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136.廃小屋にて(ハル視点)


一瞬、何が起きたのかがわからなかった。



「…どこだここ!?」

「粗末な、朽ちかけた小屋に見えますね」

「まじでどこやねん!?」



光が止んだと思ったら、先ほどとは全く違う場所。

転移玉が発動したのだろう。ということは、芝くんはここへ私たちを連れてくる予定だった…?

肝心の芝くんが転移失敗しているけども。


きっと理由はリオ兄さんだろう。西の森でも同じことがあった。

彼女にこういう転移関係は効かない。そしてそれは、彼女自身が触れたものにもその範囲が有効だと言っていた。

つまり、リオ兄さんにくっついていたスーと、腕を掴まれていた芝くんは『魔術無効』の効果が及んだために転移されずその場に残った。

そしてこれはリオ兄さんの推察ではあるけれど。

彼女を大きく超える力であれば、彼女に魔法系の効果を及ぼすことは可能。

具体的には、ラムやスーの空間魔法と、この世界への異世界転移のことだ。ついでにリオ兄さんを若返らせている謎能力。

あとは意図的にリオ兄さんの意思で無効化を弱めることは出来るらしい。

もっとも、これはリオ兄さん自身が魔法をかけようとしてる相手を信用してないといけないらしいが。

なので、まあ、洗浄とか、そういう…空間魔法もそうですね。

これはオートではなくリオ兄さんの意思でやっていることなので、寝ているリオ兄さんに洗浄をかけたら普通に無効化されるらしい。

元々『超常現象の類は効かない』という体質らしいので、スキル関係なく習得していた小技なのだろう。

魔術無効や状態異常無効のスキルは、リオ兄さんの元々のこうした体質をスキルに変換したら習得した形だと推察していた。

なので多分、リオ兄さんを若返らせた才能者は、こちらの世界に来たらサンやスーが持っている『変身』スキルを習得するんじゃないかと予想していた。


…ああ、今はそんなことどうでもよくて。



「ボロ小屋を、最近少し手入れした、という雰囲気がしっくりきますね」

「だよね。あたしもそう見えた」

「床のボロ具合とベッドに敷かれてるシーツの真新しさがミスマッチすぎてな」

「ひとまず雨風しのげる場所を発見したので拠点にしよう感が漂ってますね」



誰がそんなことを、と考えると、まあ思いつくのは芝くんでしょうね。

だって彼、まず間違いなく私たちをここへ連れてくるつもりだったでしょうし。

転移玉というのは、ある程度の方向は指定できる。が、行きたい場所が明確な場合はそこへ移動出来るものでもある。

もちろんそれは転移範囲内の距離であり、その場所をきちんと思い描けているという大前提はあるだろうが。

まさか、室内への転移も可能だとは思わなかった。ああ、でも空間魔法でカーくんの中に転移出来るのなら転移玉が同じことを出来てもおかしくないのか。



「…ところで、ラム、そろそろ離さないか?」

『駄目です』



ここへ飛ばされて、小屋の真ん中あたりに到着した私たちは変わらずその場所に座り込んでいた。

理由は簡単。ラムが絡みついていたから。

飛ばされる直前、ラムは何というか、体を変形させた…というか、横長の平べったい形状の…何?これは何?

まあそんなよくわからない形になって、私たち全員を包んだというか巻き付いたのである。軟体生物の本気を見た。

なので未だに腹のあたりに変形ラムがへばりついている。そして私たちは押しくらまんじゅうみたいに密着している。背中で。

三人いるので三方向を向いている形と言うべきか。

ラテちゃんはナズ姉の頭に張り付いてるし、サンも私の首元にぶら下がっている。ラムは私たちに絡みついている。文字通り。

リオ兄さんとスー以外は全員一緒にいる。

転移玉でバラバラになるかもしれないと予想したのか、ラムはこうして一まとめにしたんだろうけど…

このロープみたいに縛られてるこの現状、どうしてくれましょう。

おかげでロクに動けないわけだけど…ラムは私たちを動かしたくない…?



