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139.廃品回収(人力)


「おかえりー」

「おかえり!シルバーさんの服直しといたよー」

「は?」

「あ、ほんとだ。コゲてた部分が直ってる」

「は?…凄いな?もう捨てるつもりだったんだが…」

「こんなちょっとのコゲで!?もったいない!ウチの弟なんぞもっと盛大に破りよるで!」



それは弟くんがヤンチャすぎるだけでは?

ともあれ、これでルーが着ていた上着は復活したわけで。

カーくんで話し合いになった際に僕はルーから被せられた上着を脱いだわけだけど、それを見たナズが服の修繕を申し出たのである。

そして僕たちが医務室で話し合いになり、手持ち無沙汰になったので直したと。

それを見たルーが何とも言えない顔をしていた。



「え、あの、迷惑、でした…?」

「…いや、違う。つか、礼を、つっても、金使えねえしな」

「お金?いらないですよ?」

「あー、ナズ、気にしなくていいよ。こいつ、下心なしの親切に戸惑ってるだけだから」

「へ?」

「才能者としても強いし、この見た目だからさ。見返りを求めて親切を押し売りされることが多かったみたいで…」

「…あー」

「でもナズはそういうのじゃなくて、ただの厚意で服の修繕したわけじゃん?今までされたことなかった対応にどうしていいかわかんなくなっ…いたたたた」

「り、リオ兄ー!」

「アイアンクロー!?」



図星差されたからって酷くない!?

何つー暴力的な照れ隠し!



「え、えーと!あの、あたしも久々に服の修繕して懐かしかったんで!服を一から作るんじゃなくてこういう直し、こっち来てからなくって!」

「…は?」

「だから、ゆずを思い出して懐かしかったっていうか、あの、あたしも下心ありましたんで!向こうの世界を思い出せたっていうか!」

「…いや、俺が悪い。気にすんな」

「ああああの、ほんとに、下心あったんで!」

「真偽スキル発動中…」

「リオ兄シャラップ!」

「お前がこいつら好きになった気持ちがわかった気がするな…」

「だろ?いい子たちだろ?」



うちの妹分、素晴らしかろう?盛大にドヤ顔したら「うわ」って顔されたけど。

アキ兄さんたちとしては、今の状態で掲示板に報告出来るわけもなくて手持ち無沙汰だったそうだ。

うっかり料理したりハルは温室で栽培してたりしたという。うん、のんびりしてる子いなかったんだ。真面目かな?

