誰のモノ?
そっと理雨流に近づいた俺は理雨流と紫苑のひそひそ話に割り込むように声を上げた。
「理雨流、丹澤に一言頼みたい」
「……一言って何かな?」
「んー、なんか丹澤が喜びそうな……」
「嫌! 絶対嫌!」
俺の素晴らしき思いつきによる提案は理雨流の全否定により音を立てて崩れ去っていった。まぁ彼女がこのことを承諾、協力してくれるとは微塵ほどにしか思っていなかったのだが。そんな風に思っていると横目に見えていた紫苑が俺の視界から突然消えた。その消えた方を見ると……
「こーらー、もういいでーしょうー、いいかげんにーしてくださいー!」
光華と丹澤に近づいていた紫苑はなにやら解せないことを言ってのけていた。
『さっきは【あれ】で人が成長するから止めない、とか言ってなかったか?』
自分の矛盾について自覚していないのか紫苑はいかにも自分は立派なのだ、という表情をしてしまっている。少しだけ哀れに思えてしまった。
「……んんー……紫苑ちゃんがそこまで言うなら、なぁ……」
今にもこの空間がひび割れてしまいそうなほど張りつめていた空気がその言葉によって多少弾力を取り戻した気がした。
「お前が、謝るなら、私は退いてやってもいい」
依然光華は自らのプライドの高さをアピールするかのように、傲慢にも思える態度をとっている。ちなみに俺はそういうタイプも好みだ。
「なんやとー……われぇー」
怒りのせいかその声は小刻みに震えていた。……何にしてもこれでは収集がつかないじゃないか。
「はぁー……分かった、妥協するわ、渉」
「そう! そうか、ふぅー良かった」
隣の理雨流が嫌々にそれでも腹を括ってくれたようだ。事態が終局を迎えるのだということが確定されたので俺はあからさまに安堵の息を吐く。俺が気力の感じられないであろう吐息をついた直後に理雨流は彼女の憂鬱のもとである人物に向い歩を進め始めた。
「丹澤……少し落ち着いてくれないかな?」
近づき、歩みを休めた理雨流は険悪が激しい強い口調でそう、丹澤に願い出た。
「……今度は理雨流ちゃんかいな、うぅーん分かったはわいも男や。そいつみたいなお子様ちゃうしな。謝ったるわ! 光華、悪かったな」
丹澤はその後の光華のリアクションなど見ずに反転し、階段付近に一人寂しげに(たぶん)ぼうっと立っている俺に近づいてきた。
「後で一人で俺の部屋に来い」
一瞬その低く冷めた声が誰のものなのか分からず俺は大きく首を回し辺りを見回した。それが丹澤のものだと気づいた時には既に彼はもう見当たらなかった。
しかし、話の進み遅いなぁと思う




