はしゃぐ
一番最初に扉を開こうとするチャレンジャーはいなく、いないならいないで扉は開かず、ということになるならば誰かが妥協して気分的に重いであろう扉を開かなくてはならない。
「渉! 開けよっ! 」
理雨流が澄み切った、声に色があるならば絶対半透明ブルーであろうという美声で俺に扉を開けようとお誘いをくれる。勿論断る理由なんかない。
「うん!」
既に扉のノブに手をかけている理雨流のもとに俺は歩み寄る。
『視線が……視線が痛い……背中になにか突き刺さってくる。頼むからそんなに見ないでくれ』
俺の顔にはきっと半笑いの状態の仮面が張り付いているだろう。
理雨流はそんな俺とは違い注目される状況に慣れているのか太陽のような笑顔のままだ。
「そんじゃ開けるよ。理雨流? 」
「それじゃ1、2、3でいこ! 」
『1、2、3か……案外というか、可愛らしいなぁ』
普通だったらここでブーイングがきそうなものだが、流石エリート集団というかそんなものくる気配すらない。ただ冷たい視線が背後から注がれているのが気になる。
「……1、2、3、いくよ!」
俺はドアノブを握り気合いを入れて扉を押し開く。
ここまで気合いを入れる必要があるのか? とお思いになられるかもしれないが、この扉シンプルな見た目の割に相当重量があり、それに対応して大きさも結構あり、どれくらいかというと縦2m横3mくらいもあるのだ。
ギギィーー
扉の軋み開く音が人のたむろう廊下に響く。見た目からは分からなかったが、音からするに年代物の扉なのだろう。
『おぉ! 』
眼前に広がる光景は想像していたそれを良い意味で裏切ってくれた。
まず真っ先に目に飛び込んできたのは……はしゃぐ理雨流……ではなく、いやそうなんだけどそうじゃないってことで、真っ先に飛び込んできたのは……真っ黒な大きく若干の硬さをもっていそうなソファーだ。部屋の手前に堂々と陣取り、かつ傲慢さをも放っている気がする。
ソファーに対応するふうにこれまた大きい暖炉、を囲うようにしてコの字型に置かれてあるその尊大なソファーには裕に二十人は座れそうだ。だったら尊大ではない気もするのだが……
次に目に映ったものは……ニコニコ微笑む紫苑……ではなく、いやそうなんだけどそうじゃないってことで、次に目に映ったものは、ソファーの奥、具体的にいえば10m程奥にある大きな階段。
二階に続いているらしい階段は今さっき入って来た扉とは違い、いろんなレリーフなどが彫ってあり高級感というか、古めかしい中に気品がみえる感じだ。といっても素人目だが……
部屋の全体的な色合いとしては白を基調とした感じで所々に黒の細い線のアクセントが施されている。そのアクセントに挟まれるようにしてドアノブ付きの扉が結構な数、伺える。
今見えるのは一階部分だけだが、きっと二階部分も同じ造りだろう。
『下手をすれば俺の実家よりも広そうだ! 』
何だかテンションの上がる俺であった。




