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凡人の蛮勇2

頭部をを失った《白竜》は、のたうちまわり、苦しむ様子を見せたが、しばらくすると先程の暴れようが嘘のように落ち着いた様子で、翼を大きく広げた。


するとこのドラゴンの翼が自らが想像していた構造とは違うことに気づいた。


基本的な構造は、コウモリと同じ指骨の間に飛膜がある構造なのだが、第五指骨が異様に長く触手のように伸びている。


その触手の先端を目で追うと、《白竜》の足元のあたりに伸びる。


そしてその足元には、全長2メートルほどの卵型の半透明の物体が複数個あることに気づく。


その触手が触れた瞬間、卵は強く発光しその光は触手を通じて《白竜》の本体に流れてゆく。


微かに体全体が発光したかと思うと、頭部がみるみる再生している。


倒すためには、卵を破壊するのか触手を断ち切るのか悩んでいた時、先程の触手に触れた卵がひび割れ中から何かが出てきた。


卵内の粘液によりテラテラと光るその物体は、人間だった。


黒髪の髭が生えた中年の男性。卵の影響なのだろうか肌は苔色に変化し、ぴくりとも動かない。


脈や呼吸を確認したわけではないが間違いなく俺は、彼が死んでいることを理解した。


なぜだろうか、死を目撃しているのに俺の体は何も動かない。


恐怖に震えて、嘔吐くわけでもなければ、怒りに駆られ我を失っているわけでもない。


思考は、いたって冷静で脳内にはただ痛みが騒いでいるだけ。


ただ冷たく凍りついたような感覚になり、鋭敏になった触覚は風の流れを感じている。


何か嫌な予感がする…


人間をエネルギー源とする、敵の存在。



なぜクオンは、()()()()()()()()してここを敵地と割り出したのか。


そして行方不明になった紡葉。


……


俺の思考が最悪の結論に到達しかけいることを尻目に、《白竜》の触手はまた一つ足下の卵に触れる。


するとそこから取ったエネルギーを今度は本体に吸収せず、空気中に放出している。


ダイヤモンドダストのような幻想的な光景が広がったと思った刹那、その光塵は人型に凝集し、そこに一人の白い甲冑を着た騎士を召喚した。


さらに、2人、3人と続々と生み出され10人ぐらいになった騎士は剣を構え俺の方に向かってくる。


そこで俺はショッピングモールに現れた騎士もこの方法で生み出されたのだと気づく。


ここまで来てやっと現実に引き戻されたが、状況は最悪で、単発かつリチャージが必要な銃しか持っていない俺は、瞬時に「どうすれば敵を倒せるか?」について思考を切り替えた。


しかしそんな時、俺の視界内で紅い閃光が煌めく。


10人の騎士の姿は瞬時に消え、その代わりに倉庫外で剣撃の音が響いた。


雑兵(ザコ)は俺に任せろ!」というクオンからのメッセージなのだろうか?


それともあくまでこの動画配信(ショータイム)の邪魔者を場外に押し出した(フレームアウト)だけなのだろうか。


理由はなんであり俺は《白竜》に集中できる。


倒すには、頭を吹き飛ばすのではなく、触手の根本である第五指骨と下腹部を同時に吹き飛ばす。


計画が済んだらあとは、動くだけ。


先刻と同じように走り放つ。


下腹部を失った《白竜》は、空気中に解けるように白い光となって消滅した。


今消滅した巨大な生命などどうでもいいと思うほど、俺は卵の中身の推測に確信を得ていた。



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