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ピザとタルトとローストミノタウロス

ワタルは小屋に戻ると、コルに自分の留守の間、変わった出来事がなかったかを尋ねたが特に何もなかったとのことだった。

魔物の一匹や二匹襲ってきてもおかしくない場所ではあったが、古龍の存在感に周辺の魔物は怯え、動けなかったのだろうとのことだった。

保管庫の中の肉は思ったほど減っていなかった。

人間の生活を前提に作ったものであるため、出入りも人間の姿のままで行うことになるが、その姿であれば大分省エネになるらしい。

むしろ自分たちが狩りして獲ってきたものが大半なのだから、全部食べても問題なかったのだが。

ワタルは、辺境領で買ってきた家具を小屋の中に配置していく。

来客用の寝室も一応用意しておくことにした。

週末に、クリスとマリアとリディアが来訪するらしい。来客用のベッドは3つもないが、まあそこは女性同士、一つのベッドをシェアしてもらうことに特段不都合はなかろう。

商会の店員も驚いていたが、ワタルの異空間収納には限界があるのかどうかも不明である。転生者のお約束として、前世と今世をつなぐ存在である転生者には、両者の空間に関与する力が与えられるようであり、したがってその空間の広さも世界一つ分基準なのだろう。

ワタルはウッドテラスの一角に石窯を設置したいと考えていた。ただ、さすがに、雨避けの屋根を付けるところまで考えると週末までには間に合わないので、とりあえず、ピザ窯を設置する場所に、柱と屋根を作った。そこに冬の野営に活躍していた薪ストーブを収納から取り出し、置いておく。


週末、コルに頼んで、辺境領までクリス達を迎えにいってもらった。領主たる伯爵ともあろう人間がそんなに簡単に領置を離れるのはどうなのかと思うが、領主の仕事は性に合わないらしく、隙あらば飛び出すらしい。補佐をしている従者が優秀なのだろう。

ただ、辺境領が新たなダンジョンが発見されたことで冒険者で賑わい、地元経済が活性化するようになると、それを妬んで領置換えを画策する上位貴族出てくるらしい。

今のところ、表だって事を荒立てる貴族はいないが、伯爵であるクリスに対し上位の貴族となる公爵及び侯爵は、王家に働きかけて、領置換えを仄めかし、あるいは妙齢のクリスとの縁談を進めようとした。下位貴族である子爵男爵の中にも、力業は無理にしても、縁戚関係でクリスの領置を絡め取ろうと画策する者が出てきた。

もとも叙爵の前から勇者たるクリスへの縁談申込は行列が出来ていたのだが。

ワタルは、熟成継続中の肉の状態を確認しながら、少しずつ自分の拠点を快適にしていく作業を行っていた。


そして週末

人里離れた山奥に住んでいるワタルに、平日も週末もないのだが、一応クリスと話をした3日後に、クリス達がコルの背中に乗って飛んできた。わずか2時間のフライトである。馬車も使えない区間を通常5日から7日かけてたどり着く場所のはずなのだが、ドラゴンという移動手段はワタル達の行動範囲を著しく広げていた。

「お久しぶりです。」クリスと一緒に来たマリアがワタルに挨拶した。

「おう、久しぶり」

クリスとは3日前に冒険者ギルドで待ち伏せされて、今日の約束をさせられた時に話をしているが、マリアとリディアはワイガーの邪竜討伐以来である。もっともその邪竜も中身は横にいるブランカなのだが。

「きゅあっ、きゅあっ」ブランカが嬉しそうにマリアに飛びついていく。

ブランカは一緒に暮らしているワタルにも心を許しているが、自分を呪いから解放してくれたマリアのことも大好きだった。マリアも嬉しそうに飛びついてくるブランカを抱き留め、その頭を撫でる。もちろんブランカのサイズは街中バージョンである。ノーマルの際すは辺境領への往復で乗せてもらっているが、もう小屋には入れない。

ワタルはクリス達に、自分が拠点として建てた小屋の中を案内する。今晩は泊まりになるだろうから、ゲスト用の部屋にも案内する。

ベッドは2つ設置してあったので、3人とブランカで使ってもらうことにした。

ワタルが、夜の食事の準備をしている間、3人は、待ちかねたように、ワタルオリジナルのヒノキ風呂を堪能する。3人で入ることが出来るほど、大きな浴槽ではないのだが、ブランカとコルが一緒に入れる程度の大きさにはなっているので、窮屈にはなるが3人がなんとか入ることが出来る程度には広さがあった。

