強さ
光華に習い俺も体操をする。
『やるからには本気でやる! 』
手加減なんかしていったら殺されかねない。光華はきっと相当強いだろう。
「では得物を取れ」
俺は言われるがまま右手で地面に置いてある木刀を手に取り左中段に構える。
俺と5mほど離れている所にいる光華はだらりと木刀を地面(絨毯)につけている。どうやら光華は右利き。その持ち方だと上に切り上げてくるか、左から右へ(俺から見て)薙ぎ払ってくるかだろう。もしかしたらカウンターでくるかもしれない。
どちらにしても先入観はいけないのだが…やはりどうしても考えてしまう。
「それじゃ準備はいいな! …………いくぞ!! 」
言うが早いか光華は前のめりに低い態勢で地面を蹴り2歩目にして俺の懐に入って来た。
「速いッ!? 」
瞬間的な判断により左からの衝撃に耐えようと左脇に構えていた木刀を縦に構え直す。
「あまいッ! 」
光華は右へ少しステップし左肘を曲げ前方へ踏み込み、跳んだ。
ドンッ!!
息がきつくなった。
防御のために構えた木刀には手応えはなく直接腹に激痛が走り真後ろに吹っ飛ばされる。
「クゥ……! アッ……ハ! 」
受け身もとらず地面に激突したせいで脳が揺れてしまっている。
『……タック……ルか……よ』
「早く立ち上がれ! 実戦だったら死んでるぞ! 」
光華は険しい剣幕で怒鳴り付けてくる。
あの体で体術を使うとは思わなかった。そのせいで、もろに肘が入ってしまった。
「やっぱり……先入観、は、いけないな」
俺は息絶え絶えに立ち上がる。涙で潤み霞む目で光華を見ると何故か彼女は木刀を持っていない。
「やはり長剣は気に入らん、体ひとつで相手してやるっ! こいッ!! 」
飛ばされた衝撃で手放してしまった木刀を手に取り、態勢を整える。
『リーチは、こっちの方が、長くなった、訳か……』
未だ上手く頭が回らない。木刀を持っていない左手で軽く顔を叩く。
「よしっ……」
俺はゆっくりと光華との間合いを円状に移動しつつ詰める。光華は膝を曲げ右足を一歩前に出し態勢を低くしている。
『出ている脚を、叩いたほうが良さそう、だ』
光華との距離1mまで迫る。光華は体の向きこそ俺に合わせ変えるものの打撃を食らわしてくる気配はない。
俺は素早く前方へステップをし完全に間合いを詰めた。
「ウオッォー!! 」
左側中断に構えた木刀を光華の右足に向け出来る限り速く切り払った。そして確かな手応えは……無かった。
「なっ!? 」
光華は木刀をぎりぎりまで引き付けた後バックステップでその切り払いを避けていた。
空を斬るだけの木刀の遠心力にふりまわされた俺は一瞬だけ背後を光華のいた方にみせてしまったが、態勢を立て直した時には光華は視界の中にはいなかった。
「終わりだッ! 」
『上か!? 』
バンッ!
間一髪といったところか、振り下ろされる光華の踵を左腕で受け止める。
「ッウゥ……! 」
腕が麻痺したように動かないが光華はまだ追撃をしてくるはずだ。
光華は踵を落とした瞬間すぐしゃがみ込み、左脚を軸にのばした右脚を地面すれすれにまわすように蹴りを放ってきた。
「クッ! 」
俺は左側から地面に水平にしてくる光華の脚を後ろに跳ぶようにしてぎりぎりのところでかわす。
「隙だらけだ! 」
光華が、素早く前方へ踏み出し肘を直角に曲げた拳を後ろに跳びのく俺の懐にえぐるように叩きこんだ。
「ぐぁはっ! ァァハッ……」
光華はさらに拳をえぐりこませ、完全に肘をのばし俺を吹っ飛ばす。
「……ぁう……うぅ……」
無防備に地面に叩きつけられる。
光華はさらに走りこんできたが俺の状態を見て立ち止まった。
強烈な吐き気の中、肺を圧迫され息が出来ない。
「これで終わり……な……」
光華の声が遠くなっていく。
『……情……け……ねぇ……』
意識は気付かぬうちに消えていった……
覚醒における世界 大陸は大きく分けて三つある。孤島は割りと少ないがルシオンは孤島の島国である。




