二十四時間の飢えと、巡り出す血(余韻編)1
「若旦那……さま……っ」
衣服の上から向けられる、
あまりにも強烈で狂おしいほどの情熱に。
唯衣から漏れたか細い声に、
レオの脳内を支配していた激しい飢えの熱が、
ほんの少しだけ引いていく。
「……すまない」
「ちょっと、落ち着く」
レオは唯衣を組み敷いた姿勢のまま、
呼吸を整えるように、
今度はそっと触れるだけの
優しくて切ない口づけを
唯衣の唇へと送った。
「はい……」
唯衣は熱を帯びた吐息をこぼしながら、
潤んだ瞳であのお方を見つめる。
「でも……若旦那様が、
そこまでわたしを求めてくださるの」
「……とても、嬉しいです」
恥ずかしそうに
顔を林檎のように真っ赤にしながら、
けれど一歩も引かずに
真っ直ぐに伝えてくれる愛しい恋人。
レオはもう、
愛おしさが限界突破して
これ以上まともな顔をしていられなかった。
唯衣を組み敷いていた姿勢から、
ゴロンと畳の上へと力なく転がり、
唯衣のすぐ横で仰向けになると、
自分の腕で真っ赤になった顔を隠した。
江戸中を動かす天才若社長が、
完全に形無しになって敗北している。
「はぁー……」
深く、深く、
心臓の爆発を抑えるような
ため息を吐き出しながら、
レオは腕の隙間から呟いた。
「唯衣」
「俺は、お前がいないと息が出来ないみたいだ」
「……今回、たった一日会えないだけでこれだ」
「近いうちに、長崎への長期出張(片道一ヶ月)で江戸を離れる予定がある」
「俺は本当に正気でいられる自信がない」
レオは腕を退け、
切なげな空色の瞳で唯衣を横目で見た。
唯衣は目をパチクリとさせて
その言葉を聞くと、
嬉しさと愛おしさで胸をいっぱいにしながら、
ゴロンとレオの側へと身体を寄せた。
レオの広い肩へと自分の頭をそっと乗せ、
じわりと伝わる男らしい体温に目を細める。
「若旦那様……わたしも、一緒です」
「若旦那様がいないと、
わたしも息が出来ないのです」
「会えない一日の間、ずーっと、
貴方のことばかり思っていました」
唯衣は髪に挿したあの『びいどろの簪』を
カチリと鳴らしながら、
横になったまま、
レオの逞しい腕を自分の小さな手で
ぎゅっと強く抱きしめた。
「手紙を、
……あの美しいお歌を、
ありがとうございました」
お外へ出られない不自由な吉原の箱庭。
衣服を脱ぐことはできなくても、
途切れることのない二人の甘い息遣いと、
重なり合う本物の熱が、
初夏の静かなお稽古部屋をどこまでも甘く、
深く、満たしていくのだった。
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X「真壁レオは今日も重い」
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