137.冷遇召喚者と優遇召喚者と突撃召喚者と鳥
「お姉さん、ここは危険です!俺と逃げましょう!」
「うるせえ引っ込んでろ役立たず!」
「なっ…!?」
「まじで邪魔だから逃げるなら一人で逃げてくれまじで邪魔だ芝!」
「二回言ったな、リオ」
「大事なことだからね!」
「邪魔って、俺のことかよ…!俺は、スキル三つ持ってて、レベルも高くて…!」
「だったら一匹でもいいから魔物倒してくれ!正直近くでウロチョロされると邪魔でしかない!」
「リオ、魔物と間違えたって体でコイツ崖から突き落としていいんじゃねえか?」
「やりたくなるから提案しないで欲しいなー!」
もっとも、魔物の大半を倒してるのはスーとフレムバードだ。
僕やルーがやってるのは、自分たちから遠い場所に魔物を蹴とばすこと。
近くにいたらスー達が攻撃しづらいからな。距離があれば魔法だろうが翼撃だろうがかまし放題というわけで。
まあ、そのせいか芝の奴が僕らにぴったりくっついてくるわけなんだけどさ。
チッ僕らの近くが安全と判断してしまったらしい、その割には何かと邪魔してくるけど。
というか、どうにかしてルーを僕から引き離したがってる。それで自分の方に来いと繰り返してる。全敗してるのに諦めないの何でだ。
せめて着いてくるなら無言でいてくれよマジで邪魔!気が散る!
さっきから蹴術と護身術の『物理壁』が大活躍なので、そろそろレベル上がるかもしれない。
魔物自体はあまり倒してないので基礎レベルは上がらないだろうけど。
『主、まずいのだ!オーガストが出たのだ!』
「八月!?」
「八月!?」
「は!?」
『何のことなのだー!?』
ルーと反応ダダ被りしちゃったよ。
あ、オーガの上位種ね。過去の勇者、オーガの名前で遊び過ぎである。中にはオーガニックとかいるからな。
こいつがいるとノーマルオーガが若干強くなるんだよな。士気が高くなってる感じで。
「オーガストって何だ?」
「オーガの上位種だ。スー、そいつ優先で倒してくれ!」
『了解なのだ!』
「シルバー、普通のオーガの殲滅が遅くなるから私たちでやるぞ!」
「ああ!」
「やるならお前だけでやれよ村雨!お姉さんは…」
「口答えすんならどっか行けって何回言わせんだ!あと俺は男だってのも何回言わせんだ!」
「いや貴方みたいな方が男とか冗談でしょ!村雨とも仲良さそうだし、こいつが男と仲良く出来るはずないですって、男から嫌われまくりですもん!」
「現在進行形でお前は男にも女にも嫌われてるけどなー」
「俺が嫌われるとかありえるわけねえだろ!んなウソついてまで俺の気を引きたいのかよ!」
「日本語通じねえー!」
「日本語わかんねえってほんとに日本人かこいつ」
まあ、ルーは綺麗な顔してるから男に見えないってのはわからんでもないけどさ。
あと向こうは冬だし、多少着込んでて体のラインがわかりづらいってのもあるか?
それでも170cm超えてるし、声だって男にしては高いかもだけど、普通に男声じゃないか?