報告として、24の芝が元凶ということだけは話した。動機についてはボカしたけど。

ただ、高校以降うまく行かずに腐っており、酒に酔って事故ったところで絶望したということだけ伝えた。

嘘じゃないからな。詳細を省いただけで。



「何つー迷惑野郎…そんな自分本位な理由で…」

「それな。まあ擁護するわけじゃないけど、本人にとっては人生賭けるくらい大きな理由だったんだろ。外野にとっては『くだらねえ』って一蹴される理由でも」

「ホントに擁護してねえな、リオ」

「一瞬、中学生の芝くんは被害者なのかと思いましたが、賛同してたんですね…これは同情の余地なし」

「24歳の芝が害悪すぎるんやけど!」

「俺らの界隈に回収されて絞られてっからそれで溜飲下げてくれ」

「それは精神的と能力的な意味で絞られてるって意味だよな?肉体的に絞られてはいないよな?」

「さあ…俺らが引き渡した時点では何もされてなかったが、今は知らねえ」

「くそ、嘘は言ってない…でも可能性ありそうで怖い…」

「まあでも、それならぜひ回収はしてって欲しいよな。惜しいな、向原も鉱山じゃなくて回収してもらえばよかった」

「…向原は今ホムンクルスの糸があるから、いざとなれば回収できる…か…?」

「ああ、そういえば!」

『操れるはずなので脱走って形で何とか…出来るですかね?』

『まあやろうと思えばできるのだ。多分』

「問題は野放しになってる召喚者かあ…」

「まあ、次に俺が来るとしたらしばらく後だが、その時に一人でも二人でも回収出来りゃありがたいな」

『こっちとしても害悪召喚者が消えてくれるならありがたいのだ』

『クラフェル様も喜んでたですしね』

「あ、もう報告したんだ?」

『シルバーくんが悪の召喚者を連れ帰るってことだけ伝えたです。めちゃくちゃ喜んでたです』



今日これから二人連れ帰るということだけ伝えたそうだ。

二人だけでも相当喜んでたらしい。そこまでか創造神…



「本当ならリオを連れ帰るつもりだったんだがな…京が盛大に拗ねそうだ」

「ええ…?」

「リオくん回収されたら困るなあって思ったけど、恩人さん、拗ねるの???」

「あいつ、リオのこと大好きだからな。よくうちの孫可愛いって騒いでる」

「孫て」

「だから…多分、リオが帰ってくるって期待してる、と思うんだよな…まさかシバが回収できるとは思ってなかったから」

「便宜上、芝の回収のために来てるのに」

「建前っつーやつだ。俺に命令した奴も本当にシバが回収されるとは思ってねえだろうさ」

「ま、まあ、芝がリオくんの近くにいないと会えなかったはず、だもんな」

「芝のタイミングくっそ悪くて笑うね」

「自爆ですね。ざまあみろって気分です」

「お前ら見事にシバが嫌いになってんな。無理もねえが」

「そりゃなあ」

「もう君付けさえしたくありません。これからは芝野郎って呼びます。呼ぶ機会があるかはわかりませんが」

「ウケる」



惚れた女にこの扱い。まあ自業自得なので同情の気持ちは欠片も湧かないけど。

でも、そうか。京さんも僕が帰ってくるのを待っててくれてるのか…何か嬉しいな。



「絶対帰るから待っててって紙にでも書くかな」

「書いてくれ。渡すから」

「あ、あの、あたしもゆずに何か書いてもいいですか?」

「あ、私も…」

「ああ、手紙くらいなら問題ねえ」

「よっしゃ、すぐ書こ!リオ兄、便箋とかある!?」

「あるけど可愛いのはないぞ?普通の…」

「普通でいいですいいです。家族あてですもん」

「アキ兄さんは…」

「俺は伝える相手いないからなあ」

「ゆず、アキ兄に懐いてるし、一言なんか書く?追伸みたいな感じで」

「あ、それならいいかも」

「寄せ書きみたいな感じでみんなで書いてもいいですねぇ」



ルーの時間があまりないので、サクっと一枚の紙に一言二言くらい書き留めるだけに留まった。

届けてもらうのは三通だ。ルーは了承して、上着のポケットにしまいこんでいた。



「次来る時はあと一人か二人くらい多く連れ帰れるかもな」

「ああ、初めて来た場所だから試行錯誤したけど、一回来た場所なら力の消費抑えられるか」

「そんな感じだ。こっちで言うMPっつーのも増えてんだろうし」

「レベル上がってたもんな。今いくつ?3くらい?」

「ああ、そのくらいのはずだ」

「え、レベル?そっか、魔物と戦ったって言ってたもんね。この山の魔物倒せたのすごくない?スキルってあるの?」

「ステータス一応見とくか。…MPに恐れおののけ、みんな」

「え、こわい」



名前:ル*…

年齢:*…

性別:男

LV:3(あと124)

職業:渡り人

状態:MP継続消費・微

HP:208/210

MP:325/1500


スキル:体術LV3(あと221) 火魔法LV2(あと193) 空間魔法LV2(あと187) 感知LV3(あと254) 強化LV2(あと138)



