塔
「おめでとう。君達は選ばれた……より選りのエリート達だ」
壇上にあがった肌色の軍服をきちりと着た先生だろうか? ……ともかく、その人は壇上に上がって早々マイクも使わず大声でそう怒鳴った。
『うわっ! うるさいなぁ〜』
周りはどのような反応をしているのだろうと軽く首を回して辺りの人を目に映した。
眼鏡は少し緊張しているようなのか顔が強張っているように見える。理雨流はというとさっき俺に見せていたような笑顔とは対照的な無表情を軍服に向けていた。
偽名っ子も確認しようとしたが眼鏡などが邪魔になり見えなかった。
『明はどうせ、寝てんだろうな』
俺がキョロキョロし終わってから数秒後、軍服がさらに言葉を重ねかける。
「早速だがこれから君達は長い付き合いになるであろう君達の寝床となる所に行ってもらう」
『早速すぎないっ! 』
俺の驚きなど微塵も知らない軍服は言葉を繋ぐ。
「A、B列に座っているものは、第一塔に、C、D列に座っているものは第二塔に、EF列に座っているものは第三塔に、GH列に座っているものは第四塔に、IJ列に座っているものは第五塔に……それぞれ先生方の指示に従い静かに行動するように、以上だ」
『明はE列だったから俺とは違う塔か……つーか入学式終わり? 長ったらしくなくて嬉しいような悲しいような……』
俺が板挟みの感情について軽く考えていると、隣に座っていた理雨流が立ち上がり
「いこうっ!」
と笑いかけてきてくれたので俺は
「そうだね」
といいすでに歩き初めていた、理雨流について行った。
「彼女は〜彼女さんですかー? 」
理雨流との距離2mにして不意に聞いたことのある独特のリズムが俺の鼓膜を揺らした。
俺は音源であると思われる背後に振り返かえる。
「ラゥ! 」
俺の予想は見事的中。
「彼女さんですかー? 」
「え? あー……理雨流のこと? いやいや彼女ではないよ」
「そうでしたかー、かんがはずれましたー。ざんねんですー」
ラゥは少し悲しそうな表情をする。
「渉っ! その娘だれー? 」
俺達の声に気付いたのだろう。理雨流が清々しい笑顔で俺を紅潮させる。
「うんっ……あっこの娘は……」
『何て言えばいいんだ? 名前なんて偽名しか知らないし……』
「わたしはー月岡紫苑といいますー」
「えっ!! それが本名なの!? 」
「へぇー紫苑ちゃんかー……よろしくね! 」
理雨流はそういい左手を紫苑に差し出した。紫苑は一瞬右手をだそうとしてやめ、左手で理雨流の手を握っていた。
『理雨流は左利きなのかな? 』
俺はそんなことを思う。
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