凡人の仕合
正直こんな話を交わしている時点で、いやアスフィルの言葉に少しでも憤りを感じてる時点で、 子供ということだろうか?
「まぁそんなことを考えてないで俺も寝るか」
闇夜に独り言を浮かべながら、就寝用のテントに向かう。
するとその途中に幾つか剣が立てかけてあるテントがあった。
立てかけてる剣は全て同じデザインで、華美な装飾はないその無骨さがいかにも一般兵が所持しているものだと訴えてきた。
なかなかファンタジーぽいな……などと思いその剣を持ち上げる。
想像以上の重量で驚いたが、数年の筋トレの甲斐があってか、この重さにむしろ取り回しの良さを感じる。
先ほどの鬱憤を払うついでに、先延ばしになった腕試しをこの件でしてみよう。
そう思い剣を持ったまま森に入ろうとすると後ろから大声で止められる。
「おい、貴様。陛下の側近だがどうだが知らないがな……
兵の魂とも言えるその剣を無断で持ち去ろうというなら、流石に看過できないぞ」
強い口調と言葉をぶつけてきたのは、昼間の死体見聞の時にもいた兵士だ。
「鍛錬をする為に少しの間拝借しようと思っただけだすまなかった。
これは特別な剣なんだな。なら予備の武器とかはないか?」
俺が剣を彼に渡すと彼はそれを大事そうに抱え、元の場所に戻してから口を開いた。
「この件はな、三大帝国が一つの連合国になった時、兵士一人一人に作られた剣なのだ。
今までの帝国での地位を捨て、連合国に身命を捧げた証。
それに、ここにお前のような余所者が使っていい武器などない」
なかなかの排外主義じゃないか……
「ならいい。なら運んで来た敵が装備してた武器を貸してくれよ。
それなら問題ないだろ?」
「わかってないな。貴様のそういうところにそもそも武器を扱う資格がないと説いているのだ」
そういうと彼は、横にあるテントに入りそっくり同じ長さ、デザインの二本の長剣を持って出てきた。
彼は、剣を一つ俺に差し出すとこう言い放った。
「試してやろう、貴様の資質を。
ついてこい」
そう言うと彼は森の中に入っていくので、俺もそれに続く。
少し歩いたところに、木が生えていない楕円形のエリアがあった。
「剣を抜け」
そう一言俺に告げると、兵士はそのまま切りかかってきた。
おもはず反射で避けようとするが当然間に合うはずもなく、そのまま刃が胸に食い込むかと思った。
しかし剣の軌道に注意していたせいか足元の石に躓きそのまま後ろに転倒する。
奇跡的なイベントで、辛くもローブを切断されるだけで済んだ。
そんなハプニングがあったにもかかわらず、兵士は動じない。
「剣を抜け。次は躱せないぞ」
そう言うと彼は倒れた俺に覆い被さるようにして、そのまま剣を突き立ててきた。




