Girl’s Escape
彼の腕から放たれる無数の剣撃。
私は逃げようとしたが、焦っているため躓き転んでしまう。
彼はすかさず下方に突きを放ってくる。
それを避けるために、そのまま横に転がる。
正直その初速からして間違いなく回避に失敗したと思ったのだが、体は私の想像以上のスピードで横に転がり、回避に成功した。
そこで私は自分がリコからもらった装備を着ていることを思い出す。
彼は剣を握ったまま驚き固まっている。
私は今がチャンスだと思い立ち上がり逃走すを始める。
それに気づき彼も剣を鞘にしまい追いかけてくる。
ひたすら全力で走り、より入り組んでそうな道を選んで走り続ける。
本来なら女子高校生の全国平均より下回る走力と体力しか持たない私が逃げ切れるはずがない。
それどころかこんなに長時間走り続けられるのは間違いなくこの装備のおかげだろう。
後ろを振り返れば終わる。
そんな漠然とした恐怖から振り返ることもできず、ただ耳を済ませ自分を追う足音を聞く。
タッタッタッという軽快な足音と、ジャッジャッという金属が擦れる音が聞こえる。
数分間たち少しずつ自分の呼気が荒くなっていることに気付く。
当然だ。装備はあくまでも身体能力を上昇できるだけで、無限に体力を生み出すわけではない。
徐々に大きくなる自分の呼吸音と彼の足音。
その二音だけが響くなか、遠くから低く轟くようなエンジン音が聞こえる。
そのエンジン音は次第に大きくなっていく。
二人の音を打ち消すほど大きくなったと思った瞬間、エンジン音は停止し、代わりに耳元で少女の声が響いた。
「後ろに乗って!」
酸素不足で霞む視界に映ったのは、近未来なデザインのバイクに乗るリコの姿だった。
彼女は私に無理やりヘルメットをかぶせると、一言
「つかまってて」
と残し、私が後部座席に乗ったのを確認すると、
スロットルをひねる。
急発進により発生した慣性に驚き、私は彼女の体にしがみつく。
少しずつ呼吸が整ってきた私は彼女に尋ねる。
「何でここに?これに乗って?今?」
私の支離滅裂質問に対し彼女は冷静に
「あなたのつけてる装備は常にあなたの心拍数や呼吸を記録して家の機械に送信してるの。
以上な数値が観測されたから、試しに作ったこの車両で迎えにきたの」
なるほど確かにそれなら納得できる……かな?
「ひとまずこのまま走り続けて出来るだけ時間を稼ごうそうすればクオン君が助けに来てくれるから」
そう言った矢先私たちの前方50メートル先に男が立っているのが見える。
カフェにいて、先日家まで来た白髪碧眼のイケメンだ。
私は焦りリコに
「早く曲がって」
と指示する。
しかし気づくとイケメンは私の真横に立っていて、バイクと並走してくる。
リコもそれに気づき何度も車体を揺らすがイケメンは動ずることなくついてくる。
突如がイケメンが消えたと思うと彼はバイクの目の前に立っていた。
私たちはまわりを見渡すがどうやら一本道に入ってしまったようで、どこかに曲がることはできない。
すると後ろでバタンと扉を閉める音が聞こえ横目で確認するとそこにはタクシーを使ってここまで来たらしき金髪の男が立っていた。
曲がることもUターンすることもできない私たちに残された選択肢は一つ。
「リコそのまま真っ直ぐ進んで轢いて…」
後ろ金髪男はともかく前のイケメンは間違いなく異世界人だ最悪死んでも罪には問われないだろう。
リコは、さらにスピードを上げる。
しかし車体は彼に接触した瞬間時が止まったように停止、私たちは慣性によりそのまま空中に放り出される。
落下の衝撃は装備によって和らげられたが、かなりの激痛が全身に走る。
そんな中でもリコは、冷静で私の手を引き走って逃げようとした。
その時イケメンが口を開き
「待ってよ。"これ"君の世界のものだろ?」
そういい彼は、フルフェイスヘルメットのようなものを指に引っ掛けクルクルと回している。
私にはそれが何かわからなかったが、リコには理解できたようで、先ほどまでの冷静な顔とは打って変わって鬼のような形相になり、叫ぶ
「—それを…どこで手にれたのっッ」
怒れる彼女は後先考えず素手で彼に殴りかかろうとする。
そんなリコの拳をイケメンは華麗に避けると、カウンターでみぞおちに拳を入れ彼女を気絶させた。
彼は気をしなったリコをまるでモノのように雑に片手で持ち、
「僕が用があるのはこの子だけだから。
じゃあーね」
そう言って彼はその場をさろうとする。
私が追いかけようとすると、
「残念だけど、俺は君に用があるから」
と言って、後ろから走ってきた金髪の男は、私の胸に長剣を突き刺した。




