集合
「ん? んにゃやああああ!!」
耳をつんざく悲鳴のような叫び声が俺の室内に響いたのかもしれない。もしくは夢の中でのことなのかもしれない。しかし目が覚めてしまった。
『寝みぃ』
そう思いながら錆びついたシャッターの如く開かない瞼を無理やりにこじ開け、飛び込んできた光景に疑問符の花を咲かせた。
「わ、わ、わたる!? なんかいるよ! なんか!」
理雨流が尻もちをついていた。そりゃあもうものの見事に腰が抜けていた。その顔色はブルーに染まっており、驚いているのか怖がっているのか分からない様な表情も組み込まれている。
「理雨流? なにしてんの?」
言った後、視界の隅に映りこむ物体に薄く驚いたあと俺は現状を恐らく全て理解した。
「なんか、なんか! くろい、くろいかたまりが……」
未だドア付近で固まっている理雨流は太陽以上に眩しく見えるお顔の、月以上に神秘的な雰囲気を持つその瞳を俺の方へ向け、気づいてくれたようだ。俺の髪が以前と比べ月とすっぽん並に違うということに(この喩えはわざとの間違いだ)。
「あれ、あれれ? 渉、もしかしてそれって髪の毛?」
「そうだよ、俺の髪だよ」
『そういや掃除しなかったんだよな』
今更ながらに俺、なんで掃除しなかったんだ、と思うようになった。ほんと過去の俺は暗愚的判断しかしない、一発殴ってやりたい。
「……セミロングも似合ってるよ」
苦し紛れの思いつきみたいな言い方だ。恐らくは他に言うべき言葉が皆無、なかったんだろう。なんかごめんね、理雨流。
「ところで、なんで理雨流がここにいるの?」
まだフル可動していない俺の頭には、今頃になってそういう重要なことが浮かんでくる。
「起こしに来たんだよ、寝ぼすけ君をね」
ああ、そりゃあそりゃあすんごく短絡的にレッテル貼ってくれたもんだな。まあ合ってるか否かで言えば前者だが。
「だから、そのフカフカからさっさと降りて」
言われたとおり名残惜しい温もりのあるフカフカ(ベット)からスローモーションのようなグダグダ動作で抜け出した俺は大きく伸びをする。
「さっき、放送? かな。なんかしらないけど、とりあえず集合かかったから」
そう言った理雨流は、眠気という名の毒素がまだ完全に抜けきっていない俺の腕を引きちぎれんばかりに握り引っ張ると、俺の部屋から俺を力任せに引きずりだした。




