お疲れ
部屋選びの結果(殆ど紫苑が選んだ)として俺には一階の左側、入口を手前として手前から二番目の部屋が割り当てられた。
理雨流には左側一番手前、約束通りの俺の部屋の隣の部屋が割り当てられた。
紫苑も俺の隣の部屋に割り当てられた……ではなく自分で割り当てた。
丹澤の部屋は二階の真正面の一番右の部屋になった。
「それーじゃーかいさんーでーす」
紫苑の独断による適当かつ素早い割り当てが終了を向かえた。
これで独裁政治は終わりを告げたのだ。そんな顔をしている者も少なくない気がする……皆無口なのにね。
「あーなんかーつかれましたーねますー」
紫苑はそう言いトボトボユラユラ部屋に向かって行った。
「紫苑! ……お疲れ様っ」
お疲れ気味である紫苑に労いの言葉をかける。
「ふぅんっーありがとーう」
溜息混じりに紫苑が返事をくれた。凄くお疲れのようだ。
『それにしても……寝ますって言ってたよな? そういや今何時だっけ』
俺は今日何度目かの時刻確認をした。
『10:42……朝だよな、まだ……』
何だろう、紫苑は徹夜でもしたのか?
「それじゃ私も部屋確認しに行こっと。渉も行こっ! 」
こちらは疲れている様子など1mmも見せず元気、元気元気に振る舞っている。
その理雨流に誘われては断る訳にはいかない。
「そうだねー行こう! 」
「そやな〜ほな行こか〜」
理雨流は、今階段付近にいる俺の隣にいる。その俺の背後から不意打ちとも思える声が上がった。
「しつこい!」
理雨流は、朝っぱらから自宅に新聞の宣伝に来て粘り強く宣伝をする新聞配達員に苛立つ主人が己の立場をその働き者に自覚させるためにそうするように、丹澤を一喝した。
「しつこくてもいい、嫌われてもいい、ただ姉さんのそばにいたいんや」
「もう嫌ってるから」
『理雨流、容赦ないなー』
流石! 理雨流、丹澤のキザというか何と言うか背中に寒気が走るような台詞にも動じず丹澤を突き放す、いや突き飛ばす。
「グラッ! もうずたぼろや!わいの精神見えるんやったら見てみ〜ボロボロなっとるさかい」
『いや、見たくない』
「もうええ〜今日の所は引き上げるわ〜」
丹澤は後ろに180度向きを切り替えフラフラと自身の部屋に吸い込まれていった。
「……よし渉行こ! 」
何事も無かったかのように理雨流は笑顔を取り戻す。
『理雨流にはいつも笑顔でいてほしい』
自然とそう思える。そして
『丹澤は理雨流に近づくな! 』
自然とそれも思う。