「うわあ」

「スキル五個…」

「HPもMPもえぐくない!?レベル3にしてMPリオ兄以上って!」

「…あー、実は僕も何か今の体だとHPとMP上がっててですね…」

「何でやねん!」

「アルの能力で色々抑えられてた部分があんだろうな。14じゃリオも才能者の自覚なかった頃だし」

「え、じゃあリオくん、14歳の体に戻ったらHPとMP下がっちゃうの?」

「多分な。でもそっちで慣れてるし、24の体でいるメリットがHPとMPくらいだしな」

「他の召喚者に会う機会があんなら14になっといた方がいいだろ。次来る時も念のためアルの能力石持ってくるつもりだし」

「あー、確かにヒャッハー組とかに会う可能性あるかあ…」

「ここまで、リオ兄さん二回会ってますからね。二度あることは三度ある」

「嫌な予言しないでハル…」

「てか名前と年齢スルーされてない?シルバーが偽名なのは知ってるけど年齢は?」

「年齢は僕も知らないし鑑定で表示もされてないからガチでわからん」

「俺も自分の年齢とか覚えてねえ」

「お、おう…」



ルーは名前を一文字でも知られるのは嫌みたいなので、みんなには教えてない。

大体こういうのは紙に書いて共有してるけど、今回のルーは名前欄と年齢欄以外を書いて伝えたのである。

ついでに今の24の僕のステータスも書いて共有しておいた。揃って「ヤバイ」という感想だった。ひどい。


てか、ルーはこれ以上レベル上がんない方がいいだろうな。

レベル5で権能覚えるにはオリジンに認められないといけないし。

かと言ってラムとスーは同行者を設定してしまっている。

同行者を設定してないオリジンで今所在がわかってるのはマーフォークくらいだ。

ルーは色々規格外すぎるので、同行者に設定なんて出来そうにないもんな。だって普段地球にいるわけだし「同行」できない。

ドラゴンが証明してるしな…転移なんかで居場所がわからなくなったら「同行してることにならない」って。

絶対ヤベー権能覚えそうなのに…まあ、無理なものは無理か。



「こっちからはユズルを通じて情報共有するつもりだ。ってか現状、それ以外で連絡取れねえからな」

「…だよなあ。通信機通じないし…ナズに負担かけちゃうかなあ」

「あたし?うーん、今より伝達の頻度上げた方がいいってこと?」

「…そうか、お前だったな、連絡先。いや、説得する。今まで通りの頻度でいい。スキル経験値稼ぎってのも重要だろ?無理すんな」

「え、あ、はい…?」

「絆されたか」

「やかましい」

「ぎにゃー!」



何度目のアイアンクローだ!

