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四十話「勇者は何でも屋じゃありません」

 部屋に残された僕とリッツの二人は、だまってお茶をすする。


「これで一息ついたって感じか」

「キザキはな。巻き込んで悪かったよ……。俺はまだもうちょっと頑張らないとなー」


 お茶をすすりながら、スフルが前言ったことを思いだす。

 『言ったじゃない。君が巻き込まれるまでは大人しくしててあげるって』。スフルは、僕がリッツに巻き込まれることがわかっていたのか? まさか予知能力とかそんなすごいもの持ってたりするんじゃぁ……。いやいや、ないな。あの見た目五歳児何百年も行きてるくせに中身も五歳児なあいつにそれは、ない。うんうん、と一人頷いているとリッツが口を開く。


「んじゃまー、色々片付くまでは会えないだろうから。今日はもう暗いし泊まって行けよ、明日からまた旅続行ってことで」

「言っとくけど枕投げはしないぞ」


 ビシッと手で制すと、リッツが肩をすくめた。


「何も今日一日働いてくれたキザキにこれ以上無茶はさせねぇよ。俺もお前の体が消えた時城内探し回って疲れたかんな。今日は大人しく寝る」

「それならよかった」


 ほっと安心してお茶をすする。飲みほして、僕はフラフラと与えられた部屋へ戻った。そこには、青宮、葛城、空森の三人がそろっていた。何だよ、まさかまた枕投げしようとか言いださないよな……? 今日一日で僕のメンタルと体力はゴリゴリ削られたから、今日はもう寝たい気分。

 珍しく、空森が真剣な顔をしているので、一応話は聞くことにした。


「で、何でお前たち僕の部屋に集まってんの?」

「木崎、俺たちに隠し事してんだろ」

「昼間、お前が消えたってリッツが大騒ぎしてるの見た」

「お前は一体、何をしてたんだ?」


 三人の言葉に、そう言えば話してなかった、と気づく。僕が闇属性なことと、精霊を従えていること。全部サネと関わってわかったり契約したりしたからサネの事情を話してない以上僕の力やスフルのことも話してないんだっけ。最近すっげぇバタバタしててすっかり忘れてた。


「わり、話すよ。ただ、母親に裏切られた子供の話を聞きたくないヤツは悪いけど……」

「関係あるのか? 木崎がやってたことと」

「なくはない」

「……じゃぁ聞く」

「おし、んじゃ……」


 話し終えると、部屋は静かだった。てっきり空森あたりが金髪美女に一人で会ったのかー! とか、また蒼魔女に会ってきたのかー! とか言ってくると思ったから、拍子抜け。何だか沈黙が気まずいような、気まずくないような。視線をどこに定めていいのかわからず、ウロウロと泳いでしまう。最初に口を開いたのは葛城だった。


「なんつーか……俺たち、完全に蚊帳の外だったな」


 続いて空森。


「闇の力に闇の精霊とか……うは、ザ・中二病。ぷぷー」


 空森の脇を肘でぐりっと抉ってから、悶える空森を放置して最後に青宮。


「流石選ばれし勇者と言うべきか……」


 ……何だよ、もっと僕を労わってくれよお! 僕超頑張ったぞ? サネ助けたりサネの母親助けたりリッツの強引な頼み聞いたり。色々やったじゃん! もっとこうさ、僕に対する優しい言葉とかないわけ? 空森の言葉はまぁ、確かに自分でもすげー中二病くさいと思ったけどさぁ。青宮は何なんだよ、何が言いたいんだよ。選ばれし勇者は何でも屋じゃありません!


「とりあず、疲れたから寝させてくれ……」


 それだけ言って、僕はフラフラ-っとベッドまで行って、枕投げもしてないのに気絶するように眠りについた。

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