表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
30/72

凡人のdeparture

 紅衣奈の命名タイムによってそれてしまった流れを本題に戻す。


「つまりお前は、あいつらを倒せるんだな?」


「あぁ。倒すしかない。それが、俺がこの世界に流れ着いた、意味なんだからな」


 確かにクオンの異世界転移の理由は正にそこにあるのだろうし、今まで幾度となく葬ってきたのだ。今回も必ず成し遂げるだろう。


 しかし何かが俺の心に突っかかる。


 クオンはそれを見越したように言葉を重ねた。


「俺は、この世界に留まり必ず奴らを倒すだろう。だがそれで良いのか?お前は、全てを手に入れる力が欲しいんじゃないのか?そして既に一つ取りこぼした。」


 クオンが言っている《一つ》とは、恐らく紡葉のことだろう。倉庫から連れ帰りひとまず家まで連れてきたが、目を覚ます様子はない。


 彼女の家族のことを考えれば、すぐにでも警察などに連れていくべきだが、この昏睡状態が現代医療で治るかどうか定かでないため、連れてきたのだ。


「お前なら治せるのか?」


 クオンの回答は意外なものだった。


「無理だな……倉庫を吹き飛ばしたあの技は、防御や回復、が一定期間できなくなるという欠点がある。」


 クオンは、右腕についた赤い痣を指差してさらに説明を続ける。


「この痣が消えるまで、約1週間。俺は、この子を治療することができない。」


 絶望的な状況だ。

 しかしわざわざ丁寧に説明したということは…


「何か方法があるんだな」


 クオンは少し微笑むと、その計画を説明し出した。


「この世界よりも内側の世界なら、この娘を治療する方法はたくさんある。」


 俺が反射的思考で、


「つまり、お前が一度ここより内側の世界に転移して、治療してくるってことか?」


 と返答すると、クオンは違うよと首を振る。


「そもそも俺は、この痣のせいで空間転移とかは出来ないんだ。逃げてるのと同じだからな。いくのは、リョーマお前だよ。」


 驚いている俺を尻目にクオンは説明を続けようと何かを取り出した。取り出されたそれは、紛れもなく俺が倉庫で使っていた銃の《Noah》であったが血で赤黒く汚れている。


「この銃は、確かに強い。けどこの銃だけじゃ、すべてを手に入れるには力が足りない。」


「つまり、この銃の欠点である近距離戦闘の術を内側の世界で学んで来いということなのか?」


 今度の推測は合っていたらしく。クオンは満面の笑みを浮かべる。


「そうだ。俺の知っている世界で、魔法や銃などがそこまで普及してなくて、この世界の医療を超越する治療術を持つ世界がある。まぁ俺が救った頃の話だから今はどうかわからないがそんなには変化していないと思うぞ」


 クオンの具体的な説明を聞いて一つの疑問が思い浮かぶ。


「どういうことだ?別にお前が救う前に転移すれば良いんじゃないのか?」


 するとクオンは先ほどのノートを取ると、円柱形の図を指して説明を始めた。


挿絵(By みてみん)


「世界は、時間に沿って進んでいく。

 管から違う管へ移動するのが転移なんだけどな、転移を行うと、もともといた世界と新たにたどり着いた世界両方に、竹の節のようなものができる。

 それが作られるとそれより前の時間軸のその世界には転移できない。」


 確かに自由に時間軸も跳べるなら全てが自分に都合のように改変することも可能か…


 実際には、バタフライエフェクトうまくいかないとしても、理論的それができないからこそ今の世界が成り立っているのか。


「わかった。ひとまずその世界に飛ぶよ。」


 我ながら短絡的に答えを決め過ぎかと思うが、既にもう逃げられないと脳が直感している。


 すると紅衣奈が焦ったように、


「やめときなよ。危ないって、良いじゃん彼女は病院に預けよう?もしかしたら治るかもしれないって。それにほら1週間待ってクオンが直せば良いよ」


 俺は紅衣奈の心配を突き放すように強い口調で、


「分からないのか?クオンは、元々治す気がないだろ。これはあくまでも新しい力を手に入れるための口実。俺にとっても、クオンにとってもな」


 すると紅衣奈は、「じゃあ私も行く」と駄々をこね始める。


 俺は紅衣奈を嗜めようと、強い言葉をぶつけようとしたが、先に口を開いたのはクオンだった。


「わかるだろ?君が言っても役に立たないどころか足手まといだ。」


 すると紅衣奈は涙目になり俯いた。


 そんな紅衣奈をリビングに放置し、クオンに言われるがままに渡された服や鎧を着た。


 最後にクオンは金色に光る紋章を俺に渡し、こう言った。


「恐らく俺が訪れてからそんなに時代は経ってない。これはその世界での英雄の証これを見せれば大抵の無理を通るだろ。」


 その紋章をポケットに突っ込み、またもやお姫様抱っこの要領で紡葉を持ち上げる。


 俺は謎の光に包まれ異世界へ旅立った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