転移が効かないからなあ…

実際、芝と会敵した時は僕は転移玉の効果から取り残されている。ついでに向原に会った時も転移の魔法陣は僕に効かなかった。

僕だけが分断されたことも冷遇組全員が知ってたので、魔術無効スキルの影響だと思うと言えば納得してくれた。

坂下さんも怪しんでないようだったので、元の体質じゃなくて本当に魔術無効スキルが関係してるのかもしれない。もしくは両方か。

オリジンたちも『自分に害がある効果だと認識すれば空間魔法も効かないだろう』という認識だったそうだ。

そうだな、ラムやスーの空間魔法は僕に害なんて絶対与えないって思ってるのもあって、効くのだろう。

なら転移玉もイケるのでは?という意見もあったけど、今まで転移玉を持ってたのがヒャッハー組だったせいか、これは嫌なものって認識しちゃってるんだよな、僕が。

それもあるし空間魔法使いが二匹もいるということで、僕たちには必要ないという意見が通ったのである。



「こんなもの、使う機会がないのが一番ですけどね」

「拠点らしい拠点も無いし、どこに飛ぶかわかんないもんね」

「本当に緊急脱出時だろうな、使うとしたら」



まあ、オリジン含めた従魔も連れてるし、戦力という意味なら冷遇組のどの組も過剰戦力だ。早々ヤバイ事態になんてならないだろう。

それこそヒャッハー組に遭ってしまった時くらいか。

みんな、もう権能を覚えてるくらいにはレベル上がってきてるし、地力も上がってきてるだろう。

何せダンジョンで見たレベル5のアイさんたち三人の戦い、結構凄かったからな。

レベル5であれだけの力があるなら、ほぼ同等レベルの皆も多少のことは切り抜けられるだろう。



「向原さんや芝野郎っていう前例があるので怖いですけどね。私たちもですが、他の冷遇組がヒャッハー組に会う可能性、そこそこあるのでは」

「行方がわかんないヒャッハー組が何人かいるもんねえ…!」

「考えても仕方ないだろ。…いや、俺もめっちゃ気になるんだけどさ…!」

「でもその時にならないとなあ。現場の判断で行動してもらうしかないし…あ、抜けた」

「おお、ほんまや!これで下山出来たな!」



芝たちと…いや、ルーと会ってから三日。やっと山を出られた。

あれからレベリングを兼ねてのんびり下山したので、本当にやっとという感じだ。



『周りに冒険者も魔物もいないです。カーくんに乗り込むです?』

「そうだな。そうするか。で、今日はもう休もう」

「賛成です。もう陽が落ちますしね」

「いつも引っ込む時間より早いな。そうだ、今日はゆっくり湯舟浸かるかー。ラム、一緒に入ろ」

『大賛成です』

「うん、アキ兄とラム、一番風呂行っといでー」



アキ兄さん、湯舟ついてからもほぼシャワーだったみたいだからな。

ラムは湯舟で浮かんでたりして堪能してたようだけど。

…うん、ご飯作らなきゃっていう思いがあるからだろうな。自分より家事優先しがちなお母さんかな?

時間に余裕あるのは確かだし、今日くらいまったりしておいで…



「シルバーさんから何か情報あるかなあ?」

「ああ、芝の件で?うーん、どうだろう?」

「MPあんま余裕ないけど、今日『伝達』しとこうかな…?」

「魔法でMP消費してますし、明日の方がいいのでは?明日はほぼゼイレムに向かってカーくん走らせるだけでしょう?」

「そうだな、多分明日は魔物と戦わないだろ。MP使うとしたらスキルの経験値稼ぎくらいか」

「…せやな、明日にしよっかな。重要情報聞いてる最中にMP切れとか起こしたらやばいし」



山は魔法に弱い魔物が多かったからな。

おかげでレベルも魔法スキルもレベルアップしてるのである。ますます頼りになるね、僕以外が。



「そうは言っても、アキ兄さんも剣術上がってますし、リオ兄さんも蹴術上がってますけどね。頼りになるというなら、皆なのでは?」

「だよねえ。あ、派生能力なんだったっけ?」

「剣術が『攻撃強化・小』、蹴術が『身体強化・小』だな」

「お、リオ兄の身体能力上がった?ええやん!」

「『微』が『小』になったやつですよね。単純強化ですがありがたいです」



あとは魔法スキルもスキルレベル自体は上がってるけど、派生はスキルレベル5刻みで発生するので何も覚えてない。

でも微妙に威力が増してるように感じるらしい。これはスキルレベルが上がってるからか熟練度のようなものがあるからかは不明。

でも威力が上がる分には何も困らないのでいいか、という結論に至っている。

坂下さんが言うには両方ありえそう、ということだった。

看破スキルがそう言ってるなら多分正解だろう。バンバン魔法使えばええんやな!とナズが張り切っていた。


夕飯後に一応ステータス確認することにした。

もう明日以降はそこまで戦闘する予定がないから劇的な変化はないだろうということで。

現時点のステータスを確認しておこう、となったのである。



名前:アキ(狭山 茜)

