少女の世界
何かから暗闇に突き落とされるようなそんな恐怖が私の目を覚まさせた。
周りを見渡すとそこは見たこともない部屋の中であり、寝る前の自分の行動を思い出す。
少し思い出しただけで痛む心、間違いなく陵魔にフラれたことは現実だと認識する。
その後その貼り付けた笑顔で家族の前で夕食を食べると、私はひとしきり涙を流し、一人で心細くなり同じ部活の先輩などにも電話したりもした。
しかし涙は止まることはなかった。
数時間後枯れて涙は止まり、いつも通り朝が来て学校に向かう。
そう、ただ私が堕ちただけ、だって世界は止まらないから……
そんな自嘲的な考えをしながら空を仰ぎ見るとそこには巨大な白いドラゴンがいた。
そして目を開けたらこの部屋か……
ベットから降りようと毛布を退けると、自らが服を着てないことに気づき慌てて体を隠す。
…………
部屋に誰もいないことに気づき少し恥ずかしさを覚えながらも、周りを見渡すと部屋の角にある机の上に衣類が数点置いてあることに気づいた。
これを着ろということなのだろうか?
服を手に取り広げてみると、それは赤と白を基調としたドレスだった。
裸で出歩くよりはいいだろうと思い、着てみようと試みるが、初めて見る構造の服で着るのに数十分かかってしまう。
ドアを開き外に出る。時々廊下を通る人間から身を隠しながら、歩き回る。
信じられないことだが、この建物内にいる人物は皆中世ヨーロッパのような服を着て腰に帯剣していた。
よく先程私が着たドレスもよくよく考えれば同じ系統のデザインだ。
すると突然後ろから突然話しかけられる。
「あなた……目が覚めたのね」
思わず振り向くとそこには私そっくりの顔つきの女性がいた。彼女は私のように驚くことはなくこちらを見つめてくる。
「その様子だとなぜここに連れてこられたかもわかってないようね」
彼女の眼力に思わず息を呑み、口から言葉が出てこない。
しかし私の喋りたいという思いに応じてか、腹の虫が代わりに鳴く。
それを聞いた彼女は少し口元に笑みを浮かべて、
「まぁいいわ。食事しながら説明するわ」
と言って私の手を引いた。
食堂らしき場所に連れてこられた私は指示されるまま座る。数分後私の前にパンとスープのようなものがコックのような人物によって配膳された。
パンを手で千切り食べようとするが、手に力がうまく入らない。仕方なくそのまま口に運び噛み切る。
口に入れたパンは死ぬほど硬く、それを口の中で柔らかくしようとスープを匙で掬い口に入れる。
スープもこれまた薄味でほぼ野菜の茹で汁と言っても過言ではない。
私が料理に口をつけたのを確認してから、彼女は説明を開始した。
「あなたは元いた世界で敵にやられて衰弱していたところを助けられ治療を受けるためにこの世界に連れてこられたの」
あまりに意味不明な説明に思わずスープを掬う匙を止める。
元いた世界?敵?治療?なんの話をしてるんだ。
私の記憶が途切れる寸前に襲われたあの白いドラゴン。あれを敵だと仮定するとして、治療?いやそれ以前に……
「この世界に私を連れてきた人は誰なんですか?」
「陵魔よ。関谷陵魔。あいつがあんたをここに連れて行きた分け」
陵魔が?私をこの世界に……?
心に刺さる棘を奥底に追いやり彼の顔を思い出すが彼がそんな異質な存在、いやあえていうならば異世界人だとは感じたことがない。
ならばなぜ?
そこで私は、彼の幼馴染で転入生と言われていた「クオン」という存在を思い出す。今回の原因は間違いなく彼にあると言っていいだろう。
いやまずはこの目の前にいる私そっくりの女性と協力関係を築くことが重要だ。
「私の名前は、大鷲紡葉って言います」
そう言って右手を差し出すとそれを彼女は握り、
「私は、エリュテイア・フォン・ルージュよろしく」
「それでエリュテイアさん。私はこれからどうしたらいいんでしょうか?」
「あんたにできることはないもないわ……食べ終わったら部屋に戻りなさい。後で陵魔も部屋に見舞いに行かせるわ」
そういうと彼女はそのまま立ち去っていった。




