少女の選択
エリュテイアの言う通り私は食事を食べ終わると食器もそのままに目覚めた部屋に戻る。
食後に歯磨きをしたくなると言う現代人の性に身を悶えさせながらも、部屋の角にある椅子に座り机に頬付きをしながらただただ時が過ぎるのを待っていた。
数時間後ドアをノックする音に対して「どうぞー」と叫ぶと、複雑な表情を浮かべた陵魔が入ってくる。
彼を自分が座っていた椅子に腰掛けるように促すと自分はベットに腰掛け対面のまま、二人の間に沈黙が流れた。
そんな空気に耐えかねたように陵魔は口を開き説明を始めた。
この世界に来た理由や、クオンの正体、私を襲った敵のこと。
それらを語る彼のぎこちない喋り方は、先日の事件が私達の好感度を初期化したことを私に理解させた。
しかしそんな彼の態度が、懐かしさや愛おしさで鈍っていた私の思考を冷静に戻す。
「それでいつになったら元の世界に帰れるの?」
私のドスレートな質問に彼は驚いたような表情を浮かべるが、私はさらに言葉を連ねる。
「私達の間に嘘や縦前は要らない。だから正直に言う私は元の世界に帰りたい」
「確かにそうだよな……でも短くても一年くらいは鍛錬しないといけないかも知れない」
そんな彼の言葉に今度は私が驚きの表情を浮かべる。
「短くても一年?確かに私たちはまだ17だから少しはマシかもしれないけど、一年も経てばかなり世界から離れることになる。
そうなれば常識や言葉遣い……生活に必要なスキルが徐々に薄れていくでしょ。
忘れるのは一瞬でももう一度習得するのは……」
そういうと彼は俯き自分の手を見ながら語り出した。
「それがおかしいんだ。最近俺は食事や排泄睡眠などの人間の基本的欲求を行ってない」
そんな驚愕の事実を吐露した後、彼はさらに驚きの行動に出る。
机の上に置いてあったペンのようなもので自分の腕を刺したのだ。
「ちょっと何やってるの!」
私が慌てて近寄ろうとすると彼はそれを制し、机の上にあったインクを傷に垂らす。
インクは腕に落ちるまでに光の液体に変化して、彼の傷を癒す。
「さっきも説明した、クオンからもらったこの力。この力を得てから、既に少しずつ俺の日常は変わりはじめている。
だから本当にすまない。俺はこの力を完全に利用できる方法を習得できるまで、ここを去るつもりはない。
紡葉を犠牲にしても……」
そういう彼は拳を握りしめて震えてるように見える。
その言葉を最後に、彼は私の返答を聞かず、
「また明日来るよ」
と残して部屋を出ていった。
私も選ぶ時が来たのだろう。
自分の望みか愛する人の望み。どちらを優先するか、選ぶ時が。