でっかくて分厚いフィルターがへばりついてるとしか思えない。
…それとこいつ、自分にとって都合がいいことしか受け入れないっぽいからそのせいかも。
私がこいつのこと好きでしょうがない、ルーは美女、この勘違いを何度訂正しても聞き入れる気配がない。
多少移動は出来て、今は岩場ばかりの場所で崖は少ない。
転落の心配はなくなったけど、魔物からも発見されやすいせいか、数は少ないけど魔物の出現が途切れない。
ゴーレムが出たら土魔法使ってくるから面倒なんだよなあ…
幸い『魔力壁』も覚えてるから無効化は出来るけど、遠距離攻撃も考えなきゃいけないってなるとマジで目が足りない。
空間把握も使って何とか対応してるけど…うう、アキ兄さんとハルの助力が欲しい。ナズの牽制が欲しい。
さりげなくフォローしてくれるラムやラテやサンを頼りにしたい。
随分我儘になってるなあ、僕…
これルーがいなかったらマジで対応し切れなかったぞ。あと芝がいなきゃもっと楽なのに…
ちなみにさっき芝のステータスを盗み見たけど、がっくりきた。役に立ちそうになかった。
名前:芝 魁人
年齢:14
性別:男
LV:9(あと486)
職業:お調子者
HP:107/134
MP:213/260
スキル:体技LV7(あと441) 槍技LV6(あと506) スキル表示LV3(あと115)
弱くはないんだろうけど、調子こいてる程の戦力じゃない。
というか槍が効かない魔物のいる場所じゃマジで戦力にならない。
MPは高いけど、魔法スキル持ってないし。僕もそうだけどさ。
それに、僕とルーの前じゃMP200台って大したことないんだよな…
HPとMPで言うなら既に僕らの方が上だ。ルーだってレベル3になってるし、それならHPは210だろう。鑑定してないから予想だけど。
僕だってHPそこまで高くないけど200は超えてる。
ってことを考えると、ガッカリステータスになるわけで。
ゴーレムが飛ばしてきた『石礫』を『魔力壁』で弾く。
ここは岩場なのでこの石は岩場で作られた実物だ。魔力で生成されたものなら攻撃後に消えるが、実物だと残る。
それを拾い上げてゴーレムの顔面に向かってぶん投げると目にあたる部分にぶち当たった。
大したダメージにはなってないだろうけど、衝撃で後ろ側へよろめいていた。そこへフレムバードが『翼撃』で攻撃したようで、そのゴーレムは沈んだ。
フレムバードさんナイス!
《『投擲』スキルがレベル10になりました》
《『衝撃破・微』を習得しました》
《『護身術』スキルがレベル10になりました》
《『結界・微』を習得しました》
「おっ」
「どうした?リオ」
「ちょっといいことあった」
「レベルアップか?」
「まあそんなとこ」
芝にはスキルがあることをバラしたくないので誤魔化した。
いや、バレてるかもしれないけど、言いたくないのである。
言わなきゃ気づかない気もするし。
さっきから物理壁も魔力壁もガンガン使ってるけど、それが僕の仕業ってちゃんと認識してなさそうなんだよな。
顔面にぶつけたのにな。本当に都合のいいことしか目に入らないというべきか。
僕のことは『スキル無しの底辺』って思いこんでるからだ。別にいいけど。
しかし『結界・微』か。
これは体全体を覆う膜のようなものらしい。
物理壁や魔力壁と違って、絶対に防げるものじゃない。けどどちらの攻撃でも威力を軽減できるそうだ。
言ってしまえば、物理防御力と魔法防御力の底上げという感じか。
耐久力があって、それが尽きると消える。物理壁などのような回数制限ではなく耐久性。
完全に防ぐものでもなく、本当に軽減するだけで、救命具のようなものをつけているイメージだろうか。
攻撃されたら衝撃は和らげるけど痛いものは痛い。そんな感じだ。
HP10減る攻撃だったらHP3減る攻撃になる、みたいな。
物理壁などは大きさも決まっていて、生成時間も10秒ほど。結界の場合は体全体を覆って、耐久が尽きるまで残る。
場合によっては『結界・微』の方が使いやすいかもしれない。
タークくんとか、タイミングが掴めなくて生成場所などをよくミスると言っていたし、そういう場合は『結界』の方がいいかもな。
一回使ってみるか。あとで掲示板で所感も投稿しとこう。
「リオ、そっち、ワニ行ったぞ!」
「リザードな!ちょうどいい!」
腕というより爪を振りかざしてこっちに飛び掛かってきた。
とりあえず覚えたばかりの『結界・微』を使って体全体に膜を張り巡らせる。
と同時に、振り下ろそうとしていた腕を思い切り弾いて体勢崩したところを狙って鳩尾に蹴りを叩き込んだ。
「ギャフン!」とか悲鳴上げてたけど無視だ。てかギャフンってマジで言うやつ初めて見た。
弾いたとはいえ、多少攻撃の衝撃はあったので耐久は僅かに減ってる、かな…?
