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真壁レオは今日も重い〜吉原外伝〜  作者: ほしよみ


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19/46

昼間の不意打ちデート 1

翌日の昼間。

姐さんたちと昼食後、

「もう一回、練習してきます」

そう言って、

唯衣はお稽古部屋へと足を向けた。


一人きりになった静かな部屋。


窓から差し込む初夏の明るい陽光が、

畳の上を白く照らしている。

夜の華やかな吉原とは違う、

どこか物静かな昼の空気。


唯衣は三味線を抱え直すと、

ぽつりと一つ、弦を弾いた。


ベン……。


響いた音は、

昨日よりもずっと甘く、

どこか切ない余韻を引いていた。


目を閉じれば、

すぐにあの白銀の髪と、

熱を帯びた薄い青色の瞳が浮かんでしまう。


明日も、明後日も、

お前に会うためにここに来る――


「……早く会いたい」


早く夜五つ(20時)にならないか。

早くあのお方に会いたい。

心に思っている言葉が自然と口に出る。


吉原の大門の外へは出られない

この狭い世界で、

唯衣の心だけは、

まだ見ぬ夜の座敷へと

何度も何度も羽ばたいていってしまった。


そんな、

唯衣がソワソワとお稽古を繰り返していた、

その時だった。


トントン、


廊下を渡る静かな足音が、

お稽古部屋の前でピタリと止まった。


「唯衣、入るよ」

「あ、女将さん……!」


襖を開けて入ってきた女将の菊乃は、

いつも通り煙管をくわえながら、

なぜか酷く呆れたような、

けれど同時にニヤニヤとした笑みを

浮かべていた。

その後ろには、やはり

「やれやれ」と額を押さえている景の姿がある。

「女将さん、それに景様……? 」

「どうして昼間に……」

「どうして、じゃないよ」

「あんたを驚かせる、

とんでもなく無茶で粋な若旦那が、

お稽古の『視察』にきなすったのさ」

「え――」

菊乃がすっと襖を大きく開け放つ。

そこには、

夜のお座敷用のバキバキの格好ではなく、

普段着に近い、

少しラフな着流し姿の若旦那・レオが立っていた。

太陽の光を浴びてきらきらと輝く白銀の髪。

いつもより少し優しく、

けれど真っ直ぐに唯衣を捉える、

薄い青色の瞳。


「夜まで待てなかった」

「……唯衣、お前の音を聴かせてくれ」


きゅん!!


唯衣の心臓が、

昼間の静寂の中で、

昨日を遥かに超える大音量で跳ね上がった。

翡翠花魁はいない。

他のお客もいない。

ただ、明るい光が差し込むお稽古部屋で、

素顔に近い若旦那様と、

二人きり(+後ろで白目を剥いている景)。

夜を待ち焦がれていた唯衣に訪れた、

贅沢すぎる

「昼間の不意打ちお家デート」が、

いま静かに始まろうとしていた。

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