もちろん、場所が余っていていくらでも小屋を大きく出来るからこその贅沢さではあるが、冬を迎えてみないとどの程度の積雪量になるのかまだ分からないため、柱と壁は広い小屋でありながらも居たる箇所に設置しており、それがまた豪雪地帯の山小屋らしくワタルは気に入っていた。

日が沈む前に、ワタルはウッドデッキの真ん中にあるたき火台でたき火を始め、薪ストーブにも火を入れた。

今晩はピザにするつもりだった。幸いベーコンとソーセージは作り置きがたくさん残って居る。少なくなってきたチーズは辺境領で大量に買い込んできた。元はコルとブランカが獲ってきた魔物素材の買取代金を功労者に還元するためのものであるが、加減を知らず、初めてのブランカと一緒の狩りが楽しかったらしく、とんでもない量と質の魔物素材が山積みになってしまっていたため、辺境領の冒険者ギルドでも史上最高額の買取代金を記録した。それも王国で一番活況といって過言でない辺境領のダンジョンバブルがあって、資金が潤沢になっていた辺境領支部のギルドにあって、全部の素材を買い取るにはお金が足りなかったという状況である。

買い取った魔物素材については、査定終了後の買取代金交付の時点で,すでに国中の貴族から問い合わせが殺到していたらしく,武器や防具の材料になる素材に至っては、商業ギルドや鍛冶ギルドが辺境領の冒険者ギルド支部の近所に支部まで設置してしまい、定期的に素材の在庫状況を確認しているらしい。

まさにダンジョンバブル真っ最中の辺境領だった。

ワタルももはやブリタニア王国が魔王討伐の報酬を踏み倒し,あわよくばワタルを亡き者にしたことなど痛くもかゆくもないだけの金貨を持っており、人生五周分くらい青sんで暮らせそうな勢いだったが、それでもワタルは金を必要としない今の生活には変えられないと、数え切れない金貨が異空間収納の中に死蔵されていた。

ワタルはどうせ作るならと大量にピザ生地を仕込んでおり、手際よく、その一つ一つにソース、チーズ、ベーコン、ソーセージ、野菜をトッピングしていく。

薪ストーブが暖まってきたところで、1枚ずつ薪ストーブの中で焼いていく。

辺りにピザが焼ける香ばしいにおいが漂い始めた。

すると、建物の陰から突然気配がしたため、ワタルは慌ててそちらの方を振り向いた。

この場に居るのは、いずれも実力に折り紙付きの人物ばかりであり、その全員に気配を察知されることなく、そこまでの接近を許すなど、とても考えられないことだった。

もっとも突然生じた気配に敵意はなかった。そこに居たのは、いつもの精霊と、フェンリルだった。

ドライアドがワタルに向かって「いきなり居なくなるなんて」と頬を膨らませながら言う。

うーん、深淵の森の泉は居心地良かったけど、だからといってずっとそこに野営するわけにもいかないしなあ。

「そうだ、せめて次はどこ行くとか言ってくれないと、焼きリンゴを食べさせてもらえなくなるじゃんか。」イフリートが自己中な相づちを打つ。

「まあ、大して遠くでもなかったのですぐに見つけましたけどね」シルフィードがちょっとどや顔だった。山から吹き下ろす風がワタル達の居場所を森の中まで伝えたのだろう。

「焼きリンゴ食べたい。」ノームがぼそっとつぶやく。立ち位置やっぱりリディアっぽい。ついワタルはリディアの方を見てしまった。

するとクリス、マリア、リディアはボーッと精霊達を見ていたので、ワタルは紹介することにする。

「あ、えーと、こっちの人?達は森の精霊のドライアド、火の精霊のイフリート、水の精霊のウンディーネ、風の精霊のシルフィード、土の精霊のノーム、でこっちが今世の勇者のクリス、大聖女のマリア、大賢者のリディアだ。」

「「「「「「「初めまして」」」」」」」

おー重なった。

リディアが目を輝かせていた。四属性の魔法全てを最上位まで極めて大賢者の称号を得たリディアにしてみれば、その属性全ての精霊が一堂に会しているところを見るなどというのは千載一遇の出来事だろう。

