戦斧の追憶
驚愕の事実を前に硬直している俺に対して、店内の男達は襲い掛かってくる。
それに気づいた俺は強張る体をなんとか動かし迎撃しようとした時、後ろから信じられないくらいの声量が響く。
「その辺にしとけ」
後ろから聞こえた声は間違いなくアスフィルのものだろう。
その証拠に男達がざわめいている。それはそうだろう。
一国の主人がこんな辺境の酒場兼宿屋に現れたらどよめくに決まっている。
そんな観衆など意に介さずアスフィルは金貨を2枚ほどカウンターらしきとこにいる店主に渡し告げる。
「二部屋借してくれ」
「あっはい。お釣りです」
そう言ってお釣りを渡してくる店主に
「釣りは口止め料として取っといてくれ」
という捨て台詞を残して二階に上がるのでそれに続いて俺も二階に上がる。
2階は長い廊下がありその両脇に部屋が配置されている。
扉に《101》と書かれている部屋を指し彼は説明してくる。
「ここが陵魔の部屋だ。そして隣が俺の部屋だ」
「わかった。じゃあまた明日〜」
そう言って俺が部屋に入ろうとすると、アスフィルが肩を掴む。
「その前に俺に聞きたいことがあるじゃないか?
いいのか?俺とクオンの出会いについて聞かなくて?
エリーとアスールの話を聞いてもう気づいてるだろ?
この世界でクオンを召喚したのはエリーでもアスールでもない、この俺だ」
俺はアスフィルの方に振り返ると含み笑いながら言った。
「そうか。自分から切り出してくれたってことは、さぞかし雄弁に語ってくれるだろうな?」
「ああ」
俺の泊まるはずだった部屋にあった椅子に二人とも腰掛ける。
「じゃあゆっくり語っていこう。夜が明けるまではしばらくあるしな……」
長くなりそうな話に俺が身構えると、アスフィルはゆっくりと語りました。
「俺がクオンを召喚したのは、ロート帝国の皇帝が殺され、三大帝国が混乱に堕ちてからじゃない。
それよりもっと前、俺が10歳の時だ。
ゲール国皇帝の第一子として生まれた俺は、国を治めらる優れた皇帝になるため日々勉強と武道に励んでいた。
ある日父と共に三大帝国合同会議に首席することとなる。
数時間会議に首席した後、晩餐会が開かれた。
それを余分な時間が出来たと捉えた俺は少しでも鍛錬しようと木斧を持ち城の庭に出て素振りを始めた。
するとそんな俺に話しかけてきた奴がいた。
青い髪に青い瞳その特異的な容姿は彼の素性を肩書きよりも克明に伝えている。
彼の名前はアスール・シーニー。
当時俺と同じ10歳にして、その際を見込まれ数多くいる兄を退けブラウ帝国の11代目皇帝になった男だった。
彼が勝負しないか?と提案してきたので、その当時の俺は彼の安い挑発に乗り承諾した。
俺は木斧を持っているのに対し彼は素手であったが、俺の攻撃は彼に華麗に交わされ何度も投げ飛ばされた。
俺が数回投げ飛ばされた後、彼は手についた汚れを払うと、俺ではない明後日の方向にお辞儀をした。彼がお辞儀をした方を見るとグラスを持った大人が何人も立っており彼に賞賛の拍手を送っている。
どうやら俺は晩餐会を盛り上げるための道具として使われたらしい。




