Girl’s Memory 2
陵魔が中学生になってからは、私たちは会う回数が減っていった。
彼が中学生になった時、私は小学六年生だったため、登下校も一緒ではなくなり単純に遭遇機会が減っていたのだ。
遭遇するのはたまたま帰宅時間が一致した時だけ。
でも何故かその後ろ姿を見ると声を掛けることが躊躇われた。
鮮烈にも眩かった彼の背中は、何かによって翳り(かげり)鈍く光っていた。
一年経ち私も彼と同じ中学に入ることになった。
新しい環境への不安と彼とまた共に過ごす時間が増えることへの期待。そんな二つの感情に揺られていた。
登校初日私が玄関の前で待っていると、彼は少し複雑そうな顔をしたがどうやら意図を理解したようで一言。
「いくぞ」
と言ってくれた。数ヶ月ぶりに彼から話しかけてくれた喜びは今でも覚えている。
私は、中学校という環境で数ヶ月過ごし何故彼の背中が翳ったのか理解した。
学校というシステムは、社会を学ぶためにある。
規律と見本を示す上司=先生
同じ部署で一つの目標を目指す存在=同僚
など様々な要因を、社会の縮図=学校を通して学ぶ。
そしてその性質は、小学校、中学校、高校と、ステージが上がるごとに変わっていく。
恐らく陵魔の孤高の生き方は、仲間との協調や、年上への敬意などを重視する中学という環境では、非常に異端な存在だろう。
個人の能力がどんなに優れていようと、他を軽視しがちな陵魔の生き方は、周りの生徒どころか、先生からも疎まれていたのだろう。
それは恐らく家庭でも…
彼の母親はとても優しい人で、優しさを具現化したような人だった。
世界から孤立した存在となった、陵魔。
自分の生き方を否定してくる世界全体に追い込まれた陵魔。
そして陵魔の人生の分水嶺ともいえる事件が起きる。
ある日の夜、私は部屋で宿題をしていると、何やら外から怒号のようなものが聞こえる。
窓を開け外を見渡すが、道路にそれらしき姿は見えない。そしてその声が隣の家—陵魔の家から聞こえていることに気づく。
愛しい人の悲鳴にも似た怒号。喧嘩の相手は、陵魔の母だろうか?内容までは聞き取れない。
数十分後
ドタタッ
という大きな衝撃音によって二人の声は止んだ。
静寂が訪れて数分後、それを破ったのは救急車のサイレンの音だった。
救急車に運び込まれる陵魔の母。そしてそこに同乗するのは、陵魔の父であり、陵魔の姿は見えない。
それから2週間毎朝、彼の玄関の前で待っていたが、彼が現れることはなかった。
そしてその次の日、陵魔の母の葬式が開かれ、私も参列した。
そして式場で彼とすれ違った時、私は察した。
彼の母親を殺めたのは、彼自身だと…
なぜなら彼の光は完全に消え、背中は完全に影に覆われてたからだ。
もしそこで誰かが彼を抱きしめて許しを与えられていたら?
私にはできない。先ほどと同じそんな勇気はなかった。
その私の弱さは、陵魔に弱さへの呪いをかけ、少女を傷つけることになる。
我ながら全く成長してe———
「話聞いてた?」
私の回想を遮ったのは、少女だった。
「ごめん聞いて聞いてた」
そしてクオンが一言。
「じゃあOKってことだな。紅衣奈。彼女にこの街を案内してやってくれ!」
………………は?