普段寡黙すぎるくらいに寡黙なリディアが目を輝かせながら、ワタルを向く。

「精霊とどうやって知り合ったの?」

「ああ、この先の森の中に泉があるんだが、そこで野営してたき火でリンゴ焼いてたら、ドライアドが食べに来た。」

・・・まあ分かるよ。何言っているか分からないって顔だよな。説明してても、煙に巻いているようにしか聞こえないよな、ワタルは心の中でそう思う。

それより

「そっちのフェンリルは、もしかして緑竜と戦った時の、狼の群れのリーダーだったやつか?」

「そのとおりである。シルフィード様に声を掛けて頂いて、お主に会いに来ることになった。その節は大変世話になった。」

「シルフィード、様?ってフェンリルとはどういう関係?」

「私の眷属よ。」

ふーん。世界って狭いんだな。

「それより、私たち抜きで焼きリンゴ食べるなんて酷くない?」

ドライアドがワタルに詰め寄る。

「いや、今日は焼きリンゴじゃないんだけど。」

ワタルが一応リンゴはもうあまり残ってないことを説明する。前回もそう言ったはずなんだが。

急に精霊達が項垂れる。

「や、焼きリンゴが・・・・ない?」

あーでも今日は別のフルーツを使って違うものを食べるぞ、よかったら一緒にどうだ?


ピザを焼き始めたばかりなので、とりあえず、そちらを勧めてみるが、フェンリル以外は肉がためらしい。

仕方ないので、デザートにしようと思っていたフルーツパイを先に薪ストーブに入れた。

辺境領で大量に購入した季節のフルーツであるブルーベリーやストロベリーなど数種のベリーをパイ生地のタルトに詰めたカスタードクリームの上に散らし、最後に火属性の初等魔法を手のひらに集めて、ブリュレしていく。手のひらに魔力を集めてコントロールする技術に欠けては、ワタルのほうがリディアより上である。攻撃魔法の放出ではワタルはリディアの足元にも及ばないが、山岳ガイドとして用いる魔法の技術には遭難者を消し炭にするなどという用途はなく、雪山で下手に火属性の魔法など発動したら雪崩を誘発しかねなかった。ワタルにとって火魔法というのは、雪崩に埋まった低体温症の遭難者を温めるためのものであり、チーズを溶かすものであり、肉に火を入れるためのものであり、お湯を沸かすためのものである。

フルーツのクレームブリュレを精霊に切り分けて1個ずつ渡していく。

焼きリンゴとは異なり人工的な甘さのデザートだがどうだろう?

「美味しい。」精霊達は口々に感嘆の声を上げた。

「焼きリンゴもいいけど、これもいいな」イフリートが嬉しそうに声を上げる。

見た目も声もマッチョなのに・・・何か残念な気がする。

それを聞いたクリス達が、自分たちも食べたいと言い出す。

「いや、もちろんあるから、ご飯の前にデザートとかいうなよ。口の中が甘くなってしまったら、ピザが美味しくなくなるぞ。」

ワタルに窘められて、クリス達はピザも食べたいと、目の前のピザに関心が戻っていく。

ワタルは、精霊達の来訪を予定していなかったので、ピザを焼きながらも、別のテーブルでカスタードクリームを作り始めた。パイ生地の作り置きはまだ残って居るが、カスタードクリームがなかった。幸い材料の小麦粉、砂糖、バターは大量にある。温度調節もワタルの得意分野である。

本当は温めた牛乳を攪拌しながら小麦粉と砂糖とバターを混ぜて、急速冷凍させ、雑菌が繁殖する温度帯を素早く通過しないといけないのだが、ワタルの氷魔法により前世以上にカスタードクリームの製造は簡単な世界である。

ワタルは同じように、パイ生地を型に敷き詰めて、出来たてもカスタードクリームを流し込んで、ベリーを散らしていく。

それをきらきらした目で精霊とクリス達が見ている。

クリス達の分が残してあることを見せた上で、焼き上がったタルトブリュレはもう一切れずつ精霊達に渡す。

精霊は虫歯にならないのだろうか?