年齢:14

性別:女

LV:16(あと487)

職業:異世界料理人

HP:348/350

MP:104/270


スキル:料理LV11(あと9145) 剣術LV11(あと354) 体術LV10(あと208) 火魔法LV8(あと449) 水魔法LV8(あと712) 付与魔法LV7(あと344) 従魔術LV9(あと102) 生活魔法LV7(あと618) 魔法耐性LV5(あと481) 状態異常耐性LV9(あと471) 栽培LV8(あと773)

テイム:エレメンタルスライムLV148

権能 :倍化



「あ、体術と従魔術があとちょっとだ」

「従魔術って確か10で『伝心』だったよな?」

「そう!あたし覚えたやつや」

「前みたいなことがあれば役立ちますし、覚えたいですね、私も」

「僕とハルはちょっと先だなー。でもラムやラテと『伝心』出来るとすごい役立ちそう」

「特にラテだと牽制だもんな。ナズとラテがどいつ牽制するか口にせず意思疎通だけでやりとり出来るのデカいぞ」

「アキ兄さんでも役立つだろ。アキ兄さんとラムが前に出て戦う時とか」

『ちょっとワクワクするです』

「てかHP四捨五入したら400やで。ヤバい」

「いやあと50あんじゃん!五入の幅がでかいわ!」



名前:リオ(村雨 涼)

年齢:14(24)

性別:女

LV:16(あと512)

職業:万物使役者

HP:251/255

MP:449/1400


スキル:無機物干渉LV11(あと5418) 蹴術LV11(あと578) 護身術LV10(あと384) 投擲LV10(あと552) 従魔術LV7(あと249) 物理耐性LV3(あと214) 魔術無効 状態異常無効 真偽LV7(あと118) 結界LV3(あと45)

テイム:フェリックスLV147

権能 :空間作用



「うーん、やっぱりMPの暴力。無機物干渉スキルの経験値溜まるのも早いな」

「そういや結界スキルって何か派生したんだっけ?」

「してない。最初の『防護』だけ。これも魔法と一緒で5刻みだから。次はスキルレベル5で『拒絶』だな」

「ああ、指定のもんを弾けるやつやな。雨とか」

「あとは個人もでしたね。眞壁くんが覚えてたであろうやつ」

「結局あいつの作った結界に一回も触んなかったからどういう設定されてたかわかんないんだよな。多分俺たち出られないようになってたと思うけど」

「…気絶したら解除されるの盲点だったな」

「睡眠はセーフみたいですよ。張ったまま寝れます」

「結界を維持した状態にしたいなら張った人は守れってことやな!」

「つか、リオくんのスキルって防御系やばいな。護身術に物理耐性、無効スキルに加えて結界て」

「ほんまや。カッチカチやん」

「いや、でもスーとかにつつかれたら死ぬぞ」

『や、やらないのだー!』

「そ、それは相手が悪すぎるだろ、ステータス差は無情」



名前:ナズ(波川 静)

年齢:14

性別:女

LV:16(あと543)

職業:服飾職人

HP:287/290

MP:67/300


スキル:被服LV11(あと9099) 鞭術LV10(あと110) 風魔法LV9(あと847) 土魔法LV9(あと713) 付与魔法LV7(あと331) 従魔術LV10(あと895) 詠唱短縮LV3(あと214) 魔法耐性LV5(あと472) 状態異常耐性LV9(あと458) 糸操作LV9(あと882)

テイム:ヴェノムタランチュラLV47

権能 :伝達



「あ、鞭術もうちょっとだ」

「11で何か派生したっけ?」

「『命中補正・小』ですね」

「中距離攻撃にとってありがたいやつじゃないか」

「ぎゃー!もっと使ってればよかった!」

「いや、でも魔法スキルやばいな。レベル9て。10で派生能力あるし、こっち優先で正解じゃないか?」

「風魔法と土魔法って何が派生するんだ?」

「風が『突風』、土が『土壁』です」

「…いいやつじゃないか?近づいてきた敵を遠くに吹っ飛ばせるし壁で足止めできる。牽制の幅広がる気がする」

『攻撃魔法でもあるので、普通にダメージも入るです』

「飛ばされたやつが頭から地面に衝突したり、壁生やす位置によっては金的みたいなことも…楽しみになるな!」

「あの、アキ兄さん、それだとギャグになりません…?」

「あたしそんなんやらんからな!!!」



名前:ハル(林 千晴)

