第十七話 急襲③
「ピィィィッッ!!」
「ち、また来やがったなッ!」
頭上から鳥の雷獣が新たに現れる。
それを確認してグレンは思わず舌打ちをする。弱点が分かったとはいえ、このまま永遠と相手するのは不可能だ。
「これじゃキリがねぇぞッ!」
「ん、ちょっと行ってくる」
「は?」
「“盾“」
突如、ラヴィンがいくつもの光の盾を空中へと形成する。
すると、それを足場に飛び跳ねるような軽快な動きで次々と空中を駆けていく。
「ピィッ!?」
翼も持たずに空中へと躍り出てきたラヴィンに、鳥の雷獣は驚いて固まるが、その隙をラヴィンは見逃さない。あっという間に距離を詰めると、ナイフに光を収束させる。
「“剣“」
「ピィイ……ッ!!」
そして、形成した光の剣が鳥の雷獣を貫く。
その一撃は正確に核を破壊し、雷獣は最後にバチバチッと雷を打ち鳴らすとそのまま空気に解けるように消えていく。
「あ、おい! どこ行くんだッ!?」
だが、雷獣を仕留めた後もラヴィンは止まらず、空中に形成した光の盾を足場にさらに高度を上げていく。森の木々よりも高い位置まで駆け上がると、ナイフに光を収束していく。
次の瞬間。
「“弾“」
夜空に向かって一つの光球が高く打ち上げられる。
放たれた光球は残光を残しながらぐんぐんと高度を上げていき、数百メートルも上空に達する。
そして――
「“光”」
――パァァァァァァンッッッ!!!!!!
光球が炸裂すると、闇夜を切り裂くかのように強烈な閃光が辺り一帯に迸る。
「うおッ!!」
「眩し……ッ!」
まるで太陽が突然現れたと錯覚してしまう程の発光に、地上にいたグレンたちも思わず腕をかざしながら顔を背ける。だが、それでも視界は真っ白になり身動きが取れなくなる。
「むむむ……」
そんな中、ラヴィンだけは何かを探すように目を凝らしていた。
一時的に昼間のように明るくなったことで、森に潜む雷獣も、遠くに見える街の外壁もラヴィンの目にはハッキリと映し出されていた。
そして見つけた。
森から離れた丘の上で、一人の男がこちらに注目している姿を。
「“盾“」
ラヴィンは、すぐさま仙具を発動。再び空中に形成された光の盾を足場にすると、その場所まで一気に駆け抜けていく。
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一方、取り残されたグレンたちは。
「あいつッ! 何をするかを一言伝えてから行動しろやッ!!!」
「目が潰れるかと思ったよ……」
「え、っと。ラヴィン君は一体どこに……?」
「多分、敵を見つけたんだと思うッス」
ラヴィンの突然の行動に振り回されていた。
特にグレンとグレッタは戦況を把握するためにラヴィンのことを注視していたため、そのまま目を焼かれた。
「グルルルルゥッッ!」
『――ッ!』
森の奥から獣の唸り声が聞こえてくる。
グレンとグレッタは瞬時に仙具を構え、セレスとジーノは身を固くする。
「雷獣たちは、仙具使いがいなくても自立行動が可能だ。ラヴィンが注意を引いたとしても俺たちを襲う奴はいるよな」
「そうだね。奴らの狙いはセレスだ。一斉に襲ってこられると厄介だよ……」
二人の傭兵が相談をしていると、後ろで聞いていたジーノが声をかける。
「グレンさん。それなら俺に良い考えがあるッス」
「……なんだ?」
「この近くには、放棄された砦があるッス。雷獣が雷の性質を持っているなら、生物に対する殺傷力は高くても、石壁を砕けるほどの物理的な破壊力は無い筈ッス。なら、砦に逃げ込めば有利にならないッスか?」
「……なるほど」
「良いと思うよ。最低でも時間は稼げそうだ」
「よし。ジーノは案内しろ、その間は俺たちが守る」
「了解ッス」
こうしてグレンたちは近くの砦まで移動することにした。
ジーノを先頭に走らせ、その後ろにセレス。そしてセレスを挟み込むように二人の傭兵が並走している。
だが、当然のことながらその間も雷獣たちは襲ってくる。
「ウキィィィッッ!!!」
「“炎球“」
猿の姿をした雷獣が頭上の木から飛びかかって来た。
だが、すぐさまグレンが剣を振るう。すると、剣から発生した炎が意思を持っているかのように動き、瞬く間に猿の雷獣を包み込んだ。
「ギィィィッッ!!!!!」
そして、炎が球状に変化すると一気に収束していき、中の雷獣を焼却していく。
バチバチッと雷獣の身体から発生する雷と押しつぶそうとする炎が反発し、閃光と火花が散る。
「ギィィ……ッ」
しばらく雷と炎がせめぎ合いを起こしたが、雷獣の方が先に力尽き、最期は消えていった。
「ふぅ、核をピンポイントに狙うのは難しいが、要は全部燃やせば問題なさそうだな。……森に引火しないようにだけ気を付けよう」
「よし、急ぐよッ!」
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「ん、“雷命の爪”の持ち主」
「いやぁ……凄いね、君。おじさん、びっくりしたよ」
森外れの丘の上。
そこでは、ラヴィンが一人の男と対峙していた。どこか掴み所のない雰囲気をした男の両手には、鋭い爪の仙具が装着されていた。
「君が、オルクス君が言っていた“呪い付き“かぁ。いくら核に気づいたからって、一体一体の場所は違うんだけどなぁ、あんなに簡単に倒すとは……」
「ん、セレスのことを諦める気はある?」
「さすがにそれは無理だ。彼女の仙具を奪うのが俺の任務だからね。逆に君の方はどうだい? 邪魔しないでくれるなら戦う必要もないんだけど……」
「無理」
ラヴィンの即答を予想していたのか、肩をすくめる男。
そして両手に嵌めた爪型の仙具を持ち上げると、バチバチッと帯電し始める。
「なら、戦う前に自己紹介をしておこうか。俺の名前はトニー。よろしくね」
「僕の名前は、ラヴィン」
「良い名前だ。できれば、途中で降参してくれると助かるよ」
「“雷獣”」
その言葉と同時に、トニーの仙具から雷が発生。それは徐々に大きくなっていき、次第に獣を模した形になっていった。
虎、狼、鷲の他、猿、馬、犬といった風に様々な獣が雷で形成され、トニーの周囲に侍っていく。そして、あっという間に数十体もの雷獣が産み落とされ、ラヴィンへと牙を剥ける。
世界最強の一角との闘いが幕を開けた。




