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凡人の遺誡  □

 《大鷲紡葉は、卵の中に閉じ込められている。》


 それが俺の導き出した推論だ。


 なぜそのように推測し得たのか。


 まず一つ目に、割れた卵から出てきた男性が、口周りの髭は丁寧に整えられ、服装も明らかに上質なものを着ていたこと。


 卵に入れられている数十人の人は、恐らく無作為に選ばれた人間だろう。もし敵側がバレないように気を遣えば、ホームレスや、来日して違法で働く不法就労者などを攫っただろう。


 そして二つ目、これが最も重要な点だが、クオンが紅衣奈と協力してこの場所を見つけたということ。

 恐らくクオンは、この世界に転移してきた時点で、ほぼ最強の存在であり、図書館などで、調べてこの世界の常識もほとんど学んだ。

 そんな彼が、紅衣奈に頼った部分、それはリアルタイムで起きている事象を知ることができるツール「SNS」だ。しかも一対多の形式のもの。


 普通行方不明者の情報はすぐニュースなどになることはない。

 犯人を刺激して事態が悪化する可能性もあるし、そもそも失踪した原因が家庭内暴力などの場合があるため、明確な事件性がなければ警察もなかなか動けない。


 だからこそのSNS。


 敵が一切の注意を払うことなく人を攫えば、目撃者はたくさん生まれるだろう。



 そして野次馬のようなスマホカメラでの盗撮。その映像を効率よく集めるために紅衣奈を利用した。


 そしてその連れ去られる映像を使用し、モザイクアプローチを行うことでこの場所を導き出した。


 これは敵がドラゴンであったことも幸いしたのだろう。空を飛べるドラゴンは目的地まで直線的に移動することができるからだ。


 そして偶然にも行方不明になったものが俺の知り合いにも1人…


 俺はドラゴンが消滅してもなお残り続ける卵のもとへ歩いた。


 数十個ある卵のからは全て半透明で、目を凝らしよく見ると中にいる人物の顔が見える。

 右はじから確認すること7個目、そこにはよく知った同級生の顔が、あった。


 俺は、銃のグリップで何度も卵を叩き殻を割った。そしてなんとか砕いた殻から彼女:紡葉を取り出した。


 彼女の服は卵内の粘液が染み込みヌルヌルとし、異様な匂いを放っていた。しかしおれはそんなことを気にせず無意識に彼女を抱きしめていた。


 もしおれがあの時、彼女の告白に対してYes といえばこんなことは起こらなかったのでは?


 嘘でも彼女に「愛してる」と囁き数秒間抱きしめていれば、タイミングがずれて攫われなかったかもしれない。


 どうしようもなく自分が憎い。


 友達以上恋人未満という今の関係に固執し、俺は、yes/no答えを出さなかった。

 それは何故か?


 それは、俺が俺のことが大好きだからだろう。少し考えれば勇気を出して告白してきた人間に対して、自分の利益を優先しての無回答。 


 狂ってる…


 狂おしいほど、憎くて愛おしい。


 痛みが引いた明瞭とした思考で到達した答えは、自らの内から湧き出たものであることを認識させた。


 微かに聞こえる紡葉の呼吸を感じ、彼女を治癒するために、クオンを呼ぼうと彼女を慎重に床に寝かせ立ち上がると同時に、


 パチパチパチパチ


 という拍手の音が倉庫に響き渡る。


 振り返ると後ろに金髪長髪の男が立っていた挿絵(By みてみん)

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