《『結界』スキルを習得しました》
「はい?」
「リオ、どうした!?」
「ごめん何でもない後で言う!」
嘘だろ、スキル覚えた!?しかも『結界』!?
え、これ、ドラゴンやフェンリルが持ってたスキルの『結界』!?
護身術の派生『結界・微』で取得できるスキルだったんだ…
これも後で掲示板で報告だな。絶対あったら便利なやつだろ。まさか僕が覚えるとは思わなかったけど。
護身術持ち何人かいたはずだし、絶対覚えたがるスキルのはずだ。
でも僕もこれで戦闘系スキルは一通りレベル10になったか。
一応ステータス見とくか…?
名前:リオ(村雨 涼)
年齢:24
性別:女
LV:15(あと481)
職業:万物使役者
HP:344/375
MP:1712/2025
スキル:無機物干渉LV11(あと9208) 蹴術LV10(あと489) 護身術LV10(あと947) 投擲LV10(あと971) 従魔術LV6(あと118) 物理耐性LV1(あと28) 魔術無効 状態異常無効 真偽LV6(あと498) 結界LV1(あと100)
テイム:フェリックスLV147
権能 :空間作用
………んん???
待って、年齢のとこはいいとして…HPとMPおかしくないか?
え、僕、HP250とかじゃなかった?300遠いなーって思ってた記憶あるんだけど?
それにMPも2000とか超えてなかったよ絶対!どういうこと!?
何か1.5倍くらいになってない!?何で!?いや高い分にはありがたいけども!
アルさんの『変身』が解けたから…?本来の姿に戻ったから、とか?
え、まあ確かに身長とか伸びてるから間合いとか筋肉とか変わってるだろうけど。
その辺りが関係してる?てか、そのくらいしか思い当たることがない。
ルーなら何か知ってるかな?それか、アルさんか?いずれにしても聞くなら後だ。
「さっさと片付けるぞ!」
「何で急にやる気になった?まあいいが…」
「私に着いておいでなさいシルバーさん!」
「何キャラだ突然。着いてく分には構わねえが」
「とりあえず、これかけとく。気休め程度に考えといて」
「…?お前、軽減系持ってたか?」
「後で説明するよ」
とりあえず覚えたてなので大したこと出来ないけど『結界・微』をルーにかけておいた。
何の説明もしてないのに、どういうものかわかったらしい。こっわ。これが本物のチートか…
スキルの方の『結界』は一定範囲に設置するものらしく、移動も出来ないので今は使っても意味がない。
高レベルになれば結構応用がきくらしいけど、そんなのまだまだ先の話だ。
ちなみに芝はずっとルーを勧誘してるが、ルーはもう話すのも嫌になったらしく、完全に無視を決め込んでいる。
元々、知らない他人と話すの嫌いなタイプだしなあ…
だからってな、芝。ルーが僕としか話してないのを恨めしそうに見るな。
僕ら基準で、最初だけとはいえ会話してたのはルーにしては優しい対応だったんだぞ。それを台無しにしたのはお前だろうに。
会話というかコミュニケーションを取ろうとするのは、ルーにとって快挙なんだけどなあ…基本スルーするからね、こいつ。
ああ、一方的に暴言吐くだけなら結構やるみたいだけど。
最初の対応がそれだった。まああれは僕がユリちゃんを傷つけたのが悪い。
「スー、フレムバード、遠慮せずにかませ!多少攻撃がこっちに届いても気にするな!シルバー、即死だけは避けろ!」
「回避ゲーってやつか。わかりやすい、どんと来い鳥!」
「は、え、ちょ、何言って…っ」
『結界・微』、『物理壁・微』、『魔力壁・微』、あとは回避系の派生も一応ある。
"耐える"だけなら、何とでもなるはず。ルーも『身体強化・微』はあるし元の運動能力も高い。
空間把握も使いつつ壁を張りまくれば魔物の攻撃もスーやフレムバードからの攻撃も避けられるだろう。
ルーに言った通り、即死さえしなきゃスーが回復魔術で回復してくれるはずだ。