『ラム、リオ様とスーの所に戻れないですの?』

『距離にもよろうな…召喚者二名とオリジンがいるとなれば、ラム殿であれば気配を追えそうだが』

『今探してるですが…距離のせいか、場所のせいか、掴みづらいです』



あの山は死火山とはいえ火のマナが豊富な場所。

それもあって、リオ兄さんやスーの気配が覆われるように隠れてしまっているらしい。

特にスーは火属性の強い魔物。山のマナと同属性でもあるのでほぼ同化してしまってるのだとか。



「ピンポイントでリオくんたちの所へ行けなくてもあの山のどっかに転移さえ出来れば何とかなるんじゃないか?」

『…最悪、そうした方がいいですね。でも、あそこ火山です。下手な場所に転移しちゃったら火口へドボンなんてことに…』

「こっわ!!!」

『なるほど、山であれば危険地帯も多い。主人たちの安全を考えるなら安易に転移するわけにもゆかぬと…』

『そうです。もういっそ麓に転移するですかね。あそこなら岩場だろうが森だろうが危険度低いですし』

「でも麓だと冒険者に会う可能性ありますよね。ちゃんと装備つけないと召喚者…勇者ってバレかねません」

「あ、そうだった。今のあたしらカツラ帽子も何もつけてない!」



けれど戻るならまた芝くんと会う可能性も高い。

彼に変装を見せるのは抵抗がある。迷いますね…



「とりあえず、ラム、一旦これ外して…」

『待つです。ご主人様。…誰か来るです』

「え?」

『む、これは…主人、ひと塊となって、我ら全員に隠密をかけるのはどうか?動かずにいれば、まず見つかるまい』

「なるほど…」

「声出せないよね?また『伝達』使う?」

「いえ、MPが不安です。掲示板にしましょう。サンたちにも情報共有が必要となれば、掲示板で『伝達』を使うと合図するんです」

『それでいいです。ラムたちは念話で一方的に情報提供するです』

『ラム殿も我も主人たちにくっついているから『伝達』の条件は満たしていよう。必要な情報があれば知らせてくれるだけでいい。今は、リオ殿と連絡が取れる方が重要だ』

『そうですの!今リオ様がどうしてるか、まったくわからないですの!』

「く、従魔術がレベル10になっていれば『伝心』が派生してたのに…!」

「ナズ姉がもうすぐ、というくらいで私はまだレベル7ですけどね」



従魔術の派生能力は従魔とのやりとりが円滑になる能力だ。

レベル5で『対話』、従魔と会話が出来るようになる能力。

そしてレベル10の『伝心』は、声に出さずともやりとりできる、テレパシーのような力。

ぶっちゃければ『伝達』の下位互換だけど、その分MP消費は微々たるものだ。

もっとも、私たちが連れている従魔は全員が『念話』持ちのため、死に能力になりかけているわけだが。

ああでもこういう時に使えるのであれば大いに役立つのか。

というか、念話持ちの魔物の方が圧倒的に少ないので、本来はとても重宝する能力のはずである。

メンバーが悪いですね、これ。


とりあえず、小屋の端っこまで移動して(ラムに拘束されたまま)座ることにした。

隠密は動かなければ消費MPは少なくて済む。少しでも動く要素を減らすために楽な姿勢で留まることにした。

床、汚いですけどね…最低限も最低限の掃除しかしてないのか、端っこには結構な埃が。

まあ芝くんは男子ですからね。こういうとこ適当なんでしょう多分。

料理好きで衛生管理にちょっと気を遣ってるアキ兄さんが一番嫌そうな顔をしていた。

ナズ姉が座るスペースに布を敷いてくれたので、ありがたくそこに座った。

そしてこの布も含めて『隠密』をかける。

あとは、掲示板でやりとりすることにしましょう。

七人用のスレは全員が見れるけど参加者は少数。リオ兄さんも見れるし書き込みしてくれればなお良し。

それに、芝くんが出たことは全員に伝えておくべきだろう。


私はひらがなでしか書き込めないので、見づらい。

そんな理由で、メインの書き込みはアキ兄さんに任せることにした。

案の定、アイさんたちはすぐ食いついてくれた。

緊急連絡でもあるので、全員がすぐ見てくれたらしい。…リオ兄さん以外は、だけど。




***




48:アイ


じゃあ、今はその誰かが近づいてきてるところ、ってこと?

十中八九ヒャッハー組の誰か、よね…?



