凡人の階段
俺たちは今、焚き火を囲うようにして休息を取っている。
アスフィルに、自分がヘルメットを見て驚愕した理由を説明した後、敵の部隊がどこにいるかなどの説明を聞いていたらすでに夜になっていた。
正直説明された山や川などはよくわからなかったが、地図を見る限りはかなり離れているようなので今日くらいは野外でも安心して休めよう。
おれがぼっーと火を眺めていると、隣で寝転がっているアスフィルが話しかけてくる。
「どうしたんだ?火なんか見つめて。
もしかして子供扱いされたこと、まだ拗ねてるのか?」
有益な話題提起かと思いきや、信じられないくらい煽ってくるので、あくまでも冷静に対応する。
「俺のいた世界ではな、火を見つめるのは一種の娯楽として扱われているんだ。
さらにいえば俺の元いた世界において俺のいた国の人間は比較的童顔に見られやすい。
加えて子供か大人か拘るほど子供でもない」
「なかなかに流暢に喋るな」
アスフィルは少し笑いながら上体を起こす。
そんな彼に俺は一つの問いを投げかけてみる。
「じゃあ逆に聞く。大人であるってどういうことだと思う?」
「大人である条件かぁ。まぁそうやって明確な条件を求めてるうちは、子供だなw
俺が考えるに大人になるって言うのは《諦めること》を知ることだと思うぞ」
「諦めること?」
「大人になれば関わる他人の数が乗数的に増える。
そうなったら自分の思い通りにいかないことなんていくらでも出てくる。
だから途中で諦められることが求められるんだよ」
アスフィルは、木の棒で焚き火を突きながら、さらに続ける。
「逆にいえば、脇目を降らず目的に突き進むことができるのが子供の特権なのかもしれないけどな」
「アスフィル。じゃあやっぱり俺は大人だ。
諦めることには慣れ過ぎてる」
それを聞いたアスフィルは持ってた棒を焚き火の中に投げ入れる。
「いいや。やっぱりお前はまだ子供だよ。
俺が言ってる諦めっていうのはな。
困難にぶつかったとき周りのことを多角的に判断して、自らの意思を折り中断するってことだ。
陵魔。お前のいう諦めは、考えたふりをしてなんも行動しないことだろ?
それは、子供と大人どちらでもない上に両方の醜いところを統合した、哀しい怪物だ」
「言うじゃないか。ならアスフィル、お前はどうなんだ?」
「俺はとっくに大人になったよ。何度も諦めてきた。
自由奔放な子供じゃ国は納められないからな……
明日も朝早い。なんてたって最前線のアズールに追い付かないといけないんだからな」
そう言うとアスフィルは立ち上がりテントへと消えていく。