フェンリルはピザを珍しそうに食べたが、どうも生地の部分は苦手らしい。

いろいろと注文の多い参加者が集まった。

ワタルは、熟成が終わって収納に移った肉の中から、ミノタウロスの肉塊を取りだし、反重力の魔法でたき火の上に浮かせ、さらにそこに手のひらに集めた火の熱を、表皮をすり抜けて、中心部分に集めていく。

それを見て一番驚いたのはコルである。「人間にこんな魔法が使えるのか。こんな魔法で攻撃されたらひとたまりもない。わしらの鱗は火属性の魔法を跳ね返し無効化する。しかし、その鱗のある表皮を熱だけ透過させて内部に熱を加えられたら、鱗の防御力が無効化されてしまう。加えて重力をも操るとか。」

コルはすっかり化け物を見るような視線でワタルを見ていた。

そして、フェンリルも「ワタル殿の力添えがなければ緑竜を倒すことは出来なかった。あのときの緑竜を押さえつけた重力魔法すら、驚愕に値したのに、さらに奥の手を持っていたとは。緑竜の体の方が遙かぬ重量はあるが、重力に比べて反重力はさらに高度な魔法、その上多重発動で、外皮を通り越して内部に直接ダメージを与える火属性魔法とか、ワタル殿は決して敵に回してはいけないお方だということを改めて痛感した。」

どうやらワタルは伝説の魔獣の両巨頭から、化け物認定されたらしい。

そうやって、ワタルがミノタウロスの肉塊を表面に焦げ目のない状態で熱を加えると、リディアに向かって「じゃあちょっと肉を、そうだなー、小指の爪の3分の1位の厚さに切っていってくれるか、風魔法で。」と頼む。

ワタルは火属性の魔法の発動を終えたものの、反重力魔法の継続のため、手を動かすことは出来ない。反重力魔法発動中に火魔法を同時発動させrのは、肉に熱を加えるときに、重力から解放することで、肉にかかるストレスを無くすことにより,ムラなく均等に加熱すること、とくに58度以上65度以下に熱をコントロールすることで、肉が固くならないようにするために集中力を要したため、そのような状態で薄く速度の速い風魔法を放出することは不可能だった。

依頼されたリディアは杖ではなく指先を空中に浮遊している肉塊に向け、その向こう側にだれもいない角度で風魔法を射出していく。高速により連射される風によって一次的に真空の空間が生まれるその薄い空気のひずみはかんなで削るように薄く肉塊を切り裂いていく。その余りの速さに肉片は切られたことにも気付くことなく、細胞壁を痛めずに肉汁をしみ出させることもなく、薄切りのローストミノタウロスが積み上がっていく。

ワタルは、その1枚1枚に塩と胡椒を振りかけて、精霊達以外の皿に盛り分けていく。とくにコルとブランカとエメリーとフェンリルの皿には山盛りにして渡す。

ワタルももちろん、食べる。久しぶりのローストビーフ(ミノタウロスバージョン)である。肉は口の中で軟らかい弾力をもって口蓋を押し返し、ぷつっというっここつよい歯ごたえの後に、肉汁がしみ出して,口の中にあふれ出す。その薄い肉片のどこにそんなにあるのかというほどの量の肉汁は、調理中に一滴も失われることなく肉の中に閉じ込められたかのようであった。


食事が終わると、シルフィードがリディアに話しかけていた。どうやらローストミノタウロスを薄切りにした風属性の魔法に興味があったらしい。

この世界の魔法というのは精霊の加護を得て、その力を行使すると考えられているだけにリディアはリディアで、目の前にその基本四属性の精霊全員が並んでいることに感激していた。

若くして基本四属性の魔法全てを最上位まで極め、大賢者の称号を得たリディアであったが、目の前に居る精霊は次元が違う存在だった。リディア以上んじ小さなからだなのに、精霊が纏う魔力は桁違いだった。リディアは決して自分の今の状況に満足しているわけではなく、大好きな魔法をさらに極めて行きたいと考えていたので、精霊たちと話をしながら魔法の訓練がなんとか出来ないものかと考え、精霊に弟子入りしたいと懇願していた。


精霊達は、リディアが真剣な気持ちは理解しているものの、人に教えるという経験がないため、困惑しており、自分たちにとって息をするように自然に使う魔法を教えるという作業にイメージが沸かないと正直に回答していた。

それでもリディアは引き下がらず、精霊達が魔法を使うところを側で見るだけでもいいと食い下がり、機会があればという言質を精霊から引き出し上機嫌だった。

ワタルは、リディアが精霊達に魔術のさらなる高みを目指して積極的に話しかけている間、フェンリルと話をしていた。

「結構遠くから来ているみたいだが、自分の群れは大丈夫なのか?」ワタルは尋ねる。

「大丈夫である。我は緑竜を倒したことでフェンリルへと進化したため、それまでの群れは後進に譲り、世界を見分する旅に出ると告げて群れを出た。風の精霊様に今後のことを相談していた折、貴殿の名前が出たことを不思議に思っていたのだが、まさかワタル殿が風の精霊様とかようなつながりがあったとは知らなかった。それにしても貴殿は人間とは思えないほど計り知れない器の持ち主じゃの。」