49:アキ


うん、俺もそう思う

向原と違って芝は単独行動じゃなかったってことだな



50:ターク


マジかよー

でも隠密状態ならまず見つかんねえよな



51:ハル


どうでしょう

しばにはみつかりました



52:ナズ


でもあれはあたし達走ってたし、仕方なくない?

強めの認識阻害レベルだったじゃん?

けど芝って多分あたしらがいるって気づいてたよ、魔道具とかで探し当てた感じで

この辺にいるはずーって思って見てたから見つかったんじゃないかなあ

今は出来るだけ動かないようにしてるから、カーくん並とは言わずとも、それに近いレベルの隠密かかってるじゃん?

見つからない上、触ろうとしてもすり抜けるレベルの精度だと思うから大丈夫じゃないかな



53:アイ


動くとどうしても精度が下がるものね…

MP多めに使えば何とか保つけど、それはそれでつらいし



54:アキ


あ、そういやアイちゃんも隠密持ちだったな



55:ルート


助かってるもんな、隠密

潜んだアイが弓をつがえて、射る時だけ解除ってやつのコンボが強すぎる

まあそれはいいとして、小屋に近づいてる奴って何人いるんだ?

芝の味方(推定)ってどのくらいだろうな

それによって転移玉の数も変わるだろ



56:ナズ


坂下さんの言う通り、この小屋は多分転移玉三つ分使った場所にあるだろうね

ラムがギリでも辿れるってことは、この小屋ゼイレム付近にあるはず

転移玉二つでめいっぱいの距離でガレメナでしょ?

ゼイレムはガレメナより魔の森に近いから、二つだけじゃあのダンジョンからここまで来れる距離じゃない

…って、説明されたら確かにー!って思うけど、気づかんて!

看破スキルすごすぎやん!


で、転移玉は一人三つまでしかないはずだから、芝が一人だとしたらこの小屋までの移動で使い切ってる

でも何故か転移玉持ってた

ってことは、最低でも一人、転移玉を持ってた奴が味方にいる

うーん、めんどい!



57:アキ


ラムが言うには一人らしいな

男だって

でもさすがに誰かはわかんないな

そりゃヒャッハー組の顔知らんもんなー

あー、スーかリオくんがいれば顔わかったのに!

千里眼と空間把握が恋しい!



58:ターク


そういや、目で見える系の感知能力はリオとスーしかいないのか

ラムは魔力感知と嗅覚で、ラテとサンは熱感知だもんな

顔、わからんよなー



59:アイ


今すぐそっちに駆け付けたい…!



60:ナズ


あー、アイさんがいたら千里眼で見えるし誰か判別できるもんねえ

思えばあたしら感知系ないもんなー!



61:アキ


あ、入ってきた



62:ルート


まじか

誰だ?



63:ナズ


うげ、眞壁やん

こいつのスキル何やっけ?



64:アイ


眞壁くん?ああ、一組の男子ね

何だったかしら?土魔法とかだっけ?



65:ターク


いや、確か『結界』だ

安全地帯作るのにめっちゃ重宝するスキル

逆に言えば、出られなくすることも出来るんだよな

あとスキル使った奴が弾く対象選べるんだ

ドラゴンが持ってるスキルだから使ってるとこ何回も見た

雨降った時とか、雨を弾くドーム状になったりしてたもん



66:ルート


そうだな

でもそれレベルはスキルレベル高くないと無理だったはず

最初は外からの衝撃を弾く程度のはずだ

眞壁のレベル次第だろうけど



67:アキ


あーーーーーー

くっそ面倒なスキル持ちじゃんかー

下手したら小屋から出れないのか俺ら

転移玉で到着したっぽい音か何か聞いて様子見に来た感じかな?


今、いるはずの俺らがいなくなってて超慌ててるウケる



68:ターク


噴いた



69:ナズ


あたし、こいつ嫌いなんよなー

いや、元はよく知らんかったけど、アキ兄の料理に!文句つけよったからな!

(アキ兄が作ったとは言ってない)



70:ルート


ああ、なるほど?