どんとやれと宣言した直後にスーとフレムバードが甲高い声で鳴いた。恐らく了承の合図だろう。
あのフレムバード、卵持ってきてくれた子とは別個体みたいだけど、スーの眷属に変わりはないようだ。
僕はスーの主なので、僕の言うことも聞いてくれてるんだろう。
「死ぬなよ、シルバー!かっこ悪いとこ晒したら後で天使に告げ口してやるからな!」
「じゃあ俺はお前の醜態を京に告げ口してやる」
「ぎにゃー!ごめんなさい!やらないので許してください!京さんに呆れられでもしたら生きていけない!」
事前情報も何もないのに「天使=ユリちゃん」だと理解したのか。マジでブラコンだな。
いや、一応名前言わないように気を付けてるからさ…名前以外でどう呼べばって考えた末が「天使」だったんだ。ごめん。
やっていいと許可を出した瞬間に鳥コンビは本当に遠慮なしに空から魔物を蹂躙し始めた。
広範囲に飛んでいく『翼撃』の羽と『咆哮』の衝撃で砕かれて行くゴーレムの体や辺りの岩。岩まで砕くのか、こわっ。
スキルなのか種族の標準装備なのか不明だけど口から炎吐いて火炎放射みたいになってたりと、なかなかの地獄絵図だ。
『結界・微』程度じゃロクな軽減にもならない。もう既に何度も剥がれては掛け直している。
ついでに『魔力壁』も大活躍だ。何度か攻撃が掠ったりもしたけど、大したダメージじゃないのでスー達なりに手加減はしてるようだ。
本気でやられたら消し飛ぶからな。ステータス差は無情。
正直、芝のことは放置してるので流れ弾でお陀仏しても「ご愁傷様」で済ますつもりだったが、悪運が強いのか生き残っていた。
「な、ん…っ、あの、鳥、お前のかよ…ッ!?どんな、ズルしやがった、お前なんかが、あんなの、従わせるなんて…!」
「…従わせる、だぁ?無理やり命令聞かせてるみたいな言い方すんなよ」
「間違いじゃねえだろ!でないと、あんなのがお前の言う事聞くはずあるかよ!何しやがった、その技俺によこせ!」
「技かぁ。うーん、そんなの無いな!だってお願いしてるだけだし。聞いてくれてるのはあの子たちの優しさだ」
実際は従魔術の効果もあるだろう。
けれど多分、そういうの関係なく協力してくれてるであろう二羽だ。
あの子たちの意思を完全に無視してると決めつけてるこいつに、そんなこと教えてやるつもりはない。
周りにいた魔物は既にスーとフレムバードの猛攻で全滅している。
僕もルーも芝も無傷とはいかないが生きている。
てか、ルーの服ちょっと燃えてコゲてる。腕のあたりに火が移ったのを見て慌てて腕ぶっ叩いて消したからほんのちょっとだけど。
火よりお前の張り手の方がダメージ入ったとか言われてしまった。ごめん。
まあ何であれ戦いは終わった。それで話しかけてきたわけだけど、ロクな話じゃなかった。
「お前の言う事聞くんなら俺の言う事も聞くんだな!?おい鳥!今すぐ俺と美女を安全な場所に運べ!」
『寝言は寝て言うものなのだ』
『アホー』
「フレムバードさん、まさかのカラス?」
「アホーって鳴くやつ初めて聞いた」
「はあ!?何言ってんだお前!」
ああ、うん、念話届いてないんだろうな。多分ただの鳴き声にしか聞こえてないか、そもそも何も聞こえてないんだろう。
僕とルーには聞こえるようにしてくれてるみたいだけど。
「いや、寝言は寝て言えってお返事でしたよ芝くん?」
「んなわけあるかよ!適当言いやがって!」
「いやホントに言ってたぞ…いい性格してやがんな、あの鳥」
『主の従魔なんだから、これくらい言わないとやっていけないのだ!』
「何か私のせいみたいな言い方しないでくれるー!?」
『アホー、アホー、ミディアム、レア、ハンナマー、オコゲー、スミー、どれがいいかなー』
「フレムバードさんが焼き加減を迷ってる!食べられない焼肉が出来るよ、やったね!」
「炭でいいだろ。資源にした方がいいんじゃねえか」