てかルー、案外チョロいな。さっきの上着の修繕でナズへの好感度モリっと上がったろこれ。

まあいいことだけどな。ナズはいい子だからな、わかる。

もっと頻度上げろとか無茶振りかますようなら徹底抗戦の構えだったけど、その心配も無さそうだ。



「ただ、他のヒャッハー組っつー奴らの情報が入ったら、短時間でもいいから報告くれねえか」

「わかりました!こっちとしても回収してもらいたいんで、その時は絶対連絡します!」

「それ以外は今まで通りでいい」

「あとは連絡取れそうな権能を覚えた冷遇組が出た時も報告しましょうか。いるかはわかりませんが」

「ああ、そうだな。その時も連絡欲しいかもな。現状、こいつだけだろ?負担がでかすぎる」

「…通信機、繋がればなあ…」

「さすがに世界を超えての連絡は無理だな。目印にはなるが」



ルーの力でも短時間、数人の移動が精一杯。しかもインターバルも必要。

ってのを考えると、伝達の権能の規格外さが際立つな。現状この二つの手段しかないのか、地球とクラーフの道筋って。



「そろそろ戻る準備しねえと戻れなくなるな。悪いがここまでだ」

「あ、そっか。うん、会えてよかった。京さん…みんなによろしく」

「ああ、手紙はちゃんと渡しておく。今、俺も日本にいるからな。で、この地図ももらってっていいのか?」

「いいですよー。倍化で増やしたやつなんで、こっちに損はないので!」



さっき道筋の説明に使っていたのは、グランツさんから貰った地図である。ダンジョン用の。

僕たちが持ってる中で一番詳しく地形が描かれてるやつだからな。

そこに、手書きで色々書き加えた。ラージフールの場所、僕たちが辿った道筋。今冷遇組がいる町の場所など。

もしかしたら、他の冷遇組がヒャッハー組に出くわす可能性もある。その時に彼らがどこで会敵したか。

そういうものを説明しやすくするために、地球組にも地図が必要ではないかというハルの意見だ。

ルーがこっちに来れるとしたら僕の近くでしかないけど、オーレン組が会敵して捕らえたという報告があれば会いに行ける。

またシルスパイダーの巣にお邪魔することになるけども。



「僕、もっと空間指定しとけばよかったな、色んな場所に」

「今言っても仕方ないって。こんなことになるなんて思いもしなかったんだし」

「それに、あまり多くの場所を指定しておけないんでしょう?指定しまくって古い場所のトランタや抉れ海とかに行けなくなったらどうするんです」

「…お前の権能も大概だな…」

「絶対シルバーも権能持ったらえらいもんになるぞ」

「そんな気はしますねえ…」



話しながら、みんなでカーくんから出た。

ラムツーとフレムバードがこちらを見た。芝と眞壁は気絶したままだ。

ルーはその二人の襟首を掴んで、引きずるように運び出した。右手に芝、左手に眞壁。気遣いも何もない。



「じゃあ俺はこれで帰る。悪いが、あとの説明は頼んだ」

「うん、冷遇組のみんなにはうまいこと言っとく」

「俺のことはリオの友達とでも説明しといてくれ」

「って、それ間違ってないですよね?ただの事実ですよね?」

「…そういやそうだな」



さすがに才能者うんぬんは説明できないけど、友達って関係性は隠す必要はない。

現状、10年後がどうのこうのって部分だけは隠しておくことになった。

元より冷遇組は芝が異世界転移の元凶では、という疑問は持っている。それを肯定する形でいいだろう。



「じゃあな。無茶はするなよ」

「ばいばーい」

「よろしくー」

「さよならー」

「ありがとうございます」



あっ従魔の皆も手を振ったりして挨拶してる。可愛い!サンとか尻尾ふりふりしてる!

別れの挨拶とともに光に包まれ、その光が消えた跡にはもう誰もいなかった。

ちゃんとあの二人も連れ帰ってくれたらしい。



「いやあー…びっくりしたなあ」

「リオ兄、えらい美人と知り合いやん」

「あいつが美人なことは僕に関係ないけどな。まあ目の保養だよね」

「掲示板への報告、迷いますね…下手なことを言えば坂下さんの看破スキルに引っかかります」

「事実だけ言えばいいんじゃないかな?元凶が芝、僕の友達が芝と眞壁を連れ帰ったって」

「えーと、黙っとかなきゃいけないことは10年後のリオ兄やシルバーさんのこと、か」

「シルバーさんは10年後の人なんだよな?」

「そうだよ。僕の仕事仲間。今は10年前の時代にいるっぽいけど、その時代の本来のシルバーは多分自国にいるんじゃないか?」

「ああー、外人さんだもんねえ」



世界どころか時代まで行き来してるもんだから非常にややこしい。

ともかく、芝と眞壁は地球に戻った。時代は10年前なので、失踪事件が起きた時代、彼らの生きた時代だ。

もうこの時代を『現代』、僕らが元いた時代を『10年後の未来』って呼ぶかな。

僕自身の認識はその未来こそが『現代』になるんだけど、10年前の人間が多いから、こっちを基準に考えた方が良い。

まあ、芝も眞壁も才能者界隈のどこかの施設に預けられて、家になんて戻れないだろうけど。



「リオくん、14歳の姿に戻る?…って、今が元に戻った姿か。身長、負けた…」

「身長伸びたって言ったじゃん」

「知ってたけど実際に見たら、なあ…」

「いいですね。私もこのくらいとまでは望みませんが、大きくなれたら…」

「ハル…」

「でも高校生くらいに見えるなあ、リオ兄、童顔?」

「高校生!?そこまでじゃないだろ、せめて20くらい…!」

「いやあ、10代に見えるけどなあ」

「ぎにゃー!嘘だー!」



外人組に10代半ばくらいとか言われるのはいいんだ、日本人って若く見えるらしいから!

でも同じ日本人目線でそう言われると何か悲しい!

まあ、才能者だからね!ちょっと若く見えるのは仕方ないよね!それはそれとして悲しいけど!