てことは実地訓練の時に芝と一緒になってアキくんに文句つけてた奴の一人か

俺も今この瞬間嫌いになった



71:ハル


わたしもいまきらいになった



72:ターク


俺も♡

てかコイツあんま話してるとこ見ないからどういう奴かよくわかんないんだよな

ナズ、クラスメイトだろ?何か情報ないか?

こっち陣営の一組の渚と岬もよく知らないっつってんだけど



73:ナズ


あたしも知らんなー

一言で言うなら、引きこもり?

クラスでも浮いてるってか、誰かと仲良くしてた記憶がほとんどない

でも何かズレたこと言ったりするから、会話繋げづらくて自然と距離取られるようになった、みたいな?



74:アイ


ああ、つまりコミュ障ってことね?



75:ターク


人の心ないんかお前

オブラートに包んでさしあげろ?



76:アイ


え、アキさんの料理に文句言った奴に配慮なんている?



77:ターク


ごめんいらねえわ(即答)



78:ハル


てのひらくるくるですねー

わかる



79:ルート


ここ、アキくんの料理の下僕しかいないからな

アキくんの料理もとい故郷の味に感動してゆっくり休めた奴だらけだぞ

リオくんだってアキくんに文句つけたって理由で惚れてたはずの芝を「どうでもいい奴」にカテゴライズしたくらいだ


アキくんに文句言うってことは、冷遇組19人全員を敵に回すことと同義



80:ナズ


そういえばそうやった



81:アキ


そこまで…?


そこまでなんだ…(冷遇組スレの反応を見て)



82:ルート


アキくんは自分の力をもうちょっと自覚した方がいいぞ

そもそも、オリジンとの繋がりが出来た一番の理由がアキくんらしいし

なんてこと言ってたら、リオくんやナズちゃんやハルちゃんも凄いからみんなヤバイって結論になるけどさ



83:ターク


そうだな

ってかさ、ここまでリオに音沙汰ないのも怖いよな

また見れてないのかな?

向原んときもそうだったし



84:ナズ


多分だけど、あたしら四人の中でリオ兄が一番「ながら作業」が苦手なんだと思う

戦闘とかはそうじゃないっぽいけど

蹴り繰り出しながら物理壁張りまくったりとかしてるから

それか、何て言ったらいいのかな

ひとつのことに超集中しちゃうっていうの?

作業にしても考えをまとめるにしても、集中しちゃうと他が疎かになるって言ったらわかる?

優先順位が明確っていうか、うーん、難しいな



85:アイ


ああ、何となくわかるわ

まあそれでもポロっと考えてること口から出てたりするけどね

考えることにいっぱいいっぱいで口引き締めてるのが緩むというか

そうね、並列処理出来ないっていうより、他の事を疎かにしちゃう感じよね

運転中とか、周りをしっかり確認してる時は話しかけても反応しないのよ

しばらく安全ってわかってる範囲とかだと雑談できるけど



86:ターク


あー、覚えあるー

変なとこで謎の集中力発揮したりしてたよな

そっか、今はリアルに集中してて掲示板の存在を忘れてるというか、後回しにしちまってる感じか

もしかしたら、芝から情報引き出そうとして集中してんのかもな

向原ん時みたいにさ



87:アキ


リオくん、真偽スキル5になって『見聞』覚えたから、向原よりも情報引き出しやすそう

問題は、会話が苦痛になってないかということ



88:ハル


かいわにならん!ってぶちぎれてましたよね、まえ



89:ターク


あ、ああー、向原か

ホムンクルスも会話にならない人だったっすとか言ってたもんな

芝も同じパターンか?

ホムンクルスの派遣考えた方がいいやつか?

…念のため、俺らとオーレン組、シルスパイダーの巣に行く?



90:アイ


リオさんのMPの問題もあるでしょう

最終手段よ、それは


それより今、眞壁くんどうなってるの?

隠密中なら近くに来てもすり抜けると思うけど

小屋の中か周辺に結界張ってたりしたら出れない可能性あるわよね…?



91:ナズ


今一瞬だけ『伝達』で、ラムとラテとサンに眞壁のこと伝えた

名前と持ってるスキルくらいだけど

で、やっぱりラムたちが言うには小屋の周りに結界張ってるって

ただ、その気になれば破れる程度の強度らしい

だから脱出は難しくないって言ってるなー



92:ターク


最悪の事態は免れそう、かな?