『お前、どこでそんな単語覚えたのだ…?』
『料理の召喚者が言ってたー』
『アキちゃーーーん!何教えてくれてるのだー!』
「わあー!とっても身近な人が元凶だったー!」
あ、スーの住処にいてアキ兄さんの料理食べた子だったのか、この子。
会話に混ざれない芝はイライラしてるようだけど、知ったこっちゃない。
そもそもコイツどうしてくれよう。気絶でもさせて、ホムンクルスの刑にでもするか?運ぶのやだなあ…
「つか、俺、あんま時間ねえから早く片付けてえんだけど」
「ああ、戻らないとまずい?てか一人で来たの?京さんは?」
「…一人だ。連れ帰る人間がいることを考えると、一人の方がいいって…」
「ああ、単純に二人分が通れるだけの『道』を維持しなきゃだもんな。消耗するか。誰を連れ帰る予定だったんだ?」
「…お前」
「…嘘だろ。いや、完全な嘘じゃないっぽいけど、違うだろ。命令されたのは、誰だ?」
「………」
真偽スキルが発動した。
ルーはそれを知らないから、何でわかったとでも言いたげな顔だ。
『道を作る』というのは、本当にそのままの意味だ。
行きたい場所へ行くための通り道を作る。その『道』を通るのが人であれば、それだけ大きな『道』が必要。
道具を送るくらいなら小さな『道』でいい。それもあって、僕は『道』は小さな道具を送ってくるために作ると思っていた。
『道』が大きければ大きいほど力は必要。ルーが、人を通れるくらいの大きさの『道』を作るとは思わなかった。
今回のことに、そこまで大きな力を消費するとは思わなかった。これがユリちゃん関連ならともかく、自主的にやるはずがない。
でも結果、自分が通れるだけの『道』を作ったのだから、上から要請でもあったのだろう。
―――何としてでも、連れ帰って来いと。
そしてそれが誰なのか。…元凶である芝だろう。
ルーが言っていた「予定が狂った」「見つからなかったことにすれば」という言葉の数々。
もしかしたら、芝が見当たらなければ私を連れ帰って来いという命令だったのかもしれない。
そもそも出口が私だからな。芝が都合よく近くにいる確率は高くなかった。見事なタイミングで芝が目の前にいる時にルーが来たわけだけど。
なのでルーとしては「芝がいるわけもないから、リオを連れて帰ればいいか」くらいの考えだったんだろう。
それを思い切り裏切られたわけだが。
なので、芝が目の前にいる以上、ルーは芝を連れて帰らなければいけない、ってことだろうなあ。
想像だけど、大きく間違ってないはずだ。
「まあ、連れ帰ってどうするかってのは疑問だけど、それは報告してくれるんだよな?」
「ああ。というか、その説明のために来たっつーか…」
「連れ帰れって命令なら、そりゃ連行のために人が来るわなあ…オッケー、ひとまず気絶でもさせりゃいい?」
「…ああ。勢い余って殺してもいいぞ。捨ててくから」
「それは駄目だろ」
気絶でいいならやりようはある。
光魔法に気絶させる魔法があったはずだからな。スーを見れば、察してくれたようだ。
「…っだよ、何もかんも鳥任せかよ」
「は?」
「結局、お前自身は何も出来ねえんだろ!スキル無しだもんな!クズが思い上がりやがって!」
「…何か急に元気になったな。情緒不安定か?」
「鳥の力をお前の力と勘違いしてんだろ!俺の上を行ったつもりかよ!お前自身は弱者のくせに!」
「何のこっちゃ」
「見下してたお前が自分より凄い奴だったって現実を受け止めきれねえんだろ」
「違いますお姉さん!そいつが凄いのは鳥がいるからです!そいつ自身はただの役立たずのうるせえ寸胴女です!」
「今、寸胴関係ある?」
「どこ見てんだこいつ。っつかお前も何でそんな薄着なんだ」
「だってここ暑いじゃん」
「そういやそうだな。むしろ俺が着込みすぎか」
「いやいらんて」
上着(コゲ有り)脱いで僕に着せんな。ブッカブカなんだわ!身長よこせ!