年齢:14

性別:女

LV:16(あと520)

職業:影

HP:168/235

MP:122/350


スキル:隠密LV11(あと8724) 短剣術LV10(あと288) 投擲LV10(あと112) 光魔法LV8(あと158) 闇魔法LV9(あと883) 回復魔法LV5(あと411) 浄化魔法LV3(あと72) 付与魔法LV8(あと735) 従魔術LV8(あと517) 詠唱短縮LV3(あと127) 魔法耐性LV5(あと454) 状態異常耐性LV9(あと467) 栽培LV7(あと28)

テイム:シーサーペントLV118

権能 :分身



「お、ハルもレベルアップ近いのあるな」

「浄化魔法と栽培と…投擲もか」

「光魔法と闇魔法もなかなか…闇の10って何だっけ?」

「『影潜』です。自分の影に隠れることが出来るです。沈む感じで」

「忍者やん」

「さすが闇、影に関する魔法が多い」

『近くに建物の影とかあればそっちに移れるです。自分の影と別の影を接触させると移動範囲多くなるです。弱点は光です』

「まあ弱点はそうでしょうね」

「移動にMP使いそうだな」

『うむ、使うな。あまり長時間長距離使っているとすぐMPが消費されるので注意が必要だ』

『シャドーは逆に影の中にいると回復するですけどね』

『それは種族特性なのだ』

「ああ、オリジンシャドーですか」



でも隠密スキルと組み合わせるとマジで凶悪な気がするな…

全員、レベル17もさほど遠くないし、ゼイレムに着く頃には17になってる可能性もある。

この辺の魔物って経験値多いからな。レベルアップ速度が早くなってる気もする。

もちろん、クソ強従魔が手伝ってくれてるからって理由もある。

僕たちだけだと下手したら魔物にやられてる。

これ、元の世界に戻る頃にはレベル20くらいになってるだろうか…?

まあ強さとか極めるつもりもないから、レベルがいくつになってもいいんだけど。



「特に真新しい情報はないですね。剣術と蹴術のは昨日報告しましたし、掲示板に書くほどのことはありませんね」

「うん、魔法スキルレベル10にして、使い心地の確認出来たら報告すればいい感じかな?」



むしろ権能取得したーって報告が相次いでるから、僕ら発信の報告より向こう発信の情報の方が重要である。続々とレベル5になってるらしい。

やはりというか補助系の権能が多い。移動系とか連絡系はレアなのだろうか。

それでも役立つものばかりだし、消費MPが少ないのも羨ましい。

って言ったら「俺らにとっては消費MPすげーんだよ!」ってめちゃくちゃ怒られてしまった。

あ、うん、確かにハルとかも結構消費激しいもんな。使い方次第で消費量が跳ね上がるのも多いんだろう。

アキ兄さんだって魔道具の倍化は消費がすごかったし、ハルも分身体を動かそうと思えば消費すごそうとか言っていた。

…これは消費MP少ない、なんて言えないか。

ごめんなさい、これは僕が悪かった。


そう思っていたところに、ひとつ連絡系になる権能が出た。

坂下さんの『配達』という権能だ。ヤバイ気配を察知。

現時点では手紙程度の、紙一枚くらいが精一杯だそうだが、会ったことがある人に対して物を送ることが出来るらしい。

ただし一方通行で、坂下さんから誰かに送りつけるだけ。

けれど情報や絵で描いたもの…地図などは助かるし、結構使い道があるのではないだろうか。

そして権能進化すれば多分送れるものが多くなるか、返信も受け付けられると想定できる。

看破スキル持ちの坂下さんから発信される情報はなかなか重要では?いい権能では?