じゃあ後はリオの方の様子がわかればって感じ?



93:ルート


書き込み自体がないとどうしようもないだろ

こっちから出来るアクションとしては


①眞壁をどうにかして気絶させて

②ラムの空間魔法で山に戻って

③芝シバいて

④合流!


くらいか?



94:アキ


③の審議中( ´・ω・)(・ω・` )


芝だしどうでもいいか>(`・ω・´)



95:ルート


ごめん、シャレのつもりはなかったんだわ

変更しといて


③芝いてこまして



96:アイ


真面目に読んでた私が馬鹿みたいなんだけど

アキさん結構余裕なの???



97:ハル


くそっっったれがぁ



98:ナズ


あのさあ

眞壁のやつ、あたしら、ってより、ハルがここに転移してきたらモノにするつもりだったらしいよ

戻ってきた芝(一緒にいたらあたしらも)は結界の外に弾き飛ばして、眞壁とハルだけ小屋に引きこもって…迫ろうと…

吐き散らかした妄言書きたくもないから省略するけど男子ってマジクソ



99:ルート


微妙に察したそれはキレていい

拳でも蹴りでも短剣でも鞭でも何でも叩き込め

俺(男)が許す、潰せ(何をとは言わないが)



100:ターク


よーし、猛毒ポーション作っちゃうぞー♡

全部飲ませてやる覚悟しろよ眞壁



101:アイ


気持ち悪い…って私(女子)がキレる前に男子がキレるのね…

ああ、アキさんも内心キレ散らかしてたのね

どうでもいい所に突っ込んで平静を保とうとしてたのね…


やだ、目の前にいるわけでもないのに弓矢構えてた

眞壁くんはどこかしら…出ておいで…?一撃で仕留めてあげるから…



102:アキ


殺意たかぁい!

ありがと、ちょっと落ち着いた

ハル、針腕輪を外してなかったら多分眞壁(呼び捨て)の脳天に針ぶっ刺してただろうな

てかさ、地味でも何でもなく従魔組も漏れなくキレてる♡

特にサンがヤバいしラテも毒噴射しそうだしラムも絞め殺してやるとか言ってる


終わったな、眞壁

お前はもう誰に殺られるかしか選べないぞ



103:ルート


ああ、末路はもう「死」で確定なんだな

うん、そんな犯罪者予備軍放置したらまずいもんな

向原が既に犯罪者だったこと考えると、芝や眞壁ももうアウトなんじゃないか?

同級生がって考えると微妙だけど、もうそいつらのこと仲間とか同郷とか考えたくないって思い始めてるよ俺



104:ナズ


ああ~もう、ホントどうしようこれ

一回こういう奴って知っちゃうともうダメ、無理

万が一元の世界に戻ったとしてもクラスメイトとして見れない、犯罪者として見ちゃいそう

でもこのクラーフにコレ置いて行くのもなあって気持ち

やっぱり始末しかないのかな

向原みたいに鉱山奴隷とかは、無理かなあ、無理だよね、伝手ないもん



105:ターク


これがガレメナだったら、またケイロスさんに頼むって手も使えただろうけどなあ

ゼイレムはまだ行ってすらいないもんな


…ラムに頼む、くらいしか、ないんじゃないか?

ドラゴンがそうしろって言うんだけど



106:アキ


やっぱり最悪そうなるかなあ

…てかさ、芝のこともリオくんってかスーがザックリやってたりする可能性あるんじゃないか?

あのコンビならやってても驚かないぞ俺



107:ハル


やってそう…



108:ナズ


スー、オリジンやしな

リオ兄も…敵には容赦しなさそうやしな…

前、冗談交じりに撲殺♡とか言ってたけど、あの人マジでやりそう



109:アイ


…この掲示板見れてない可能性あるけど

見れてなくても転移玉で誘拐まがいのことしようとしてたのよね

で、見れてたら、ハルさんに良からぬこと考えてる馬鹿野郎が転移先にいた事実を知ることになるのよね


…リオさん、どう控えめに言ってもキレるのでは?