まあ薄着の理由は変装解いたからですけどね!芝の前でそんなこと教えてやるつもりもない。
ナズ製の服って、何故かちょうどいい温度に保たれるから…着込んでも暑くないし薄着でも寒くない。
もっとも、これは多少であって、クソ暑いとこで着込んだらさすがに暑く感じるようだけど。
そんでルーが上着を着てる理由は単にあっちの世界がまだ肌寒い時期だからだ。
「…俺が欲しいなら、てめえ自身でかかってこいよ村雨!」
「ごめん何言ってるのか全然わからん。いらない。返品します。クーリングオフはどちら?」
「そこの崖の下だ。行け、リオ。落とせ」
「絶対嘘だ」
「俺が村雨なんざにオトされるなんて絶対ないです!お姉さん、あなたなら別ですけど!」
「…こいつ何言ってんのかわかんねえんだけど。日本語って難しいな」
「日本語のせいにせんでもろて。私にもさっぱりだよ」
『頭おかしいのだ。まともに聞いてたらこっちの頭がやられるのだ』
「そうだな、話半分に聞いた方がいいかもしれない。何かわかんないけど、私と勝負しようって言ってる?」
「ハッ、一対一で俺に向かってくるつもりかよ!鳥も何も無しで!いいぜ、もしお前が勝ったら何でもしてやるぜ」
「何かよくわかんないけど、それでいいよ」
「俺が勝ったら俺の言う事聞けよ。奉仕くらいならさせてやってもいいぜ?」
「奉祀…?京さんほど信心深くないんだけど…」
「リオ、絶対違う意味だと思うが知らんでいいから突っ込むな」
「お、おう?」
「さっきから誰だよキョウって!」
「私の恩人にして命で最愛にして至高の存在、私にとっては神にも等しい存在だよ(早口)」
「は?俺のことかよ?」
「何言ってんの?お前なんかその辺の埃とかだよ」
「っナメてんじゃねえぞコラァ!」
急にキレて槍を繰り出してきた。カルシウム足りてないのかな?
どこを狙ってるか普通に見えたので、槍の柄を掴んでゴム製に変える。
いつかこうやってやるとか言ったなあ…有言実行しちゃったよ。
ぶよぶよした槍になったのを見てびっくりしてる芝に向かって、思い切り鳩尾目掛けて蹴りを繰り出した。
さすがに気絶はしなかったようだが、信じられないと言いたげな顔でこちらを見上げ、痙攣している。
槍を取り落とし、膝をついて、上半身も崩れ落ちた。意識はあるが、ろくに動けない状態だろう。
「…ッ、ガ、…っ!?」
「はい、勝ち」
「お前強いな…何だこの世界」
「凄かろう?まあ、あんたはすぐ戻るだろうから関係ないかもな。さて、私が勝ったわけだし好きにさせてもらうか」
「何かすんのか?」
「そりゃこれでしょ。スー、気絶させて」
『合点なのだ!』
光魔法を使ったのか、すぐに芝は気絶した。
スーの力は借りるなとか言ってたけど、勝者になったんだから聞いてやる必要もないだろ。
これで余計な奴がいなくなった。
「…さ、これで落ち着いた。話聞こうか」
『主、その前にアキちゃんたちを…』
「…あ!そうだった!やばいやばい!あ、掲示板に書き込みしてるかも…してる!緊急連絡来てる!ぎにゃー!忘れてた!」
「…掲示板…?」
『主の仲間の権能なのだ。掲示板というものでメッセージというか文字でのやりとりが出来るそうなのだ。距離関係なく』
「ああ、ネットの大型掲示板の方か。そんなのあるのか、すげえな」
「やばいー!めっちゃ書き込みがある!どうしよー!」
