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四十一話「戻ってきた平和な日常?」

「ところでさ、余った休みどうするよ」

「それもそうだよな。リッツは忙しいから遊ぶの無理! って断られたし。元はと言えばリッツが言ったくせによ」

「しゃーねぇから西の国観光でも行きます? 木崎は行く?」

「んー……」


 主のいなくなった城は、何だか寂しく思えた。僕たちはリッツもバリもいないのにあの豪華な部屋を食事とるのに使わせてもらうのは気が引けると言う理由から、使用人の食堂で食事をとっていた。わざわざ部屋に持ってきてもらうのも、悪いし。ちなみにリッツはバリと蒼魔女がいなくなってから大忙しの模様。まぁ、自分でそう言う道を選んだわけだから何も言わないけどさ。リッツも大概お人好しだよなぁ。


「僕も行くよ。ただ、西の国は治安が悪いって聞くからなるべく安全そうなとこな」

「おうよ、決まりー」

「地図地図、一昨日リッツにもらったこの国の地図」

「地図なんて難しいもん見てないでまずは城下街から行こうぜ」


 それもそうか、城下街が一番手っ取り早くつくもんな。と言うわけで城から出て城下街へ出る。城下街は、結構賑わっていた。市場が開かれていて、果物や野菜などが売られている。適当にぶらぶら歩いて、歩きながら食べれそうな串ものなんか買って食べてみたりした。ちなみに串に刺さっていた肉は最近獲れたこの近くで悪さをしていた竜の肉だとか。どうりでほかの串ものより高く、美味しかったわけだ。竜の肉はプリぷプリていてジューシーだった。つか、竜って食べれたんだ。どうやって捌いたんだろう……。


 何か、こう言う市場っていいよな。日本でもあるけど行ったことないし。外国に観光にきた気分になれる。実際は外国じゃなくて異世界だし、日本に帰れるかどうかも怪しいけどな……。イカンイカン、折角の楽しい気分が台無しだ。人生ちょっとぐらい現実逃避してたほうがいいんだ、きっと。今は日本のことは忘れるんだ。


「あ、あのネーちゃん可愛い!」

「空森は喫茶店の猫耳っ子が好きなんじゃなかったのかー」

「こいつはすぐ目移りするから……」

「まったく、仕方ねぇヤツ」

「な、何だよ猫耳っ子とか言うなよ。何かコスプレみたいに聞こえるだろ」


 空森が唇を尖らせて焦った様子で顔を真っ赤にするので、全員でゲラゲラ笑ってやった。笑っていると、突然遠くから怒声があがる。


「そいつ追いかけてくれー! スリだ!」


 え、ナニナニ、と状況が掴めていない市場の人たちがざわめきだす。人だかりの中を、人にぶつかりなながら走ってくる十歳ぐらいの女の子が一人。女の子が通ったあとに、「あ、アタシの財布がない!」と声があがる。どうやらこのようじ……女の子、走りながらスリをしているようだ。随分と手慣れた……。


 僕たちのほうに向かってくるので、目を瞑って朝日に照らされた影にイメージを集中させる。今度はどうしようかな、そうだ、影を使って女の子の足に引っ掛けて転ばせるとか……。


「きゃっ」


 丁度僕たちの目の前で、女の子がビターン! と見事にすっ転んだ。目を開けると、朝日に照らされた薄い影がニタッと笑うのが見えた。へー、影って笑うことできたんだ。と、そこに感心した。女の子を転ばせたのはこの影だろう。ありがとう、と感謝の言葉を小さく述べる。その間に、青宮が女の子の手から財布をもぎ取って持ち主に返していた。


「あたしのお金よ! 返して!」


 そう叫ぶ女の子の頭に、青宮のげんこつが落ちる。結構強めにやったようで、女の子は涙目で青宮をギッと睨みつけたまま黙る。げんこつを食らった頭を手で押さえながら。

 

「縄ない? 縄」


 青宮の言葉に、すばやく僕たちが動く。今の青宮は半切れ状態だ。こう言う時は青宮に従うに限る。下手に逆らうと何が待ってるかわからないからな。市場の人から縄をもらって青宮に渡すと、すばやい手捌きで女の子を縛りあげる。その一切の躊躇のなさに、ちょっとだけ引いた。まぁ青宮は実家がやってた店が万引きで潰された経験があるから盗っ人が女子供であろうと許せないんだろうな。男なら多分もっとひどい扱いしてると思う。


 流石にないと思うけど、一応舌噛んだりしないようにと女の子の口に布をかませる。女の子は手足を縛られたあとは、青宮の怒りモードに恐れをなしたのか涙目でブルブルと震えている。


「この子です、スリ」


 女の子を見て、最初は僕たちのほうがスリじゃないかと疑っていたすられた人たちも、青宮のただならぬ雰囲気に気圧されたのか納得して女の子を警察まで連れて行くことに。一応、目撃者として僕たちもついて行くことになった。


 折角、平和な日常が戻ってきたかと思えばこれですか……。僕は内心、ため息をつきたくなった。

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