「いや、そんなたいしたもんじゃないぞ。たき火でリンゴ焼いてただけだしな。」

ワタルは変に持ち上げられて落ち着かない気分になったが、人より強いとかいう価値観に興味が全くなかったので、自然と口をついて出た言葉だった。

「謙遜しているのか、自覚がないのか。」フェンリルはため息をつきながらシルフィードとワタルを交互に見比べる。

長年の友人であるかのようにたき火を囲んで人間が精霊と談笑している姿など、江面は普通でも理解が追いついていなかった。ひとたび精霊の怒りを買えば、国一つあっという間に滅びるほどの圧倒的力をもった存在である。その精霊に畏怖することなく、新井ながら話しかけ、デザートを振る舞う人間、初めて見る存在だった。

「それより、ワタル殿には、群れを見逃して頂き、かつ自身も掬われた、我としては、その恩返しをせねばならぬ。ワタル殿を主と認め、側でお役に立ちたいのだが、構わぬだろうか?」フェンリルが真剣な顔つきになって、ワタルに尋ねてきた。

「うーん、エメリーも似たようなこと言ってたけど、主従の関係にしなくていいぞ。ここに居るのはみんな仲間という扱いでは駄目か?フェンリルも狼たちの手前、あまり人間に付き従うみたいな姿勢を見せないほうがいいんじゃないのか?」

「そんなことはない。弱い者が強い者に従うのは自然なことだ。ワタル殿は間違いなく強者、我はワタル殿の実力を認めた上で、従魔として行動を共にさせて頂きたいのだが。」

「主従は本当に気にするな。仲間としてここで暮らしたいなら、全然構わないぞ。ここなら誰に気兼ねなく暮らせそうだしな。エメリーもブランカも、時々コルもいるしな。精霊達も時々遊びにくるしな。」

「感謝する。主よ。」

「その主っていうの止めておこうか。」ワタルは笑いながら、フェンリルの首に手を当てて撫でる。フェンリルは気持ちよさそうんじ目を細めると、ワタルに頭をこすりつけていた。フェンリルの世界では、従属の意思表示なのだろう。


同じ頃、クリスはコルに話しかけていた。今後も定期的にワタルの居るここに遊びに来たいのだが、迎えに来てもらえないかというお願いをしていた。

コルに「ワタル殿は男女間の心の機微にはどうも鈍いようじゃからな、まあがんばるのだぞ」と励まされ、頬を赤くしながら、ため息をついていた。それを横目で見ていたマリアが「いくら勇者でお友達のクリスといえども、抜け駆けは許しませんからね」と横からクリスに牽制していた。


夜も更けてきたので、たき火を消して寝床につくことにした。

ワタルは今晩から行動を共にすることになったフェンリルのために居間の隅にシュラフを置いた。フェンリル用の布団は改めて新調する必要がありそうだ。

「精霊達も良かったら泊まっていってくれてもいいぞ」とワタルは精霊達に告げるが、正直人間と同じように夜になったら寝るのか?その生態を何一つ知らなかった。

ドライアドが、「私たちのことは気にしないで。あと、渡すのが遅くなったけど、いつも美味しい食べ物頂いてばかりで悪いなって思ってて、みんなで相談してワタルに持ってきたの」とドライアドはこぶし大の石を取り出してワタルに渡す。それは精霊石であり、魔導師の杖に埋め込むことで、その属性の最上級魔法を付与する素材として用いられるレア素材だった。ドライアドは森の精霊石を同じように他の精霊達も自分の属性の精霊石を一つずつワタルに渡していた。「これから毎回、来るときに一つずつお渡しします。リンゴの代金の足しにしてください。」ウンディーネが全員を代表してそうワタルに伝えた。

「リンゴの代金ってもらいすぎだろ。」ワタルは慌てて受け取れないと伝えようとするが、精霊達は、「その石は私たちにとっては別に貴重でもなんでもないので、気にしなくていいわ」と伝えて、その場から消えていくのだった。

「とりあえず、もう寝ようか。」

ワタルが残った人たちを家の中に誘導し、ワタルにとって最も大所帯となった初めてのホームパーティーが終わったのだった。



」


人間とコミュニケーションをとれる魔獣ってドラゴンだったりフェンリルだったり、定番化してしまうのですな。

スライムは知名度トップだし。

この先にも人語を話せる魔物の仲間が増えていく気がする。


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