でもさすがに14歳には見えないということで、アルさんの能力石はありがたく使わせてもらうことにする。

この姿の状態で他の誰かに会うのはちょっと怖いし。

うん、18くらいから成長緩やかになって、多分今、19~20くらいの見た目じゃないかなって思ってる。誰も…京さんですら同意してくれないけど。


ともあれやっと一息つけた。今日はもうカーくんに引っ込んで休んでしまっていいんじゃないだろうか。

気づけばとっくに陽は落ちてる時間だ。



「げええ、マジだ。夕飯の準備しなきゃ」

「もう時間考えるどころじゃなかったもんねえ…」

「あー、今日おやつ食ってないじゃん!」

『…っ何てことです!あの野郎の、悪の召喚者のせいで!』

「そこ?っつかラムめっちゃキレとるやん」

「晩ご飯食べた後にでもゼリーとか軽く食えばよくないか?」

「採用」



そんな話をしながらカーくんに引っ込んだ。

協力してくれたフレムバードもスーの住処に戻るとのことだった。協力のお礼にアキ兄さんが何か…多分食べ物あげてた。フレムバード、喜んでた。

そして乗車後、アキ兄さんは早速晩ご飯の準備に取り掛かり、珍しくナズが手伝いに入った。

ハルは僕と相談である。何のって?掲示板の報告内容のだ。情報の取捨選択のすり合わせを手伝ってもらった。

一人で考えてると言ったらまずいことポロっと言いかねないからな。こういう表現で書き込もう、なんて話し合って、だいぶ参考になった。



「うーん、芝が回収されたことについてお祭り騒ぎになってしまった」

「まあ無理もないでしょう。嫌な思いさせられた子が案外多くてあのクソ野郎…って気持ちが高まりましたが」

「一番の原因がいなくなって若干安心してるみたいだな」

「意外と、自分も連れ帰って欲しいって言う子いませんね」

「それよりヒャッハー組が回収されて欲しいんだろ。僕らは帰れる目途が立ってるからなあ」

「クラフェル様の力で帰った場合、召喚直後に戻れるっていうメリットもありますからね」

「この世界での記憶についてもだな。シルバーに回収されるのだと、その辺不透明だし」

「何より、会ったこともない人ですからね。まだクラフェル様の方が信用出来るのでしょう。今日いきなり出てきた人ですし、シルバーさんは」

「まあな」



やっぱりみんな、ヒャッハー組が元の世界に戻れないことについて引っかかってはいたんだろう。

まあ、彼らの安全というよりは、自分たちだけ無事だと周りに何で君たちは無事なんだとか聞かれそうで面倒だから、という理由で。

それなら全員揃って元の世界に戻って、素知らぬ振りをして過ごす方がいいと判断した。

ヒャッハー組については異世界で過ごした記憶が多分消えるというのも、後押ししたのかもしれない。

こっちは創造神の力じゃなくて才能者の力だけど、催眠術の強力なやつとか言えば納得してくれた。

いや、最初は疑ってたんだ。でも坂下さんが「本当っぽいなー」と言った瞬間、全員が信じた。看破スキルの信頼度、すごい。

才能者の能力だからね。催眠術みたいなもんだからね。


ただ、全員で元の世界に戻れたとしても関係性までは戻らない。

具体的には芝とか向原だ。さすがに今まで通りに接するのは無理だろう。

けれど人ひとりいなくなるより、若干仲違いするだけ、の方が歪みとしては小さい。

芝も向原も、それ以外のヒャッハー組も、ちょっと距離を置かれるだろう。理由もわからずというのは可哀想だが、それだけの要素があるからな。

けど記憶が無くなっているなら、そこまで調子に乗ることもないだろう。

あくまで、彼らが『ああ』なったのは環境のせいでもある。

現に、僕が生きていた10年後で彼らが犯罪を犯したという話はなかったそうだ。強いて言うなら芝が道路交通法違反したくらいで。

これはルーから聞いた。調べたのは京さんらしいので確実な情報だろう。



「僕らが会ったくらいだ。他の冷遇組の所にヒャッハー組が出現する可能性もあるよな」

「ギルドで聞いた、黒髪の目撃情報も気になりますね」

「僕らが関与出来てないの、あと10人か。向原はホムンクルスに頼めば何とかなるとして…」

「ホムンクルスさん、あっさり何とでもできるっすよーなんて言ってるみたいですもんね」



城に連れ帰られたのも、オリジンシャドーが何とか出来るらしい。

合図があれば全員をどこかに飛ばすことも出来るのだとか。すごすぎんか。

じゃあ、本当に行方がわからなくなってるヒャッハー組さえ何とか接触出来ればいいのか。

現時点では無事、というか、生きてはいるらしいけど…



「いつまでも生きていられるかは正直わかんないもんな」

「向原さんも、殺されそうになったから殺した、だそうですしね。そんな目に遭わなければ彼女も人殺しなんて…いえ、言っても仕方ありませんか」

