優しさ
大きく飛ばされたはずの光華にはたいして痛みは無い様で地面に身体が着くのとほぼ同時に華麗に受け身を取っていた。まるで軽業師だ。
「切り上げをかわされることを予期しての蹴りか…まずまずだな」
「お褒めの言葉有り難うっ!」
試されている気がしてならない。光華だったらあそこでカウンターぐらい簡単にできただろう……やはり光華は全力ではない
「次はどう来る?」
「誰が教えるか……よッ!」
言い終わる前に光華に向かい走り出す。剣の柄を右腰に当て、水平にしその切っ先を光華に向け、彼女との距離に歩幅を併せ絶好の突きを繰り出すタイミングを見計らう
「ウゥーオオォォー!」
ここだという時に一気に両腕を伸ばしきり疾風の如き突きを放つ
「フンッ」
溜息を軽くついた光華は身を翻しただけでスラリと俺の突きをかわす
かわしつつ光華は隼をまさに光の速さで、一瞬にして俺の首に突き付けた
「……んっ! ……」
『は、速過ぎる…常人の粋を脱している…』
直接喉には当たっていないのだが、殺気のせいなのか妙に喉がヒリヒリとする
「お! 勝負ありやな」
勝負の結果なぞ始まる前から決まっていたようなものだがな……って偉そうに思えることではないな……
不意に光華がその小さな口を開く。
「……ふぅ……お前には絶対的に欠けているものがある」
一つ溜息を入れた光華は突き出す隼を戻しながら呆れた口調で話し始めた。
「なんだと思う?」
『うーん』
問われた刹那、一瞬だけ、自分に足りないモノを考えた。が答えは自然と言葉に出てきた。
「速さ!」
「それもある……だが一番の問題はメンタル面だ。その中でも特に問題のあるものは……集中力」
「集中力……」
「そうだ、恐らくお前はそのせいで全力を出そうと思っても出せないことだろうな」
俺個人としては頬を叩き気合いを入れることで集中力を高めれたと思っているのだが……いや心の奥深くでは全く集中力をが高められていないのは分かっている。
「いいか……訓練と遊戯を間違えるな……」
その光華の言葉には素直にはなれなかった。俺は素直にその言葉を受け入れることが最良の選択だと頭では分かっていたがそうはできなかった。俺の中の僅かなプライドがそれを許さなかったのだ。
「俺は遊びでやってなんかいない」
「例えそうだとしても忠告に変わりはない」
深い苛立ちが一瞬にして胸を覆いつくしそれが言葉となる。
「俺は、俺は間違えてなんかいない!」
確かに集中はしていなかったかもしれないが俺は決して訓練を遊びだとは思っていない!
「ふうぅ……」
光華が大きく息を吐いた。恐らくはわざとだろう。俺は元来の冷静を取り戻しつつあった。
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この場の雰囲気がだんだんと、確実に悪く重くなっていくのがはっきりと分かった。それが誰のせいかも……
「…………ごめん……悪かった」
「簡単に謝るな! お前自身にも思いがあったからこそ怒りを表に出したのだろう? ならば何も謝ることはない」
光華の表情からは峻厳さと同時にオブラートに包まれたような見えにくい優しさが感じられた。
「光華……」
俺は懇篤な態度をとれる光華とはそもそもの人のできが違うのかも知れない。
もう少し表現を多用していきたいと思います。