110:ターク


芝が助かるビジョンがまったく浮かばねえんだわ

やる

リオならやる

何なら掲示板見てた場合、眞壁も殺りかねねえ



111:ルート


リオくん、アキくん達三人のこと大好きだもんな

傷つけようとしただけでブチギレると思うって自己申告してたし

そんでそれ、絶対誇張でも何でもないんだ


嫌いな奴にはとことん無関心だけど、逆に好きな人に対しては結構感情クソ重な気がする

いや、嫌い=無関心だからこそ何でも出来るって言い換えた方がいいのか?

芝、死んだな(結論)



112:アイ


いやいや待って、まだ死んでないから

まだ芝くん生きてるから、選べるから

ちゃんと33人表示されてるから………待って?33人て何?


増えてる!?

知らない人が増えてる!どういうこと!?



113:アキ


へ!?

減ったなら(死んだからって)わかるけど増えるって何!?

どちら様ですかー!?



114:アイ


文字化けしてるから誰かはわからない…

知らない人だから名前が表示されないのかしら…?



115:ターク


とりあえずドラゴンが神託でクラフェル様に知らせたって

でもクラフェル様にもわかんないらしい

こっちに異世界転移してくる可能性はもうないはずなのにって

魔法陣は壊れてるし、それらしい魔力も感じなかったってさ


別口での異世界転移だとわかんないそうだけど



116:ルート


地球でもクラーフでもない別世界から、何らかの形でここに転移してきたってこと?

いや、でもそれだとアイの掲示板に表示されるのおかしくね?

アイの掲示板は「地球の掲示板を知ってる人」が使用可能条件だろ?

地球の話を結構聞いて、掲示板がどういうものかを知ってるドラゴンも表示されないんだ

「地球からクラーフに来た異世界人」で間違いないと思う



117:アイ


そうね、私もルートくんに賛成

というか、菫さんも同意見みたいだし多分間違いないわ

誰なのかしら…

多少関係してる日本の誰かってなったら、ナズさんの弟くん?

伝達で連絡出来てて一番こっちのクラーフと繋がりがあるって言ったら、彼よね?



118:ターク


てか、あっちの三人沈黙してんな

眞壁に動きがあったか?



119:ルート


ほんとだ、5分以上反応がない

俺たちもちょっと書き込み控えるか

せめて、リオくんが書き込んでくれればいいんだけど




***




「…容赦ありませんね、アキ兄さん」

「アキ兄が持ってるのって剣術であって拳術じゃないよね?掌底てアナタ」

「いやでも体術は持ってるからさ」

「ああ、なるほど。体術の『衝撃破・微』でしたか。あれ気絶の状態異常叩き込むみたいですからね、確率はアレですけど」

「多分、俺よりレベルもステータスも低いからかかりやすかったんだと思う。格上には通じにくい『咆哮』みたいなもんだし」



私たちのいた場所から眞壁くんが背を向けた瞬間、アキ兄さんがラムの拘束から飛び出して眞壁くんの背中に掌底を叩き込んだ。

そして崩れ落ちる眞壁くん。これなら姿を見られてない可能性は高い。

それにしても相談してたわけでもないのによくラムがアキ兄さんを解放するタイミング合いましたね。これが従魔術スキルでしょうか…



『気絶したおかげか、結界も解除されたようだ』

「あ、そっか、小屋の周りにあったやつか」

『これで一応、小屋からは出られるですが、どうするです?』

「リオくんの方の様子が知りたいな…掲示板に書き込んでくれればいいんだけど」

「てかさ、謎の33人目ってどう思う?マジでゆずだったりするかな?」

「…私、リオ兄さんの知り合いなのではって気がしてるんですけど…」



根拠はない。

ただ、リオ兄さんが言うには、人は無理でも道具を送り込んでくると言っていた。

つまり、そういう能力を持った才能者がいる。実際にリオ兄さんは10年後の未来から私たちの時代へ時間遡行しているし。

リオ兄さんはないとは言っていた。けれど、人を送り込んで来たのでは?