本人は、掲示板があるなら現時点で死に能力とか言ってたけど。

ああ、うん…これは掲示板が優秀すぎるんだ…



「でも掲示板で出来ないことも出来ますからね。現物を送ることが出来る、っていう」

「確かにそうだな。何せ『配達』だもんな」

「でもさあ、坂下さんサイドにとって紙って超貴重品にならん?練習さえ出来んのつらくない?権能って使わないと消費MPも減らんし」

「…それもそうか。ラム、アクアスライム通してルーズリーフとノートと便箋と筆記用具送ってもらえるか?」

『わかったです。任せるです』

「出たよチートスキル。無機物干渉スキル強すぎんか」

「多少は提供してましたが、こんな権能が発生した以上、今まで以上に消費するでしょうしね。追加はいいと思います。それはそれとしてリオ兄さんがヤバイ」

「風評被害、風評被害ー!」



抉れ海組に書くものを送ったら、お礼言われた。

それはそれとして、無機物干渉スキル怖いとも言われたけど。怖くないよ…

アクアスライムは、筆記用具と一緒に送った携帯食品(アキ兄さん作)に大喜びだったそうだ。

これ使うとお腹減るらしいので、ラムを通じて物を送る場合、アキ兄さんは毎回こういうものを持たせている。

これなら受け取る側のスライムも空腹に悩まされないだろうということで。

うちの兄が素敵すぎる件。



「今は具体的な使い道思いつかないけど、次の『伝達』で坂下さんの権能のこと、弟くんに伝えといてもらえる?」

「オッケー任せて!」

「この世界に来てからのとはいえ、『会ったことがある人』が条件なの強いですよね。掲示板よりMP消費は多いようですが、権能進化したら絶対強いやつです」

「そっか、元の世界へってのは無理としても、もしかしたらヒャッハー組やラージフールの奴らにも何か送ることが…」

「でも現状出来るのは不幸の手紙を送ることくらいです。今はまだ出来ることはありません」

「地味に嫌な精神攻撃になりそうだけどな…」

『なら見るだけで洗脳したりできる魔法陣とかを送ればいいんじゃないです?作るです?』

「よーしラムさんストップやで。ちょっとそれは人としてアカン気がするからな!」

「…でも意見としては悪くない気がするな」

「リオ兄!?何怖いこと言いよんの!?」

「洗脳じゃなくて睡眠ならどうだ?忍び込んだりして何かをしたい時、ある程度の人数でも睡眠状態で無力化出来るのは強いぞ」

「…ああ、なるほど。そういう使い方ですか」



具体的には、ラージフールにいるヒャッハー組を連れ去る時、とかな。

城というだけあって、あそこに勤める人数はかなりのものだ。

そのうちの何人かの騎士とか…むしろ、目標であるヒャッハー組を睡眠状態に出来るのはかなり有用ではないだろうか。

坂下さんも騎士やら兵士には会っているから、配達先として選ぶことが出来るはず。



「次にシルバーが来た時、連れ帰ってほしいヒャッハー組に対してこっちからアクションを起こせるのは大きい」

「確かに…待って、マーカーみたいなのは無理でしょうか?今行方不明になってるヒャッハー組の居場所を探し当てるための目印です」

「あ、あー!なるほど!一方的に送り付けるだけの能力ってそういう場合に強いんだ!呪い返しみたいに返されないから!」

「アキ兄の例えがちょっと怖い!」

『…目印…そんな手が…待つです。紙に…紙相当のものに…』

「ラム、何か思いつくのある?」

『魔法陣を描くとなれば紙に描けばいいけど…シャドーの一部を仕込むとかだと工夫がいるのだ』

「何か怖いこと言い出したぞオリジン!」



ああ、目印は送ったとしても"その時点"でのものだからな。

『配達』で紙を送りつけられても、受け取った現場が通過中の森の中だったり、怪しんでその紙を捨てられでもしたら…

その"受け取った"場所はわかるだろうけど、そいつ自身のいる場所がわかるようになるわけじゃない。

突然目の前に現れた紙を怪しまずにずっと持っている、なんてことはまずありえない。

だからその目印の方法を使うとしたら、そいつの居場所に向かう直前とかだ。

一人二人なら『配達』で何とかなるだろうけど、消費MPのことを考えると一日一回か二回が限度らしい。

となれば、あらかじめ数日かけて仕込んでおきたい。一日に一人の居場所が判明、なんて風になれば坂下さんの負担も軽いだろう。

となると、継続して該当者の居場所を把握しておかなければいけないということで。

…オリジンたちがダンジョン前で『印』をつけたように、何かしらの『印』になるものを『配達』で送り届けたいと。発信機的な。

紙に仕込むとしたら確かに工夫がいるか…オリジンシャドーみたいに体の一部とか、どうやって仕込むんだって話だし。



「何かが仕込まれたと分かれば、送りつけられた側も抵抗するでしょうしね…」

「オリジンシャドーは光に照らされると消えるし、ホムンクルスの糸は燃やされると消える。うーん…弱点がわからなければ問題ないか…?」

「とりあえず今わかってることと企んでること、掲示板に書いといたぞー」

「アキ兄いつの間に」

「仕事早いなあ。…ドン引きされてる解せぬ」

「あ、でも坂下さん自身はやる気ですね。手伝えるなら喜んで協力するって言ってくれてます」



ひとまず、今日のところは情報共有をするだけに留まった。

ラムやスーも含めて、抉れ海組にいるオリジンも創造神に報告するとのことだ。

創造神経由でオリジンシャドーにも協力要請がいくかもしれないとはラムの言だ。マジで?今ラージフール組を見張ってくれてるんじゃないの?絶対忙しいだろ。

ああ、あとはこっちでもナズが弟くんを通じて、ルーに情報共有しないといけない。

こっちでもやれる手段があると知らせるのは大事だしな。

あっちはあっちで何か手段を講じてるかもしれない。とはいえ、こっちに来れない以上出来ることはほぼないか…?