「ハルたちには絶対そんな経験させないからな。どうしてもやらなきゃいけないなら、僕がやるから」

「リオ兄さん…」

『その前にわたしが行くのだ』

『ラムも殺るです』

『主人の代わりに手を下すというなら我が!』

『ラテ、経験者ですの!一人二人増えても変わらないですの!』

「やだ物騒だけど頼もしい!」

「…ありがとうございます、みんな」



そうか、ラテって経験者だったのか…そういえばそうだね、オーレンで殺りまくってたね…字面ァ…


そういえば、アイさん曰く、掲示板の利用者にルーが出たそうだ。名前は出なかったそうだけど。

で、ルーがこの世界から脱出した後、33人の利用者が30人に減っていたという。

ルー、芝、眞壁。この三人がこのクラーフからいなくなったためだろう。

次にルーが来たとしたら、掲示板の使用許可を出そうかと提案してくれた。

そうだな、そっちの方が連絡はしやすいのかもしれない。でも、ルーは一時的にこっちにいるだけですぐ帰るから、どうかな…

自分で『道』を開いて、その『道』の維持もしないといけないから、どうしても滞在時間が限定されてしまう。

『道』の維持だけして、京さんとかがこっちに来るという方法も出来なくはないそうだけど、それだと力の消耗が大きすぎるそうだ。

つまり、京さんが地球からクラーフへ移動する、これだけで力を使い果たすくらいには消耗が激しいのだとか。

京さん自身が大きな力を持ってるのもそうだし、自分以外が『道』を通る…つまり異物だけの通行が無茶なのだろう。

自分一人だけなら、一日くらいこっちに滞在することも出来たそうだ。早い話、芝と眞壁を放置するという意味だが。

それだとこっちにわざわざ来た意味がないだろうということで、連れ帰ってくれたけど。



「手紙、渡してくれたかなあ」

「信じましょう」

「せやなー」



掲示板での報告が一段落した頃、晩ご飯が用意された。

何か無駄に疲れたよね、今日…明日はまた下山だ。もう変なのに会いませんように。



「そういえば『結界』スキルのこととか言い忘れた気がする」

「ご飯食べた後で報告しておきましょう。護身術スキル持ちは絶対欲しがる情報です。取得出来るかどうかは本人の資質次第ですが」

「あー、まあ今日は爆弾情報あったからな。確かにスキル報告が後回しになっても仕方ない」

「リオ兄、今日だいぶ疲れたやろ。あたしらで報告しとこうか?」

「お願いしていい…?何かね、14の体に戻ったらちょっと体重くてさ」

「HPやMPも戻ったというか、最大値が下がりましたしね。やっぱり多少負担になってるんでしょう」



多分そうだ。

今日、アルさんの能力が解けて元の24歳の体に戻る時もかなりつらかった。

そして再度、14歳の体に戻ったことで同じだけの負担がかかっている。

体全体の変化だからな…体力の消耗とか、そういうものがあるんだろう。

原因ははっきりしてるので、休みさえすれば何の問題もない。病気でもないし。



「無理はしないようにな、リオくん。今日もう寝る?」

「だらけても誰も文句言いませんよ。明日に疲労を残す方がまずいです。休みましょう?」

「…そうだなー」

「リオ兄、今日医務室で寝ちゃいな?スーも連れてさ」

「ごめん、そうしよっかな。多分明日には復活してると思う」

『一緒に寝るのだー』

「何やかんやで俺らこっち来てからまともに休んだ日ないもんな。スキル経験値稼ぎは毎日してるし。一回ちゃんと休んだ方がいいか?」

「せやな…でもMP使わんのちょっともったいない」

「それなんですよね。本当の意味で休める日なんて、きっと元の世界に戻らない限り無理ですよ」

「中学生にしてワーカーホリック…!子供はもっと遊んでのびのびして!」

「子供より体調が万全じゃない子こそのんびり休んで!」

『どっちもどっちです。全員休むです』



空間魔法やら見張りでラムツー出したりと働き者だったラムが言うと微妙だな。

お前こそ休んでくれって気持ちになる。

まあ、今日ばかりは早めに休ませてもらおうか。

明日からはまた下山で体力使うだろうし。



「…おやすみ」

「はい、お休みなさい」

「また明日なー」

「おやすみ!」



皆の言葉に甘えるとして、スーを抱えて医務室に引っ込んだ。

ベッドに入ると何か体がだるくて目を開けてることすら億劫だ。

布団がふわふわなのも眠気を増長させている。

あ、顔の横にスーが張り付いた!もっふもふ!…だめだ、寝る…おやすみ…


京 「何故リオじゃなくてこんなゴミを連れ帰ってきたんですか…?私の孫は?」

ルー「依頼を思い出せ」

アル「いやでもシバはいいとして、何だこのガキ…(※眞壁)」

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