アイさんの掲示板に表示された33人目、その送り込まれた人なのでは、と予想してるんですが…

その能力者本人か、リオ兄さんが恩人と言っていた宮国京さんか、変身の能力者のアルさんか、そのいずれかが。



「…なるほど、ゆずよりそっちの方が可能性高いな」

「てかそれだとリオくんの味方だよな、確実に。むしろその方が嬉しい」

「ええ、お守りと通信機を目印にすると言ってました。つまり、それを持ってるリオ兄さんの傍にいる可能性が高いです」

「リオ兄、それにびっくりして掲示板のこと頭から飛んでるんかな?まあそれやったら無理もないけど」

「何故か人を送り込んでくる可能性はないと思ってましたからね。能力者の力不足を疑うというより、そこまでするわけないと思ってるようでした」

「まあ何にしても、こっちに不利になる状況じゃなさそう、かな?…予想でしかないけどさ」

「スーがクラフェル様に報告してるかどうかも怪しいしなー、てかあそこ普通に魔物出るよな?大丈夫やろかリオ兄たち」

「リオ兄さんとスーなら何とかなるでしょう。芝くんは知りませんけど」



槍使いじゃ、あの辺りの魔物は倒せない可能性がある。

でもその割には中腹まで来てましたね?有効な攻撃を持ってる可能性もありますか。それか魔道具か。

正直、芝くんはどうでもいいので、リオ兄さんたちの状況が知りたい。



「眞壁、ここに放置して山に戻る?」

「剥いで他に転移玉持ってないか確認した方がよくない?」

「うっ、嫌ですねぇ…触りたくないです…ひとまず鑑定でもしておきますか」



変装を解いた際に、アキ兄さんはゴーグルを外してしまっている。

ナズ姉もルーペは荷物にしまっていて、現在鞄ごとアイテムボックスの中。

私だけは眼鏡だったので、そのままつけている。つけてても違和感持たれないだろうと思って。

あとはこういう時のため、私とリオ兄さんだけは鑑定が出来るようにしておこうと相談した結果だ。

MPの数値も関係しているけど。



名前:眞壁 俊

年齢:14

性別:男

LV:5(あと411)

HP:43/105

MP:36/75


体力:47

攻撃:40

防御:58

俊敏:45

魔攻:29

魔防:62



「えっ、弱…あ、いや、防御と魔防は高いか。完全防御系」

「元はHP21のMP15ですかね。ちょっと低め?男子の中で一番HP低いのでは?」

「魔法系っぽい桜庭くんでもHP23だったもんね」

「スキルは、そっか、表示されないんだっけ。ああでも確か『結界』だもんな、魔物倒す方向には活躍できないからそこまで高くなさそう」

「基礎レベルは多分寄生レベリングで5まで引き上げられたと予想。知らんけど」



向原さんはレベル6でしたからね。彼女はスキルが完全に攻撃系なので、率先して魔物を倒してたはず。

倒しててアレか、など言ってはいけない。


ひとまず極力触れないように、ラムも魔力を探ってくれ、鑑定も駆使してみたけれど。

結果、転移玉は持ってないという結論に至った。となると、芝くんが持ってたやつが最後の一個だろうか?

もしくは芝くんがまだ持っている可能性はある。

ここへ来るのに転移玉を三つ使った。それで芝くんと眞壁くんが二人で移動。

と考えると、最大で三つ残っているはずだ。そのうちの一つをさっき芝くんが使った。

残り二つを芝くんが持っている可能性は…まだある。既に使い切ってる可能性もあるけど。

ああ、この小屋のどこかに保管してるという可能性も…?



「転移玉持ってないなら眞壁はもうここから動けないな。んじゃこいつにもう用はない、と」

『殺しておくです?』

「わあ最初からクライマックス」

『しかし、生かしておく価値があろうか?スキルは多少有用かもしれぬが、正直主人に近づいて欲しくないぞ』

「仲間に引き込む方向は無しとしても、放置したらどうなるかも不安かあ…鉱山奴隷が一番なんだろうけど」



さすがに、命を奪う、というのは…

まあ、死んで欲しいと思うくらいには気持ち悪いですけど。

そんな風に若干悩んでいると、掲示板に動きがあった。

というより、やっとと言うべきか、リオ兄さんの書き込みがあった。

掲示板を見れるだけの余裕が出来たということだろう。


―――不届きクソ馬鹿野郎連れてこっち戻ってきて♡


という内容だったけども。

あ、掲示板の内容読んだんですね。それ眞壁くんのことですかそうですか。

怒りしか感じない書き込みを見て「あ、はい」としか答えられなかった。


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