『と、とりあえずざーっと読んでみるのだ。カーくん出すのだ?』
「うう、ハルがいないから怖いなあ。隠密無しはちょっと。…そういや『結界』スキル覚えたんだった。使うかな…」
『一戦の間にとんでもねえもん覚えてるのだ!』
でもレベル1だから大した大きさは作れないし、脆い。
派生能力じゃない『結界』スキルは、攻撃や衝撃を完全に遮断できるものだ。その分MP消費も多いけど。
というか、派生能力の方も『結界・中』あたりになれば完全に攻撃を無効化は出来るらしい。それまでは軽減しか出来ないようだけど。
ともあれ、僕の今の力じゃ僕の攻撃数発分しか耐えられないレベルの脆さの結界しか生成できない。
そう、攻撃力の低い僕の攻撃を数回しか耐えられない強度。つまり中腹の魔物の攻撃一発とかで多分壊れる。
意味あんのかというレベルの脆さである。
まあ遮音は出来るし多少の認識阻害はあるらしいので、まったくの無意味ではないらしいが。
レベル1なので大したこと出来ないだけで、結構いいスキルではあるのだ。
そういやヒャッハー組にもこのスキル持ちいたなあ…誰だっけ?
小型化したスーが肩にとまって、自分とルーを含めた分の大きさの結界を張った。
二人して並んで座ってるので結界の大きさ自体は大したことない。
芝?もちろん入れてませんが?フレムバードは自主的に芝の見張りをしてくれている。いい子。
「ちょっと掲示板一通り見るから待ってて。スー、こいつにアキ兄さんたちのこと軽く説明しといて」
『わ、わかったのだ。今一緒にいない理由話せばいいのだ?』
「そうだな、リオは四人と従魔で旅してるって聞いてたし、他のメンツいねえの気になってた」
『わたしも推測の部分が大きいのだ。転移玉でどこかへ飛ばされたってくらいしか…』
「…転移玉、ってのは何だ?」
案外ちゃんと会話になってた。まあ、お互いに敵意がないからだろうけど。
スーにとってルーは『主(僕)の知り合いで、ヒャッハー組である芝と対立したという立場の召喚者』なので、そもそも敵と見做してないのだろう。
ルーはルーで、ナズの弟くんからこっちの話は聞いてるはずだ。スーの名前も知ってたし、僕の従魔というのも知ってるはず。
なのでとりあえず味方だろうと結論づけているはず。
あとルーは結構可愛いものが好きなので、今の小型化スーは割と好みのはずだ。
ってことでこっちの心配はいらない。僕は掲示板で、緊急連絡の印がついたレス番から見ることにした。結構遡るな…
…オーケー、眞壁は殺そう。しかも結界スキル持ってんのこいつかよ。やだなあ!
いいスキル覚えたと思ったのにケチがついた気分…ああ、高浜さんが『火』スキル覚えた時、こんな感覚だったのかも。
「よし、まず眞壁を殺さないとだから、ここに連れて来てもらおうか」
『待つのだ主。何がどうなってそんな結論に至ったのだ?』
「まず誰だマカベ。新キャラ出すな」
過程すっ飛ばして結論だけ言ったら怒られました。なぜ。
この時点でリオは元凶が24歳の芝だとは知らず、14歳の芝が元凶だと思ってる。
京たちも自分たちが10年後の未来から来たとは譲くんたちに説明してないので「元凶は芝」としか共有してない。
それを聞いた譲くんは普通に14歳の芝が元凶だと思ったし、そのままナズに説明している。
「元凶は芝」の情報提供元が譲くんなので、リオもそう勘違いしている。




