凡人の顔
アスフィルの指示通りローブを着て門に向かう。
門を出て移動しながら彼に詳細を聞く。
「それで?その反乱分子はどのくらいの規模なんだ?」
「さぁな。もともとは数百人規模だったらしいんだが、徐々に数が増え続けているらしい」
「つまりどこからか増援が送られてきてるってことか?」
「それが謎なんだよな…反乱分子の構成員はほとんどが成人した男性で構成されていた。
おかしいんだよ。確認されている死体だけで、約五千人。それだけの数、国の人口の5%に相当する」
九百人で5%ということは、アスフィルが治めるゲール帝国の総人口は大体十万人か……
「総人口の5%?その段階なら特に問題ないんじゃないか?」
「いやただの5%じゃないんだ、陵魔。労働人口で言えば10%、さらに残党もいることを考える。それだけの人数が仕事を放棄すれば、国なんかすぐに崩れるよ」
「つまりアスフィル。お前は国から生まれた反乱分子じゃない、他の国から来た第三勢力が関わっているということか?」
「まぁ他の国だったらいいがな……」
「それはどういう意味だ?」
「…………」
それ以降アスフィルが口を開くことはなかった。
そのあとはただひたすら歩いた。
門から出て真っ直ぐに……
十五時間ほど歩くと、両脇に並んでる建物も少しずつまばらになってきた。
そのことからもだいぶ過疎状態の地域、国の外側に着いたらしい。
すると十数時間口を塞いでいたアスフィルは再び口を開く。
「今日はこの辺で泊まっていくか。ほらあそこにある赤い屋根の二階建ての建物。
あそこは一階は酒場だが2階は宿屋になっている」
彼が指さす方向には、過疎地域にしては大きな建造物が立っている。
彼はそのまま建物の方に近づいていくので俺も後をついていく。
そして建物のドアノブを握り扉を開けだが、そこは賑やかな酒場ではなかった。
店内は薄暗い上に埃っぽく、客も数人程度しかいない。
さらに歩みを進めるとその十数人の客が野次を飛ばしてくる。
「おいおいこんな時間にお子様がご入店だぜ。
今すぐお子様は帰んな。ここはカッコ良くて、渋くて強いおじさん達の店だ」
そう言って髭の生えた男が酒瓶を投げてくる。
俺は身構えず、それをそのまま頭で受ける。
「おいおいビビって一歩も動けねぇか?」
男達は更なる野次を飛ばしてくる。
割れて地面に散らばったガラス片を俺は踏み砕く。
自分の感情が昂ったのが弱さの呪いか、それとも自らが強くなったが故の傲慢か、俺は判別することができなかった。
なるほどちょうどいいこいつらで腕試しするのもな。
そう思い俺は一番近くにいた男の頭を掴み右側の壁にかかった鏡に投げつけようとした、その時俺は思わず手を止めてしまった。
それは壁に映る自分の顔が怒りに満ちた醜い顔であったからではない。
その顔は未成年と間違えられてもしょうがない童顔。
そう俺の顔はこの世界に来た2年前から全く変化していなかった。




