Girl’s Hero
彼の長剣が私の胸に着いたブローチを砕きながら突き進んでくる。
私は死を確信し、目を瞑る。
死後の世界はあるのだろうか?
もしあるのなら天国に行きたいな…
あまり善行をしてきたわけじゃないけど…
生まれ変われるならもっと健全な愛で陵魔を満たそう。
でも……
——どんなに歪んだいたとしてもこれが最後に愛と自覚できてよかった。
私の脳裏に今までの走馬灯が走る……
…
……
………
いや長いな。
恐る恐る目を開けると鋒は数ミリ程度刺さった状態で停止している。
そしてその剣身を素手で掴むでいる存在。
何度も絶妙なタイミングで登場する、英雄だな……と思いその腕の持ち主を辿っていく。
その目、その髪、その背中、私を救ってくれたのは、幾つもの世界を救ってきた英雄じゃない。
私の人生を何度も救ってきた、私だけの英雄だった。
金髪の男は、剣を力尽くで引くと満面の笑みを浮かべ陵魔を賞賛する。
「やっぱり凄いよ。
君がどれだけの時間異世界で鍛錬してきたのかはわからないけど、そこまでたどり着ければあと少しだ。
誰かのために戦うなんて君らしくない。
だからそこの女を殺せば戻れるよ、過去の最高の君に」
陵魔は、背中の長剣に手をかける。
よく見れば陵魔の服装、いや装備は明らかに異世界のものだ。
濃紺の鎧に白いマントを羽織っており、チェストプレートの真ん中には黄金に輝く紋章があしらわれている。
そして何より目を引くのは背中の長剣。
とにかく長くその前兆は2メートル近い。
しかし最も特徴てきなのは、柄と剣身が1:1の比率であるところだ。
陵魔が剣を構える姿は剣士というより槍使いに見える。
剣を構えながら陵魔は男に問いかける。
「なぁ。もういいんじゃないんか?
その姿じゃなくて」
「やっぱり気付いてたかー」
男が顔に手をかざすと、肩まではありそうな長髪はみるみる短くなり、顔つきも西洋人ようなものから東洋人のものに変わっている。
その姿を見て陵魔は、
「気づくも何もないだろ。
そもそもあの魔法陣を俺に渡したのはお前だろ?士」
陵魔の圧のこもった声に私は驚き尻餅をついてしまう。
すると地面に落下する直前で誰かに受け止められる。
顔を上げ顔を確認すると、それは陵魔とともに異世界に飛んだ大鷲紡葉だった。
彼女が私の胸の傷に手を当てると傷口が次々と治癒していく。
この世界の人間が治癒術を使ったということに驚いている私を置いてけぼりにして、陵魔と士は話を続ける。
「そうだよ。あれは四年前に家の蔵で見つけた。
まぁ一度俺が召喚に使っちゃったから、もう一度使えるように魔力を込めて貰ったんだよ」
「楽しかったか?
その力を使って日常生活を無双することが?」
「ははは。面白くない質問するなぁ?
楽しいわけないでしょ。
陵魔の肩の荷を減らすための力だっただから。
でもまず君が過去を取り戻すことが先かな」
陵魔は俯きつつ、
「なるほど士、お前も俺の被害者か…」
といい放つと士に切り掛かっていった。




