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Girl’s Regret

 人間同士での争いが起きた原因は、人類が耕作に成功し食糧を貯蔵できるようになり、貧富の差が生まれたこととする説がある。


 人間という動物は、信じられなく欲深い。

 永遠に満たされることのない強欲と他を傷つけるための剣を併せ持ち、互いに血を流し続ける。


 何度も繰り返されてきた負の歴史。それを振り返るたび多くの人々が、同じ過ちを繰り返すまいと心に誓う。


 しかし人間は必ずその誓いを破る。


 どんな対価を要求されようとも人は止まらない、止まれない。


 先に対価を支払えば、もう後戻りできず。


 後に対価を支払うことにすれば、犠牲を軽視する。


 支払いながら争えば、戦は長期化し、さらなる被害を生む。


 私は歴史の教科書をめくる度、自らはこの愚かな人類とは違うと信じ込んできた。


 しかし目の前に傷だらけの少女が現れた時、私は自らも愚かな人類の1人だと悟った。


 ——————————————————


 私は、生きる目的とも言える《彼=関谷陵魔》が異世界へと旅立った後、数十分間放心状態で天井を眺めていた。


 ただただ涙が溢れてくる。


 愛する人の苦悩をともに背負えない自分の弱さ。


 愛する人を自らの望む形に矯正しようという欲深さ。


 望むものを与えると言われ、自らの強さを望まなかった。


 天井を見つめ微動だにしない私をリビングに置き去りにし、英雄クオンは欠伸をしながら



「もう寝るわー」と言って自らの部屋に向かった。


 彼が部屋に戻ったのを確認すると、私は二階に上がり陵魔の部屋に入る。


 彼の机の引き出しをかたっぱしから開ける。すると二段目の引き出しに目的のものが入ってることに気づく。


 そうそれはクオンを召喚した魔法陣だ。


 もしこれでもう一度望みを叶えられるなら、今度こそ力が欲しい。


 そんな風な短絡的な考えで、このパンドラの箱を再び開けようとしている。


 やり方は、クオンの配信で見ていた。ただ魔法陣に血を垂らすだけ…


 机の上のペンだなからカッターを取ると言っても、それを手首に当てがう。


 ただ押し付けて引くだけ。それだけなのに。私は、怖くて震えて手に力を込められない。


 自らの手から血が流れるそれを想像しただけで青ざめ気分が悪くなり、カッターを机の上に放り投げる。


 自らの弱さを呪った。愛とか勇気とかそんなもので力を出せるなら、私はとうに自ら力を手に入れていただろう。


 ただ何も起きない、起こせない人間が、誰もいない部屋にただ1人。惨めさに押しつぶされながらすすり泣く。


 私は、魔法陣を引き出しにしまおうと手を伸ばした。すると先程放り投げたカッターの刃の部分に指先が刺さり。出血する。


 鋭い痛みに、思わず手を引き戻と流れる血は机に飛び散り魔法陣に付着する。


 魔法陣は光り、机は砕けそこに何かが召喚された。


 近づいて確認すると、それは全身血だらけの少女だった。


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