少女の夜明け
愛する人の望みと自らの望みどちらを選ぶか、心に問う。それほど無意味な行為があろうか。
人は自己陶酔の塊。何に置いても最後には自分のことを大事にする。
だからこそ、愛する人の望みは自分が誰かを愛したい。その人望みを叶えたいというのはあくまでも自分の望み。
そもそも天秤にすらかからない問い。
なら何に悩むのか……
それは私の心情に関係しているのだろう。
《嘘をつかない》という信条に……
つまりどちらかを選べば、どちらか嘘をつくことになる。
自己陶酔に酔う猿か、愛に溺れる女か……
いやすでに私は選んでいた。
彼に嘘をつかせたあの日に……
私が嘘をついたあの日に……
そんな私の覚悟とともに、歪な異世界には夜明けが訪れていた。
夜通し悩んでいた眠りまなこを擦りながら私は次の問いを考えていた。
この世界での私のすべきことについて。
この世界が陵魔に力を与え、その陵魔が私達の世界を救うのならば、私も何かこの世界の役に立てることはないか?
そう考えている途中部屋にノックの音が響く。
「朝ごはんよ」
返答もなしに入ってきた上にぶっきらぼうに言葉を放つエリュテイアに従い今朝も食堂に向かう。
対面のまま無言で朝食を食べる。
私は意を決して口を開いた。
「私がこの世界のためにできることはないかな?」
その言葉を聞くとエリュテイアはスプーンを置くと冷たく言い放った。
「ほんとくだらないわね。陵魔もあなたも相当生暖かい世界で生きてきたのね。
言っとくけど不安定なこの世界で、あなたのできることはないもないって言ったはずよ」
「確かに昨日も言われた。それでも……」
私がそう呟くと、彼女は机を強く叩いた。
「あなたが食べているそのスープとパンは、この国の人間の1週間分の給料より高いのよ。
それをそんなに不味そうな顔をして食べるあなたにがこの世界にできることはない」
そんな彼女の冷たい激昂は、なおも止まず言葉を連ねる。
「でも良いわ。そんなに何かしたいなら、ちょうどあなたにしかできないことがあるわ」
このタイムミングで提案?
「それは何?」
「あなたの顔は私そっくりじゃない。この世界から元の世界に戻る時、私があなたの代わりにその世界に行くわ」
「???」
「私は、今あなた達の世界にいるクオンに会いたいわけ。でもね、これはあなたたちのためでもある。
私がいけば誰が怪我しても癒すことができる。
まぁこれの提案を受け入れることは、二つの世界どちらでもあなたの存在価値を否定することになるけどね」
確かに……でも私は決めた。それが陵魔の力になるなら……
「良いよ、それで。あなたが代わりに戻れば良い」
「案外簡単に認めるのね。いいの?元の世界に戻れないかも知れないのに」
「戻れるよ。必ず陵魔が迎えにきてくれる。あなたがクオンを信じるように、私も信じてるから……」
「ふーん面白い。このことは直前で龍馬には黙っててね。心配かけたくないでしょ」
そう言って食堂から去っていくエリュテイアの口元には憐憫の表情が残っていた。