「あの、リオ兄さん、答えられなければいいんですけど…」

「ん?何?」

「シルバーさんがこちらに来るタイミングについてです。彼の異世界転移については芝野郎と違い、一回きりの力じゃないとは聞きましたけど」

「ああ、うん。でもあいつの力は僕も詳しくないからな…」

「そうですか…あの、間隔が空くのは何故ですか?翌日とは言いませんが、次に来るのは先の話と言ってたのが気になって」

「ああ、確かに。こっちの世界みたいに一晩寝てMP回復、とは違うだろうけど…回復に数日かかるとか?」

「あー、そういうやつか。うーん、僕の予想も入ってるんだけど…」



『道』を繋ぐ時に必要なものは、その道の先によって変わるらしい。

時間帯であったり気温やら持ち物であったり、その条件は様々だ。

捧げものが必要なパターンはそれを用意すればいいが、それが特定の花だったり物質だったり様々だ。

桜の花びらを用意しろなんて言われた時、ルーはキレ散らかしてたからな。春限定かよって。

押し花とか栞に桜の花びらを使ったりで何とか条件クリアしてたけど。

ちなみにクラーフに来るための条件は、僕がお守りと通信機を持っていること、らしい。


そして一番の要素は、一度道を作るとその場所へ通じる『道』があった空間がグチャグチャになるらしい。

ただでさえ、空間を捻じ曲げて道を繋げている。捻じ曲げないと本来通じるはずのない『異世界』なんて場所に行けないから。

その捻じ曲がった空間が元に戻らない限り、不安定になって『道』を作るどころじゃなくなる。無理に『道』を作ってもどこへ飛ぶかわからなくなるから。

幸い空間には修正力があるので、時間を置けば元通りになる。

ルーが言っているのは、その元通りになる時間が必要、ということだ。



「砂の山に一度穴を空けたら、その穴の部分は脆くなる。周りの砂で埋めて塞いでも、直後は穴があった部分をつついたら砂が崩れやすい…って言ったらわかる?」

「あー…一回均して固めないと駄目ってことか」

「うん、えっと、他には花を植える時とか?土に穴空けて花を根っことその周りの土を植えるじゃん。でもその花の周辺の土って脆いだろ?」

「…そうですね、簡単に花を引っこ抜くことが出来ます。しばらくそのままにしていれば根を張って抜きづらくなりますが…」

「あー、そういう感じ?」

「そう、砂の山もしばらく穴を埋めて放置してると、穴なんて無かったみたいに同じ強度のひとつの山って感じになる、っていうか」

「地球からクラーフ間の『道』の周りの空間の歪みが元に戻らないと…安定した『道』を作れないってことですか」

「半端に埋めたところに何か通そうとしても形崩れて下手したら埋もれるよな。料理の生地とかでもそういうのあるわ」

「なるほど、それで時間が必要…インターバルがいるってことですか。わかりました」



この世界へルーが来れる条件は二つ。

地球からクラーフへ通じる空間が安定していること。

目印である通信機とお守りの気配が感知できる状態であること。

お守りは僕と京さんが繋がっていて、通信機は僕とアルさんが繋がっている。

縁を含めたそれぞれの力がラインのように見えているとか言っていた。

なので多分、『道』の出口は僕だけど、入り口の方は京さんとアルさんの二人がいるんじゃないだろうか。

そのラインに沿う形で『道』を作っている、と。



「…そんな気はしてましたけど、かなりとんでもない現象ですよね、それ」

「うん、ビックリ人間なんだ、あいつ」

「そんだけの準備が必要なのか…改めて声だけとはいえMPの消費だけで済む『伝達』の規格外さが際立つな」

「それな」

「あれ、そういう話やったっけ!?」



そういう話じゃなかったかもしれないけど、妹が凄いという主張は隙あらばしたい。

というアキ兄さんの気持ちがわかりすぎる程わかったのでとりあえず握手した。

ハルとナズにはジト目で見られたけど。


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